報道発表資料

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2000年06月23日

常滑港内等公有水面埋立て(中部国際空港建設事業等)について

環境庁は、中部国際空港建設事業等に係る公有水面埋立てについて、公有水面埋立法第47条第2項の規定に基づき、建設大臣及び運輸大臣より環境上の観点からの意見照会があったことから、平成12年6月23日付けで水質保全対策、航空機騒音対策及び自然環境保全対策等に関する環境庁長官意見を提出した。

【環境庁長官の意見】

  中部国際空港建設事業、空港島地域開発用地、空港対岸部地域開発用地に係る公有水面埋立(以下「中部国際空港建設等の埋立」という。)計画は、21世紀に向けた大規模な国家プロジェクト及び関連事業であり、かつ、開港予定の2005年には「自然の叡智」をテーマとした愛知万博が同じ地域に計画されていることを勘案すると、環境保全面については、先進的かつ万全の検討が期待される。
  一方、中部国際空港建設等の埋立が予定されている常滑沖は、富栄養化など水質汚濁が進んでいる閉鎖性海域であり、かつ沿岸において埋立が累積している伊勢湾の中でも、良好な水質・底質環境が維持され、生物多様性に優れ、最良の漁場ともなっている。また、本海域には、伊勢湾における最も良好な藻場があり、伊勢湾の生物生息環境の保全の上で、十分に藻場の保全を図る必要がある。
  このような状況を鑑みれば、中部国際空港建設等の埋立計画に関しては、最近の埋立事例としては最大規模のものであることから、特に慎重な対応を図るべきである。
以上の基本認識を踏まえ、中部国際空港株式会社及び愛知県企業庁は、関係機関と協力し、責任を持って下記の措置を講ずる必要がある。

 

1. 本計画が最近の埋立事例としては最大規模のものであること、埋立用材の調達については環境保全の配慮が必要であることから、空港対岸部地域開発用地の商業・業務用地の埋立については、埋立工事に先立って、埋立区域における用地の確実な需要を確認し、浚渫土受け入れ場所としての活用などを視野に入れつつ、伊勢湾における環境保全の推進に配慮して、用途、工程等について必要に応じ見直しを行い、その結果を踏まえて適切に対応すること。

2. 埋立用材については、環境保全上の問題を生じることがないよう以下の対策を講じる必要がある。

  (1)  埋立用材として浚渫土等を確保することは、山土使用量の低減や既存処分地の延命化、今後の埋立ての抑制に資するものであるため、更に浚渫土や公共残土を積極的に活用し、山土使用量の低減を図ること。
(2)  埋立用材については、土砂採取場の自然環境保全上の問題等を生じることがないよう十分配慮する必要があり、採取及び運搬に係る事業計画、環境保全対策を十分確認すること。
(3)  埋立用材は、事業者が予定している検査等を適切に実施したうえで用いること。
(4)  埋立用材として、浚渫土、公共残土を更に使用するに当たっては、悪臭の影響について事前に検討し、適切な措置を講ずること。

 

3. 埋立地の利用に伴い発生する汚水排水については、極力循環利用を図り、発生する水質汚濁負荷量の削減に努めること。

4. 海域工事に伴う濁水の監視(濁度測定等)は高頻度で行い、管理目標(工事による負荷分2mg/l)が遵守されていることを確認し、目標を上回る汚濁が見られた場合は適切な措置を速やかに講ずること。

5. 常滑市が現在調整を進めている下水処理の高度化については、着実に調整を進めるように働きかけること。

6. 埋立地の工事中及び供用時に発生する廃棄物については、極力減量化するとともに、リユース・リサイクル等を推進しその発生量の最小化に努めるとともに関係者に要請すること。

7. 航空機騒音については、将来とも環境基準が達成、維持されるよう空港の運用を行うとともに、比較的環境騒音の低い地域の多い沿岸陸域への騒音の影響にも配慮する必要がある。このため、以下の対策を講じる必要がある。

  (1)  関係機関に対し、より騒音の小さい機材の導入の推進、飛行経路及び騒音を低減する運航方法の遵守につき、徹底するよう要請すること。
(2)  今後、環境影響評価の前提となった飛行経路、便数等に変更があり、陸域において環境基準の達成が困難になるおそれがある場合には、環境への影響を予測・評価し、所要の対策を講じるよう措置すること。また、以上の内容について適切に公表すること。

 

8.背後市街地域においては浮遊粒子状物質及び道路交通騒音に係る環境基準が達成されていない状況にある。これらの状況を踏まえ、大気・騒音に係る環境負荷を低減するため、関係機関と協力しつつ、以下の対策等を講じる必要がある。

