報道発表資料

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1998年05月14日

鳥獣管理・狩猟制度検討会報告書について

人と野生鳥獣との共存を図るため、「今後の鳥獣管理・狩猟制度の あり方」について検討を行ってきた環境庁の「鳥獣管理・狩猟制度検 討会」は、その検討結果を5月14日に報告書としてとりまとめ、公 表した。
 今後は、当該報告書を踏まえ、自然環境保全審議会野生生物部会に 対し、「人と野生鳥獣との共存を図るため緊急に講ずべき保護管理方 策」について速やかに諮問を行う予定である。

1 経緯

 野生鳥獣については、近年、その保護に対する国民の要請が高まっている一方で、シカなどによる農林作物の被害や自然環境の悪化等の問題が深刻化しているところである。こ のような問題に対して、環境基本計画の基本理念である「自然と人間との共生」を踏まえて、野生鳥獣を適正に保護管理することが求められている。
 また、地方分権推進委員会等における地方分権のあり方の検討の中では、我が国に生息する野生鳥獣を適切に保護管理していくためには、それぞれの鳥獣の生息状況等に応じて 、国と都道府県が適切に分担と連携を図ることが必要と考えられている。
 このような情勢に鑑み、当庁においては、平成9年6月より鳥獣の保護管理、狩猟、地方行政、法律等各分野の専門家からなる検討会(座長:飯村 武(財)日本鳥類保護連盟 監事)を設置し、これからの鳥獣管理・狩猟制度のあり方について検討を行ってきたところである。(検討委員及び検討経緯については別紙参照)

2 検討結果

 報告書においては、地域の状況に応じた野生鳥獣の計画的な保護管理を目的とした現行制度の見直しが必要との提言がなされている。
 検討結果の骨子は、次のとおりである。
 野生鳥獣については、近年、その保護に対する国民の要請が高まっている一方で、農林作物等への被害が深刻化・社会問題化。人と野生鳥獣との共存を図るため、科学的合理性 の確保、目標の明示と合意形成、多様な主体の連携及び多様な手段の総合化・体系化による計画的な保護管理の必要性が高まっているところ。
 このような状況に鑑み、今後は特定の個体群を計画的に保護管理できるように、以下の項目について検討を進めて行くべき。

(1)鳥獣保護事業計画の拡充
 特定の個体群の計画的な保護管理を適正に行う観点から、都道府県が策定する鳥獣保護事業計画の内容及び鳥獣保護事業計画に関する国の基準を拡充。

(2)特定の個体群の保護管理のための仕組みの創設
 鳥獣保護事業計画の下位計画として、都道府県による特定の個体群に着目した保護管理のための計画制度を創設。
 また、当該計画を実行するために必要な手段として、都道府県が主体となって当該鳥獣の捕獲制限の内容等を定めることができる仕組みを創設。

(3)国と地方の役割分担の見直し
 野生鳥獣の保護管理に、基本的に都道府県が主体性を持って取り組めるようにするという観点から、地方分権推進委員会による勧告を踏まえながら、役割分担を整理。

(4)その他
{1}調査研究の推進及び情報収集体制の整備
 野生鳥獣の生態等に関する調査研究を推進し、生息分布情報等の収集体制を整備。
{2}保護管理技術の振興
 効果的・効率的な被害防除手段、保護管理のための計画の作成技術を振興。
{3}保護管理の担い手の育成
 計画的な保護管理を行いうる技術者を育成するとともに、その基盤を整備。
{4}人と野生鳥獣との共存基盤の整備
 野生鳥獣の生息状況等に応じた保護区域のあり方、被害に対する損失対応の検討。
{5}保護管理に関する意識啓発
 人と野生鳥獣との共存教育の推進

3 今後の予定

 今後は、当該報告書を踏まえ、5月25日に開催予定の自然環境保全審議会野生生物部会(部会長:岩槻邦男 立教大学理学部教授)に対し、環境庁長官から「人と野生鳥獣と の共存を図るため緊急に講ずべき保護管理方策」について速やかに諮問を行い、本年内の答申を目途に専門的な検討を進めて頂けるようお願いする予定である。

 

 

別紙

※鳥獣管理・狩猟制度検討会検討員名簿
◎印:座長

飯村 武 (財)日本鳥類保護連盟監事
  大津清司 鹿児島県指宿農業改良普及所技術指導課長
(前鹿児島県農林水産部農政課中山間対策係長)
  小熊 實 (社)大日本猟友会専務理事
  北村喜宣 横浜国立大学助教授
  塚本洋三 (財)日本野鳥の会副会長
  藤巻裕蔵 帯広畜産大学教授
  三浦慎悟 森林総合研究所東北支所保護部長
(前森林総合研究所森林動物科長)
  湯浅純孝 富山県生活環境部自然保護課長

※鳥獣管理・狩猟制度検討会の検討経緯

第1回検討会 平成9年6月30日 鳥獣管理・狩猟制度に係る現在の問題点の整理と論点の絞り込み
第2回検討会 平成9年7月29日 鳥獣管理のための計画のあり方等
第3回検討会 平成9年9月4日 鳥獣管理のための計画のあり方等
第4回検討会 平成9年10月23日 地方分権への対応等
第5回検討会 平成9年12月10日 報告書骨子案の検討(1)
第6回検討会 平成10年2月9日 報告書骨子案の検討(2)
第7回検討会 平成10年4月20日 報告書案の検討

添付資料

連絡先
環境庁自然保護局野生生物課鳥獣保護業務室
課 長 :森康二郎(6460)
 室 長 :守口典行(6470)
 補 佐 :東海林(6471)
      :前島 (6466)