報道発表資料

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2001年06月06日
  • 地球環境

ミレニアムエコシステムアセスメントの立ち上げについて

2001年を初年度としてUNEP、世界銀行などが支援して世界規模で実施されるミレニアムエコシステムアセスメント(MA)の立ち上げ記念式典が国連コフィ・アナン事務総長の出席のもとに6月5日ニューヨークの国連本部で行われました。
 
 MAは、生態系保全のための条約や環境政策に関する各国政府の意思決定に必要な科学的情報を的確に提供し、対策の促進に資することを目的とする生態系のアセスメントであり、2005年3月までの4年間に世界の多数の科学者が参加して行われます。MAは、生態系のプロセスについての理解の増進はもとより、水資源、土壌、食料、洪水制御など生態系機能が社会・経済にもたらす恵み(財とサービス)について総合的なアセスメントを行います。その成果については、政策決定者の意思決定に反映され、環境保全政策の推進が図られることが期待されています。
 
 環境省としては、本年度から実施している「アジア太平洋地域環境イノベーション戦略プロジェクト」で得られるモニタリングや環境評価の成果をMAに提供するなど、積極的に協力を行っていく予定です。

1.ミレニアムエコシステムアセスメント(MA)について

  • MAは、世界の草地、森林、河川、湖沼、農地および海洋などの生態系に関して、水資源、土壌、食料、洪水制御など生態系機能が社会・経済にもたらす恵み(財とサービス)の現状と将来の可能性を総合的に評価しようとするものである。本プロジェクトの総予算は2100万ドルであり、4年間にわたり世界の1500人の代表的な自然科学および社会科学者が参画して実施される。
  • MAは、過去3年間かけて国連開発計画(UNDP)、国連環境計画(UNEP)、世界銀行、世界資源研究所(WRI)等によって計画されてきた。この間にMAの実施可能性を具体的に示すために、「世界の生態系に関するパイロット分析(PAGE)」という調査研究が行われた。その結果、世界の多くの地域において、人類が必要とする食料や清浄な水を供給できる生態系の能力が減少していること、また、生物多様性や人間の健康に対する脅威や、洪水や地すべりなどの環境災害に関する脆弱性が増大していることが示された。
  • MAの活動は、世界銀行の主任科学者のロバート・ワトソン博士、国連大学高等研究所長のザクリ博士が共同議長を勤める40名からなる理事会によって監督される。MAの科学的活動を監督するアセスメントパネルは世界の14名の代表的な社会・自然科学者から構成され、アンジェラ・クルーパー博士(トリニダードトバゴ)と米国スタンフォード大学のハロルド・ムーニー教授が共同議長を勤める。

2.目的、内容及び期待される成果

(1)目的
 MAは、政策決定者に対し、世界の生態系の変化がもたらす人間生活や環境にかかわる影響について、総合的な科学的知見を提供ことによって、生態系管理を改善させることを目的としている。
 特に、3つの生態系関連条約(生物多様性条約、ラムサール条約、砂漠化防止条約)を主要なユーザーとして想定しているが、これに加えて、各国政府、民間、地方政府等の幅広い対象をユーザーとして想定している。

(2)内容
 MAでは、これまで前例がない「マルチスケール」アセスメントが実施されることとなっている。これは、全地球規模のアセスメント、地域レベルのアセスメント、さらにはより小規模な地方規模のアセスメントを含んでいる。MAの一般的な方法論を別添1に示す。
 このうち、地域レベルのアセスメントでは、南アフリカ、東南アジア、中国西部等の10カ所程度を対象とする予定であり、上記の方法論を具体的な地域に適用して詳細な分析を行うことにより、地球規模の知見を補強することを目指している。

(3)期待される成果とその普及
 MAにより、政府、民間、学界、市民社会等の様々なレベルにおいて生態系の重要性について認識が高まることが期待される。また、政策決定に必要となる利益とコストのトレードオフの分析等を行うに当たって重要な情報、手段、選択オプションを提供することにより、政策決定者の意志決定に影響を与え、将来の環境問題の改善に大きく貢献することが期待される。
 なお、MAの成果については、インターネットサイト、技術レポートおよびその「政策決定者向け要約」などを作成し、政府、民間、学界、市民社会に対して普及する。

3.国連大学の対応

 国連大学高等研究所は、世界資源研究所と合同で2001年6月6日(水)午後1時~5時、国連大学5階会議場においてMAに関するシンポジウムを開催する。
 また、2001年9月にMAに関連したワークショップを開催する(下記参照)とともに、今後、同研究所の活動を通じてMAを支援していく。

4.環境省の対応

 環境省としては、本年度から実施している「アジア太平洋地域環境イノベーション戦略プロジェクト」(別添2参照)の一部として、中国において衛星データを利用した統合的モニタリングを実施しており、この成果を提供することなどを通じて、MAに協力していくこととしている。
 また、両プロジェクトのさらなる連携のあり方を検討するため、国連大学高等研究所およびアジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)の共催により、本年9月に東京で開催されるジョイントワークショップの開催を支援することとしている。

添付資料

連絡先
環境省地球環境局総務課研究調査室
室 長: 木村祐二(内線6730)
 補 佐: 小野  洋(内線6731)
 担 当: 倉谷英和(内線6732)
国連大学高等研究所(03-5467-2323)
 所 長    :A.H.ザクリ
 客員研究員: 山村 尊房
 

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