報道発表資料

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2000年07月03日

廃プラスチックによる海洋汚染防止対策検討調査報告について

廃プラスチックによる広域的な海洋汚染や、漂着ゴミによる海岸における景観等の悪化は、国内外で深刻な環境問題となっている。   このため、環境庁では、廃プラスチックによる海洋汚染の防止を目的として、平成9年度~11年度の3年間、当該汚染の現状把握手法の確立と実測調査、投棄・漂着廃プラスチック量の推定等とこれらを踏まえた対策の立案を行ってきた。   この結果、相当量の廃プラスチックが我が国周辺海域や河川を漂流し、また海岸に漂着していることが明らかになり、これらによる海生生物等への影響が懸念されることから、環境庁としては、1.海洋環境保全の観点からのプラスチック類のポイ捨てやレジンペレットの漏出防止に向けたキャンペーンの展開、2.漂流・漂着ルートの解明を目標としたモニタリングの充実強化、北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)の中での国際的取組への展開を進めることとしている。

I.報告の内容

1.背景と調査概要

  海洋を漂流・漂着する廃プラスチックの多くは、浮遊性で分解されにくいため海洋環境中に長期間存在し、海生生物等の誤食や絡み付き等の被害を及ぼしていることが確認されている。
  また、レジンペレット*の誤食に伴う海生生物等への影響が懸念されている。
そこで本調査では、この実態をできる限り定量的に把握するため、測定手法を確立した上で、海域及び河川での漂流・漂着物の採取調査や海岸での埋没物採取調査を実施するとともに、海岸に漂着又は投棄される廃プラスチック量の推計を試みた。
  さらに、海水中に含まれる有害化学物質のレジンペレットへの吸着・脱離試験を行い、その化学的特性に関する基礎的知見を得ることとした。

* レジンペレットとは:プラスチック製品の中間材料で、直径数ミリ程度。海岸などでみつかるものは、ポリエチレンやポリプロピレンなど海水より比重の軽いものが多い。

 

2.調査結果概要

  1)  13海域において収集ネットの曳航により実施した漂流個数調査の結果、収集された人工物の9割以上がプラスチック類**であり、その個数は1km当たり0.1~45.1個の範囲(平均4.8個)であった。また、3河川における同様の調査の結果、収集された人工物に占めるレジンペレットの割合は約5割と高く、事業場等から河川への漏洩の可能性が示唆された。
 
2)  12地点において実施した海岸漂着物調査の結果、海岸で収集されたゴミの種類別重量組成でみると、プラスチック類はゴミ全体の約2割、人工物の約5割を占めていた。
 また、全国の海岸に漂着又は廃棄されたプラスチック量は、年間およそ1~2万トンと推計された。
 
3)  10地点の海岸埋没物調査において収集されたプラスチック類は、1枠(0.16m2)当たり0.1~68.7個の範囲(平均10.0個)であり、このうちレジンペレットは、1枠当たり0~46.0個(平均6.7個)含まれていた。
 
4)  DDT化合物のレジンペレットへの吸着・脱離試験の結果、レジンペレットは吸着能力が高く、また、一度吸着したDDT化合物は脱離しにくいことがわかった。
 
5)  日本海側の漂着物の中には、ハングル文字、漢字、ロシア文字による表記がある廃プラスチックが多数見つかった。
 
** プラスチック類とは:プラスチック片、袋、ペットボトル、レジンペレット等の総称

 

3.今後の課題と対策案

  1)  プラスチック等のポイ捨て対策
1. 市民向けパンフレットやテレビ、ラジオを通じた広報活動の展開
2. 廃プラスチックによる海洋汚染防止の必要性を訴求する環境教育の導入
3. 企業の協力によるプラスチック製品の適正回収キャンペーン活動
(例:海辺のコンビニエンスストアによる店頭引取り運動)
4. ポイ捨て防止に関する一層の取組の推進方策の検討
 
2)  レジンペレット漏出防止対策
1. 関係事業者に対するリーフレットの配布による漏出防止の周知徹底
2. 関係事業者の取組状況を踏まえた規制方策の検討
 
3)  清掃や調査活動への参加促進を通じた啓発
  1. 海岸保全調査や清掃活動を行っている国、地方公共団体、市民団体等の調査結果や活動成果の共有化とその広報活動の強化
  2. 上記活動のネットワーク化と支援方策の検討
 
4)  調査研究等
1. 廃プラスチックによる海洋汚染メカニズム解明のための、継続的な流出や漂流に関する実態把握
2. 廃プラスチック海洋汚染に関する近隣諸国との共同調査と国際的取組の推進
3. 生分解性のプラスチックの開発

 

II.環境庁としての取組

  1)  平成12年度に海洋環境保全に向けた普及活動事業(教育ソフト開発とインターネット上での公開、科学技術館での利用)を進めることとしており、この中で国民の目に見えやすい本件を題材に海洋環境保全に向けた取組の必要を訴えかける予定。
 
2)  レジンペレット漏出防止については、別添1のリーフレットを作成し、地方公共団体や商工会議所を通じて、中小事業者も含めた多数の関係者に周知徹底を行うこととしている。
 
3)  関係行政機関、関係団体、研究者、NGO、市民等に参加を呼びかけて、「廃プラスチック海洋汚染対策シンポジウム」(7月26日,富山市)を開催し、各主体の活動状況の報告と今後の対策のあり方、連携方策等の討議を行うこととしている(別添2 プログラム参照)。
 
4)  環境庁の実施している海洋環境モニタリングや北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)活動推進事業において、引き続き、海洋や河口部の漂流物の実態調査やそのルート解明のための陸上起因調査を行うこととしている。また将来、NOWPAPの枠組の中で、本問題を共通の課題として取り組めるよう、NOWPAP参加国との討議の場を設けることも検討している。

添付資料

連絡先
環境庁水質保全局企画課海洋環境・廃棄物対策室
室 長 :伊藤哲夫 (6620)
 補 佐 :島田幸司 (6622)
 担 当 :溝口,井上(6622)
 

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