第1回グッドライフアワードで最優秀賞を受賞した、岩手県大船渡市などを中心に海底の震災がれき撤去作業などを続けている『三陸ボランティアダイバーズ』。2014年9月の休日。この日も全国各地からボランティアのダイバーが集まって作業をするということで、レポート取材に行ってきました。
漁師さんもダイバーもみんなハッピー!楽しみながら役立ってます。
活動のきっかけは?
この川に、鮭が戻ってこられるか?
2011年5月。漁港には船を着けるのも大変な状態でした。
22011年4月。大船渡市内、
越喜来(おきらい)湾の漁港の様子。
『三陸ボランティアダイバーズ』の代表者は、陸前高田市内でダイビングショップを構える佐藤寛志さん。東日本大震災が発生した時は、シーズンオフの三陸を離れ、タイのビーチでダイビングの仕事をしていました。大震災の発生と津波被害のニュースを知って急遽帰国。三陸に戻ってみると、津波被害の惨状が広がっていました。
「この川に、鮭が戻ってきてくれると思うか?」「この港で水揚げされた魚を、自信をもってたくさんの人に食べてもらえるか?」
大船渡市で漁業に携わる親戚は、漁船が打ち上げられて荒れ果てた港や河口の風景を前に、途方に暮れるばかりの様子だったといいます。鮭が戻ってくるはずの河口はがれきの山に埋もれ、漁港の湾内やホタテやワカメ、ホヤといった自慢の海産物の養殖エリアの海底にもたくさんのがれきが沈んでいました。
「よし、ダイバーである自分が潜って、 海底のがれきを清掃しよう」。 佐藤さんの決心が『三陸ボランティアダイバーズ』の スタートになりました。
どんな取り組みを?
がれき撤去だけでなく、養殖漁業のサポートも!
写真提供:塩崎仁美さん
海底がれきの撤去作業には全国各地からダイバー仲間が集まってくれるようになり、佐藤さんは継続的な活動を続けていくためにNPO法人『三陸ボランティアダイバーズ』を設立。親戚が漁業に携わっていた大船渡市の綾里(りょうり)漁協を中心に、活動の拠点を広げてきました。
湾内などの海底清掃を始めたのは震災発生から1カ月ほどが過ぎた頃のこと。海の底には被災地で暮らしていた人たちの生活が押し流されていました。アルバムや金庫が見つかったり、時にはお骨が見つかって警察に届けたこともあるといいます。
漁港内や養殖エリアのがれき撤去は、とくに大切な作業でした。大船渡をはじめとする三陸沿岸では、漁業は重要な産業です。三陸ボランティアダイバーズは、地道に海底がれきの撤去を続けてきました。
しばらくすると、養殖エリアの海底がれき清掃が進んでホタテやワカメなどの養殖が再開されました。三陸ボランティアダイバーズでは、漁師さんたちからの要請に応じて、養殖施設の修復や、ホヤ養殖を再開するための親ホヤ採取などの海中作業を手伝うようになりました。海底がれきの撤去に加え、漁業のサポートを行うようになったことで、三陸ボランティアダイバーズの活動はさらに広がっていきました。
成功のポイントは?
役立つダイビングを楽しめること!
ときには巨大ながれきを引き上げることもある海底がれき清掃などの作業は大変です。漁業のサポートをするのも、漁師さんの生活がかかっているだけに気を使う仕事です。
でも、がれき清掃や漁業サポートのために潜るのは、実はダイバーにとってもやりがいのあることでした。海中の風景や生物を探索するだけのダイビングより、むしろ「楽しい」と気付くことができたのです。楽しみながら役立つこと。それが、三陸ボランティアダイバーズの活動が継続し、たくさんのリピーターが参加してくれる最大のポイントです。
また、漁師さんとの信頼関係を築くことができたのも、活動がうまくいっている大切なポイントです。もともと、漁師さんにとってダイバーは「密猟者」とさえ思われている存在でした。綾里漁協に佐藤さんの親戚がいたことをきっかけにして、三陸ボランティアダイバーズが地道に活動を続けてきたことで、多くの漁協で、たくさんの漁師さんたちとの信頼関係を築くことができたのです。
第1回のグッドライフアワードで最優秀賞を受賞したことで「初めて顔を合わせる漁師さんにも私達の活動を理解してもらいやすくなりました」と佐藤さん。グッドライフアワードがさらなる活動発展の役に立てるのは、事務局としてもうれしいことです。
レポート
昼食は漁港で漁師さんがふるまうBBQ!
大粒で甘い、小石浜漁港のホタテ!
新鮮なサンマを漁師さんが刺身にしてくれました。
ホタテやムール貝、サンマなど、 お腹いっぱい
いただきました!
新颯爽と海に飛び込む佐藤さん。
この日、海底から引き上げられた支柱の土台。
津波で流されたのだろう。
参加者のみなさん、お疲れさまでした!
午後は同じ湾内の浪板ビーチに移動。この浜もがれきで大変な状況だったのが、三陸ボランティアダイバーズの活動でかなりきれいになってきたということです。復活して広がったアマモの群落など沿岸のダイビングを楽しんで、この日のメニューは終了しました。
三陸ボランティアダイバーズでは、もちろん現在も活動を続けています。ダイビング初心者に海底での作業は困難ですが、船上や陸上でのサポート作業もたくさんあるので「興味がある人はぜひ参加してください」(佐藤さん)とのこと。
佐藤さん自身、三陸ボランティアダイバーズの活動を通じて「海の価値」を再認識できたそうです。最近では、三陸での漁業サポートを続けながら、海の価値をたくさんの人に知ってもらうための講演活動などにも取り組んでいるそうです。三陸の海が、そしてそこに集う人々の笑顔がさらに輝くように。グッドライフアワードも応援しています!