報道発表資料
平成25年度は全国54地点、172箇所で測定しましたが、一部の解体現場内の測定結果を除き、建物周辺及び一般環境において石綿以外の繊維を含む総繊維について特に高い濃度は見られませんでした。
なお、平成26年度も引き続き大気中の石綿濃度を測定する予定です。
1.調査目的
本調査は、平成17年12月27日付け「アスベスト問題に係る総合対策」(「アスベスト問題に関する関係閣僚による会合」決定)に基づき、石綿による大気汚染の状況を把握し、今後のアスベスト飛散防止対策の検討に当たっての基礎資料とするとともに、国民に対し情報提供するために実施しているものです。
2.調査方法
(1)調査地点
旧石綿製品製造事業場等、廃棄物処分場等及び建築物の解体工事等の作業現場を始め全国54地点172箇所において、大気中の石綿及びその他の繊維を含む総繊維数濃度を測定しました。このうち、岩手県、宮城県、山形県及び福島県における継続調査地域の測定は、「東日本大震災アスベスト対策合同会議」でも報告しています。本資料では、他の地点と同時期に実施した調査結果を取りまとめました。
(2)調査方法及び測定精度の管理等
本調査は、環境省の請負業務として専門性を有する調査会社(測定者)が実施しました。試料の採取及び分析は「アスベストモニタリングマニュアル(第4.0版)」(平成22年6月 環境省水・大気環境局大気環境課)に基づいて行いました。これは、位相差顕微鏡を用いて石綿以外の繊維を含む総繊維数濃度を求め、総繊維数濃度が1本/Lを超過した場合は、電子顕微鏡で物質を同定する方法です。
精度管理のため、測定者に対する講習会等を実施しました。
調査の方法、調査結果の評価等については、「アスベスト大気濃度調査検討会」(座長:神山宣彦/東洋大学 客員教授)にて専門家の助言を得ました。
3.調査結果
(1)地域分類別の総繊維数濃度及び石綿成分の割合
調査結果の概要は、表1のとおりです。また、表1のうち石綿以外の繊維を含む総繊維数濃度が1本/Lを超えた地点における石綿成分の割合及び石綿繊維数濃度は、表2のとおりです。一般環境大気中の調査結果のほか、解体等現場の集じん・排気装置の排気口等における調査結果も併せて示しています。
なお、各調査地点の地域名、調査期間、石綿以外の繊維を含む総繊維数濃度等は、別添1に記載したとおりです。
ア 発生源周辺地域
調査を実施した29地点のうち、総繊維数濃度が1本/Lを超えた地点は廃棄物処分場等及び解体現場(セキュリティゾーン前及び集じん出口を含む。)の8地点でした。このうち、石綿が確認されたのは、7地点でした。
イ バックグラウンド地域
調査を実施した21地点のうち、総繊維数濃度が1本/Lを超えた地点はありませんでした。
ウ その他の地域(破砕施設)
調査を実施した4地点のうち、総繊維数濃度が1本/Lを超えた地点が1地点ありましたが、石綿は確認されませんでした。
表1 地域分類別の総繊維数濃度結果
注1)解体等現場:建築物又は工作物の解体、改造又は補修作業現場
建物周辺 :解体等現場の直近で一般の人の通行等がある場所との境界
セキュリティゾーン前:作業員が出入りする際に石綿が直接外部に飛散しないように設けられた室の入口の外側
集じん出口:集じん・排気装置の外部への排気口内部又は排気口付近
注2)表中の( )内の数値は地点数における内数である。
表2 総繊維数濃度が1本/Lを超えた地点における石綿成分の割合及び石綿繊維数濃度
愛知県内の解体現場及び埼玉県内の解体現場のセキュリティゾーン前及び集じん・排気装置の排気口において、石綿繊維数濃度が10本/Lを超えましたが、建物周辺の石綿以外の繊維を含む総繊維数濃度は通常の一般大気濃度とほぼ変わらなかったことから、周辺環境への影響はなかったと考えられます。
なお、これらの現場では、集じん・排気装置の排気口内部で測定していた石綿を含む粉じん濃度をリアルタイムに把握することができる測定機器(※)において、異常が確認されたことから、その場で事業者に情報提供し、作業が中断されました。また、所管自治体から事業者に対し指導等がされています。
※デジタル粉じん計、パーティクルカウンター、繊維状粒子自動測定機
【参考1】
○ 愛知県内の解体現場 https://www.env.go.jp/press/17644.html
○ 埼玉県内の解体現場 https://www.env.go.jp/press/17687.html
【参考2】※
WHO環境保健クライテリア(EHC 53):「都市における大気中の石綿濃度は、一般に1本以下~10本/Lであり、それを上回る場合もある。」「一般環境においては、一般住民への石綿曝露による中皮腫及び肺がんのリスクは、検出できないほど低い。すなわち、実質的には、石綿のリスクはない。」
※令和6年11月補足
平成25年10月のアスベスト大気濃度調査検討会の報告では、建築物の解体等現場における大気中の石綿測定の評価方法について、
「現時点において、科学的根拠をもって管理基準を設定することは困難であるが、目安としての管理基準は、敷地境界等における石綿繊維数濃度1本/Lが適当と
考える。 当該基準設定の考え方は、環境省の近年のモニタリング結果から、一般大気環境中の総繊維数濃度は概ね1本/L以下であることから石綿繊維数濃度も
1本/L以下であるというものである。したがって、石綿繊維数濃度が1本/Lを超過する場合は、明らかに石綿の飛散が想定されることから、1本/Lを管理基準
として設定するものである。この基準の妥当性については、引き続き検討していく必要がある。」
とされており、令和6年11月現在、環境省では、漏えい監視の観点からの目安は、石綿繊維数濃度1本/Lとしている。
出典:「建築物の解体等現場における大気中の石綿測定方法及び評価方法について」(平成25年10月 アスベスト大気濃度調査検討会)
https://www.env.go.jp/air/asbestos/commi_ac/images/report_h2510.pdf
「建築物等の解体等に係る石綿ばく露防止及び石綿飛散漏えい防止対策徹底マニュアル 令和3年3月(令和6年2月改正)」
(厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課、環境省水・大気環境局環境管理課)
P252~ 5 隔離空間全体からの漏えい確認のための石綿濃度の測定等
https://www.env.go.jp/air/asbestos/post_71.html
(2)過去の調査結果との比較(継続調査地域)
今回の調査のうち29地点60箇所については、過去の調査(平成17年度~平成24年度)と同一地点において調査を実施しました。当該地点について、調査地域分類別に集計・整理した平成25年度の調査結果は、表3のとおりです。また、平成17年度~平成25年度の調査結果を比較した表は表4、グラフは別添2のとおりであり、総繊維数濃度は、低いレベルで推移しています。
表3 過去と同一調査地域における平成25年度調査結果(総繊維数濃度)
表4 同一調査地域における調査結果の比較(総繊維数濃度)(平成17年度~平成25年度)
4.今後の対応
環境省では、引き続き石綿による大気汚染の状況を把握するため、平成26年度も大気中の石綿濃度調査を行う予定です。
また、平成23年3月11日に発生した東日本大震災の被災地である福島県においても、継続して大気濃度調査を実施しています。
添付資料
- 連絡先
- 環境省水・大気環境局大気環境課
直通:03-5521-8293
代表:03-3581-3351
課 長:難波 吉雄(6530)
課長補佐:渡辺 謙一(6533)
担 当:秋元 篤史(6534)
関連情報
過去の報道発表資料
- 平成25年8月9日
- 平成24年度アスベスト大気濃度調査結果について(お知らせ)