報道発表資料

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2000年08月24日

平成11年度地方公共団体等における有害大気汚染物質モニタリング調査結果について

 平成9年4月に施行された改正大気汚染防止法に基づき、平成9年度から地方公共団体では有害大気汚染物質の大気環境モニタリングを本格的に開始したところであるが、今般、平成11年度に地方公共団体が実施した有害大気汚染物質の大気環境モニタリング調査結果について、環境庁の調査結果と併せてとりまとめた。
 大気汚染防止法に基づき指定物質に指定されている物質に係る測定結果の概要は以下のとおりである。

(単位:ダイオキシン類はpg-TEQ/m、その他はμg/m)

  平成11年度 平成10年度(参考) 平成9年度(参考)
物質名 地点数 平均値 地点数 平均値 地点数 平均値
ダイオキシン類(注) 463  0.18 458  0.23 68  0.55
ベンゼン 340  2.5 292  3.3 53  3.4
トリクロロエチレン 313  1.8 271  1.9 55  2.3
テトラクロロエチレン 313  0.77 272  1.0 56  1.1

 ダイオキシン類について、夏期及び冬期を含め年2回以上測定した地点における測定結果を平成12年1月から施行されたダイオキシン類対策特別措置法による大気環境基準値(0.6pg-TEQ/m)と比較すると、ほとんどの地点で大気環境基準値を下回っていた(463地点中7地点(1.5%)で基準値を超過していた)。
 ベンゼンについて、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定した地点における測定結果を平成9年2月に設定された環境基準値(3μg/m)と比較すると、340地点中79地点(23%)について環境基準値を超過していた。
 トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンについては、全ての地点において環境基準値(ともに200μg/m)を下回っていた。
 これらの物質の濃度を経年で比較すると、減少傾向にある。

(注)ダイオキシン類対策特別措置法においては、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDDs)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)にコプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)を含めてダイオキシン類と呼ぶ。平成10年度以前の測定値については、コプラナーPCBを含んでおらず、また、濃度の算出方法が異なる。

1. 概要
   大気中の濃度が低濃度であっても人が長期的に曝露された場合には健康影響が懸念される有害大気汚染物質については、環境庁において、昭和60年度から大気環境のモニタリング調査を行ってきたところであるが、平成9年度から、改正大気汚染防止法に基づき、地方公共団体(都道府県・大気汚染防止法の政令市)においても本格的にモニタリングを開始したところである。
 今回、地方公共団体における平成11年度の有害大気汚染物質の大気環境モニタリングについて調査結果がまとまり、環境庁の調査結果と併せて公表することとした。
 なお、調査地点によっては、測定頻度が少なく、年平均値を算出し、環境基準等により評価できないデータもあるが、有害大気汚染物質の大気環境中の濃度を把握する上で貴重な情報となるため、これらのデータについても取り入れた上で調査結果をとりまとめた。

 
2. 調査方法、対象物質及び測定地点数
  (1) 調査方法
   原則として、有害大気汚染物質モニタリング指針(平成9年2月2日制定、平成11年3月31日一部改正)及び有害大気汚染物質測定方法マニュアル(環境庁大気保全局大気規制課)に準拠して調査を実施した。
 
(2) 対象物質
 
ダイオキシン類
揮発性有機化合物・・・・ アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、ベンゼン
アルデヒド類・・・・・・・・・ アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド
重金属類・・・・・・・・・・・ 水銀及びその化合物、ニッケル化合物、ヒ素及びその化合物、ベリリウム及びその化合物、マンガン及びその化合物、クロム及びその化合物
多環芳香族炭化水素・・ ベンゾ[a]ピレン
その他・・・・・・・・・・・・・ 酸化エチレン(平成11年度より測定を開始)
(3) 測定地点数
   平成11年度の調査における地域分類(一般環境、発生源周辺及び沿道)別の調査地点数(環境庁及び政令市が実施した調査地点数を含む。)を都道府県・測定対象物質ごとにまとめたものを表4~6に示す。
 測定頻度に係る条件を満たしていない地点も含め、ダイオキシン類については、一般環境、発生源周辺及び沿道を合わせて586地点で測定が実施された。
 ベンゼンについては409地点、トリクロロエチレンについては379地点、テトラクロロエチレンについては378地点で測定が実施された。

