報道発表資料
環境省では、東日本大震災を受け、被災地の海洋環境について緊急的に有害物質等のモニタリング調査(第2次)を実施しました(調査実施日:8月30日~9月1日)。
この度すべての調査項目の分析が終了したため、海洋環境緊急モニタリング調査検討会での検討結果を踏まえ、以下のとおり公表します。
なお、環境省では、今後も継続して監視を実施することとします。
- 1.調査結果概要
- ア)環境基準調査
- (1)生活環境の保全に関する環境基準(生活環境項目)
- 環境基準値と比較して問題となる値はありませんでした。
- (2)ポリ塩化ビフェニル(PCB)
- 海水中のPCBは全体として第1次調査結果とおおむね同様の値であり、 いずれの測点においても環境基準値(公定法により検出されないこと=0.0005mg/L未満)を下回っていました。 一方、堆積物中のPCBは、第1次調査結果よりも高い値が検出された測点があり、汚染負荷の増大が推察されましたが、 いずれの測点においても暫定除去基準値を下回っていました。
- (3)ダイオキシン類
- 海水中及び堆積物中とも、全体としては第1次調査結果と同様の値であり、 一部の測点の底層海水からは第1次調査結果よりも高い値が検出されたものの、 いずれの測点においても環境基準値を下回っていました。
- イ)有害物質等調査
- (1)油分(炭化水素)
- 海水中の炭化水素は全体としては第1次調査結果と同様の値でした。 一方、堆積物中の炭化水素は、全体として第1次調査結果よりも低い値でした。
- (2)臭素系難燃剤(PBDE及びHBCD)
- 海水中のPBDEは一部の測点において前回よりも高く、 これは河川水に由来する可能性があると考えられました。堆積物中のPBDEは、 いずれの測点においても第1次調査結果と同様の値でした。
- 海水中のHBCDはいずれの測点においても検出されませんでした。 一方、堆積物中のHBCDは、一部の測点において第1次調査結果よりも高い値が検出され、 主としてα体が増加していました。製品に含まれるHBCDの主成分はγ体ですが、 熱が加わるとα体に変化すること、また、α体は環境中で移動・拡散しやすいことなどから、 陸域で山積み保管されているがれき等の自然発火等が起源となっている可能性、あるいは、 離れた発生源から移動・拡散した可能性があると推察されました。
- (3)有機フッ素化合物(PFOS及びPFOA)
- 海水中及び堆積物中の有機フッ素化合物は、全体としては第1次調査結果と同様の値でした。
- ウ)放射性物質調査
- 放射性物質については、第1次調査よりも感度の高い分析を行いました。 海水中の濃度は、セシウム134では表層0.0043~0.18Bq/L、底層0.0058~0.20Bq/Lの範囲、 セシウム137では表層0.0064~0.22Bq/L、底層0.0079~0.24Bq/Lの範囲でした。 また、海底土中の濃度については、セシウム134では0.72~450Bq/kg(dry)の範囲、 セシウム137では1.0~520Bq/kg(dry)の範囲、ストロンチウム90では不検出 (<0.12Bq/kg(dry))~0.28Bq/kg(dry)の範囲でした。
- 2.まとめ
- 化学物質調査では、環境基準が設定されている項目(生活環境項目、PCB及びダイオキシン類:参考資料参照)はいずれも問題となる値は検出されませんでした。全体としては前回の調査と同様の値である項目が多かったものの、堆積物中のPCBについては前回よりも高い値が検出された測点があり、汚染負荷の増大が推察されました。また、堆積物中のHBCDについても、前回よりも高い値が検出された測点があり、陸域で山積み保管されているがれき等の自然発火等が起源となっている可能性、あるいは離れた発生源から移動・拡散した可能性があると推察されました。
- 一方、堆積物中の炭化水素は全体的に前回よりも低い値を示しており、 前回の調査において震災による影響を捉えていた可能性があります。 また、陸域で山積み保管されているがれき等の自然発火等により有害物質が 発生し海域を汚染する可能性も考えられることから、今後も引き続き、 これらの状況について監視を続けていくこととします。
- 3.海洋環境緊急モニタリング調査検討会検討員
- (50音順、敬称略)
石坂 丞二 | 名古屋大学地球水循環研究センター教授 |
井上 均見 | 海上保安庁海洋情報部環境調査課海洋汚染調査室長 |
小城 春雄 | 北海道大学水産学部名誉教授 |
白山 義久 | 独立行政法人海洋研究開発機構理事 |
田中 勝 | 鳥取環境大学サステイナビリティ研究所長・特任教授 |
田辺 信介 | 愛媛大学沿岸環境科学研究センター教授 |
中田 英昭 | 長崎大学大学院水産・環境科学総合研究科長(座長) |
西田 周平 | 東京大学大気海洋研究所教授 |
野尻 幸宏 | 独立行政法人国立環境研究所地球環境研究センター上級主席研究員 |
牧 秀明 | 独立行政法人国立環境研究所地域環境研究センター海洋環境研究室 主任研究員 |
- 【参考】
- 関連公表資料
- ・東日本大震災の被災地における環境モニタリング調査について(平成23年5月2日)
- ・被災地の海洋環境のモニタリング調査結果の公表について(平成23年9月30日)
- (地図別添)
- (詳細別紙)
- (参考資料)
- *詳細な資料等については、環境省のHPにおいて公表予定
- 環境省URL:https://www.env.go.jp/water/kaiyo/monitoring.html
添付資料
- 連絡先
- 環境省水・大気環境局水環境課海洋環境室
直通 :03-5521-9025
代表 :03-3581-3351
室長 :森 高志(内線6630)
室長補佐:宮元 康一(内線6631)
担当 :黒川 忍(内線6632)