報道発表資料
環境省では、アスベストによる大気汚染の現状を把握し、今後の対策の検討に当たっての基礎資料とするとともに、国民に対し情報提供をしていくため、アスベスト濃度の調査を平成17年度より毎年実施しています。
本年度は全国54地点(解体現場は10地点を予定しており、これまでに3地点の調査結果が確認されています。)において調査を実施しているところですが、このうち愛知県西尾市における建築物の解体現場の煙突内部に敷設された断熱材の除去工事において、集じん・排気装置の不具合等と推定されるアスベストの飛散事例を1月15日までに確認しましたのでお知らせします。
なお、敷地境界のアスベスト以外の繊維も含む総繊維数濃度は通常の一般大気濃度とほぼ変わらなかったことから、周辺環境への影響はなかったと考えられます。
記
1.建築物の所在地
愛知県西尾市
2.試料採取年月日
平成25年12月12日(木)
3.試料採取地点
- ア
- 敷地境界 4箇所
- イ
- アスベストが直接外部に飛散しないように設けられた室(以下「前室」という。) の出入口の外側 1箇所
- ウ
- 集じん・排気装置の外部への排気口 2箇所(内部及び付近でそれぞれ1箇所)
4.調査方法及び測定精度の管理等
本調査は、環境省の請負業務として専門性を有する調査会社(測定者)が実施しました。試料の採取及び分析は「アスベストモニタリングマニュアル(第4.0版)」(平成22年6月 環境省水・大気環境局大気環境課)に基づいて行いました。これは、位相差顕微鏡を用いてアスベスト以外の繊維も含む総繊維数濃度を求め、総繊維数濃度が1本/Lを超過した場合は、電子顕微鏡でアスベストを同定する方法です。
また、精度管理のため、測定者に対する講習会等を実施しました。
さらに、調査の方法については、環境省アスベスト大気濃度調査検討会(座長:神山宣彦/東洋大学 客員教授)にて専門家の助言を得ました。
5.調査結果
1月15日までに環境省が測定者から報告を受けた調査結果は以下のとおりです。
アスベスト繊維が、排気口内部において110本/L、前室(下部)前において310本/L検出されましたが、敷地境界のアスベスト以外の繊維を含む総繊維数濃度は通常の一般大気濃度とほぼ変わらなかったことから、周辺環境への影響はなかったものと考えられます。
測定箇所 | 位相差顕微鏡法 | 電子顕微鏡法 | アスベスト 繊維数濃度 [本/L] |
---|---|---|---|
総繊維数濃度 [本/L] |
繊維の種類及び繊維の割合 | ||
敷地境界[1] | 1.0 | アスベスト(アモサイト) 4% その他 96% |
0.035 |
敷地境界[2] | 0.34 | - | - |
敷地境界[3] | 0.51 | - | - |
敷地境界[4] | 0.62 | - | - |
前室(下部)前 | 320 | アスベスト(アモサイト)98% | 310 |
排気口(内部) | 110 | アスベスト(アモサイト)100% | 110 |
排気口(付近) | 4.2 | アスベスト(アモサイト)57% その他 43% |
2.4 |
- ※
- 総繊維数濃度とは、長さ5μm以上、幅(直径)3μm未満で、かつ、長さと幅の比(アスペクト比)が3:1以上の繊維状物質を計数したもの。
原因及び対応
今回アスベストが飛散した原因については、集じん・排気装置の不具合等によるものと推定しています。
現場では、排気口内部で測定していたアスベストを含む粉じん濃度をリアルタイムに把握することができる測定機器(※2)において、異常が確認されたことから、その場で(試料採取日の12月12日)事業者に情報提供しました。
※2 デジタル粉じん計、パーティクルカウンター、繊維状粒子自動測定機
情報提供を受け、事業者は、不具合が疑われる集じん・排気装置を直ちに停止し、その後のアスベスト除去工事が終了するまでの間、不具合が疑われる集じん・排気装置は使用せず、別の集じん・排気装置により作業が実施されました。
また、アスベスト以外の繊維を含む総繊維数濃度が判明した段階で、直ちに環境省から所管自治体に連絡し、所管自治体から事業者に対し注意喚起がされています。
なお、所管自治体が除去工事現場において、敷地境界等で大気濃度調査を実施し、アスベストによる周辺への影響がなかったことを確認しています。
6.今後の対応
これまでも同様の事例が散見されており、検討会等において、集じん・排気装置の排気口や前室の出入口からのアスベストの飛散事例が指摘されていることなどから、集じん・排気装置のさらなる保守点検の徹底等が必要とされています。
今後、環境省では、前室が負圧に保たれていること、集じん・排気装置が正常に稼働すること、集じん・排気装置の排気口においてアスベストの漏洩がないことの確認等を徹底させるため、大気汚染防止法施行規則の改正及び建築物の解体等に係る石綿飛散防止対策マニュアルの改訂を行うこととしています。
- 連絡先
- 環境省水・大気環境局大気環境課
直通:03-5521-8293
代表:03-3581-3351
課長 :難波 吉雄 (6530)
課長補佐 :渡辺 謙一 (6533)
担当 :秋元 篤史 (6534)