  (1)  空港管理用及び作業用の車両については、低公害車とするようその導入について措置すること。リムジンバス及び航空貨物取扱自動車等関連車両についても、低公害車とするよう事業者等に要請すること。
 その際には、空港用地内において、電気自動車用充電施設及び天然ガス充填施設の設置を推進するとともに、空港島、空港対岸部地域開発用地関連事業者の使用する低公害車を対象とした充電施設や天然ガス充填施設の設置について検討するよう措置すること。また、利用者駐車場においては低公害車優遇措置を講じるよう措置すること。
(2)  空港島、空港対岸部地域開発用地にアクセスする自家乗用車の公共交通機関へのシフト及び空港島、空港対岸部地域開発用地関連事業者における共同輸配送等による積載効率の向上や貨物物流の合理化を推進するよう措置するとともに、関係者に要請すること。
(3)  知多横断道路、空港島連絡橋、連絡鉄道、名鉄常滑線等の交通網については環境保全に十分配慮して整備を進めるとともに、供用後の騒音影響に配慮し適切な対策を講じるよう要請すること。
 なお、連絡鉄道、名鉄常滑線については、「在来鉄道の新設又は大規模改良に際しての騒音対策の指針について(平成7年12月20日環大一第174号)」を踏まえること。
(4)  航空機においては、より大気汚染物質の排出量の少ない機材の積極的な導入、タキシング経路の効率化等により、工事用船舶及び空港島、空港対岸部に来港する船舶においては、良質な燃料の使用等により、大気汚染物質の排出量の低減に努めるよう可能な限り要請すること。
(5)  温暖化防止の観点から総合的な温暖化対策を具体化し適切に実行すること。特に燃料電池を用いたコージェネレーションシステム等の最新の省エネルギー技術を検討し、その導入について措置すること。
(6)  廃棄物焼却施設においては、分別収集などによるごみ焼却量削減と同時に、プラスチック類の焼却を回避し、ダイオキシン類の発生抑制に努めること。また、航空機取卸ごみについて、特に、国際線航空機から排出されるごみの分別を確実に実施するための手法等の検討や、関係機関との協議を積極的に行うこと。
(7)  工事が長期間にわたることから、工事用船舶、建設機械等について最新の低公害型技術や工法を導入し、良質な燃料を使用するとともに、工事の集中化を避け、工事実施の時間帯に配慮し、工事工程、工事用車両の走行ルート及び走行時間を適切に管理すること。

 

9. 環境影響の予測・評価については、環境監視検討委員会の意見を取り入れ以下の措置を講じる必要がある。
 中部国際空港建設等の埋立計画による環境影響については、[1]埋立により失われる浅海域の水質浄化機能等への影響、[2]藻場等への間接的な影響、[3]海流、水質、底質、藻場、漁場、生態系等の相互に関連する環境影響等について、より長期的な影響も含め、更なる検討が必要である。
 このため、10で述べる工事中の環境監視結果も勘案の上、空港対岸部地域開発用地の工事途中の早期段階のうちに、環境影響等の検討結果についてレビューを行うとともに、その結果を踏まえて、著しい環境影響が生じると懸念される場合にあっては、埋立面積、護岸や防波堤の形状の変更も含め、環境保全上適切な対策を講じること。

10.工事中及び埋立地供用後の環境監視について、以下の対策を講じる必要がある。

  (1)  工事中における環境監視を空港対岸部地域開発用地周辺も含め計画的に実施し、この結果環境保全上問題がある場合は、必要に応じ、埋立工事の変更を含め環境保全上適切な対策を講じること。
 さらに、埋立地供用後においても同様に環境監視等が講じられるよう中部空港建設事業については措置し、地域開発用地については環境監視等が促進されるよう措置を講ずること。
(2)  環境部局の意見を踏まえ、工事中の環境監視計画については工事着工前に作成するとともに埋立地供用後における環境監視計画については、早期に作成すること。
(3)  環境監視結果等を踏まえつつ、大気汚染、航空機騒音、道路交通騒音、鉄道騒音・振動及び飛行経路に関し、関係地方公共団体と調整しつつ、適宜測定監視地点・回数を追加するとともに、連絡橋等環境監視に必要な地点における交通量測定を継続して実施するよう措置すること。また、空港島、空港対岸部からの大気汚染物質の排出量についても継続的に調査するよう中部空港建設事業については措置し、地域開発用地については継続的な調査が促進されるよう措置を講ずること。
(4)  空港島及び空港対岸部の間の海域には、カワウなどの水鳥の採餌場が存在するが、その影響に係る予測の不確実性が考えられるので、工事中の環境監視を実施し、異常がある場合には学識経験者の意見を聞いて必要な保全対策を講じること。
(5)  ワシタカ類、ヒヨドリ等の渡り鳥やカワウについては、航空機との衝突(バードストライク)のおそれがあることから、工事中及び供用後の環境監視を継続し、異常が確認された場合には適切な対策を講じること。
(6)  傾斜堤護岸の設置や緑地の整備により、新たに鳥類の生息域が創出される可能性があり、バードストライクの危険性が増大することが想定されるので、工事の実施に当たっては、学識経験者の意見を聞いて必要な対策を講じること。
(7)  工事中に新たに希少な野生動植物が確認された場合は、学識経験者から意見の聴取を行い、これらの生息、生育環境に対する影響が最小限になるよう措置を講じること。
(8)  工事中及び埋立供用後における環境監視結果については、適切に公表するよう措置するとともに、環境保全上必要な対策をとる場合にはその対策についても適切に公表するよう措置すること。
(9)  環境監視結果やそれに伴う対策の実施については、学識経験者や関係行政機関等による検討の場を設け適切に運用すること。
(10)  事業実施後の事後調査において、空港島及び空港対岸部地域開発用地の周辺において、地形の変化、有機物の海底への堆積等により環境の変化が生じた場合、環境保全に配慮しつつ、当該部分を浚渫するなど、適切な環境保全措置を講じること。

添付資料

連絡先
環境庁企画調整局環境影響評価課環境影響審査室
室  長 :小林 正明(6231)
 審査官 :澤山 秀尚(6232)