GOOD LIFE CONFERENCE

エコソーシャルな地域社会を
デザインする

グッドライフカンファレンス 集合写真

渋谷ヒカリエでイノベーターが登壇。
エコソーシャルな取組の知恵を発信。

環境省は、第5回のグッドライフアワード募集開始にあたり、2017年6月20日(火)、渋谷ヒカリエ 8/COURT (東京都渋谷区)で、『GOOD LIFE CONFERENCE  〜エコソーシャルな地域社会をデザインする〜』を開催しました。平日の夜にも関わらず、100名近い来場者で会場は満員の大盛況となりました。

カンファレンスは、アワードのプロデューサーである谷中修吾氏が進行。今までのグッドライフアワードで環境大臣賞を受賞した取組を代表して、三陸ボランティアダイバーズの佐藤寛志さんと、岐阜県立大垣養老高校の瓢箪(ひょうたん)倶楽部秀吉の米山美沙紀さんが登壇しました。

また、ゲストイノベーターとして、飛騨を訪れる外国人観光客を対象とした「SATOYAMA EXPERIENCE」で注目を集める美ら地球(ちゅらぼし)CEOの山田拓さん、国産薬草茶のリブランディングを推進する食卓研究家の新田理恵(TABEL代表)が登壇し、それぞれの取組の実践事例とともに、「エコソーシャルな取組を成功させるためのポイント」が紹介されました。

グッドライフカンファレンス 谷中周吾写真

今回のカンファレンスは、第5回グッドライフアワードの募集開始(応募締切は9月30日)にあたり、キックオフイベントとして開催されました。グッドライフアワードは、環境と社会に良い取組を環境大臣賞として表彰することで、環境と社会によい暮らしの実現やライフスタイルの改善につなげることを目指しています。そこで、このカンファレンスでは、イノベーターの実践事例に着目してプログラムを構成しました。どうすれば、エコソーシャルな取組を始めることができるのか。取組を続け、広げていくために何をするべきなのか。イノベーターのみなさんのプレゼンテーションには、その秘訣が凝縮されていました。

グッドライフカンファレンス 益田文和写真 実行委員長の益田文和さんが応募取組への期待感などを話しました。

グッドライフアワードは、幅広くエコソーシャルな取組を募集しています。NPOや企業、自治体はもちろん、地域のコミュニティや個人など、取組の主体は問いません。取組の大小に関わらず、すべての取組が環境大臣賞候補です。また、受賞をきっかけにさらに取組を拡大していくチャンスとなります。今年も、たくさんのご応募をお待ちしています。

応募要項はこちら

地域に「あるもの」のありがたさを活かし、 自分の思いを信じ続けることが力になる

山田拓さんがCEOを務める株式会社 美ら地球(ちゅらぼし)は、岐阜県飛騨市を拠点に提供している「SATOYAMA EXPERIENCE」というサービスが、外国人旅行者などに口コミで人気になっています。

グッドライフカンファレンス 山田拓写真

「SATOYAMA EXPERIENCE」では、飛騨の日常に当たり前のようにある風景や自然を活用したアクティビティ、オーダーメイドのガイドツアーを実施。また、長期滞在を希望するツーリストにはステイ先を紹介するなど、飛騨を訪れる外国人旅行者にワンストップで「里山」を体験できるようサービスを提供しています。

自ら世界を放浪する旅を経験し、帰国後、飛騨に移住して事業をスタート。当初はサイクリングツアーのガイドなどから始まり、旅人(ゲスト)、地域の企業、住民、山田さんの元に集う若者という「4つのハッピー」実現を目指しつつ、取組が進化してきたことが紹介されました。

プレゼンテーションの中では、外国人旅行者の方々が「田んぼで見つけたアマガエル」や「ランドセルを背負って黄色い帽子であぜ道を通学する小学生の姿」など、地域にとっては日常の風景にとても興味を示すエピソードを紹介。エコソーシャルな取組成功の秘訣を挙げてくれました。

「たとえば人は宇宙に行くと空気があって呼吸できることのありがたさに気付けるでしょう。でも、地球上では呼吸できるのは当たり前だと思っています。今、目の前にあるもののありがたさには気が付きにくいですよね。固定観念を抜け出して地域の魅力を見つけ、自分がやってみようと思えることが見つかったら、思いを信じて、取組を続けることこそが力になっていくのだと思います。私たちも、特別なことをやっているという意識はありません。でも、2007年の創業から、長く続けてきたことによって、たくさんの方に知っていただき、評価していただけるようになったのだと思っています」(山田さん)

