報道発表資料

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2000年12月28日

「廃棄物・リサイクル対策における経済的手法の活用方策の在り方に係る検討会」報告書について

廃棄物・リサイクル対策における経済的手法について検討するために設置された「廃棄物・リサイクル対策における経済的手法の活用方策の在り方に係る検討会」(座長:平岡正勝立命館大学エコ・テクノロジー研究センター長)報告書が取りまとめられた。
 この報告書は、廃棄物・リサイクル対策に係る経済的手法について、内外の活用実態やその適用に伴う効果、実施上の留意点を体系的に整理したものである。
 今後、この検討結果を踏まえ、廃棄物・リサイクル対策に係る経済的手法についての国民的な議論が更に深まることを期待したい。

1.報告書の概要

(1)廃棄物・リサイクル問題における経済的手法についての考え方
廃棄物問題は、通常の事業活動や日常生活そのものから発生する廃棄物に起因する問題。
従来の規制的手法を中心とした対応だけでなく、多様な手法を適切に活用すること(ポリシーミックス)により、経済社会や国民のライフスタイルの在り方を変革していくことが不可欠。
特に、経済的手法は、市場メカニズムを通じて事業者や国民の行動様式を環境負荷の少ないものへと誘導していくものとして注目される。
経済的負担措置には以下のような利点もあれば問題点もあるが、廃棄物・リサイクル問題の解決のために重要な政策手法となりうるものであることから、十分な検討を行い、積極的に活用していくことが有効。

(2)経済的手法の利点
各主体は、同じ効果ならば対策費用のより低いものを選択する(最も経済的な行動を自主的に選択する)こととなるため、社会全体として、最も少ないコストで最適な環境保全を図ることができる。
通常の事業活動や日常生活に起因する問題については、その原因者が多数に上り特定しにくいことから、市場メカニズムを通じて環境保全に資する行動を促す経済的負担措置の方が、規制的手法に比べて施策実施に要する行政コストという観点からもより少ないコストで環境保全を図ることができる。
経済的負担を軽減しようとすることが環境負荷の低減につながることから、各主体がそれぞれ経済合理性に基づいた判断を行えば、その結果とられる行動は環境保全に資することになるという意味で、環境と経済の統合が実現される。
排出を減らせば減らす程支出が減るため、継続的なインセンティブ効果があり、環境保全技術の開発にも長期的にプラスの影響を与える。
税・課徴金には収入をもたらすという効果があるが、その使途をあらかじめ明らかにすることで制度導入に対する理解が得られやすいとの指摘がある。
税・課徴金によりもたらされた収入を環境対策の財源として活用することにより、経済的インセンティブによる環境負荷の低減という当初の効果に加えて、さらに環境負荷の低減を図ることが可能となる。一方、その使途を目的税又は特定財源等として活用することについては、税の基本的な性格からすれば好ましくないとの指摘もある。
規制的手法が講じられた場合には、規制水準を超える排出行為などの経済活動を行うことはできないのに対し、経済的手法の場合には追加的な負担をすることによりその活動を継続することが可能であるため、経済活動に対するフレキシビリティがある。
経済的負担措置の場合には、一律の負担ではなく、その取組の度合に応じた負担がなされるという意味で公平性がある。
それぞれの主体が環境利用のコストを負担することにより、環境に負荷を与えているという認識を促す効果がある。

(3)経済的手法を巡る国際的な動向
サミット等の国際政治の場において、経済的手法は、重要な環境政策の手段として位置付けられた。
OECDでも、1991年に「環境政策における経済的手法の利用に関するOECD理事会勧告」が勧告されるなど、様々な検討が進められている。
さらに、各国においても、廃棄物・リサイクル対策の分野において様々な経済的手法が取り入れられている。

(4)我が国における経済的手法の活用に向けた取組
廃棄物・リサイクル対策は、従来規制的手法を核として展開され、一定の効果を挙げてきているが、未だ多くの課題が残されている。
これらの課題の解決に向け、従前の施策とうまく組み合わせる形で、また、従前の施策に付加する形で、経済的手法の活用の在り方を具体的に検討する段階に来ているといえる。
経済的手法については、環境基本法制定時の中央公害対策審議会等の答申で指摘されて以来、その重要性が徐々に社会的に認識され、循環型社会形成推進基本法において経済的負担措置の導入に向けた道筋が明らかにされたところ。
地方公共団体において、ごみ処理手数料の徴収、デポジット制度等が導入されているほか、いくつかの地方公共団体において廃棄物に関する税の導入が検討されている。

(5)経済的手法の具体的設計に際して必要な視点
経済的手法は、(2)で述べたような利点がある。その導入に際しては、一般に次の点に留意することが重要。
導入による効果をできる限り定量的に明らかにすること。
経済に与える影響をできる限り定量的に把握すること。
フリーライダーが生じないよう十分な検討を行うこと。
諸外国における導入状況等を出来る限り正確に把握し、我が国において最も適切な制度設計となるように、その仕組みを検討すること。
国民や事業者の理解を得ること。
このほか、税・課徴金、デポジット制度、排出量取引について、その導入の効果、導入に際しての課題等を体系的に整理(別紙参照)。

(6)今後の課題
廃棄物・リサイクル対策の更なる推進が必要であり、特に、経済的手法、なかんずく経済的な負担を課す措置は、市場メカニズムを通じて、事業者や国民の行動様式を環境負荷の少ないものに誘導していく新しい政策手法として、その効果が期待されている。また、環境産業を活性化させ、経済発展のポテンシャルを高めるという効果も期待される。
今後、具体的な経済的手法の導入に当たっては、以下の点について検討を深めることが必要。
循環型社会形成推進基本法で明らかにされた対策の優先順位ごとに、最も効果的な政策ツールを選択し、組み合わせることができるよう、各政策手法の具体的な設計を行い、既存の導入事例の成果も含め、対策効果の分析を進めること。
個別の品目ごとに最も効果のある対策を打っていくために、個別品目の流通方法や廃棄の形態等の実態調査を進め、シミュレーションなど定量的な分析を進めること。
我が国の経済や国民生活にどのような結果を与えるか定量的な分析を含めて検討を行い、その結果をわかりやすく示すこと。
この報告書が、循環型社会の形成に向けた国民的な議論を深める一助となることを期待する。

2.審議経過

平成12年11月10日第1回検討会
11月30日第2回検討会
12月19日第3回検討会


報告書はこちら

添付資料

連絡先
環境庁水質保全局企画課
室 長 :伊藤 哲夫(6620)
 補 佐 :川上 毅  (6626)
 担 当 :池田 研造(6627)