ホーム > 環境研究総合推進費 > 評価結果について > 研究課題別評価詳細表

研究課題別評価詳細表

II. 中間評価

中間評価  3. 循環型社会部会(第3部会)

研究課題名:【3K123001】使用済み自動車(ELV)の資源ポテンシャルと環境負荷に関するシステム分析(H24〜H26)
酒井 伸一(京都大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ 使用済み自動車(ELV)の3Rと廃棄物管理に関するシステムについて、欧米とアジアの比較研究を行い、リサイクルを中心とした制度やリサイクルの実態の類似点や相異点に関する知見を得る。日本のELVリサイクルに関連する回収部品や自動車シュレッダーダスト(ASR)などを対象に、資源性と有害性に関連する物質としてレアアース成分やベースメタル成分、重金属類成分、難燃剤成分の化学成分分析を行い、物質フロー推定や今後の3Rや廃棄物管理の基礎データを提供する。また、アジア地域のELVリサイクルへの取り組みについて、ベトナムを中心にELVの排出とリサイクルの実態、環境関連試料の分析化学に関する情報を得る。資源性物質や温室効果ガスなどを指標に物質フロー解析を行い、ELVリサイクルを中心にライフサイクル的に検討を行う。リサイクルの程度やASR処理方法によるシナリオ分析から、資源性と有害性の観点から、制度と技術を中心にELVリサイクルの今後に向けての知見を集約する。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123001 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3001

<本年度の目標>

2012年度は、ELVリサイクルの世界的な動きと資源性物質や有害物質の存在・挙動に焦点を当てて、次の4つの研究や調査を行うこととした。
(1)ELVリサイクル制度を有する国や地域の制度比較を行うことにより、それぞれの制度の特徴や効果を考察するとともに、3R適用技術やASR管理についての現状を整理し、ELVリサイクルシステムの現状と将来を論考する。また、(2)ELV中の資源性物質や有害物質の含有状況を明らかにすることを目的に、使用済従来車及び次世代車の解体調査を行う。自動車部材および車内ダストに含まれる有機臭素系難燃剤(BFRs)および臭素化ダイオキシン類(PBDD/Fs)等を定性・定量する。さらに、(3)鉛バッテリは必須の自動車構成部材であり、世界の鉛需要の8割を占めるが、そのリサイクル過程での鉛汚染が懸念されており、アジア地域のある鉛バッテリーリサイクル施設におけるヒトへのPb暴露実態解明と健康リスク評価を試みる。

<本年度の成果>

欧米とアジアの政策立案者やその経験者、研究者等を招聘した国際ワークショップから、ELVを法令により管理する国は、EU、韓国、日本、中国、台湾の1地域4か国であること、その背景には環境保全上及び資源保全の観点からELVリサイクルに対してEPR概念を導入し、リサイクル責務を明示的に制度に位置付けているとみられること、日本はASRリサイクルを義務付けており、その費用をユーザが負担する仕組みであることが他との大きな違いであることを確認した。ハイブリッド車や電装車にはレアメタル・レアアースとしてNi、Mn、In、B、Ti、Sr、Zr、Pd、Sb、がおしなべて100ppm以上、有用金属としてAu、Agの含有が確認された。国産自動車46台と外車6台からの27測定部材のうち16試料において、臭素化ジフェニルエーテルもしくはヘキサブロモシクロドデカンが検出された。ベトナム北部の鉛バッテリーリサイクル従事者とその対照者の毛髪や血液中の微量元素濃度を比較したところ、PbおよびSbはリサイクル従事者で有意に高値を示すことが分かった。

2.委員の指摘及び提言概要

今のところ、解体して資源ポテンシャル・インベントリーの素表を得たことが輝いているのが目立っていて、「システム分析」にふさわしい、サブシステムのリンクがまだなされていないので強力に進められたい。丁寧なデータ取りからの成果(今年度の解体分析など)を期待したい。ベトナムでの調査は、全体の中での位置づけが不明確であるなど、血中濃度の調査が浮いているように感じる。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123002】静脈産業の新興国展開に向けたリサイクルシステムの開発とその普及に係る総合的研究(H24〜H26)
細田 衛士(慶應義塾大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージアジア新興国における経済発展のトップランナーである中国のリサイクルシステム構築に向けた日中の政策課題を具体的に把握し、詳細な検討を加えるとともに、その実現に資する制度設計の在り方を先行的に示すことが、我が国の静脈産業の海外展開及びメジャー化に道筋をつける上でも重要な研究課題となるものと考えられる。特に静脈産業が未成熟な中国では、ロジスティクス面での改善余地が大きく残されており、静脈物流システム研究の推進も重要な研究課題として位置づけられる。さらに我が国の静脈産業は高度な技術を有する反面、新興国側の処理技術に対するニーズは多岐に亘っており、且つスケールメリットを優先する処理手法が優先されるという点でニーズとシーズの齟齬が見られる。こうした問題を解決する上でも、処理技術・システムの現地化を前提とした開発実証は、前述の課題とともに重要課題となる。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123002 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3002

<本年度の目標>

政策課題研究及び静脈物流システム研究については、現地調査と先行研究のサーベイにより研究フィールドとなる中国の都市における廃棄物処理・静脈物流の現状把握を行う。特に、現状で発生している問題点や、処理事業者及び静脈資源の収集を行っている事業者の経営構造、静脈物流における民間セクターと公的セクターの関わり方、中央及び地方政府の法制度・運用実態についての把握を行う。また、廃プラ、廃金属など収集されている代表的品目・資源とその処理・回収ルートを決める要因などに関する基礎的情報の収集準備を行う。技術開発実証研究については、日本のリサイクル技術を、中国及びアジアの現地でビジネスレベルでの実用化とするためのカスタマイズ化の実証研究として(1)「廃蛍光灯希土類含蛍光粉高効率回収」、(2)「電機電子機器類からの有価金属回収」等リサイクル技術の現地カスタマイズ化のための技術開発並びに実証事業を開始する。

<本年度の成果>

中国の現地調査と先行研究のサーベイを実施し、廃棄物の再生利用、生態工業園及び静脈物流の現状把握、中国の廃棄物・循環経済政策の整理等を行った。また、日本のリサイクル技術(廃蛍光灯希土類含蛍光粉高効率回収、電機電子機器類からの有価金属回収)を、中国及びアジアのビジネスレベルで実用化するため、現地における処理実態の把握、システム開発の検討を行った。日中政策課題研究及び静脈物流システム研究については、文献調査及び研究会の開催などにより先行研究のサーベイを実施した。調査では、中国が「以旧換新」と呼ばれる家電買い換え促進制度から家電リサイクル法制度への移行期にあり、また中国経済や国民所得等に関し複雑な時期にあることを背景に、現状の実態・問題点の把握を進めた。技術開発実証研究については、委託先において調査・研究を実施しており、都度連絡を取りつつ進捗の確認を行った。

2.委員の指摘及び提言概要

新興国展開を一般化してゆくことを3年間で実行する計画にとって、中間発表時の進展を判断しうる材料となっておらず、具体的にどれぐらい進んでいるのかが判断できない。また、中国の政治的、社会的現実の下で、中国のみの調査で足りうるかどうかが課題として残ることから、比較的やりやすいタイから行うのが適当ではなかったか。

3.評点

   総合評点:B  ★★★☆☆


目次へ

研究課題名:【3K123003】繊維強化プラスチック材の100%乾式法による完全分解と強化繊維の回収・リサイクル技術(H24〜H26)
水口 仁(信州大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ我々が独自のアイディアに基づき、新規に開発した「半導体の熱活性」技術を基礎に、FRP(繊維強化プラスチック)の完全分解を行い、強化繊維の回収とリサイクルを達成することが全体目標である。まず、回収された強化繊維の材料物性評価が必要で、強化繊維をリサイクルする為には強化繊維がFRPの分解過程で損傷を受けない処理システムの開発が大前提となる。さらに、採算性のあるFRPリサイクル・システムの構築が急務である。特に、FRPの連続分解装置の試作とこれと連結させるVOC(揮発性有機化合物)浄化装置の実装技術を確立し、3年後の実用化を目指す。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123003 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3003

<本年度の目標>

①我々の「半導体の熱活性」技術を用いてFRPのポリマー母体のみを分解し、そこから回収されてグラス・ファイバーならびにカーボン・ファイバーの物性評価を行うこと。電子顕微鏡、X線回折、ラマン・スペクトル、熱重量分析、X線光電子分光法により、種々の角度から単繊維の評価を実施する。
②平板状FRPと任意形状のFRPの連続処理装置を試作すること。特に、一連の流れとして分解作業を行うトンネル型と半バッチ方式(半自動方式)で作業を行うゴンドラ型の2機種を試作する。
③FRP連続分解装置と連結させて用いるVOC浄化装置の抜本的な改良を行うこと。

<本年度の成果>

①回収した強化繊維をSEM、ラマン、X線回折、光電子分光法でキャラクタリゼーションを行い、強化繊維はほぼ無傷で回収されることを示した。また、半導体の熱活性(TASC)プロセスによりサイジング剤も除去されていることが判明した。
②トンネル型ならびにゴンドラ型のFRP連続分解装置を試作し、本格的な実用化を見据えた検討を行った。
③VOC浄化装置の抜本的な改良を行い、従来装置に比べ、大きさ、重量が1/10、かつ投入電力が1/3の画期的な装置を開発した。
④部分損傷したFRPのTASC法に基づく修復技術を構築した。
その他、特許申請4報、学術論文2報、2つの国際学会に参加し、3報の発表、国内学会で3つの発表を行い、新聞、雑誌にも取り上げられた。