大切にしているのは、身近な誰かを幸せにできるモノを生み出すこと。

新田理恵さんは、日本各地の風土に根ざした国産在来種のハーブティ(伝統茶)をリブランディングして事業を展開するTABEL株式会社のCEOであり、管理栄養士、国際中医薬膳調理師などの資格をもつ「食卓研究家」としても活躍しています。

グッドライフカンファレンス 新田理恵写真

新田さんのプレゼンテーションでは、子どもの頃の体験から「食」の大切さに気付いて栄養学や薬膳などを学び、国産のスーパーフードを探す中で「薬草」というキーワードに出会い、伝統茶のビジネスモデルを思い付くことができたというエピソードから始まり、現在の取組の概要や、伝統茶への思いなどを語ってくれました。

その中で、日本各地の薬草産地の方々と連携し、伝統茶をリブランディングする取組の中で、新田さんが大切にしている「ものづくりのポイント」を次のように挙げてくれました。

「何か、エコソーシャルな取組を始めたいけど、何をすればいいのか思い付かない」という方も多いのではないでしょうか。「身近な誰かを幸せにできる」モノやことに注目してみるのは、具体的なアクションを見つけるための素敵なヒントではないかと感じます。

また、プレゼンテーションが終わった後、司会の谷中修吾さんとの話の中で、エコソーシャルな取組を目指す人たちへのメッセージを挙げてくれました。

「自分が素晴らしいと思って始めた取組も、評価され、順調に動き始めるまではとても孤独を感じてしまうことが多いです。分野は違っても、同じように理想をもった活動に取り組んでいる仲間を増やし、コミュニケーションしていくと、とても心強いと思います」(新田さん)

今回、環境大臣賞受賞者を登壇者として迎えたように、グッドライフアワードは「表彰して終わり」のプロジェクトではありません。公式サイトで全ての応募取組を紹介し、環境大臣賞受賞取組については独自に取材したレポートや活動紹介動画を発信。こうしたカンファレンスやシンポジウムを開催することで、受賞者同士、また受賞者以外でも「環境と社会に良い暮らし」を実現するための取組を実践している人たちの輪を広げていくことが、グッドライフアワードの目標です。新田さんからのメッセージは、まさにグッドライフアワードへのエールでもありました。

環境大臣賞受賞で地元漁協との絆が深まりいろんなカタチで活動が発展中。

3人目の登壇者、佐藤寛志さんが設立したNPO法人三陸ボランティアダイバーズは、『三陸の海を取り戻せ! (三陸沿岸部復興・保全活動)』という取組により、2013年、第1回グッドライフアワードで環境大臣賞最優秀賞を受賞しました。

グッドライフカンファレンス 佐藤寛志写真

グッドライフアワードの受賞レポート

『三陸の海を取り戻せ!』は、趣味として海に潜る一般ダイバーが、東日本大震災による津波で被害を受けた漁港の海底に沈むがれき清掃などで活躍する取組です。震災から6年が過ぎ、漁港や沿岸の養殖場の海底に沈むがれきはかなり片付いてはきましたが、今もまだ、船や自動車が沈んだまま放置されているところもあるそうです。

海底がれき清掃などの活動には、豪快な笑顔で、ダイバー仲間から「クマ」さんと慕われる佐藤さんの呼びかけで全国各地からダイバーのみなさんが集まっています。今回のプレゼンテーションでは、海底の震災がれき清掃から始まった取組が、漁業関係者との交流を通じて、ホヤやホタテなどの養殖で必要な海中作業を手伝いや、鮭が遡上する川の水中環境の整備など、さまざまな活動に広がっていったことが紹介されました。

「この取組が始まる以前、漁業関係者にとって趣味のダイバーはつながりが薄い存在でした。でも、取組が環境大臣賞を受賞したことで地元の漁業関係者にも取組の意義が理解してもらいやすくなり、地道な取組を続けることで、ダイバーと漁師さんたちとの信頼関係が深まっていったのです」(佐藤さん)

三陸ボランティアダイバーズの取組は、海を飛び出して広がっています。海底をきれいにした漁港近くの三陸鉄道「恋し浜」駅の近くに、漁師さんたちと一緒に「ホタテデッキ」と名付けた交流スペースを作りました。さらに、役目を終えた仮設住宅の資材を再活用して、佐藤さんと深い信頼関係を築いた綾里(りょうり)漁港の漁師さん自慢のホタテなどを味わえるレストラン開設の計画や、岩手県内の内陸部をはじめ、東京などの都市部へ三陸の海の幸を運ぶアンテナショップ『綾里丸』などのプロジェクトが始まっています。