 
3. 測定値の評価について
   長期曝露による健康リスクが懸念されている有害大気汚染物質のモニタリングにおいては、原則として月1回以上の頻度で測定を実施し、年平均濃度を求めることとしている。(ダイオキシン類については、季節ごとに測定することが望ましいが、少なくとも夏期及び冬期に測定する必要があるとしている。)また、ダイオキシン類、ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンに係る大気環境基準も年平均値として示されているところである。
しかしながら、必要とされる頻度で測定を実施できなかった地方公共団体もあることから、全ての測定結果について年平均濃度を算出し、評価をすることは困難である。
 このため、今回のとりまとめにおいて、別添の個別測定地点の調査結果表の平均値の欄には、当該測定地点における複数回の測定結果の算術平均値を記載したが、調査地点によっては、必要とされる測定頻度の測定を実施していない場合もあることから、大気環境基準値との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。

 
4. 調査結果の要点
(1) ダイオキシン類
   ダイオキシン類には多数の異性体が存在しており、その毒性の評価に当たっては、これらの中で最も毒性が強いといわれている2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン(2,3,7,8-TCDD)の毒性を1としたときの他の異性体の相対的な毒性を毒性等価係数(TEF)で示し、その上で2,3,7,8-TCDDの等量濃度(TEQ)として換算し、評価するのが一般的である。今回のとりまとめにおいては、平成11年度の測定値は、原則としてWHO-TEF(1998)を用いて測定結果を評価した。
 今回とりまとめた測定地点のうち、大気環境基準値と比較することのできる地点(夏期及び冬期を含め年2回以上測定し、WHO-TEF(1998)を用いて、測定結果を算出している地点)の数は、一般環境では417地点中353地点、発生源周辺では150地点中96地点、沿道では19地点中14地点であり、全体としては586地点中463地点であった。
 ダイオキシン類の濃度については表1及び図1のとおりであった。
 
 測定頻度に及び濃度算出方法に係る環境基準値との比較のための条件を満たしている地点の測定結果を平成12年1月に施行されたダイオキシン類対策特別措置法による大気環境基準値と比較すると、一般環境について353地点中3地点、発生源周辺について96地点中3地点、沿道について14地点中1地点で基準値を超過しており、合計すると、463地点中7地点で基準値を超過していた。
 なお、測定頻度及び濃度算出方法に係る環境基準値との比較のための条件を満たしていない地点も含め、今回とりまとめた全ての地点のデータについてまとめた値を表1の中の括弧内に示したが、これらのデータについては、大気環境基準値との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。
 ダイオキシン類のうち主要な成分であるPCDDs及びPCDFsについては、従来から測定を行っている。これらの成分について、平成9年度から平成11年度にかけて継続して調査を実施した地点における濃度の推移を表8及び図2に示す。濃度の算出にあたっては、平成11年度測定分については、WHO-TEF(1998)を、平成10年度以前測定分については、I-TEF(1988)を用いた。
 平成9年度から平成11年度にかけて環境庁及び地方公共団体において継続して調査を実施している地点は46地点あり、これらの地点における平成11年度のPCDDs及びPCDFsの平均値は、平成9年度の0.55pg-TEQ/mに比べ約62%減少し、0.21pg-TEQ/mであった。
(注)1pg(ピコグラム)は1兆分の1g(グラム)
(参考) ダイオキシン類の環境基準は、年平均値0.6pg-TEQ/m以下
 