2.委員の指摘及び提言概要

処理困難とされてきたFRPの処置の技術としては、開発の必要性があり、また応用方面(適した)の開拓をもっと考えたらよい。カーボン・ファイバーを回収する方向での技術実証を考えると、触媒として塗布したクロムのゆくえを含めたマスバラを明確にして、システムとしてのデザインを3年目には考察してほしい。スケールアップの検討が重要であり、ガス回収を含めて、多面的な展望を3年間でまず整理してほしい。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123004】地域エネルギー供給のための廃棄物系バイオマスのガス化/多段触媒変換プロセスの開発(H24〜H26)
川本 克也((独)国立環境研究所)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ廃棄物系バイオマスをガス化しその後触媒改質することで生成するH2、CO、CO2等含有ガスについて、異なる温度でさらに触媒を用いて質変換し、付加価値のあるCO やCH4を高効率回収するガス化/多段触媒変換プロセスを開発し、同時に、排出ガス中CO2組成を5%以下とすることをめざす。また、ガス化への酸素供給システムを開発し、電解質と燃料極触媒の最適な組合せを見出し、実装の可能性を示すとともに仕様を決定する。第一段改質触媒開発に関しては、主にハステロイとコバール合金について触媒成分等のドープを行い、高活性かつ連続操作で72時間以上の耐久性を示す触媒を開発する。ガス質変換用メソポーラス触媒の最適な工業的合成法を確立し、逆シフト反応およびメタン化反応への適用性と性能を定量的に明らかにする。これらの開発要素技術を実際の地域に適用するシミュレーションを通じて、総合システムの最適な導入条件と成果を提示する。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123004 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3004

<本年度の目標>

ガス化工程への電気化学的酸素供給システムを確立するため、電解質のスクリーニングと反応を伴う酸素透過の特徴を明らかにする。第一段改質触媒の開発に関しては、各種合金のスクリーニングから有効な合金を選定し、キャラクタリゼーションにより反応性と構成元素の関係を考察する。バイオマスを用いたガス化ガス改質試験に開発触媒を種々の条件で適用し、得られるガス組成とタール等の分解性により有効な触媒系を見出す。第二段改質触媒とするメソポーラスシリカ担体SBA-15に関し、担体合成後Niを担持するポスト合成法と合成原料とNiを同時に混合する直接合成法との2調製法間で、構造形成への効果をX線回折法等によるキャラクタリゼーションにより比較し、ガス質変換のための逆シフト反応およびメタン化反応への適用性能から有効な触媒を決定する。一方、地域適用へのプロセス効率と経済的な成立要件に関し、負荷シミュレーション等を行って明確にする。

<本年度の成果>

50℃でのガス化および触媒水蒸気改質によって、組成40%のH2と16%のCOガスが得られ、35%程度のCO2も共存するガス特性と触媒性能を明らかにした。メソポーラスシリカ触媒系NiO/SBA-15が最も効果が高く、ハステロイ合金はNiO、CeO2の併用が効果を増した。第一触媒変換開発でのCO2改質には、Coを多く含む安価なコバール合金が高活性であった。固体電解質型燃料電池O2供給システムでは、安価な素材マイエナイトがO2透過性に優れ有望と判断された。システムの反応熱が活用できることも示唆された。第二触媒変換開発においてNiO/SBA-15は、二通りの合成法でNiO位置分布等の微細構造が相違した。ガス中に豊富なH2・CO2からCOへの高温逆シフト反応、低温でのメタン化反応触媒に応用し、反応諸特性や転換効率等について合成法と関連づけて明確にした。地域での開発プロセスの実用化に照らしてエネルギー回収率等を評価し、優れた地域システムになり得ることを示した。

2.委員の指摘及び提言概要

技術研究としての興味は深いものの、社会的な実装を考えたときに本研究の持つ意義は大きいとは言えない。特に、触媒方式の研究開発と実装に向けてのシステムデザインが有効に結びついていない印象があるので、研究を触媒開発に特化し、地域適用システム解析は継続の必要がないと考える。

3.評点

   総合評点:C  ★★☆☆☆


目次へ

研究課題名:【3K123005】破砕・凝結プロセスを伴う生物スラッジの超高圧圧搾脱水法の開発(H24〜H26)
入谷 英司(名古屋大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ破砕・凝結プロセスを伴う超高圧圧搾脱水法を提案し、その有効性を検証する。破砕・凝結プロセスでは、超音波照射、ビーズミル、ホモジナイザー、エレクトロポーレーション、ジェット噴流など、種々の手法を試み、フロック内の束縛水の放出量、表面特性の変化、凝結の程度等、それらの優劣を検討して第一段階の低圧圧搾で脱水速度を最大にするために最も効果的な操作法と操作条件を見出す。ステップ超高圧圧搾では、フロックの崩壊が容易な破砕・凝結プロセスの操作指針を得るとともに、超高圧作用下で達成できる脱水ケークの含水率の限界値を汚泥性状と関連付けて明らかにし、超高圧圧搾の最適操作条件を見出す。これらを綜合して、破砕・凝結プロセスとステップ超高圧圧搾からなる難脱水性生物スラッジの一連の高速減量化プロセスに対する最適操作法を提示する。数値目標として、総脱水時間として現存技術に対して70 %短縮、含水率として30 %減を掲げる。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123005 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3005

<本年度の目標>

●超音波照射、ビーズミル、ホモジナイザーによる破砕・凝結プロセスの確立と超高圧脱水機構の究明
代表的な難脱水性生物スラッジである下水余剰汚泥を対象に、破砕・凝結プロセスとステップ超高圧圧搾とを融合した高効率の高速脱水法の適用の可能性を脱水速度と脱水度の両面から探求する。
破砕・凝結プロセスでは、超音波照射、ビーズミル、ホモジナイザー等による破砕法を検討し、一端フロックを崩壊させることによりフロック内の束縛水を放出させるとともに、破砕によりスラッジ表面の特性を変化させ、スラリー中のイオン等を利用して凝集剤を添加することなく緩い凝結フロックを形成させる。汚泥粒子やその凝結・崩壊フロックへの水の様々な結合状態を調べるとともに、圧搾圧力とケーク脱水度との関係を明らかにし、本手法の有効性を検証する。数値目標として、総脱水時間として現存技術に対して50 %短縮、含水率として20%減を掲げる。

<本年度の成果>

代表的な難脱水性生物スラッジである下水余剰汚泥を対象に、破砕・凝結プロセスとステップ超高圧圧搾とを融合した脱水法の適用の可能性を検討した。
汚泥フロックの破砕法として、超音波ホモジナイザー及びガラスビーズ式破砕機を用いる手法を検討した。超音波ホモジナイザーを用いた場合、超音波照射により汚泥フロックが破砕され、粒径が著しく小さくなったが、その後撹拌を行うことで破砕前のフロックよりも大きなフロックを形成することが明らかとなった。また、スラリーの塩濃度を大きくすることで、より大きなフロックとなることも確認された。この破砕・凝結プロセスを経た汚泥を用いて10 MPaで超高圧圧搾したところ、未処理汚泥と比較して脱水速度が大きくなり、また最終含水率が26.9%となった。これは現存技術の60〜70%を遙かに凌ぐ極めて低い値であり、本手法の有効性が確認できた。

2.委員の指摘及び提言概要

前処理(破砕・凝結プロセスのメニュー、高圧フィルターの選定等)の実用化に進まれたい。しかし、搾出液SSがゼロというバウンダリー設定を含めてリアリティのあるインプット・アウトプットを再検討してほしい。乾燥方式の汚泥と超高圧脱水の30wt%の汚泥では、その後の最終処分の扱いも異なり、「最適評価」といわれる評価基準や評価方式のシナリオが変わってくるからである。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123006】起泡クロマトによるGaの選択回収プロセスの確立とレアメタル回収への展開(H24〜H26)
ニ井 晋(名古屋大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ実際の廃棄物を原料として、夾雑物が共存する溶液からガリウムを回収率100%かつ高い分離度と濃縮率を実現し、単離するための高効率プロセスの開発を行う。また、起泡クロマトの優れた特徴である大型化による分離性能の向上について装置規模と性能の関係を明らかにする。さらに、標的金属をガリウム以外のレアメタルに拡大するために、適切な界面活性剤と金属の組み合わせを探索して起泡クロマト分離を行い、高度分離を実証することを目標とする。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123006 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3006

<本年度の目標>

装置(塔径)の大型化、すなわち塔径30 mmから60 mmへの拡大による分離性能向上の発現メカニズムに関する検討を行う。泡沫層を特徴づける因子である泡径と液ホールドアップを種々の条件下で測定し、夾雑物を有効に洗浄することのできる泡沫層内の液流動状態を解明する。また、界面活性剤(PONPE20)によるガリウムの選択捕集機構を解明するため、異なるエチレンオキシド鎖長の混合物である、市販のPONPE20試薬を精製して10種に分画して起泡クロマトを行い、ガリウムの選択捕集の鍵となるエチレンオキシド鎖長を特定する。さらに、高酸濃度溶液中の金属と界面活性剤との相互作用を探索するためのツールとして、PONPEで被覆されたポリマーモノリスカラムを開発し、PONPEと金属イオンの相互作用の評価を行う。

<本年度の成果>

装置(塔径)の大型化による分離性能向上の発現メカニズムに関して、泡沫層を特徴づける因子である泡径と液ホールドアップを種々の条件下で測定し、最適な泡径と液ホールドアップの値および分布を明らかにした。また、市販のPONPE試薬を精製して得られたオキシエチレン鎖長の異なる成分を用いて起泡クロマト分離を行い、ガリウムの選択捕集の鍵となるエチレンオキシド鎖長を特定した。さらに、高酸濃度溶液中の金属と界面活性剤との相互作用を探索するためのツールとして、PONPEで被覆されたポリマーモノリスカラムを開発してPONPEと金属イオンの相互作用の評価を行い、PONPEと金属との相互作用の強さは、オキシエチレンエチレン鎖長よりも、オキシエチレンユニット数に強く依存することがわかり、金属捕集に対しては、PONPEのポリマー鎖構造の寄与が小さいことが示唆された。

2.委員の指摘及び提言概要

太陽電池パネルの廃棄物処理の技術開発の課題にこたえる研究として、将来に有用性があると考えられる。ただし、実験室における経験的成果の報告にとどまっており、塔径を大きくしたときの液下降方法、回収金属に最適な界面活性剤の選択、気泡径の制御方法など、実廃液およびスケールアップについての検討を期待する。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123007】微生物によるバイオディーゼル廃グリセロールからの燃料生産(H24〜H26)
中島 敏明(筑波大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ本研究では研究代表者が新たに自然界から取得した細菌(Klebsiella variicola)によるBDF廃液からのバイオエタノール生産を試みる。本菌株は純グリセロール培地よりも、実際のBDF廃液を用いた培地において高い生産性を示すのが特長である。本菌株に変異処理を行い、生産性とエタノール耐性を向上させる。さらに、高濃度の菌体を用いた反応装置(リアクター)を構築し、最終的なエタノール生産量を蒸留可能な濃度に向上させる。
また、本菌株はエタノール発酵を行うと同時に、副生するギ酸で廃液を中和・無害化することが明らかとなっている。ギ酸はメタン発酵の良い原料であるため、エタノール生産後の廃液からのメタン生産を行う。廃グリセロール溶液に含まれる高濃度ナトリウムの影響を低減する運転条件を検討する。
最終的に、これら2つのバイオ技術を実用的に組み合わせ、BDFの原料となるパーム油等の植物油脂や廃食用油の性状や量の変化に着目して、経済的に最適な運転条件を検討する。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123007 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3007

