報道発表資料

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2011年12月09日
  • 保健対策

第13回 化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英共同研究ワークショップの結果について

 第13回化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英共同研究ワークショップを、12月6日、7日に長崎県長崎市において開催しました。本ワークショップでは、両国の研究担当者による研究成果の発表、意見交換及び今後の研究計画の検討等が行われたほか、行政担当者による情報交換等が行われました。

1 目 的

 平成11年3月に開催されたG8環境大臣会合において、化学物質の内分泌かく乱作用に関して英国と共同研究を実施することが合意され、5カ年の日英共同研究事業が開始されました。平成16年度に5年間の延長が決定され、さらに平成21年11月の第11回ワークショップにおいて、5年間の継続に関する文書の調印を行い、現在第3期の共同研究を推進しているところです。
 今年度のワークショップでは、現在研究を推進している以下の4つの枠組み(コアプロジェクト)について、両国の研究担当者が成果発表及び意見交換を行った上で、今後の具体的研究課題についての検討を行いました。

4つの枠組み(コアプロジェクト):

Core1:
処理排水中及び環境中の主要な内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質及び新たな化学物質の挙動を推定するための研究、並びにそれら化学物質の環境中への排出を低減するための研究
Core2:
内分泌かく乱化学物質が起こしうる環境リスクを評価するための野生生物への悪影響を推定する方法(試験法)の開発
Core3:
水生生物及びその他の生物の生殖及び成長への影響を把握するための化学物質試験法における様々なエンドポイントの評価(遺伝子レベルや分子生物学的なアプローチ)に関する研究
Core4:
英国及び日本における野生生物への環境リスク(個体群レベルでの影響等)の解析

2 日 時

平成23年12月6日(火)、7日(水)

3 場 所

長崎全日空ホテルグラバーヒル(長崎県長崎市)

4 出席者

日本:
井口泰泉(研究統括者、自然科学研究機構)、鑪迫典久(国立環境研究所)、早水輝好(環境省)、他(13名)
英国:
トム ハッチンソン(研究統括者、環境水産科学研究所)、デビット・ウィリアム(英国 環境・食料・農村地域省)、マイク・ロバーツ(英国 環境・食料・農村地域省)、他(10名)
その他:
レスリー トゥアート(米国 環境保護庁)、他

5 結果の概要

(1)日英共同研究におけるこれまでの研究成果及び今後の研究計画について

 両国の研究担当者より、これまでの研究成果についての発表及び今後の研究計画についての議論がなされた。概要は以下のとおり。

1.研究成果の概要
Core1:
エストロゲン様作用(女性ホルモン様作用)を持つと考えられる物質や医薬品類等について、下水流入水及び処理水中濃度の測定結果、下水処理施設での処理状況、並びに河川における実態把握及びモデルによる環境中濃度の推定に関する研究成果等が報告された。
Core2:
魚類に対する抗アンドロゲン作用(抗男性ホルモン様作用)を検出するための試験法開発に資するため、メダカ及びイトヨを用いたアンドロゲンばく露による感受性の比較検証の結果等が報告された。
Core3:
化学物質等に対する感受性の種間差及びそのメカニズムに関する検討に資するため、メダカのアンドロゲン受容体及び腎皮質ホルモン受容体レポータージーンアッセイによる試験結果が報告された。
Core4:
日本におけるカエル類に見られる精巣卵形成の実態及び海産魚類におけるビテロジェニン発現の実態に関する報告や、英国におけるエストロゲン様作用を持つ物質が魚類の個体群に与える影響に関する研究の進捗状況が報告された。
2.来年度の研究計画
Core1:
エストロゲン様作用についてこれまで構築してきた河川中の濃度推定のためのモデルを、河川中の医薬品等へ適用するための検証を行う。
Core2:
化学物質の抗アンドロゲン様作用を検出するための試験法について、イトヨを対象に開発されてきたものをメダカに適用するための検討を進める。
Core3:
メダカにおいて、受容体のサブタイプ毎の機能の差異やアンドロゲン作用により発現する遺伝子群についての研究を進める。
Core4:
野生のカエルでの精巣卵発現等について実態調査を継続するとともに、化学物質ばく露との関係について検討する。また、既存の知見等を活用し、化学物質の野生生物の個体群への影響について作用メカニズムを考慮しつつ評価する手法の検討に着手する。

(2)行政担当者による情報交換等について

 化学物質の内分泌かく乱作用に関する取組状況について、英国、米国及び日本の行政担当者より説明を行い、意見交換が行われた。今後も緊密に情報共有を行うことが確認された。

(3)次回ワークショップについて

 次回ワークショップは平成24年度に英国で開催することが合意された。

※化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英共同研究については、下記ホームページ(専門家向け 英語のみ)でも概要を御覧いただけます。

http://www.uk-j.org

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
直通 03-5521-8261
代表 03-3581-3351
課長 早水 輝好(内6350)
課長補佐 本間 政人(内6352)

環境保健部企画課
環境リスク情報分析官
山崎 邦彦(内6391)