報道発表資料

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1999年03月25日

埼玉県所沢市を中心とする野菜及び茶のダイオキシン類等実態調査結果について

環境庁、厚生省及び農林水産省は、三省庁連絡会議の合意に基づき、埼玉県所沢市を中心とする野菜及び茶のダイオキシン類等の実態について、相互の連携のもとに、作物体(農林水産省)、摂取量の推計(厚生省)、大気や土壌等の環境媒体(環境庁)に関する各調査を実施し、それぞれの観点から協議を行い、結果を取りまとめた。

[1] 野 菜 関 係

1.調査方法

(1) 作物体調査及び摂取量推計調査
 {1}

試料の採取等
  調査結果については、作物体調査用試料として、埼玉県所沢市7地点、川越市1地点、 狭山市1地点、三芳町1地点の合計10地点において、平成11年2月16日及び23日 に、表1の採取区分でほうれんそうを採取し、分析に供した。
  摂取量推計調査については、1日摂取量調査(トータルダイエットスタディ)の手法を 用い、調査地点(3カ所を選定)のほうれんそう及び所沢市で流通しているその他の有色 野菜をそれぞれ調理し、それらの混合試料(第7群:有色野菜)を調整して、分析に供し た。

添付ファイル(表1 作物体調査用試料の採取区分別検体数)

※作物体調査用試料の採取区分別取扱い

  • 栽培状態試料:栽培されている状態のまま水洗いしていないほうれんそう (根部の土壌は除去。)。
  • 出荷状態試料:通常の出荷時と同様に作物体全体を水洗いしたほうれんそう。
  • 再水洗試料:家庭での取扱いを考慮し、出荷状態のほうれんそうを再度水洗したもの 。
 {2} 試料の分析
 
1) 分析方法
  「平成9年度食品中のダイオキシン類等汚染実態調査(厚生省)」の分析法に従い試料 の前処理を行って測定用試料を調整し、ガスクロマトグラフィー高分解能質量分析計を使 用してダイオキシン類等を分析した。
2) 分析対象物質及び換算方法
  ダイオキシン類(ポリ塩化ジベンゾパラジオキシン(PCDD)及びポリ塩化ジベンゾ フラン(PCDF))及びコプラナーPCBを分析した。
  また、分析結果は、PCDD及びPCDFについては換算計数としてITEF(Int ernationalToxicityEquivalencyFactor)を 用い、また、コプラナーPCBについてはAlborgら(WHO)の換算計数を用い てTEQ(毒性等価量:2,3,7,8-TCDDToxicityEquiv alencyQuantity)に換算して表示した。
  以下、調査結果において、ダイ オキシン類等の濃度表示は、すべてTEQ換算した数値である(定量下限値を除く)。
3) 定量下限値
  ダイオキシン類:4,5塩素化物0.01 pg/g 6,7塩素化物0.02pg/g8塩素化物0.05pg/g コプラナーPCB:ノンオルト0.1 pg/g
(2) 環境調査
 {1}

試料の採取等
  作物体調査と同じ調査地点(10地点)及びその近傍において、平成11年2月16日 ~26日に、表2及び表3のとおり試料を採取した。

添付ファイル
(表2 大気、降下ばいじん及び土壌の試料採取日及び検体数)
(表3 河川水、地下水及び底質の試料採取日及び検体)

 {2} 試料の分析
 
1) 分析方法
 環境庁が作成したマニュアル等に従い、試料の採取、前処理、分析を 行った。
2) 分析対象物質及び換算方法
 (1)の{2}の2)と同じ。
3) 定量下限値
 {1} 大気
ダイオキシン類: 4,5塩素化物0.01 pg/m3 6,7塩素化物0.02pg/m3 8塩素化物0.05pg/m3
コプラナーPCB: ノンオルト0.2pg/m3モノオルト0.2pg/m3ジオルト0.2pg/m 3
 {2} 降下ばいじん
ダイオキシン類: 4,5塩素化物4 pg/m2/日6,7塩素化物8pg/m2/日 8塩素化物16pg/m2/日
コプラナーPCB: ノンオルト2pg/m2/日 モノオルト2pg/m2/日 ジオルト2pg/m2/ 日
 {3} 土壌
ダイオキシン類: 4,5塩素化物1pg/g 6,7塩素化物2pg/g 8塩素化物5pg/g
コプラナーPCB: ノンオルト2 pg/gモノオルト2 pg/gジオルト2 pg/g
 {4} 河川水及び地下水
ダイオキシン類: 4,5塩素化物0.1 pg/リットル 6,7塩素化物0.2pg/リットル 8塩素化物0.5pg/リットル
コプラナーPCB: ノンオルト0.2pg/リットルモノオルト0.2pg/リットルジオル ト0.2pg/リットル
 {5} 底質
ダイオキシン類: 4,5塩素化物1 pg/g 6,7塩素化物2pg/g 8塩素化物5pg/g
コプラナーPCB: ノンオルト1pg/gモノオルト1pg/gジオルト1pg/g