<本年度の目標>

バイオディーゼル廃グリセロールからエタノールと蟻酸を生産する微生物、Klebsiella variicola TB-83, 84株に紫外線照射等の変異処理を用いて、エタノールに耐性な変異株の取得を行う。
これと平行して高密度培養による菌体の大量調製とリアクターの構築を試みる。各種培養条件、培地条件を再検討し、エタノール生産に最適な培地組成、運転条件を明らかにする。
さらに、代謝工学によるエタノール転換プロセスの最適化を試みる。13Cラベルされたグリセロール等を用いて、本菌株におけるグリセロール代謝からエタノール生産に至るまでの代謝フローを明らかにする。さらに、本菌のゲノム情報を元に、関連遺伝子を特定し、これに遺伝子工学的改変を試み機能向上を目指す。

<本年度の成果>

Klebsiella variicola TB-83, 84株のうち、より生産性の高かったTB-83株に紫外線照射・及び変異剤(EMS)を用いた変異処理を行い、エタノールに耐性な変異株を取得した。また、培養条件の検討結果より、新たに蟻酸に対する耐性付与の必要が生じたため、このエタノール耐性株を用いて、さらにギ酸耐性能を有した変異株の取得を行った。
同時に、高密度培養による菌体の大量調製とリアクターの構築を試みた。本菌株によるエタノール生産には休止菌体系は適さず、培養系を用いた場合に高い生産性を有することを明らかにした。また、その高密度培養には担体を用いるよりも浮遊系による連続培養が適していることを見いだした。加えて、栄養塩の検討によって最終的に最高で初期の1.8倍の生産量向上を達成した。
続いて、本菌株におけるグリセロール代謝とエタノール生産に関する代謝フローを明らかにした。また、本菌株の全ゲノム情報を取得し、関連遺伝子群の特定を行った。

2.委員の指摘及び提言概要

研究は順調に進んでいる。しかし、実用化、事業家には大きな距離があるのでは。グリセリン処理の負荷が圧倒的に少ない廃食用油からのバイオディーゼルを酵素法で作る某実装プロジェクト等など、比較対象(地域循環モデル)がいくつかあるので、プラント化の検討の際に考慮してほしい。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123008】微生物を利用した地域バイオマスキノコ廃菌床からの化学工業原料生産システムの開発(H24〜H26)
高久 洋暁(新潟薬科大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ経済的豊かさと高利便性の生活を支えてきた従来の生産プロセスは、主に石油を原料とし、エネルギーを大量消費するプロセス(石油リファイナリー)である。しかし、このプロセスは化石資源枯渇、地球温暖化、ダイオキシン類による環境汚染など地球的規模の問題を引き起こしている。そのため、カーボンニュートラルで再生可能なバイオマスを用いた環境低負荷のエネルギー・環境調和型循環産業システムによる物質生産、すなわち微生物を利用したバイオプロセスによる生産システム(バイオリファイナリー)への早期転換が必要である。バイオマス原料は、環境条件による年次変動、季節変動、世界情勢問題を克服できる安定供給性を持ち、さらに食糧自給率の低い日本では食料と非競合でなければならない。。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

このような条件をクリアできるバイオマスとして、全国2位のキノコ生産量をほこる新潟県ではキノコ廃菌床の地域バイオマスがあげられる。廃菌床は、セルロース、ヘミセルロースを多く含み、年間を通じてキノコ工場から毎日一定に排出・集積されているので、今の日本で事業化に直結できる最有力の非可食バイオマスである。この廃菌床を、1)環境低負荷型糖生産システムの開発、2)廃菌床糖化溶液からのDOI発酵高生産組換え大腸菌の開発を介して、今まで石油から生産されていた付加価値の高い化成品原料を生産し、石油リファイナリーからバイオリファイナリーへのパラダイムシフトによる持続型循環社会の構築、地球環境問題に貢献する

■3K123008 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3008

<本年度の目標>

(1)環境低負荷型糖生産システムの開発
①次世代シークエンサーを用いたゲノム解読およびcDNA解読を行い全ORFの解読を行い、マイタケ菌改良の基盤構築。②突然変異法による生物的前処理能力向上株の取得。③生物的前処理済み廃菌床の酵素糖化を促進させるリグニン分解酵素、へミセルロース分解酵素を添加効果による糸状菌での発現ターゲット酵素の選抜。
(2)廃菌床糖化溶液からのDOI発酵高生産組換え大腸菌の開発
①DOI合成酵素変異遺伝子ライブラリーを構築し、高活性型DOI合成酵素を取得。②DOI合成酵素結合蛋白質BtrC2の利用によりDOI合成酵素の高安定化。③DOI合成酵素基質のG6Pを速く、多量に細胞内に蓄積する大腸菌を構築。④大腸菌破壊株コレクションからDOI低感受性及び耐酸性株を取得。

<本年度の成果>

(1)環境低負荷型糖生産システムの開発
①マイタケ菌のゲノム解読を行い、マイタケ菌改良の基盤構築を行い、マイタケ用カスタムマイクロアレイチップを構築した。②マイタケ リグニン分解能力強化株取得のための変異株造成システムを構築した。③生物的前処理済み廃菌床の酵素糖化において2種類のリグニン分解関連酵素と1種類のへミセルロース分解関連酵素は糖化率を上昇させることを見出した。
(2)廃菌床糖化溶液からのDOI発酵高生産組換え大腸菌の開発
①DOI発酵生産性を野生型より1.3倍程度上昇させる高活性型DOI合成酵素の取得に成功した。②DOI合成酵素結合蛋白質BtrC2は、DOI合成酵素に結合し、酵素を安定化するが、活性を抑制することを明らかにした。③DOI合成酵素基質であるG6Pの蓄積抑制に関与するmlc遺伝子の欠失株を作製した。④大腸菌破壊株コレクションからのDOI低感受性大腸菌株を取得するためのスクリーニングシステムを構築した。

2.委員の指摘及び提言概要

基礎研究としては成果が上がっている。実装置としての実証を行う過程で、雑菌が増えないような手法の検討や、不純生成物の制御と効果的分離についても注力が必要である。また、個々の研究課題は順調に進んでいるので、課題タイトルにある「生産システムの開発」に力を入れてほしい。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123009】ハロモナス菌による木材から3-ヒドロキシ酪酸等の生産技術開発に関する研究(H24〜H26)
河田 悦和((独)産業技術総合研究所)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ独自菌株ハロモナスKM-1株を用い、木材から3-ヒドロキシ酪酸等を生産する基礎技術を確立し、持続可能社会実現に向けた環境政策へ貢献する。
実用化を目指すにあたり、培養速度の向上、培養阻害物質に対する一層の対策、など多くの課題が存在する。これらを克服し、商業的な生産の指標である生産量100 g/L、生産速度1.0 g/L/hを目標値に、木材から3-ヒドロキシ酪酸等を分泌する条件を確立させる。この目標を達成するため以下の2課題について検討を行う。
①木材糖化液等からのリファイナリー生産に関する研究
純粋な炭素源を用いた培地を用い、3-ヒドロキシ酪酸の生産の限度を確認し、その知見から木材糖化液の高効率利用を検討する。
②木材糖化液中の発酵阻害物質対策を目指した研究
微生物の生育を妨げる培養阻害物質を測定し、これらを低減するため糖化の手法を検討する。一方、ハロモナス菌についても阻害物質への耐性向上に向けた、突然変異誘導や馴化を検討する。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123009 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3009

<本年度の目標>

木材からハロモナス菌による3-ヒドロキシ酪酸等生産技術開発に関する研究
商業生産の目標値の50%である生産量50 g/L、生産速度0.5g/L/h達成を目指す。
①木材糖化液等からのリファイナリー生産に関する研究
木材糖化液を用い、ハロモナスKM-1株の成長速度、3-ヒドロキシ酪酸の生産速度などについて、純粋なグルコース、キシロース、アラビノース等の混合物と比較する。最終目標の50%、生産量50 g/L、生産速度0.5 g/L/h生産を目指す。培養阻害物質への耐性を向上させるため、各種の木材糖化液を用いて継代培養、培養阻害物質への馴養を行う。
②リファイナリー生産に適した木材の糖化技術開発
製造コストを考慮しつつ、生育阻害物質への耐性を検討するため、各種糖化手法による木材糖化液を炭素源として利用可能か検討する。純粋なグルコースを炭素源とした場合と比べ、50%の生育速度、3-ヒドロキシ酪酸の生産効率が得られることを目標とする。

<本年度の成果>

①木材糖化液等からのリファイナリー生産に関する研究
グルコース等純粋な炭素源を用いた培地を基準に、3-ヒドロキシ酪酸の生産の限界を検討し、総72時間で37.0 g/L、0.51 g/L・hを達成した。生産量は及ばないものの、生産性は目標値を達成した。ポリマーの蓄積量は70 g/Lを達成していることから、最終的な目標値は達成可能である。
さらに、木材糖化液100%に栄養塩を加えた培地で、本菌が生育可能なこと、PHBの生産、3-ヒドロキシ酪酸の分泌が可能なことを確認した。
②木材糖化液に対する耐性の向上の研究
培養阻害物質への耐性を向上させるため、ハロモナスKM-1株を、木材糖化液などを用いて継代培養、馴養を行っている。現時点ですでに100%の木材糖化液で生育可能なため、より耐性の向上、3-ヒドロキシ酪酸の生産向上をめざし、菌体の変異株の作成、電子顕微鏡観察等を行った。