(2) ベンゼン
   原則として月1回以上の頻度で1年間にわたって測定することとしている。今回とりまとめた測定地点のうち、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定した地点数は、一般環境では240地点中198地点、発生源周辺では79地点中68地点、沿道では90地点中74地点であり、全体として409地点中340地点であった。
 ベンゼンの濃度については表2及び図3のとおりであった。
 
 測定頻度に係る条件を満たしている地点の測定結果を平成9年2月に設定された大気環境基準値と比較すると、一般環境について198地点中19地点で、発生源周辺について68地点中17地点で、沿道について74地点中43地点で環境基準値を超過しており、合計すると340地点中79地点で環境基準値を超過していた。
 なお、測定頻度に係る条件を満たしていない地点も含め、今回とりまとめた全ての地点のデータについてまとめた値を表2の中の括弧内に示したが、これらのデータについては、大気環境基準値との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。

 平成9年度から平成11年度にかけて継続して月1回以上の頻度で調査を実施した地点におけるベンゼンの濃度の推移を表9及び図3に示す。
 平成9年度から平成11年度にかけて環境庁及び地方公共団体において、継続して調査を実施した地点は46地点あり、これらの地点における平成11年度のベンゼンの平均値は、平成9年度の3.6μg/mに比べ約33%減少し、2.4μg/mであった。
 
(3) トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン
   トリクロロエチレンについて、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定した地点数は、一般環境では238地点中196地点、発生源周辺では83地点中72地点、沿道では58地点中45地点であり、全体として379地点中313地点であった。
 テトラクロロエチレンについて、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定した地点数は、一般環境では238地点中199地点、発生源周辺では82地点中70地点、沿道では58地点中44地点であり、全体として378地点中313地点であった。
 トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの濃度については表3及び図6のとおりであった。
 
 平成9年2月に設定された大気環境基準値と比較すると、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンについては、全ての地点で環境基準値を下回っていた。
 なお、測定頻度に係る条件を満たしていない地点も含め、今回とりまとめた全ての地点のデータについてまとめた値を表3の中の括弧内に示したが、これらのデータについては、大気環境基準値との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。
(注)1μg(マイクログラム)は100万分の1g
(参考) ベンゼンの環境基準は、年平均値3μg/m以下
トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの環境基準は、それぞれ年平均値200μg/m以下
(4) その他の有害大気汚染物質
   その他の有害大気汚染物質については、表1011のとおりであった。有機物については、平成10年度に比べ、全般的に濃度の低下がみられる。

 
5. 今後の対応
   本年は、改正大気汚染防止法施行後3年の見直しの年にあたるため、同法附則第3項の規定に基づき、有害大気汚染物質対策の推進に関する制度について検討を加えているところである。特にベンゼンは、事業者による自主的な排出削減の効果もあり、全般的には改善傾向が見られるものの、今回の調査結果でも特定の地点では依然として環境基準を超える高い濃度が記録されており、重点的な検討が進められているところである。
 有害大気汚染物質の大気環境モニタリングについては、大気汚染防止法に基づき、国及び地方公共団体が調査の実施に努めることとされており、地方公共団体においても現在本格的な調査が実施されているところである。
 また、ダイオキシン類については、平成12年1月に施行されたダイオキシン類対策特別措置法において、都道府県知事等は、ダイオキシン類による汚染の状況を常時監視しなければならないこととされており、平成12年度よりこの規定に沿ったモニタリングが行われている。
 環境庁としては、今後とも、有害大気汚染物質の大気環境モニタリングの充実を図るとともに、有害大気汚染物質による大気汚染の健康リスク評価を行い、対策の推進に役立てていくこととしている。

添付資料

連絡先
環境庁大気保全局大気規制課
課 長 :仁井 正夫(内6530)
 補 佐 :田中 紀彦(内6537)

環境庁大気保全局自動車環境対策第二課
課 長 :松本 和良(内6550)
 補 佐 :印南 朋浩(内6551)
 

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