報道発表資料

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2001年06月01日
  • 自然環境

アジア版鳥類レッドデータブックの作成について

環境省が(財)日本野鳥の会に委託して実施したアジア地域における絶滅の危機に瀕した鳥類の状況調査の結果が、今般、アジア版鳥類レッドデータブックとして取りまとめられ、6月5日の世界環境の日にあわせて発表される。これは、国際的な鳥類保護団体であるバードライフ・インターナショナルと共同で編纂されたものであり、結果として、アジアに生息する鳥類のうち約12%にあたる323種が絶滅の危機に瀕していることが明らかになった。
1.作成の経緯及び意義
   アジア地域には、現在約2700種の野生の鳥類が記録されているが、その生息状況については、未だ十分把握されていない。
 このため、環境省では、平成6年度から平成10年度にかけて(財)日本野鳥の会への委託により、アジア地域における絶滅の危機に瀕した鳥類の現状について、関係国政府、NGO及び鳥類専門家との協力のもとに調査を実施した。今般、その調査結果が、国際的な鳥類保護団体であるバードライフ・インターナショナル(注)の協力を得て、アジア版鳥類レッドデータブックとして取りまとめられた。
 今後は、アジア各国において鳥類及びその生息地の保護にかかる優先度や対策手法を検討するための重要な基礎資料として活用されることが期待される。
 
2.アジアにおける絶滅の危機に瀕した鳥類の現状
   調査の結果により、アジアに生息する約2700種の鳥類のうち約12%に該当する323種が、絶滅の危機に瀕していることが明らかとなった(図1)。さらに、絶滅の危険が増大しているとされる準絶滅危惧種317種を合わせると、アジアの野鳥の約25%が危機に陥っていることになる。この結果は、アジア地域全体の生物多様性が低下していることを示唆しており、鳥類以外の生物種についても、絶滅の危機が広がっていることが推測される。 
 国別に見て最も絶滅危惧種が多いのは、インドネシア(115種)で、次いで中国本土(78種)、インド(73種)の順に続く(図2)。日本に生息する絶滅危惧種はノグチゲラ、オオトラツグミ、コウノトリ、シマフクロウ等を含む41種で、アジアでは9番目に多い。
 本レッドデータブックに掲載された絶滅危惧種のうち約80%は森林に生息する鳥類であり(図3)、伐採、耕作農業、焼き畑等による森林の喪失をはじめとした生息地の破壊が野鳥を絶滅に追いやる最大の原因になっている。また、野鳥にとっては湿地(湿原、湖沼、干潟等)も重要な生息環境であり、アジアの絶滅危惧種の約20%が湿地を利用しており、また依存度も高い。
 また、絶滅の要因としては、生息地の破壊のほか、狩猟や捕獲等が大きな影響を及ぼしている(図4)
 
3.発表会の開催について
   6月5日の世界環境の日に、東京都日野市の(財)日本野鳥の会鳥と緑の国際センターにおいて、高円宮妃殿下をお迎えして本レッドデータブックの発表会が開催される。発表会には、編纂に加わったバードライフ・インターナショナル及びアジア各国の鳥類専門家が参加し、レッドデータブックに記載された調査結果の内容等について、それぞれ報告が行われる予定である。
 
 
注) バードライフ・インターナショナル:世界約80カ国を代表する鳥類保護NGOの連合組織で、本部はイギリスのケンブリッジにあり、レッドデータブック等の国際的なプロジェクトの企画調整を行っている。バードライフ・インターナショナルによる絶滅危惧種の評価は、国際的に高く評価されており、そのまま国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストとしても採用されている。なお、わが国では、(財)日本野鳥の会がバードライフ・インターナショナルの参加団体となっている。
 
 
 
 ○問い合わせ先:
   (財)日本野鳥の会 鳥と緑の国際センター
     電話:042-593-6871
     ファックス:042-593-6873

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
課長:黒田大三郎(6460)
 補佐:鳥居敏男  (6462)
 担当:中島尚子  (6466)