2.調査結果

(1)

作物体調査
  10カ所の調査地点における20検体のほうれんそうのダイオキシン類等濃度の調査結果は以下のとおりであった。

添付ファイル
(表4 出荷状態のほうれんそうのダイオキシン類等濃度調査結果)
(表5 栽培状態と再水洗のほうれんそうのダイオキシン類等濃度調査結果)

 出荷状態のほうれんそうのダイオキシン類濃度は、平均値が0.045pg/g(最低0.0085~ 最高0.15)、コプラナーPCBを加えると平均値が0.051pg/g(最低0.0086~最高0.18) であった。
  なお、栽培状態のほうれんそうのダイオキシン類濃度は、平均値が0.072pg/g(最低0. 011~最高0.19)、コプラナーPCBを加えると平均値が0.082pg/g(最低0.011~最高0.2 2)であり、再水洗したほうれんそうのダイオキシン類濃度は、平均値が0.044pg/g(最低 0.0040~最高0.10)、コプラナーPCBを加えると平均値が0.050pg/g(最低0.0041~最 高0.12)であった。

(2)

摂取量推計調査
  3カ所の調査地点から採取したほうれんそうを含む有色野菜のダイオキシン類等濃度の調査結果に基づく摂取量推計値は以下のとおりであった。

添付ファイル
(表6 有色野菜からのダイオキシン類等の摂取量推計値)

  有色野菜からのダイオキシン類の1人当たり摂取量は、平均値が1.7pg/人/日(最低0. 72~最高3.1)であり、コプラナーPCBを加えると平均値が2.0pg/人/日(最低0.73~最 高4.0)であった。
  これを体重1kg当たりにすると、ダイオキシン類の1人当たり摂取量は、平均値が0.033 pg/kg/日(最低0.014~最高0.062)であり、コプラナーPCBを加えると平均値が0.039p g/kg/日(最低0.015~最高0.079)であった。

(3)

環境調査
  10カ所の調査地点における環境媒体(大気、降下ばいじん、土壌、 河川水、地下水及 び底質をいう。以下同じ。)のダイオキシン類等濃度の調査結果は、以下のとおりであっ た。

添付ファイル
(表7 大気のダイオキシン類等濃度調査結果)
(表8 降下ばいじん及び土壌のダイオキシン類等濃度調査結果)
(表9 河川水、地下水及び底質のダイオキシン類等濃度調査結果)

 {1} 大気
  ダイオキシン類の濃度は、2日間の平均値が0.37pg/m3(最低0.21~最高0.55)、コプ ラナーPCBを加えると平均値が0.39pg/m3(最低0.22~最高0.58)であった。
  ダイオキシン類の濃度について、これまでの調査結果と比較すると、平成9年度冬期に 本調査と同地域(所沢市、狭山市、川越市及び三芳町)で実施された調査結果(平均値0. 72pg/m3 (最低0.22~最高2.7pg/m3)(n=32))の範囲内であった。
  また、全国的な調査結果では、「平成9年度地方公共団体等における有害大気汚染物質 モニタリング調査結果(環境庁及び地方公共団体)」における冬期の結果(平均値0.48pg /m3(最低0.00044~最高3.3pg/m3)(n=219))と比較するとその範囲内であった。
  なお、同調査において、夏期及び冬期を含め年2回以上測定した地点における測定結果は 、平均値0.55pg/m3(最低0.010~最高1.4pg/m3)(n=68)であった。
 {2} 降下ばいじん
  ダイオキシン類の濃度は、平均値が0.99mg/km2/月(最低0.16~最高1.6)、コプラナー PCBを加えると平均値が1.1mg/km2/月(最低0.25~最高1.8)であった。
  ダイオキシン類の濃度について、これまでの全国的な調査結果(「平成9年度有害大気 汚染物質モニタリング調査(環境庁)」:平均値1.0mg/km2/月(最低0.020~最高2.4(n =10)))と比較すると、その範囲内であった。
  参考として、本調査と同地域(所沢市、狭山市、川越市)で行われた「平成9年度ダイ オキシン類の総合パイロット調査(環境庁)」では、2.0mg/km2/月であった。
 {3} 土壌
  ダイオキシン類の濃度は、平均値が6.5pg/g(最低2.4~最高20)コプラナーPCBを加 えると平均値が7.3pg/g(最低3.1~最高21)であった。
  ダイオキシン類の濃度について、全国の農用地におけるこれまでの調査結果(最低0.28 ~最高370pg/g(n=36))と比較すると、その範囲内であった。
 {4} 河川水
  ダイオキシン類の濃度は、0.060及び0.054pg/リットル、コプラナーPCBを加えると 、0.071及び0.064pg/リットルであった。
  ダイオキシン類の濃度について、全国の調査結果(「公共用水域の水質におけるダイオ キシン類調査結果(環境庁:平成9年度)」、海域、河川:最低ND~最高3.9 pg/リッ トル(n=12))と比較すると、その範囲内であった。
 {5} 地下水
  ダイオキシン類の濃度は、ND及び0.0011pg/リットル、コプラナーPCBを加えると 、ND及び0.0011pg/リットルであった。
  参考として、「平成9年度ダイオキシン類の総合パイロット調査(環境庁)」では、ダ イオキシン類の濃度は0.0051pg/リットルであった。
 {6} 底質
  ダイオキシン類の濃度は、12及び32pg/g、コプラナーPCBを加えると14及び32pg/gで あった。
  ダイオキシン類の濃度について、全国におけるこれまでの調査結果(「平成9年度非意 図的生成化学物質汚染実態追跡調査(環境庁)」:最低0.002~最高51pg/g(n=40)) と比較すると、その範囲内であった。

