報道発表資料

この記事を印刷
2010年11月08日
  • 保健対策

第12回 化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英共同研究ワークショップの結果について

 第12回化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英共同研究ワークショップを、11月3日、4日に英国ノーザンバーランドにおいて開催しました。本ワークショップでは、両国の研究担当者により、現在研究を推進している4つの枠組み(コアプロジェクト)について成果発表及び意見交換が行われたほか、今後の具体的研究について検討が行われました。

1 目的

 平成11年3月に開催されたG8環境大臣会合において、化学物質の内分泌かく乱作用に関して英国と共同研究を実施することが合意され、5カ年の日英共同研究事業が開始されました。平成16年度には、5年間の延長(2005~2009年)が決定され、第2期目日英共同研究として、両国の研究者による共同研究を推進してきました。昨年11月の第11回ワークショップにおいて、日英共同研究の5カ年の継続(第3期日英共同研究)に関する文書の調印が行われたところです。
 今年度のワークショップでは、両国の研究担当者によるこれまでの成果の発表、意見交換が行われたほか、昨年度の第11回ワークショップにおいて合意された、研究テーマについての4つの枠組み(コアプロジェクト)毎に、今後の具体的研究について検討が行われました。

4つの枠組み(コアプロジェクト):
Core1:
処理排水中及び環境中の主要な内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質及び新たな化学物質の挙動を推定するための研究、並びにそれら化学物質の環境中への排出を低減するための研究
Core2:
内分泌かく乱化学物質が起こしうる環境リスクを評価するための野生生物への悪影響を推定する方法(試験法)の開発
Core3:
水生生物及びその他の生物の生殖及び成長への影響を把握するための化学物質試験法における様々なエンドポイントの評価(遺伝子レベルや分子生物学的なアプローチ)に関する研究
Core4:
英国及び日本における野生生物への環境リスク(個体群レベルでの影響等)の解析

2 日時

平成22年11月3日(水)、4日(木)

3 場所

マトフェンホール(英国 ノーザンバーランド)

4 出席者

日本:
井口泰泉(研究統括者、自然科学研究機構)、鑪迫典久(国立環境研究所)、
山崎邦彦(環境省)、他(13名)
英国:
トム ハッチンソン(研究統括者、環境水産科学研究所)、チャールズ タイラー(エクセター大学)、マイク・ロバーツ(英国 環境・食料・農村地域省)、他(18名)

5 結果の概要

(1)日英共同研究におけるこれまでの研究成果について

 両国の研究担当者より、これまでの研究成果についての発表がなされた。概要は以下のとおり。

Core1:
 下水処理施設でのエストロゲン様作用(女性ホルモン様作用)を持つと考えられる物質や医薬品等の処理状況や河川における残留濃度等に関する報告がなされた。
Core2:
 イトヨ(冷水性淡水魚)でのアンドロゲン様作用(男性ホルモン様作用)等を腎臓のmRNAを用いて検出する方法等、新たな検出方法の検証結果が報告された。
Core3:
 エストロゲン様作用について、生物種ごとの感受性の違いに関する分子生物学的なアプローチによる検証に関する報告がなされた。
Core4:
 日本におけるカエル類に見られる精巣卵形成の実態に関する報告及び英国における女性ホルモン様作用を持つ物質が魚類の個体群に与える影響の有無に関する報告がなされた。

(2)日英共同研究の今後の具体的研究について

 昨年度のワークショップで合意された4つの枠組みの中で、2015年までの研究の方向性について、総論及び各コアについての議論を行い、以下の方向性が確認された。

総論:
 第3期の日英共同研究では、新たに設定された枠組み(コアプロジェクト)の基で、内分泌かく乱作用を持つ化学物質等の野生生物に及ぼす悪影響や個体群レベルでの影響(環境リスク)の解析・評価に繋がるテーマを中心に調査研究を実施する。また、日英共同ワークショップ(年1回開催予定)において、日英の研究者による協議を行い、研究成果の共有及び相互利用などコアプロジェクト間の連携も図りながら、各研究テーマの工程表に基づいて効率的・効果的な推進を図る。
Core1:処理排水中及び環境中の主要な内分泌かく乱作用を有すると疑われる化学物質及び新たな化学物質の挙動を推定するための研究、並びにそれら化学物質の環境中への排出を低減するための研究
 内分泌かく乱作用等を持つ化学物質等の野生生物に及ぼす影響(環境リスク)を解析・評価するため、これら物質の環境中(河川中)の濃度及び分解又は副生成等も含めた挙動(環境中運命)など、野生の水生生物への暴露状況をできるだけ正確に把握・推定するための研究を進める。
Core2:内分泌かく乱化学物質が起こしうる環境リスクを評価するための野生生物への悪影響を推定する方法(試験法)の開発
 化学物質の内分泌かく乱作用の検出・評価を目的とした生物試験法(in vivo試験)については、OECDを中心に開発が進められているが、野生生物の生息環境や生態系は複雑であり、これらの生物試験法(評価法)又はエンドポイントをそのまま適用することは難しいと考えられるため、野生生物への影響について、作用機構の解明や評価手法の確立等のための研究を進める。
Core3:水生生物及びその他の生物の生殖及び成長への影響を把握するための化学物質試験法における様々なエンドポイントの評価(遺伝子レベルや分子生物学的なアプローチ)に関する研究
 野生生物の生息環境や生態系は複雑であり、野生生物に見られた影響を疑われる事象を把握し、その原因や影響を解析・評価するため、遺伝子レベルや分子生物学的なアプローチ等により、環境要因との関連性等も含めて作用機序の解明や評価手法の開発のための研究を進める。
Core4:英国及び日本における野生生物への環境リスク(個体群レベルでの影響等)の解析
 野生生物における内分泌かく乱作用等を持つ化学物質等の影響を解析・評価するため、実際に野生生物において個体群レベルで起きている、影響を疑われる事象の実態を把握し、また、それらの事象と実験室内での生物試験で観察される変化(エンドポイント)との比較検証等を併せて行う。

 これらの方向性に基づき、今後両国で連携して研究を進めていく。

(3)次回ワークショップについて

 次回ワークショップは平成23年に日本で開催することが合意された。

化学物質の内分泌かく乱作用に関する日英共同研究については、下記ホームページ(専門家向け 英語のみ)でも概要を御覧いただけます。
http://www.uk-j.org
連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
直通 03-5521-8261
代表 03-3581-3351
課長 早水 輝好(内6350)
課長補佐 本間 政人(内6352)

環境省環境保健部環境保健企画管理課
直通 03-5521-8252
環境リスク情報分析官 山崎 邦彦(内6391)