報道発表資料

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1997年11月28日

「海洋環境モニタリングネットワーク構想について」

海洋環境の総合的な保全を図るために、「海洋環境調査検討会」において、海洋環境モニタリングのあり方について検討が行われてきたところであるが、今般この検討結果が「海洋環境モニタリングネットワーク構想について」として報告書にとりまとめられた。
 この中では、既存の海洋環境モニタリングの実施状況等を踏まえ、生態系の保全、排他的経済水域を含む海洋環境の保護及び保全等を考慮に入れながら、今後新たに実施すべきモニタリングの目的、課題、測定項目等についてとりまとめている。また、日本海を含む北西太平洋においては、日本、中国、韓国、ロシアの間で北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)が採択されていることから、今後、関係国が協力して海洋環境モニタリングを実施していくことが重要であり、このための基本的な方向がモニタリングネットワーク構想の推進として提言されている。
 環境庁としては、この報告書を踏まえ、新たな海洋環境モニタリングを実施できるよう所要の予算を要求するとともにNOWPAPにおける海洋環境モニタリングネットワークの構築にも反映させていきたいと考えている。

1 経緯

 環境庁においては、海洋汚染の実態等を把握するための水質モニタリングをこれまで実施してきたところであるが、昨年7月、我が国において発効した「海洋法に関する国際連合条約」(通称「国連海洋法条約」)等において、海洋汚染の防止に止まらず、生態系の保全を含む総合的な海洋環境保全を図ることが重要となっており、海洋環境モニタリングのあり方を見通していくことが必要になってきている。
 このような状況を踏まえ、「海洋環境調査検討会」(水質保全局長委嘱)において、我が国における海洋環境の総合的な保全のために必要となる海洋環境モニタリングのあり方について検討を行い、今般、報告書「海洋環境モニタリングネットワーク構想について」がとりまとめられた。
 なお、海洋環境調査検討会の検討員は別紙のとおり。

2 報告書の概要

(1) 海洋環境モニタリングの必要性 昨年7月に我が国において発効した国連海洋法条約に基づき、排他的経済水域を含む海洋環境の保護及び保全を推進していくことになっている。この他にも国内外において海洋環境の保全が重要な課題として取り上げられており、このような海洋環境保全対策の一環として、海洋環境モニタリングを実施する必要性が指摘されている。
(2) 海洋環境モニタリングの課題
 海洋環境モニタリングを実施するうえで考慮すべき一般的な課題として海洋生態系の健全性や多様性の監視の必要性、日本周辺国からの海洋環境への負荷等を考慮した海洋環境モニタリングネットワークの必要性、排他的経済水域を対象とした環境保全目標の設定等について明らかにするとともに、個別の課題として有害化学物質による汚染、プラスチック系の廃棄物による汚染、油類による汚染等を明確にしている。
(3) 海洋環境モニタリングの進め方
 既存の海洋環境モニタリングの実施状況等を踏まえ、今後新たに実施するモニタリングにおいて対象とすべき海域等の選定に当たっての基本的な考え方を明らかにしている。この対象海域としては、北西太平洋に含まれる日本海、日本の大都市、大工業地帯等に面している太平洋、日本及び中国の汚染負荷の影響を受ける東シナ海が重要であることが指摘されている。また、このモニタリングの目的、測定項目等についてもあわせてとりまとめている。
(4) 海洋環境モニタリングネットワーク構想の推進
 日本海を含む北西太平洋においては日本、中国、韓国、ロシアの間で北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)が採択されており、この中で海洋環境モニタリング計画の策定については、我が国が主導的な立場で推進していくこととなっている。このため、まず、我が国において、海洋環境の監視を体系的に行うための監視指針、監視計画等を策定するとともに、これらに基づき海洋環境モニタリングを実施していく必要があることを指摘している。
 また、海洋環境モニタリングの結果については、NOWPAP地域における海洋管理方策の確立に反映させることとし、将来的にはこの地域における海洋環境保全対策の枠組みづくりに発展させていくことも検討していく必要があることが提言されている。
(5) 今後の課題
 海洋環境モニタリングを効果的かつ効率的に実施していくためには、これまでのモニタリング方法に加え、さらに、例えば、無人水質測定ステーションによる水質測定、フェリー等に観測機材を積載することによる連続的な水質測定の実施等新しい科学技術を活用したモニタリング手法の検討、及び地球温暖化に伴う海洋生態系への影響等の地球規模の環境問題も視野においたモニタリングの実施などについて検討していく必要があることが指摘されている。

3 今後の予定

 本報告書の提言を踏まえ、環境庁においては、来年度から我が国周辺海域において海洋環境の総合的な保全を図るために必要な海洋環境モニタリングを実施できるよう所要の予算を要求するとともに、将来的には、このモニタリングをNOWPAPにおける海洋環境モニタリングネットワークの構築にも反映させていきたいと考えている。
 なお、このモニタリングを実施するための詳細な事項について定める「海洋環境モニタリング調査指針」等については、同検討会において引き続き検討していくこととしている。


別 紙


海洋環境調査検討会検討員名簿

     ジョウジ
  石 坂 丞 二  工業技術院資源環境技術総合研究所環境影響予測部
            海洋環境予測研究室主任研究官

  梅 津 武 司  水産庁養殖研究所企画連絡室長

  白 山 義 久  京都大学理学部附属瀬戸臨海実験所教授

  田 辺 信 介  愛媛大学農学部生物環境保全学部講座
                  環境化学研究室教授

  谷     伸  海上保安庁水路部監理課補佐官

  坪 田 博 行  広島大学名誉教授

  戸 田   誠  海上保安庁水路部海洋調査課長

  中 田 英 昭  東京大学海洋研究所資源環境部門助教授

  西 田 周 平  東京大学海洋研究所プランクトン部門助教授

  野 尻 幸 宏  国立環境研究所地球環境研究グループ
            温暖化現象解明研究チーム総合研究官

       アキラ
  原 島   省  国立環境研究所地球環境研究グループ
            海洋研究チーム総合研究官

  平 野 敏 行  トキワ松学園横浜美術短期大学学長
    (座 長)

*報告書については、添付ファイル参照。

添付資料

連絡先
環境庁水質保全局企画課
室   長 :太田 進  (6620)
 室長補佐 :志々目友博(6622)