報道発表資料
- 地球環境
GaN技術による脱炭素社会・ライフスタイル先導イノベーション事業における成果について~次世代パワートランジスタの特性の安定化・高性能化に成功~
2.今回、本事業において、ナトリウムフラックス種結晶を用いた2インチGaNウエハ上に縦型GaNトランジスタを作製し、破壊耐圧約1kV・ノーマリオフ動作を確認するとともに、デバイス特性の安定化・高性能化を実証しました。
1.事業の概要
温室効果ガス排出量の2030年度及び2050年削減目標を達成するためには、将来の資源・環境制約等からバックキャストし、未来のあるべき社会やライフスタイルを実現するための技術を開発・実証し、将来に向け着実に社会に定着させることが必要です。特に、将来にわたるエネルギー制約やコロナ禍後の社会を見据え、一層の電化や省エネかつ豊かな社会・ライフスタイルを早期に実現することが重要です。
本事業は、社会全体の大幅なエネルギー消費量削減のキーとなる、民生・業務部門を中心にライフスタイルに関連の深い多種多様な電気機器(照明、パワコン、サーバー、動力モーター、変圧器、加熱装置等)に組み込まれている各種デバイス(半導体)を高効率化し、徹底したエネルギー消費量の削減によるCO2排出削減を実現する技術イノベーションの創出を目的に実施しました。これまで本事業では、世界初の窒化ガリウム(GaN)デバイスを用いた超省エネルギー電気自動車「All GaN Vehicle(AGV)」や、従来比20%以上の電力消費量削減を達成した選択型マイクロ波加熱装置(電子レンジ)などの成果を創出しています。
<参考:これまでの事業成果について>
https://www.env.go.jp/press/107322.html
2.今回の成果
パワー半導体は、産業機器や車、家電などの電力制御に幅広く使われています。現在、社会全体でのカーボンニュートラル実現に向け、再生可能エネルギーや電動車などの大きな電力を制御する際の電力ロスを低減できる次世代パワー半導体の実用化・普及拡大が期待されています。その1つであるGaNパワートランジスタの開発においては、課題である生産性向上(コスト低減)の実現に向け、デバイスの安定化・高性能化が求められています。
今回、大阪大学大学院工学研究科はパナソニックホールディングス株式会社、豊田合成株式会社、株式会社サイオクスと共同で、ナトリウムとガリウムを混合した液体金属の中でGaNの結晶を成長させる手法(ナトリウムフラックス法)を活用し、GaNパワートランジスタの特性を高い歩留で高性能化させる技術の開発に成功しました。具体的には、ナトリウムフラックス法とHVPE法を組み合わせることにより、極めて反りの小さなGaN基板の作製に成功し、縦型GaNトランジスタのウエハ面内のオン抵抗ばらつきを従来の約1/2以下に低減することができました。この成果は、デバイス特性の安定化に寄与します。さらにこのGaN基板を用いると、縦型トランジスタのオフ時のリーク電流を低減でき、歩留が向上しました。これは従来のGaN基板と比較して、プロセスダメージによる欠陥生成が生じにくいという特徴によるものです。今後、ナトリウムフラックス種結晶の品質を高めることにより、縦型GaNトランジスタの更なる高性能化と歩留向上を進めていきます。本成果は産業・家電機器、モビリティ、再生可能エネルギー機器など、社会のあらゆる場面での活用による電力ロスの低減、これによる大幅なCO2削減に貢献することが期待されます。
参考資料
連絡先
- 代表
- 03-3581-3351
- 直通
- 03-5521-8339
- 室長
- 加藤 聖 (内線 5765)
- 室長補佐
- 今野 孝紀 (内線 5773)
- 主査
- 矢作 雄人 (内線 5774)