3.調査結果のまとめ

(1) ほうれんそう(出荷状態)のダイオキシン類の濃度は、平均値が0.045pg/g (最低0. 0085~最高0.15)、コプラナーPCBを加えると平均値が0.051pg/g(最低0.0086~最 高0.18)であり、「平成9年度食品中のダイオキシン類等汚染実 態調査(厚生省)」 の結果(平均0.16pg/g(最低0.025~最高0.37)、コプラナ ーPCBを加えた場合:平 均0.19pg/g(最低0.044~最高0.43))と比較してほぼ同程度であった。 なお、水洗した状態のほうれんそうのダイオキシン類濃度は、栽培状態のほうれん そうのダイオキシン類濃度に比べて低い傾向にあるとみられた。
(2) また、有色野菜からのダイオキシン類等の1日摂取量推計値を、その他の食品を含 む「平成9年度食品中のダイオキシン類等汚染実態調査(厚生省)」の平均的な食事か らのダイオキシン類等の1日摂取量調査結果に当てはめると、2.3~2.4pg/kg/日であ り、同調査結果等と比較してほぼ同程度であることから、健康に影響を生じることはな いと考えられる。
(3) 一方、環境媒体についてのダイオキシン類の濃度は、従来の調査結果の範 囲であった。 また、ほうれんそうのダイオキシン類の濃度が、大気、降下ばいじん、土壌のいず れの影響を受けているかについては、今回の調査では明確な結論は得られなかった。

[2] 茶 関 係

1.調査方法

(1) 農産物調査
 {1}

試料の採取等
  試料には、既に製造され保管されている平成10年産の煎茶(仕上げ茶)を用いた。供試 した煎茶は、埼玉県所沢市産2試料、入間市産2試料、狭山市産2試料、他県産3試料の 合計9試料を埼玉県等の協力の下、平成11年2月24日~3月1日に採取した。
  採取した9試料全部について、煎茶のダイオキシン類等の分析を行うとともに、うち3 試料について、湯による浸出を行い、浸出液中のダイオキシン類等を分析した。 湯による浸出の方法は、表10のとおりである。

添付ファイル
(表10 湯による煎茶からの浸出方法)

 {2} 試料の分析
  試料の分析は、「[1]野菜関係」の1の(1)の{2}に従い行った。
  なお、湯による浸出方法を用いた分析における定量下限値は以下のとおり。
ダイオキシン類: 4,5塩素化物0.2pg/リットル、6,7塩素化物0.5pg/リットル、 8塩素化物1pg/リットル
コプラナーPCB: ノンオルト1pg/リットル
(2) 環境調査
 {1} 試料の採取等
  埼玉県下の茶主産地の茶園1カ所において「[1]野菜関係」の1の(2)の{1}の方法に 従い、平成11年2月23日~24日及び25日~26日に大気を、2月23日に土壌を、2月23日 ~3月2日に降下ばいじんを採取した。
 {2} 試料の分析
  試料の分析は、「[1]野菜関係」の1の(2)の{2}に従い行った。

2.調査結果

(1)

煎茶及び浸出液調査
  9試料における15検体のダイオキシン類等濃度の調査結果は、表11及び表12のと おりであった。

添付ファイル
(表11 煎茶のダイオキシン類等濃度調査結果)
(表12 浸出液のダイオキシン類等濃度調査結果)