2.委員の指摘及び提言概要

PHB生産へのメインストリームはラボスケールでは明確になっており、研究自身は着実に成果があがっている。但し、もう少し研究のプロセスを明確化する必要がある。前提となるスギ間伐材の糖化での125円/kg(実証プラント)からの流れが社会システムから見ると単純過ぎる。スケールや装置バウンダリーのマスバラと原料調達のシステムコスト(山林)を再考してほしい。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123010】廃有機溶剤の効率的再生処理技術の実用化(H24〜H26)
田中 茂(慶應義塾大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ様々な工場、事業所から使用済みの廃溶剤を迅速・効率良く再生するために、「空気流動真空蒸発法」を用いた廃溶剤の再生処理技術を実用化する。廃溶剤を噴霧ノズルで真空容器内へ噴霧し、真空容器内に空気を流動させ、廃溶剤中の揮発性有機化合物(VOC)を効率良く蒸発させることで取り除き廃溶剤を再生する。また、真空容器内で廃溶剤から蒸発したVOCは真空ポンプから排気され、2段の冷却凝縮装置により水とVOCをそれぞれ回収する。
再生処理装置を試作し、「空気流動真空蒸発法」のパラメーターである①真空容器内圧力、②導入空気流量、③除去液導入方法、④真空容器内の蒸発温度、⑤蒸発係数等について最適化を図る。また、VOCが蒸発し再生された溶剤は、電磁弁の切り替えで、真空容器に直結された2つの貯留タンクへ交互に回収し、連続再生処理により大量の廃溶剤の再生処理を可能にする。廃溶剤の再生処理能力は60L/h(1440L/日)とする。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123010 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3010

<本年度の目標>

「空気流動真空蒸発法」を用いた廃溶剤の再生処理装置を設計・試作する。具体的には、半導体製造ラインでの乾燥過程で使用される有害なイソプロピルアルコール(IPA)蒸気を除去液で吸収除去し、IPAを含む廃溶剤からIPAを蒸発分離し廃溶剤を再生する。一方、蒸発分離したIPAを冷却凝縮して回収する「空気流動真空蒸発法」を用いた廃溶剤の再生処理装置を実現する。環境省のVOC排出量推計結果によれば、平成21年度にIPAは29,529tと大量に排出され、その削減が急務となっている。
「空気流動真空蒸発法」による除去液中IPAの理論的考察を基にして、廃溶剤中IPAの再生処理装置により、除去液からのIPAの蒸発分離の主なパラメーターである①真空容器内圧力、②導入空気流量、③除去液導入方法、④真空容器内の蒸発温度、⑤蒸発係数等について、その最適化を検討する。また、-80℃に設定された冷却管で蒸発したIPAを冷却凝縮して99%以上回収することを検討する。

<本年度の成果>

平成24年度は「空気流動真空蒸発法」を用いた廃溶剤の再生処理装置を設計・試作した。具体的には、半導体製造ラインでの乾燥過程で使用される有害なイソプロピルアルコール(IPA)蒸気を除去液で吸収除去し、IPAを含む廃溶剤からIPAを蒸発分離し廃溶剤を再生する。一方、蒸発分離したIPAを冷却凝縮して回収する「空気流動真空蒸発法」を用いた廃溶剤の再生処理装置を実用化した。
廃溶剤中IPAの蒸発分離の主なパラメーターである①真空容器内圧力、②導入空気流量、③除去液導入方法、④真空容器内の蒸発温度、⑤蒸発係数等について検討し、廃溶剤中IPAの再生処理装置の最適化を行った結果、廃溶剤を50℃で真空容器内へ噴霧することで、廃溶剤中IPAをリアルタイムで90%以上蒸発分離することができた。また、-80℃に設定した冷却管へ排気ガスを流し蒸発したIPAを冷却凝縮して98.9%回収できた。

2.委員の指摘及び提言概要

空気流動真空蒸発法をコア技術として用いているが、DCM対応の印刷工業の場でのシナリオが入っていない。また、IPAの実相に向けての試みとその一般化の考察を加えるべきである。特に、コスト比較等、社会との関係を詳細に検討する必要がある。

3.評点

   総合評点:B  ★★★☆☆


目次へ

研究課題名:【3K123011】伝熱管表面改質技術による廃棄物焼却炉発電効率の革新的向上(H24〜H26)
成瀬 一郎(名古屋大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ発電施設を有した一般廃棄物焼却炉では、灰付着に起因した伝熱阻害や廃棄物中に含有している塩化物による高温腐食等による運転障害が生じている。よって、現状、ボイラ効率は平均で約10%と低水準であり、また、付着した灰の清掃のために、数ヶ月に一度の割合で開放点検を行なわなければならず、施設の稼働率低下による効率低減も余儀なくされている。このような観点から、蒸気温度の高温化が望まれてはいるものの、灰付着の増加や塩化物による高温腐食が懸念されるため、現状技術ではその実現が困難であった。そこで本研究では、このような現状を打破するために、廃棄物焼却施設におけるエネルギー回収効率向上を目指した伝熱管の表面改質技術の開発を遂行する。具体的には、まず、廃棄物焼却灰の伝熱管への付着機構を解明した上で、高温界面反応科学に基づいた灰付着を低減可能な溶射材料の開発、実機の焼却炉を想定した溶射施工技術等の開発を行う。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123011 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3011

<本年度の目標>

国内で稼働している2箇所の実機廃棄物焼却炉内において、実際に付着した灰粒子と灰付着層を有している伝熱管を採取し、分析用サンプルを作製する。採取した灰粒子については、SEM-EDS(Scanning Electron Microscope with Energy Dispersive Spectroscopy)ならびにXRF(X-Ray Fluorescence)による元素分析、Micro-XRD(X-ray Diffraction)による化合物分析およびICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光による元素分析をそれぞれ行う。また、灰付着層については、研磨時の灰成分の溶出を回避するため、イオンミリング加工を行った上で、界面近傍の付着層について、SEM-EDS分析、Micro-XRD分析およびCCSEM(Computer Controlled Scanning Electron Microscope)による各灰粒子の組成分布分析を行う。得られた分析データに基づいて、付着機構のモデリングを高温界面科学の観点から行う。また、関連技術の文献調査も実施する。

<本年度の成果>

A市およびS市で実際に稼働している廃棄物焼却炉にて灰粒子と灰付着層を有している伝熱管を採取し、分析用サンプルを作製した。採取した灰粒子および灰付着層についてSEM-EDSおよびXRF分析したところ、付着灰の主な元素成分はCa、Na、S、Cl、Si、AlおよびKであった。これはICP分析の結果とも類似していた。しかし、灰付着層に関しては、粒子状の層ではなく溶融したような層を呈していたのでCCSEM分析は困難であった。なお、イオンミリング加工については、SEM-EDS分析において元素分布を行った際、かなり鮮明な画像が得られたので、有効な前処理法であると判断できた。さらに、次年度の課題ではあるが、付着を抑止可能な溶射材の探索を開始し、まず、熱力学平衡計算によって、その性能を評価するとともに、縦型灰付着炉を用いた灰付着実験も実施した。現状では明確な灰付着低減効果は認められなかったものの、探索した溶射材には廃棄物の特性である塩素による腐食を防止できる可能性を見出した。

2.委員の指摘及び提言概要

研究フレーム的には、廃棄物処理施設の熱利用としての発電の効率性を高くすることの意義がないとは言えないが、従たる目的とのバランスが問題ではないか。廃棄物焼却工場にすでに導入されている溶射や伝熱管の部分更新と比較して、提案されている方式の優位性、発電効率目標(15%以上のより高い)の設定、などで不明点があり、研究計画上、実システムを考えることは前倒しをすること。すでに実務世界の実装の方が、補助金申請により進展している。

3.評点

   総合評点:B  ★★★☆☆


研究課題名:【3K123015】スラッジ再生セメントおよび産業副産物混和材を用いたクリンカーフリーコンクリートの実用化に関する研究(H24〜H26)
閑田 徹志(鹿島建設(株))

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ本研究は,循環型社会形成推進及び廃棄物に関わる問題解決に加え,CO2排出量とエネルギー消費量の抑制に貢献するため,以下の3つの課題の克服を目指して,建設副産物である戻りコンクリートを原料とするスラッジ再生セメント(SRセメント)を主たる結合材とし,フライアッシュ等の副産物混和材を大量添加した超低炭素型のクリンカーフリーコンクリート(以下,RCCFコンクリート)を開発し,プレキャスト製造による鉄筋コンクリート(RC)部材として建設構造物へ汎用的に適用する技術を開発することを目的とする。
I.建設産業に関わる主要な建設副産物である戻りコンクリートの廃棄量縮減と再生利用
II.建設産業によるCO2排出量及びエネルギー消費量の抑制
III.東日本大震災後に重要性を増した石炭灰の廃棄量縮減と有効利用


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123015 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3015

<本年度の目標>

1)コンクリート用スラッジ再生セメント(SRセメント)の開発研究
①達成目標:普通ポルトランドセメントに対する強度比が40%以上
②達成目標の妥当性:SRセメント製造のコストは,バージンセメントの40%以下にはならないことがこれまでの経験からわかっており,開発技術の経済性確保の観点から前記達成目標を設定した。
2)RCCFコンクートの配(調)合方法の確立に関する研究
①達成目標:設計基準強度24N/mm2以上,プレキャストRC部材製造が可能な施工性
②達成目標の妥当性:開発技術の展開先は汎用コンクリート製品であり,同製品の一般的な強度レベルが24N/mm2であること,および同製品の製造がプレキャストにて行われることから達成目標を設定した。

<本年度の成果>

本年度の目標1)に関し,SRセメントの実規模製造実験を実施し,目標品質を確保するため製造プロセス改良を行った。その結果,SRセメントの未水和成分が減少することで品質が低下する夏期の製造においても,スラッジの脱水処理までの時間を一定以下に制御することで普通ポルトランドセメントに対する強度比が40%以上の品質を実現できることが明らかとなった。目標2)に関しては,モルタルおよびコンクリートの練混ぜ実験を実施して,設計基準強度24N/mm2以上,および良好な施工性を達成し,さらには材料構成や結合材水比により圧縮強度を推定する調合方法に目途をつけた。施工性については,フレッシュ時における時間経過に伴う流動性の保持に課題があったが,SRセメントの製造までの過程で逸散していると考えられる石膏を添加することで改善できることがわかった。以上,本年度の研究目標を達成することができた。