また、カキなどの養殖いかだを海中から観賞する『里海ダイビング』や、新たに建設された防潮堤を使ったプロジェクションマッピングなど、魅力的な目標も紹介。地道な取組が信頼関係を築き、その信頼関係から新たな発想が広がっていく。人と人との繋がりが活動の原動力になることを、佐藤さんのプレゼンテーションは教えてくれました。

通学に使う鉄道を襲った廃線の危機を救いたい! 町を元気にするために、自分たちができることをやる。

プレゼンテーションの最後を締めくくるイノベーターとして登壇した米山美沙紀さんは、岐阜県立大垣養老高校の3年生です。米山さんが所属している校内の有志サークル『瓢箪(ひょうたん)倶楽部 秀吉』は、『食用ヒョウタンで地域を救え!』という取組で、昨年、第4回グッドライフアワード環境大臣賞グッドライフ特別賞を受賞しました。

グッドライフカンファレンス 米山美沙紀写真

グッドライフアワードの受賞レポート

取組が始まったきっかけは、全校生徒の4割ほどが毎日通学に利用している地元の養老鉄道というローカル線が廃線の危機に見舞われたこと。「自分たちが生まれ育った養老町を訪れてくれる人が増えれば、養老鉄道を廃線から救えるかもしれない」と、有志サークルを結成。特産品である瓢箪を活用した町おこしの取組が始まりました。

米山さんは、昨年12月に開催されたグッドライフアワードの『シンポジウム&表彰式』でも、受賞取組の内容を紹介するプレゼンテーションを、サークルのメンバーを代表して担当しました。しっかりとまとめてきた内容を、はきはきとした声で、紙芝居のように楽しく紹介してくれたことが表彰式でも印象に残っていたのですが、今回のプレゼンテーションはさらにパワーアップ。苦味が強い食用瓢箪が発生して困ったことや、瓢箪ランプ作りのワークショップを行う回数が増え、学校で栽培する瓢箪だけでは足りなくなって、広く町民に瓢箪のグリーンカーテン栽培を呼びかけることになったエピソードなどが紹介された時には、会場から笑いが巻き起こり……。プレゼンテーションが終わった際の、ひときわ大きな拍手が印象的でした。

「最初は瓢箪の特産品などを開発して町に来てくれる人を増やすのが町おこしに繋がると思っていたのですが、秀吉の活動を通じてうれしいのは、瓢箪ランプを作った地元の子どもやお母さんたちの笑顔と出会えること。外から人を呼ぶだけではなく、町に暮らす人たちが笑顔になって、元気になることも、大切な町おこしなんだと気付くことができました」(米山さん)

瓢箪倶楽部 秀吉は校内の有志サークルです。別の部活動に所属しているメンバーも多く、できることには限りがあるといえるでしょう。でも、まずは「自分たちにできることを始める」こと。そして「楽しみながら続ける」ことで、新しい気付きを得て、次のステップが見えてくることがあるのです。

みなさんは日本の歴史の中で、「養老」という元号が使われていたことをご存じでしょうか。今年は、養老改元1300年に当たり、養老町ではさまざまな催しが開催されています。プレゼンテーションの最後には「11月に養老公園で開催されるイベントで、瓢箪ランプのイルミネーションを実施するので、ぜひ養老町に遊びに来てください」と、米山さん。しっかり町のアピールもしてくれました。

グッドライフカンファレンス 瓢箪ランプ写真会場には、米山さんが持ってきてくれた瓢箪ランプも飾られました。

第5回グッドライフアワードは応募受付中。環境と社会に良い取組の応募をお待ちしています!

4名のイノベーターのプレゼンテーションでは、それぞれの取組の内容や意義がわかりやすく説明されたばかりでなく、エコソーシャルな取組を立ち上げ、継続していくためのポイントが具体的に示唆されて、有意義なカンファレンスとなりました。

最後に、主催者からのメッセージとして環境省環境計画課の山田哲也計画官が、今年度の『環境白書』の概要と、グッドライフアワードにも結びつくアクションのポイントなどについて解説。5回目となるアワードへの応募を呼びかけました。

グッドライフカンファレンス 山田哲也計画官写真

全プログラムが終わった後は、会場内で名刺交換などを行う交流会を実施しました。

グッドライフアワードでは、今後もエコソーシャルなイノベーターや、地道な活動に取り組む人たちを結びつける役割を果たしていくことをめざしています。そのためにも、より多くの方から、多彩な取組事例の応募をいただきたいと考えています。

今年の募集締め切りは9月30日です。次はあなたの出番です。ぜひ、ご応募ください。

応募要項はこちら