報道発表資料
平成21年5月4日から8日までジュネーブにおいて、ストックホルム条約(POPs条約)の第4回締約国会議(COP4)が開催され、新たに9種類の物質が同条約の附属書に追加されることが決定されました。これら物質については、今後、国際的に協調して廃絶・制限に向けた取組を行うことになります。また、条約の有効性評価が、世界の環境モニタリング結果等をもとに実施されました。
- 1. 会議概要
- 会議の議長はアリゼラ・モアイエリ(イラン)が務め、我が国からは、外務省、経済産業省及び環境省の担当官が出席しました。
会議の主な成果としては、POPs物質のモニタリング報告書を基に条約の有効性に関する評価がはじめて行われるとともに、残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)から締約国会議に附属書への追加を勧告されていた9物質について、製造・使用等を原則廃絶または制限することを決定しました。 - 2. 条約への新規POPs物質の追加について
- (1)附属書A、B、Cへの新規POPs物質の追加について
第3回及び第4回残留性有機汚染物質検討委員会(POPRC)における検討結果を踏まえ、今次締約国会議に附属書A(廃絶)、附属書B(制限)又は附属書C(非意図的放出の削減)への勧告が行われた9物質について、それぞれ下記の表のとおり、附属書への追加が決定されました。これらについては、今後、条約の下で、国際的に協調して、その製造・使用等を廃絶・制限することになります。
なお、「PFOSとその塩及びPFOSF」については、日本も含め現時点で代替の見通しの立たない用途があることから、附属書Bに追加することとし、代替技術の開発を進めつつ、将来的な廃絶に取り組んでいくことになりました。 - (2)今後の予定
上記により改正される附属書の発効は、国連事務局による各国への通報が到着してから1年後になります。我が国においては、それまでに、条約で定められている規制内容に基づき、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(化審法)や輸出/輸入貿易管理令等により、原則、これら物質の製造・使用等を禁止するための所要の措置を講ずることになります。
なお、「PFOSとその塩及びPFOSF」については、日本としても、条約で認められた範囲で我が国に必須の特定の用途について適用除外の登録等を行う予定であり、今後、化審法等の国内担保法体系において、その内容及び管理のために必要な措置等が規定されることとなります。 - ○附属書Aへの追加
物質名 主な用途 決定された主な規制内容 テトラブロモジフェニルエーテル、
ペンタブロモジフェニルエーテルプラスチック
難燃剤・製造・使用等の禁止
(以下の用途を除外する規定あり)
-当該物質を含有する製品のリサイクルクロルデコン
CAS No:143-50-0農薬 ・製造・使用等の禁止 ヘキサブロモビフェニル
CAS No:36355-01-8プラスチック
難燃剤・製造・使用等の禁止 リンデン(γ-HCH)
CAS No:58-89-9農薬 ・製造・使用等の禁止
(以下の用途を除外する規定あり)
-アタマジラミ、疥癬の医薬品用の製造と使用α-ヘキサクロロシクロヘキサン
CAS No:319-84-6リンデンの副生物 ・製造・使用等の禁止 β-ヘキサクロロシクロヘキサン
CAS No:319-85-7リンデンの副生物 ・製造・使用等の禁止 ヘキサブロモジフェニルエーテル、
ヘプタブロモジフェニルエーテルプラスチック
難燃剤・製造・使用等の禁止
(以下の用途を除外する規定あり)
-当該物質を含有する製品のリサイクル - ○附属書Bへの追加
物質名 主な用途 決定された主な規制内容 ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)とその塩、ペルフルオロオクタンスルホン酸フルオリド(PFOSF)
CAS No: 1763-23-1
CAS No: 307-35-7撥水撥油剤、
界面活性剤・製造・使用等の禁止
(以下の目的・用途を除外する規定あり)
-写真感光材料
-半導体用途
-フォトマスク
-医療機器
-金属メッキ
-泡消火剤
-カラープリンター用電気電子部品
-医療用CCDカラーフィルター など - ○附属書A及びCへの追加
物質名 主な用途 決定された主な規制内容 ペンタクロロベンゼン
CAS No: 608-93-5農薬 ・製造・使用等の禁止
・非意図的生成による排出の削減 - (注意)上記の表中の情報は省略・簡略化しているため、規制内容の詳細については、下記の条約事務局のホームページから会議文書をご覧ください。
POPs条約ホームページ(英語):http://www.pops.int/ - 3. 条約の有効性評価について
- POPs条約第16条及びCOP2における決議などにおいて、地球規模での環境モニタリングデータ等をもとに、COP4に最初の条約の有効性評価を行うこととされています。これを受け、POPs条約対象物質の地域的、地球規模での移動に関する情報や濃度レベルのトレンドを把握するため、COP3において、地域組織グループ及び調整グループを設置し、COP4における初回有効性評価に向け、モニタリング報告書を作成することが決定されました。
我が国は、条約有効性評価のための調整グループ及び地域組織グループに柴田康行 国立環境研究所化学領域長を派遣し、地域及び全球の評価報告書の作成とりまとめに貢献してきています。
今次会合では、地球規模でのPOPsの環境中濃度等に関するモニタリング報告書及び各国から提出された条約の実施状況についてのレポートに基づく情報が初めて取りまとめられました。これは、本条約の初回の有効性評価であり、今後の継続的評価における比較を行うための基準となるものです。
また、今後の有効性評価のため、環境モニタリングデータ、各国から提出された条約の実施状況についてのレポート、及び各国の条約の不遵守の状況に関する情報を基に、評価手法(どのような指標について、どのような手法で評価を行うか等)を検討するためのワーキンググループを設置することが決定されました。
今後、ワーキンググループでの議論を基に、有効性評価の手順と必要な手配がCOP5において決定される予定です。
我が国としても引き続き環境モニタリングデータの提供等を通じた貢献を行っていくこととしています。
添付資料
- 連絡先
- 環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
課長:木村 博承(内線6350)
課長補佐:瀬川 恵子(内線6353)
課長補佐:木野 修宏(内線6324)
担当:寺井 徹(内線 6356)
関連情報
過去の報道発表資料
- 平成19年5月7日
- POPs条約第3回締約国会議(COP3)の結果について
- 平成18年5月8日
- POPs条約第2回締約国会議(COP2)の結果について
- 平成17年5月9日
- POPs条約第1回締約国会議(COP1)の結果について