2.委員の指摘及び提言概要

セメント強度40%を目標として、プレキャストコンクリート製品を作るプロダクトの道筋は明確で、要素技術の開発としては計画通り研究が進んでおり、成果の活用についても可能性が高いと見られる。なお、分散と集中の度合い、企業チームを超えた逆流通のフロー(戻りコンクリートを集めて、個々のプラントから加工し、準規格の製品を安定してつくる循環型社会システム)のデザインの検討が極めて重要となる。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123016】炭素同位体分析による化石由来二酸化炭素排出量の高精度推定手法の開発と適用(H24〜H26)
平井 康宏(京都大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ目標1:ごみ焼却炉からの化石由来CO2排出量の正確な把握
14C法を廃棄物焼却炉排ガスに適用し、1自治体1年あたりの化石由来CO2排出量の推定精度を、現状の±7.5%(年4回の手選別ごみ組成調査)から、±1.5%とすることを目標とする。
目標2:マスバランス法と14C法とを融合した新手法の開発による低コスト化
排ガス常時監視データの利用が可能であることを前提として、ごみ発電の月毎のバイオマス寄与割合を、従来の手法(手選別組成調査)で把握する場合と同等以下のコストで推定可能とする。
目標3:実機への適用による本測定法の検証
プラスチックごみの処理方式が異なる自治体間(または処理方式を変更する前後)の化石由来CO2排出量推定値を比較し、本手法により施策効果を捉えることが可能であるか検証する。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123016 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3016

<本年度の目標>

バイオマス度の分母にあたる「廃棄物中バイオマスの14C濃度」に着目し、日本の都市ごみにおける代表値ならびにその推定精度を求める。このため、以下を実施する。
・ 樹木成長モデル・住宅寿命モデルを構築し、バイオマス炭素中の14C割合を、木材の生育/伐採年別・住宅の建築年別・建築廃材の排出年別に推定する。また、古紙循環モデルを構築し、古紙中14C割合を推定する。(目標1)
・ ごみ種類別に14C濃度を測定し、木くず古紙についての上記推定結果を検証する。(目標1)
・ 上記で推定・検証した木くず・古紙などの長寿命バイオマス中14C割合ならびに厨芥類などの短寿命バイオマス中14C割合測定結果を、ごみ組成比率で加重平均し、廃棄物中バイオマスの14C割合を求める。(目標1)
・ ごみ組成調査の繰り返し再現性や複合素材製品(木質ボード、家電製品など)の分類の困難さについて検討し、これらの誤差を踏まえた上記14C割合の精度を算出する。(目標1)

<本年度の成果>

モデル推定により、バイオマス炭素中の14C割合は大気核実験前の1950年代に比べ、建築廃材で110%、木製家具で120%、紙類で107%と推定され、建築廃材は今後増加、木製家具・紙類では今後減少との予測結果を得た。
ごみ種類別に14C濃度を測定し、解体木材及び古紙の14C濃度の実測値とモデル推定値はよく一致することを確認した。
上記で推定・検証したごみ種類別の14C濃度を用い、廃棄物中バイオマスの14C濃度の年間平均値は、107.64%±0.73%(標準誤差)との推定結果を得た。ごみ組成比率等の不確実性を確率分布で表現し、平均値のみでなく推定精度も明らかにした。
平成25年度研究計画(排ガス採取)を一部先取りし、実験室での排ガス採取条件検討を経て、実焼却炉で排ガスを採取した。排ガス中14C濃度は、日内変動よりも日間変動の方が大きいことが示唆され、中長期的な変動特性の把握の重要性を明らかにした。

2.委員の指摘及び提言概要

研究の中間段階としては確実に成果を得ているが、バイオマス比率を出力とする算定プロセスに沿った論理の再整理を行うほか、ガス分析に注力すべきである。また、着実に研究目標を達成するためには、各都市におけるごみ組成の違いを把握する必要がある。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123018】湿式分離とイオン液体電析を融合した省エネルギー型レアアース回収技術の開発(H24〜H26)
松宮 正彦(横浜国立大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ使用済HDDを解体した実廃棄物Voice Coil Motor(VCM)を使用し、磁石成分中の鉄族金属を選択的に湿式分離した後、レアアース群の中で特にネオジムとジスプロシウムを効率回収できる省エネルギー型プロセスの確立を最終目標とする。各プロセスの達成目標を以下に示す。
(I)VCM解体・分別
DOWAエコシステム(株)との連携による使用済HDDの回収及びAl系金属群との選別方法の確立
(II)湿式分離工程
鉄族金属の沈殿形成条件の最適化及びラボレベルでの湿式分離率:80%以上を目標とする。また、鉄族金属の分離処理能力を10倍にスケールアップを目指す。
(III)酸溶解・金属塩合成工程
レアアース成分の最適な溶解処理条件を確立する。また、レアアース金属塩の合成を自動化させて、現行生産量の20倍以上の大量生産技術の確立を目標とする。
(IV)イオン液体電析工程
電流効率:80%以上でのレアアース群のイオン液体電析技術の確立を目標とする。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123018 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3018

<本年度の目標>

本年度は各プロセスの単独バッチ試験を基本とした基礎技術の確立を主目的とし、分離性能及び回収効率の向上と技術的改善を目指す。
(I)VCM解体・分別
DOWAエコシステム(株)との連携による使用済HDD回収後、VCM部材の解体を実施する。
(II)湿式分離工程
沈殿分離条件としてアルカリ金属水酸化物を使用しpH依存性を評価後、鉄族金属分離に良好な条件を取得する。
(III)酸溶解・金属塩合成工程
レアアース成分を優先的に溶解させる酸溶解処理の確立及び回収率:90%を目標とする金属塩合成手法の確立。
(IV)イオン液体電析工程
レアアース金属塩を溶解させた電解液に対して、定電位電解による電流効率:80%以上でのネオジム電析技術の確立を目標とする。

<本年度の成果>

使用済家電類のVCMを連携企業側で収集した後、熱減磁〜メッキ剥離〜酸化焙焼〜酸溶解〜湿式沈殿分離〜金属塩合成〜イオン液体電析に至る一連の工程からレアアースの効率回収を検討してきた。
特に湿式沈殿分離による鉄族元素の選択的沈殿形成では、アルカリ金属水酸化物を滴定剤として使用し、その滴定剤組成を検討することで、レアアース群と鉄族元素の分離性能の向上を評価し、ラボレベルで湿式分離率:99.5%上の鉄族金属除去を達成できた。また、鉄族金属除去後のレアアース金属塩合成では回収率:90%以上を達成できた。さらに、レアアース金属塩を電解液とするイオン液体電析工程では、ネオジム電析に対して、電流効率:80%程度を維持した連続的回収を可能とする電解セルの構築を行った。上記プロセスを基盤技術とするレアアース回収技術確立に向けて、連携企業と本大学による共同特許出願まで実施済である。

2.委員の指摘及び提言概要

スケールアップの研究計画が円滑に実施できる見込みがあると評価でき、有用な成果につなげることが期待できそう。電析の技術開発に興味があるが、湿式分離はごく普通の試みであり、システム全体としてのフローを明確にしたうえで、早期にパートナー企業との間で実証計画を進めるべきである。また、平成25年度ではコスト評価を実施する必要がある。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123019】乾式試金法を基にして鉛ガラスを媒介とした廃棄物からの各種金属の回収方法(H24〜H26)
稲野 浩行((地独)北海道立総合研究機構)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ鉛の入ったブラウン管ファンネルガラスと特性が似た模擬ガラスを使い、ガラスから鉛を分離し、無害化するメカニズムを明らかにする。
模擬ガラスに、金、銀、銅などの有用金属やレアメタルなどを加え、金属分離試験(還元溶融および塩化揮発)を行い、各金属の分配を把握し、分離可能な金属については、90%以上分離する条件を見いだす。
実際の廃ブラウン管ガラスに上記金属を加え、金属分離試験を行い、各金属の分配を把握し、分離可能な金属については、90%以上分離する条件を見いだす。
廃ブラウン管ファンネルガラスに電子電気廃棄物などを加え金属分離試験を行い、回収率を把握する。代表的な銅について、回収の目標は80%である。
この金属回収システムをブラッシュアップし、実用化に近づける。
ここで得られた知見を学会等で公表し普及する。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123019 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3019

<本年度の目標>

基礎試験で使用するため、鉛の入ったブラウン管ファンネルガラスと特性が似た模擬ガラスの組成を検討し、作製する。
模擬ガラスを使い、還元溶融試験や熱分析などを行い、鉛ガラスからの鉛分離についてメカニズムを把握し、適正な処理条件を見出す。
模擬ガラスに、金、銀、銅などの有用金属やレアメタルなどを加え、金属分離試験(還元溶融および塩化揮発)を行い、金属がどのように分配されるのかを把握する。
各金属が金属相(鉛)と残渣ガラス相、気相(揮発性塩化物)にどのように分配されるか把握する。

<本年度の成果>

模擬ガラスとして使うガラスの組成を検討し、構成酸化物を4成分に限定し、還元溶融よる鉛分離特性がブラウン管ファンネルガラスと同等で結晶化しないガラス組成を見いだした。
模擬ガラスを使った還元溶融試験や熱分析などを行い、鉛ガラスの還元溶融において、反応がどのように進行し各温度でどのような反応が起こるのかを把握した。
熱力学的データと実際の模擬ガラスの還元溶融試験より、還元剤としてアルミニウムが利用可能であることを確認した。
模擬ガラスに、金、銀、銅などの有用金属やレアメタルなどを加え、還元溶融試験を行い、金、銀、銅、ニッケルは鉛を主とする金属相に分配され回収可能であること、インジウムはガラス相に残ることを見いだした。
還元溶融残渣の塩化揮発試験を行い、最初に添加した金属がインジウムも含め90%以上ガラス相から分離したことを確認した。

2.委員の指摘及び提言概要

廃ブラウン管が国内にそれほどあるのか。ブラウン管処理と廃基盤処理の合わせ技として理解するが、減少する廃ブラウン管ガラスの処理を狙うのも弱く、プリント基盤は燃焼系の金属リサイクルに勝るとは言えないという、双方とも技術的優位性がない。この方法の優位性を再度、明確にする必要あり。