 埼玉県において採取した煎茶のダイオキシン類の濃度は、平均値が0.81pg/g(最低0.47 ~最高1.4)であり、コプラナーPCBを加えると、平均値が1.1pg/g(最低0.58~最高1.7 )であった。
  また、湯で浸出した浸出液(ろ過したもの、以下同じ)のダイオキシン類の濃度は、浸 出方法[1]では、全ての検体でダイオキシン類及びコプラナーPCBは検出されなかった 。
  さらに、浸出方法[2]では、ダイオキシン類の濃度は平均値が0.002pg/リットル(最低 ND~最高0.004)であり、コプラナーPCBは全ての検体で検出されなかった。
  煎茶から浸出液へのダイオキシン類等の移行については、浸出方法[1]では移行が認め られなかったが、浸出方法[2]で、同じ検体の煎茶と浸出液のダイオキシン類等の測定結果を用いると、移行率は0.01%(最低ND~最高0.02)と算出された。

(2)

環境調査
  埼玉県下の茶主産地の茶園1カ所における環境媒体のダイオキシン類等濃度の調査結 果は、以下のとおりであった。

添付ファイル
(表13 大気、降下ばいじん及び土壌中のダイオキシン類等濃度調査結果)

 {1} 大気
  ダイオキシン類の濃度は、2日間の平均値が0.095pg/m3、コプラナーPCBを加える と、0.10pg/m3であった。
  ダイオキシン類の濃度について、これまでの調査結果と比較すると、平成9年度冬期に 本調査と同地域(入間市)で実施された調査結果(平均値0.31pg/m3、(最低0.22~最高 0.54pg/m3)(n=6))を下回っていた。
 {2} 降下ばいじん
  ダイオキシン類の濃度は、0.13mg/km2/月、コプラナーPCBを加えると、0.35mg/km 2/月であった。
  ダイオキシン類の濃度について、我が国におけるこれまでの調査結果(「平成9年度有 害大気汚染物質モニタリング調査(環境庁)」:平均値1.0mg/km2/月、(最低0.020~最 高2.4(n=10)))と比較すると、その範囲内であった。
 {3} 土壌
  ダイオキシン類の濃度は、21pg/g、コプラナーPCBを加えると、23 pg/gであっ た。
  ダイオキシン類にの濃度ついて、我が国における農用地でのこれまでの調査結果(最低 0.28~最高370pg/g(n=36))と比較すると、その範囲内であった。
  これらの結果は、各環境媒体とも、埼玉県の他の地域と比較して、同程度以下であ った。

3.調査結果のまとめ

 埼玉県において採取した煎茶のダイオキシン類の濃度は、平均値が0.81pg/g(最低0.47 ~最高1.4)であり、コプラナーPCBを加えると、平均値が1.1pg/g (最低0.58~最高1. 7)であった。
  湯による浸出については、90℃1分間では浸出液のダイオキシン類等は検出されなか った。また、100℃5分間では検出されたものの、茶葉からお茶(浸出液)へのダイオキシン類等の移行は極めて少なく、健康に影響を生じることはないと考えられる。
  なお、茶を食する場合については、1人当たり1回の茶そのものの摂取量は数グラム程 度とされていることから、ダイオキシン類等の摂取量も少なく、健康に影響を生じること はないと考えられる。

<参考>

○ 平均的な食事をした場合のダイオキシン類等の
  体重1kg当たりの1日摂取量:2.41pg/kg/日
    (平成9年度食品中のダイオキシン類汚染実態調査(厚生省))

○ お茶を飲む場合のダイキシン類等の
  体重1kg当たりの1日摂取量の試算:0.0001pg/kg/日 (注1)

○ お茶を食する場合のダイオキシン類等の
  体重1kg当たりの1日摂取量の試算:0.085pg/kg/日 (注2)

これらは、平均的なダイオキシンの摂取量である2.41pg/kg/日と比較して小さく 、健康に影響を生じるとは考えられない。

   (注1)
     煎茶を毎日5杯(500ml)摂取すると仮定し、摂取量を推計。
     今回得られた数値を当てはめると、ダイオキシン類等の1日摂取量は、

      1.7pg/g × 3g × 500/100ml × 0.0002 ÷ 50kg = 0.0001pg/kg
        (*1) (*2)         (*3)

       (*1)茶葉のダイオキシン類等濃度の調査結果の最高値
       (*2)お茶100mlに必要な煎茶の量
       (*3)煎じたときの茶葉のダイオキシン類等が移行する割合の最高値

   (注2)
     茶入りアイスクリームについて、今回得られた数値を当てはめると、
    ダイオキシン類等の1日摂取量は、

       1.7pg/g × 2.5g ÷ 50kg = 0.085pg/kg

       (注)料理レシピにおける茶の使用量
         ・ 山菜炊き込みおこわ   : 1.5g
         ・ かき玉汁        : 0.5g
         ・ 具入り卵焼き      : 1.0g
         ・ お茶入りアイスクリーム : 2.5g

            資料:「茶食料法」桑野和民(リヨン社)

添付資料

連絡先
環境庁
厚生省

農林水産省