3.評点

   総合評点:B  ★★★☆☆


目次へ

研究課題名:【3K123020】擬似酵素型光触媒システムによるプラスチック混合廃棄物の易分解および部分生分解化(H24〜H26)
中谷 久之(北見工業大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージダイオキシンの発生が懸念される焼却法に代わるべく、プラスチック混合廃棄物の新規処理法の開発を目的とする。目標としては、複数の汎用プラスチック(ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、繊維強化プラスチック(FRP)および塩化ビニル(PVC)等)を同時に易分解および生分解化な成分に変化できる光分解触媒(擬似酵素型光分解)システムの開発である。なお、開発する擬似酵素は、塗布での使用が可能なものとする。その分解能力は、日光照射量数か月程度で、厚さ0.05〜0.1 mm程度の上記のプラスチックを生分解可能な1万以下、もしくは、径0.1mm以下の小片に分解できるものとする。さらに、同日光照射量で、塗布使用により木質中の有害なリグニン成分の20%以上を分解できる能力があるものとする。最終的には、混合廃棄物の安全な処理方法として、擬似酵素型光分解システムの実用化を行う。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123020 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3020

<本年度の目標>

以下の3つを24年度の達成目標とした。
1)環境分解性を確かめるため、TiO2/ポリエチレンオキシド(PEO)擬似酵素システムを混錬し、光分解処理したPPフィルムの水中生分解特性を調べた。達成目標としては、「日光照射量数か月程度の処理で、20×5×0.05 mmのPPフィルムを、水中で微生物により径0.1mm以下の小片に生分解できる。」とした。2)実用化を踏まえ、TiO2/PEO擬似酵素システムの塗布使用を可能とするように改良した。目標分解性能は、分子量40万程度で厚さ0.05 mmのPSフィルムを日光照射量3ヵ月相当で、全量の15%以上を分子量1万以下まで分解できるものとした。3)リサイクルが不可能なFRPにおける、ポリマー部分(PS架橋不飽和ポリエステル)の分解を塗布型擬似酵素システムで試みた。目標分解性能は、日光照射量6ヵ月相当で、1 mm径の不飽和ポリエステル粉末のPS架橋部を切断し、クロロホルムに全量の40%以上可溶とする性能とした。

<本年度の成果>

本年度の成果は以下の通りであった。
1)リン酸カルシウム(OCPC)を含有させた改良型擬似酵素システムによるPPフィルムの水中生分解特性を行い、微生物による生分解80日で灰化率20%、径0.04mmの小片まで生分解を行うことができた。従来型TiO2/PEO擬似酵素システム(灰化率10%)より生分解性が向上する機構を核磁気共鳴(NMR)および質量分析から解明した。並行して2)の塗布型擬似酵素システムの開発をPSフィルムを用いて行った。従来型の擬似酵素システムでは、光分解処理にフィルム表面に架橋相が生成してしまい、内部への光分解を抑制してしまうことが分かった。リノール酸メチル(ML)追加配合すると架橋相が生成せずに内部への光分解が進むことを見出した。その光分解性能は、分子量37万、厚さ0.05 mmのPSフィルムを日光照射量0.5〜1ヵ月相当で、全量の15%を分子量1万以下まで分解できた。2)の成果を踏まえて3)FRP(不飽和ポリエステル)の分解をML塗布型擬似酵素システムで試みた。その成果は、日光照射量6ヵ月相当で、1mm径でクロロホルムに全量、約40%まで可溶化に成功した。
上記の成果は、論文2報、特許1報出願中および解説記事2件である。

2.委員の指摘及び提言概要

プラスチックの持っている熱量が全く利用されずにCO2が環境中に放出されることになり、循環型の廃棄物処理とは言えないのではないか。また、大量の廃棄物を屋外で処理する場合の塗布方法や光の照射方法などに工夫が必要であることから、実処分場の実情を調べ、そこへの適用性を検討してほしい。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123021】し尿汚泥等の焼却灰からのリン回収技術の開発研究(H24〜H26)
中村 洋祐(愛媛県立衛生環境研究所)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ本研究は、し尿汚泥等焼却灰からリンを連続的に溶出させ、溶出液から肥料等として利用価値の高いリン酸カルシウムとして回収することを目的としている。その手法として、焼却灰から硫黄酸化細菌を用いたバクテリアリーチング(以下「BL」と表記)によりリン酸を溶出させ、その溶出液から吸着材を用いてリン酸カルシウムとして回収する計画であり、最終的に、これらの過程が一連で連続的に稼動可能な装置を試作し、性能等を評価する計画である。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123021 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3021

<本年度の目標>

し尿汚泥等焼却灰からリンを高濃度で溶出させる条件の検索、溶出液からリンを回収するための吸着材の検索及びBLによるミニプラント試作のための基礎的検討を行う。
(1)し尿汚泥等焼却灰中のリン等の含有量調査
県下でし尿汚泥等焼却灰を排出する14事業所について、リン及び含有金属元素等の分析を行う。
(2)BLによる溶出試験
振とう培養により、最大溶出濃度、最大溶出率となる培養条件を把握する。
(3)BL溶出液から吸着材によるリン回収のための基礎的事項の検討
高濃度リン(1000mg-P/L以上)と硫酸酸性等の試料条件におけるリン酸の吸着性能、分離回収性能等の基礎的な項目について、種々の吸着材を比較検討し、最適な吸着材を検索する。
(4)BLによるミニプラント試作のための基礎的事項の検討
効率的にリンを溶出させるための撹拌条件、反応容器の形状、容量、曝気量等の化学工学的な事項について検討し、プラント化のための良好な条件を把握する。

<本年度の成果>

(1)し尿汚泥等焼却灰中のリン等の含有量調査
・県内処理施設のし尿汚泥焼却灰の成分分析の結果、リン含有率の高い(13.7%)し尿汚泥等焼却灰を確認した。
(2)BLによる溶出試験
・振とう培養によるバクテリアリーチングの結果、焼却灰から高濃度、高溶出率(5700mg-P/L,70%)でリンが溶出することを確認した。
(3)BL溶出液から吸着材によるリン回収のための基礎的事項の検討
・既存の吸着材を比較分析の結果、pHの低いBL溶出液から高い吸着率、脱着率でリン酸を回収できる吸着材を確認した。
(4)BLによるミニプラント試作のための基礎的事項の検討
・各種の培養法を比較検討した結果、曝気撹拌による硫黄酸化細菌の増殖が効率的であることを確認した。
・培養槽の形状、曝気量等硫黄酸化細菌増殖に関する化学工学的条件が明らかとなった。

2.委員の指摘及び提言概要

愛媛県の地域の特性とニーズに応えた研究という観点からは、補助金の交付の趣旨からいえば、他地域での利用可能性が重要。技術の利用のための条件をより細かく検討し、あわせて公表することがないと環境政策への貢献ということにはならない。一方、技術開発の観点からは、「連続培養」の小型プラント化してゆく技術背景も検討の中途にあり、逆にし尿汚泥等焼却灰の不純物の扱いや回収の循環型社会システムの検討も未だ不十分であり、割合の減少していくし尿汚泥を焼却してバイオリーチングしてゆくアプローチの立ち位置が判然としない。

3.評点

   総合評点:B  ★★★☆☆


目次へ

研究課題名:【3K123022】ホスト分子による希少金属オンサイト分離のためのマイクロリアクターシステムの構築(H24〜H26)
大渡 啓介(佐賀大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ本研究ではテーラーメイド型の大環状ホスト化合物を利用したマイクロリアクターシステムを開発し、廃棄物回収地オンサイトでのレアメタルの個別分離を長期的目標とする。現在は行政との連携はないが、オンサイトのプロセスであるので、将来的には佐賀県または九州北部地域での連携により、知財の取得や事業化を目指す。研究代表者は福岡県のレアメタル産学官連絡会議の委員であり、H21年度〜H23年度までに環境省循環型社会形成推進科学研究費補助金レアメタル特別枠の研究の中で、環境省の福岡県大牟田地区の小型家電回収モデル事業における使用済み回収電話からの貴金属の回収を試みており、連携の準備は整っている。申請範囲内の最終目標として、数種のカリックス[4]アレーン誘導体を用いてカスケード的マイクロリアクターシステムを用い、複数元素の同時分離・回収を行い、混合系元素からの個別分離回収に関する可能性評価を行う。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123022 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3022

<本年度の目標>

H24年度には、研究代表者がメチルケトン型カリックス[4]アレーン誘導体の合成を行い、この分離試薬による貴金属類の抽出挙動についてバッチ試験により検討する。特に、他の貴金属やベースメタルに対して銀イオンに高い選択性を有すること、またその抽出速度が極めて遅い(平衡到達に数十時間を要する)ことを確認する。さらに、産総研の研究分担者は、佐賀大学の実験結果に基づいてマイクロリアクターの設計・試作を行い、流路の形状と長さを検討し、デバイスの最適構造を探ると共に、高い濃度の塩酸水溶液を用いるため、予め、装置の耐久性などについてもチェックを行う。また、可能であればマイクロリアクターを用いて銀の回収を行い、バッチ試験と比較して抽出速度が極めて速くなることを確認する。

<本年度の成果>

大環状ホスト化合物の配位子設計と合成に関して、メチルケトン型、2-ピリジル型およびホスホン酸型カリックス[4]アレーン誘導体の合成を行った。抽出挙動の検討と最適化に関して、メチルケトン型および2-ピリジル型カリックス[4]アレーン誘導体による銀イオン、パラジウムイオン、白金イオンなどの抽出挙動をバッチ法により調べた。また、銀イオンの抽出速度実験について検討している。ホスホン酸誘導体による希土類の抽出挙動について検討した。マイクロリアクターの設計・試作に関して、溶媒抽出用のマイクロリアクターを設計・試作した。流路の形状と長さを検討し、デバイスの最適構造を探ると共に、高い濃度の塩酸水溶液を用いるため、装置の耐久性などについてもチェックした。また、デバイスを用いて試験的な抽出を行った。マイクロリアクターを用いた単元素回収に関しては、市販抽出剤を用いて銀の抽出挙動について検討した。

2.委員の指摘及び提言概要

基礎的検討段階であるが、新しい知見を得られる可能性は大きい。抽出剤、リアクターの改良を進めて、実用化につながる形で成果をまとめてほしい。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123023】廃棄竹材の次世代電池材料へのゼロエミッション利用技術の開発(H24〜H26)
衣本 太郎(大分大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ放置竹林の増加は、生活環境を脅かすとともに生物多様性の低下を引き起こす一つの要因で、座視できない「竹害」とも言われる環境問題であり、その解決に向けての行政施策と解決案の確立が必要である。この放置竹林の間伐整備と管理に対して、行政も取り組んでいるが、マンパワーが限られており整備面積が限定的であること、排出される廃棄竹材の安全な処理方法と有効利用法がないことなどが問題で、抜本的解決にメドが立っていない。このように、放置竹林の整備と管理は、その地に居住する国民・行政にとって大きな負担であり、この問題の解決には、放置竹林から排出される廃棄竹材の有効利用方法を開発して、竹材の需要を喚起させることが必要である。
本研究課題では、環境問題である放置竹林の「竹害」を解決する一つの方法を提案して環境政策に資することを最終目的に、竹の特長を活かした廃棄竹材の革新的利用方法として今後大量消費が見込まれる次世代電池への適用を考え、廃棄竹材から竹繊維を得てそれを炭化し、次世代電池材料としての有用性を実証することを目標としている。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123023 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3023

<本年度の目標>

廃棄竹材あるいはそれを原料とする竹チップを燃やすことなく、低炭素な処理により竹繊維を簡便に製造する方法を確立し、その炭化処理により竹炭繊維シートを作製して、今後大量消費が見込まれる次世代電池に利用することを目的として、本年度は、竹を物理的・化学的処理により繊維化する工程の確立を目標とした。
(1)竹繊維の製造工程の検討として、水熱処理を採用する新規工程で竹繊維を製造する方法を実証、確立し、従来工程からの工程数の飛躍的低減を実現する。また、工程の違いによる竹繊維の化学的性質の違いについて明らかにすることを目標とした。
(2)竹チップの繊維化においては、乾燥した竹材である竹チップは保存性と輸送性に優れるが繊維化は困難であった竹チップから竹繊維を製造する工程を検討することを目標とした。

<本年度の成果>

(1)竹繊維の製造工程の検討では、
①従来工程で製造された竹繊維は、繊維束が残りやすく、単繊維を得るには8段階もの工程が必要であることを明らかにした。
②水熱処理を採用した新規製造工程では、繊維束が残りづらく、従来工程とほぼ同じ平均直径の単繊維が得られることを実証した。これにより、従来工程では竹繊維製造に8段階、シート製造までに10段階必要であったのに対し、本研究で確立した工程では、竹繊維製造に4段階、シート製造に5段階の工程で製造できることを実証し、目標が達成された。
③本研究で確立した工程で得られる竹繊維は、従来方法のものよりも純度が高いことが示された。
(2)竹チップの繊維化においては、堅くて剛直な竹チップを繊維化するための新たな圧縮方法と処理方法を検討した結果、竹繊維を製造できることに初めて成功した。
以上の本研究の取り組みと成果は、新聞やTVで多く報道され、放置竹林がもたらす環境問題を広く国民に啓発することができた。この点は、本年度の望外であるが、最大の成果とも言え、環境政策に大きく貢献できた。

2.委員の指摘及び提言概要

着想は良い。しかし、竹を燃料電池用炭素繊維化する出口にこだわった技術開発としては、追加プロセスにおけるコスト上昇や「ローカルシステムに不都合な複雑さ」をどう解決するか、困難な問題がある。技術開発上の課題の解決の努力に期待するところであるが、実用化の見極めが必要。社会実装の可能性は、竹材の継続的な入手の目途を立てる必要があることだろう。また、竹シートの活用など実際に利用できる形に持っていくことも重要である。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123025】水熱処理技術を活用した新規下水処理システムに関する研究(H24〜H26)
小林 信介(岐阜大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ本研究開発では、水熱処理技術を活用し、汚泥の加水分解による減量化を図るとともに、水熱処理汚泥の脱水性能向上による脱水プロセスの省エネルギー化と低コスト化、水熱処理溶液のメタン発酵による高効率エネルギー回収、さらにアンモニアの吸着による水熱処理残渣の肥料化を複合的に融合した新たな下水汚泥処理システム(Integrated Sludge Treatment System, ISTS)を構築することにより下水処理トータルシステムの高度化を目指している。本研究開発では、①水熱処理条件が処理スラリーの脱水については、従来の汚泥脱水抵抗の103倍以下(平均濾過比抵抗、αav<1011)を有する処理スラリーの水熱処理条件を明らかにし、②水熱処理溶液の高速メタン発酵については、中温発酵条件において6 l/l/day以上の発酵速度でメタン生成可能な発酵条件を明らかにし、③同時吸着についてはメタン発酵に影響がない水熱処理溶液中のアンモニア濃度25ppm以下に制御可能な吸着条件を明らかにすることで、最終的にISTSを構築する。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123025 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3025

<本年度の目標>

平成24年度は、上述した①の水熱処理条件と脱水性能の関係を明らかにする。現在の汚泥脱水ケークの含水率は焼却時に重油等の燃料が必要である80 %である。それに対して水熱処理残渣の脱水ケーク含水率は自燃可能な60 %を目標として水熱処理を行う。また、脱水性能についても現在の下水汚泥の平均濾過比抵抗、αav>1014を脱水が極めて容易となるαav<1011となる水熱処理条件を明らかにすることを目標とする。

<本年度の成果>

平成24年度は各種脱水汚泥を原料として水熱実験を実施するとともに、水熱処理を行った処理残渣の脱水性能試験および液成分分析を行った。また、得られた結果を基に水熱処理によるエネルギーバランスについて評価を行った。その結果、汚泥種類に関わらず処理温度が高くなるとともに脱水性能が大幅に向上し、脱水性能は水熱時の可溶化率と相関関係があることが明らかになった。また、高温で脱水を行うことにより酢酸濃度が増大する一方で、アンモニアの水側への溶出が抑えられることが明らかとなり、処理液のメタン発酵への適用が可能であることが分かった。

2.委員の指摘及び提言概要

研究全体の構想と、実際に行われた実験が条件の制約によって、ずれを生じているのではないか。そのために、提案されているプロセスについての実証的研究になっていないのではないか。具体的には物質収支やシステムのフィージビリティなどについてレビューがなされておらず、過去の情報や現在の水処理分野の状況が反映されていない。新規性が乏しく、新汚泥処理システムは本人の思いでしかない。下水道関連の発表の場で批評を受けることが望まれる。

3.評点

   総合評点:C  ★★☆☆☆


目次へ

研究課題名:【3K123026】ネオジム磁石廃材からの非加熱式全元素回収プロセスの開発(H24〜H26)
笹井 亮(島根大学)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージネオジム・ディスプロシウム・プラセオジウムなどの希土類元素、鉄、ホウ素を主成分とする日本初世界最強の金属磁石でHDD・DVD用小型モータ、小型スピーカ、時計、携帯電話、自動車(ハイブリッド・電気含む)などの先端製品に必要不可欠な材料な材料であるネオジム磁石に必要不可欠な希土類資源を確保するためには、廃棄製品から希土類等有価元素を低消費エネルギー、低コストおよび高効率で簡単・迅速に工業利用可能な化学形態で分離回収できる基盤技術を基本としたシステムの構築は喫緊の課題である。本提案ではこの課題を打破するために、非加熱で固相反応や化学結合の開裂を引き起こすことのできる湿式ボールミル法を適用し、ネオジム磁石からのネオジム等希土類の回収を非加熱で実現できる技術の確立と、この技術を主技術として希土類元素のみではなく含まれる全元素を利用可能な化学形態で回収するための非加熱式ネオジム磁石再資源化システムを構築しようとするものでもある。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123026 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3026

<本年度の目標>

強力な磁力を有するネオジム磁石の取り扱いを容易にするためには脱磁処理は必要不可欠である。これをできるだけ低温で実現するために積極的に酸化反応を利用した加熱処理を検討する。得られた脱磁磁石から湿式ボールミル法によりネオジム等希土類を非加熱で高効率(90%以上)、高純度(90%以上)で選択的に回収するための基盤技術の研究開発を行う。ボールミル処理により脱磁磁石を粉砕するだけでは選択的な元素回収は不可能であるため、代表者のこれまでの研究でネオジム磁石の溶解に対して有効であることが明らかとなっている塩酸−シュウ酸混合水溶液を中心に、様々な組合せの混合溶媒による処理実験を行い、最適溶媒を選定する。さらに、その最適溶媒を用いて処理条件(回転数、処理時間など)の最適化を進める。このような検討を進めることで、湿式ボールミル法によるネオジム磁石からのネオジム等希土類元素の選択的回収のための基盤技術の確立を目指す。

<本年度の成果>

2012年には〔1〕加熱脱磁のわずかな低温化を実現(空気中、300℃で1時間)。〔2〕塩酸−シュウ酸混合溶液を用いた湿式ボールミル処理法が、室温下非加熱で脱磁ネオジム磁石廃材粗粉末から希土類元素をシュウ酸塩という化学形態で高収率回収できる新しい技術であることを明らかにした。〔3〕最適条件は塩酸濃度:0.2 mol/dm3、シュウ酸濃度:0.25 mol/dm3であり、このときの回収率および純度はそれぞれ95 at.%であった。〔4〕浸漬処理との比較により、ボールミルによる粗粉末への力学的なエネルギーの印加が不可欠であることを明らかにした。〔5〕湿式ボールミル処理中の反応についてその様相を明らかにすることができた。これを踏まえて現在、最適条件を含むいくつかの条件で回収した希土類シュウ酸塩の工業的な価値の評価のため、ネオジム廃材を提供してくれている連携企業を通して、希土類製造・販売に携わっている企業数社にサンプルを提供し、評価を依頼している。

2.委員の指摘及び提言概要

将来に有用性の高い要素技術の開発である。今後も着実に進めてもらいたい。ただし、早い時期に「連続操作」の可能性や全元素回収プロセスの無理な狙いを再吟味することを期待したい。また、前処理としての消磁の方法についても検討すべきである。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【3K123108】災害廃棄物の処理における石綿の適正管理に関する研究(H24〜H26)推進費復興枠
山本 貴士((独)国立環境研究所)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ(1)災害廃棄物や被災建築物中の石綿含有物の迅速・簡易な判定法を取りまとめ、現場で適切に管理できる方法として提供する。災害廃棄物処理や被災建築物の解体において石綿含有の判定が時間的なネックとならない1〜2時間で判定可能な方法とする。
(2)被災地における石綿含有物の発生量を推定する手法を開発し、災害発生時に石綿含有物を適切に処理する計画立案のための基礎データを提供する。類型化した被災地の面積から石綿含有廃棄物の発生量を推定する手法の開発を目指す。
(3)災害廃棄物処理過程における石綿混入防止と飛散防止の手法について取りまとめる。また、災害廃棄物や混入土壌からの石綿飛散量について知見を得る。破砕選別後の処理物中に石綿が検出されないことを担保する技術の開発を目指す。
(4)「災害時における石綿飛散防止に係る取扱いマニュアル」(H19)について、実効性を評価するとともに、将来的な改訂に向けての知見を集約する。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■3K123108 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3108

<本年度の目標>

主に要素技術や手法について開発・検討を行う。
(1)災害廃棄物中の石綿含有物の判定法について、主に偏光顕微鏡を用いた方法について検討を行い、試料採取法、前処理法、偏光顕微鏡での測定において必要となる操作・留意点を取りまとめる。 被災建築物の石綿含有建材の有無の判定について、主に目視により判定するための検査法、留意点を取りまとめる。
(2)建築物の築年数や構造等から石綿含有建材の使用の有無等を推定するための手法について検討する。
(3)災害廃棄物の破砕処理での石綿含有物の混入防止の方法について、例えば粒径制御等の手法について検討する。また、破砕過程での石綿飛散状況について調査を行う。石綿混入が疑われる災害廃棄物からの石綿飛散量について実験的検討を行う。

<本年度の成果>

(1)災害廃棄物中の石綿迅速判定法に関して、立体及び偏光顕微鏡を用いた方法を災害がれき中の建材に対して適用し、12試料の石綿含有判定を約2時間で完了した。判定の確度は公定法と同等であった。被災建築物の石綿含有建材の判定法に関して、宮城県沿岸において目視による吹付石綿や石綿スレート板等を使用した建築物のマッピングを試行し、その過程での留意点等を取りまとめたマニュアルの整備を進めている。
(2)石綿含有廃棄物の発生量推計手法の開発に関して、地域別の発生量予測のため、建築関係統計等の基礎データを整理した。
(3)レベル3建材が混入している災害廃棄物の破砕選別時の石綿飛散について調査を行い、復興資材としての活用局面を含めた最大繊維飛散量を把握した。石綿含有成形板の破砕実験により、繊維飛散量に影響する要因検討を行った。災害廃棄物や混入土壌からの繊維飛散量の把握のための実験の準備を進めた。

2.委員の指摘及び提言概要

テーマは災害時のみならず、平常時のアスベスト対策の観点からも意義があると思われるので、今後の研究のとりまとめにあたっては、この2つの場面についての整理が必要である。特にサブテーマ2については、25年、26年度の成果を期待したい。なお、室内実験で提案しているアプローチでは、落下破断テストの進め方が不適切ではないかと思われる。

3.評点

   総合評点:B  ★★★☆☆


目次へ

研究課題名:【J123002】ソフト水熱プロセスによる廃きのこ培地再生処理技術の開発(H24〜H26)
宮本 徹((株)前田製作所)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ当初申請時において、15 kg/1バッチの小型実証機で、廃きのこ培地の再生処理、およびその再生培地によるきのこ菌株の接種、培養、栽培実験で、エノキダケ、エリンギ、ブナシメジ、およびナメコにおいて良好な収穫量、品質を実証している。
本技術開発は、実証規模2 ton/日(4バッチ)のプロトタイプにより、スケールアップによる廃きのこ培地再生処理の普遍性、再現性、および信頼性の確認、および再生培地の再利用回数、新材代替率、添加栄養物(コメヌカ、フスマ、ビート、豆皮等)混合率、廃きのこ培地排出削減量の検証を行う。更には、精油成分の多い針葉樹の改質によりきのこ培地としての有効性も実証する。また、事業収支(50%代替で1.66円/栽培瓶1本の原価低減)の実証を行う。標準的な培養センターのきのこ培養本数、および廃培地の排出規模は、下記の通りである。
•日量6,912本/釜×12釜=82,944本(0.3 kg/1本) 25 ton/日
•月量82,944本/日×26日=2,156,544本 650 ton/月
•年量2,156,544本/月×9ヶ月=19,408,896本 5,850 ton/年


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■J123002 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3002

<本年度の目標>

本申請は、150℃以下の非常にマイルドな水熱プロセス(以下、ソフト水熱プロセスと記す。)を用いて廃きのこ培地の改質とリサイクルを行う事にある。反応媒体としての高温高圧水は、高い誘電率と高いイオン積の液相領域ではイオン反応(無機反応)の、低いイオン積と低い誘電率の気相領域ではラジカル反応(有機反応)の好適場となる。
申請者らは、このような多様な化学反応を起こすソフト水熱プロセス、特に、気相領域である乾燥水蒸気に着目し、150℃以下のソフト水熱プロセスの乾燥水蒸気を利用して、高含水バイオマスから、有機化合物の選択的分解、抽出、および脱水、乾燥、縮合、炭化ができることを示唆した。
第1年度は、実証規模のプロトタイプ(廃きのこ培地再生処理能力 0.5 ton/1batch)を設計、および製作し、きのこ生産業者培養センターに設置し、機構のスケールアップによる廃きのこ培地再生処理装置の普遍性、再現性の確認、および信頼性の検証を行う。

<本年度の成果>

第1年度は、実証規模のφ1,200 mm×2,900 mm(3 m3)プロトタイプ(廃きのこ培地再生処理能力 0.5 ton/1バッチ)の設計を行い労働局の製造許可書(製造許可番号 長製許第3041号、横円筒形ジャケット付第一種圧力容器、最高使用圧力1.48 MPa)を受領した上で当該装置の卓越した製作能力を有する株式会社前田製作所において製作し、長野県中野市農協管内のきのこ生産業者培養センターより本補助金研究事業の目的、および意義に賛同の上、用地を借用し仮設格納建屋を建設し設置した(落成検査12月26日)。設計に当たっては、ソフト水熱プロセス理論に基づく多様な化学反応を選択的に制御でき、水蒸気の不要な凝結を防止するため、既存のオートクレープにはない蒸気フローおよびその制御方法を構築した。基礎研究、応用研究が完了している15 kg/1バッチの小型実証機のスケールアップによる廃きのこ培地再生処理の普遍性、再現性、および信頼性の確認を行うために、プロトタイプ装置機構のスケールアップによる廃きのこ培地再生処理の性能評価、および検証を落成検査後に行った。

2.委員の指摘及び提言概要

技術基盤整備事業の研究としては、妥当な成果を示している。社会実装が可能な技術といえるので、さらにデータの蓄積に励んでほしい。なお、実用化に向けての水熱反応施設の規模、運転方式および水熱反応の操作条件を考察してコスト要因を整理する必要がある。

3.評点

   総合評点:A  ★★★★☆


目次へ

研究課題名:【J123003】廃液晶ガラス・廃自動車ガラス等の高度再資源化システムの研究開発(H24〜H26)
柳田 啓之((株)イースクエア)

1.研究における達成目標

<全体目標>

研究のイメージ家電リサイクル法に係る廃液晶ガラス、自動車リサイクル法に係る廃自動車ガラスは現在ほとんどが埋め立て処分されている。これらの廃ガラスの高度リサイクルに関する技術開発を、運搬、解体、分離、分別、原料化、製品化を担う異業種の企業が協働して行い、これまで廃棄されていた使用済みガラスを再生利用できるサプライチェーンを構築する。
特に液晶ガラス偏光板とガラスの分離・分別および自動車ガラス中間膜の分離に関する技術開発に加え、そのガラスの組成に合わせたセラミック製品に再資源化する研究開発を行う。ガラスを再生利用した製品は従来のセラミック製品より低温度焼成で製品化でき、環境配慮型製品としても優れた性能を持つことが検証されている。その環境性能を活かしつつ、現在行われているタイル、レンガ等の建築材料への活用に加えて透水保水機能性セラミックス、低温度焼成食器、ファインセラミックスへの活用の研究開発も行う。


図 研究のイメージ        
拡大して見るにはクリックして下さい

■J123003 研究概要
http://www.env.go.jp/houdou/gazou/15438/jisedai.html#3003

<本年度の目標>

①廃液晶ガラスと廃自動車ガラス等の運搬・分離・分別・洗浄・原料化技術の確立に向けての各種実証試験を各社分担して実施する。
②廃液晶ガラスと廃自動車ガラス等を原料にしたガラス再資源化商品の技術開発に向けての品質評価試験を実施する。
③廃液晶ガラスと廃自動車ガラス等を原料にしたガラス再資源化商品の改良と性能分析評価を行い新商品開発の基礎固めを実施する。

<本年度の成果>

①ガラス運搬テストはコンテナを試作し、実証試験を行うことができた。次年度は評価と量産を前提としたコンテナを製作し、実運用を通じてさらなる改良を行う。
②ガラスの解体分離は各種試験を実施して評価まで完了した。次年度は量産を前提とした改良版の機器を製作し精度や効率を高めていく。
③ガラス洗浄は基礎実験まで完了した。次年度も技術開発を継続実施し、精度や効率を高める。
④ガラス原料化は各種廃棄ガラスの収集と実証試験、評価が完了した。次年度は品質の改良を主体に継続実施する。
⑤ガラス再資源化セラミック商品の試作と評価を完了した。次年度は商品規格を満足する品質レベルを達成すべく研究開発を継続する。

2.委員の指摘及び提言概要

全体的にスコープが絞れてない。要素技術開発でなく、システム開発としての技術基盤整備事業として見た場合、プロジェクトの全体としての進捗がどうなっているのかをより明確に説明することが必要である。マテリアル・リサイクルの「システム・デザイン」に向けて、適切なとりまとめの方向性をとってほしい。個々のプロセスが全体の中でどのように位置づけられるかを判断すると、フローを個別に目標づけてはいるが、説明を聞く限り、個別を寄せ集めた印象が強い。

3.評点

   総合評点:B  ★★★☆☆


目次へ