循環型社会形成推進研究
7.循環型社会形成推進研究       

採択課題における事業の概要

J122001「新燃焼方式を採用した高性能・低コスト型ストーカ炉の開発」 (JFEエンジニアリング(株) 中山剛)

  新燃焼方式を採用したストーカ炉の実証試験を実施し、空気比1.2以下での安定燃焼達成条件を把握することを目的とする。
(1)「新燃焼方式を採用した高性能・低コスト型ストーカ炉の開発」:廃棄物発電の発電効率向上のためには、焼却炉の空気比(供給空気量/理論空気量)を低減することにより排ガス持出し顕熱を削減することが重要である。既存のストーカ炉は空気比1.6程度の運転が標準的で、最近では空気比1.3程度で運転する新設炉が見受けられるが、更なる空気比低減と厳しい条件下で安定燃焼を達成する技術が求められている。本事業においては、幅広いごみ質、処理規模に対応可能な新燃焼方式をストーカ炉に採用し、空気比1.2以下での低空気比安定燃焼を実証することを目標とする。さらに、新燃焼方式採用に伴う炉形状の大幅な改善により、既存のストーカ炉に対し炉容積の30%削減による低コスト化を目指す。これまでに実機既存炉に対し数値シミュレーション計算を実施し、計算の妥当性評価を完了している。新燃焼方式適用領域の数値シミュレーション計算も完了しているため、3t/d規模の小型試験炉を設置し、実証試験により空気比1.2以下での低空気比安定燃焼を実証できれば、既に確立した計算手法により、実機へのスケールアップは可能である。
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J123002「ソフト水熱プロセスによる廃きのこ培地再生処理技術の開発に関する研究」(東北大学 笠井憲雪)

  本申請は,150℃以下の非常にマイルドな水熱プロセス(以下、ソフト水熱プロセスと記す。)を用いて廃きのこ培地の改質とリサイクルを行う事にある。反応媒体としての高温高圧水は、高い誘電率と高いイオン積の液相領域ではイオン反応の、低いイオン積と低い誘電率の気相領域ではラジカル反応の好適場となる。  (1)「ソフト水熱プロセスによる廃きのこ培地再生処理技術に関する研究」:廃きのこ培地をソフト水熱プロセス(実証規模のプロトタイプ)により、廃きのこ培地から菌子由来の有機物質(腐敗性物質)の抽出を行い、同時に、菌株の阻害物質(阻害酵素)を加水分解することにより不活化し、さらに高含水率の廃きのこ培地の適宜乾燥実証実験を実施する。  (2)「ソフト水熱プロセスによる針葉樹オガコ培地改質処理技術に関する研究」:ソフト水熱プロセス(実証規模のプロトタイプ)により、現在きのこ培地基材の主流であるコーンコブに代わって、国内産のオガコ(特にネカシの手間のかかる針葉樹)から木質由来のきのこ阻害物質(テルペン類、フェノール等精油成分)を除去改質してきのこ培地として利活用できることの実証実験を実施する。  (3)「再生培地、改質培地によるきのこ栽培実証実験」:再生培地、および改質培地で多種類のきのこを栽培することにより、の再利用回数、新材代替率、添加栄養物(コメヌカ、フスマ、ビート、豆皮等)混合率の検証を行う。更には、精油成分の多い針葉樹の改質によりきのこ培地としての有効性も実証する。また、事業収支の実証を行う。  (4)「ソフト水熱プロセスによる廃きのこ培地リサイクルシステムの構築」:再生培地、改質培地および抽出物質の分析データにより、廃きのこ培地再生処理技術の再現性、普遍性、および信頼性のオーソライズを行う。さらに、小規模分散型、および大規模集中型の各廃きのこ培地リサイクルシステムを構築する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

J123003「廃液晶ガラス・廃自動車ガラス等の高度再資源化システムに関する研究」((株)イースクエア 柳田啓之)

  家電リサイクル法に係る廃液晶ガラス、自動車リサイクル法に係る廃自動車ガラスは現在ほとんどが埋め立て処分されている。これらの廃ガラスの高度リサイクルに関する技術開発を、運搬、解体、分離、分別、原料化、製品化を担う異業種の企業が協働して行い、これまで廃棄されていた使用済みガラスを再生利用できるサプライチェーンを構築する。特に液晶ガラス偏光板とガラスの分離・分別および自動車ガラス中間膜の分離に関する技術開発に加え、そのガラスの組成に合わせたセラミック製品に再資源化する研究開発を行う。ガラスを再生利用した製品は従来のセラミック製品より低温度焼成で製品化でき、環境配慮型製品としても優れた性能を持つことが検証されている。その環境性能を活かしつつ、現在行われているタイル、レンガ等の建築材料への活用に加えて透水保水機能性セラミックス、低温度焼成食器、ファインセラミックスへの活用の研究開発も行う。なお、放射線遮蔽機能セラミックスの開発もブラウン管ガラスリサイクルの一環として行なう。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

J122004「浄水発生土(天日ケーキ)の園芸資材へのリサイクル技術に関する研究」(岡山市水道局 仲原龍吾)

  天日乾燥ケーキを有価物として販売できるように、有価物としてのニーズの把握とそれに合わせた効率的な製造技術を確立することを目的とする。  (1)「浄水発生土(天日ケーキ)の園芸資材へのリサイクル技術に関する研究」: 処理プロセス開発を行うために可動式の破砕機、熱処理装置、定量供給機、コンベアからなる実証プラントを設置し、破砕機と熱処理装置を組み換えた処理フローにより天日ケーキ破砕を行う。破砕物を品質指標である粒径、含水率などで評価し、処理プロセスを評価する。また、安定、かつ、経済的な天日ケーキ破砕を行うために粒径制御による処理能力可変及び最適品質管理運転による処理能力可変を踏まえて実証プラント運転を一元的に制御するシステムを開発する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123001「使用済み自動車(ELV)の資源ポテンシャルと環境負荷に関するシステム分析に関する研究」(京都大学 酒井伸一)

  使用済み自動車(ELV:End-of-Life Vehicles)のリサイクルや適正処理については、21世紀に入って欧州や日本での政策的な取り組みが本格化したが、その効果を検証すべき時期となりつつある。一方、自動車製造に使用される資源や化学物質は、鉄資源のほか、ベースメタルの銅や亜鉛、白金やパラジウムなどのレアメタル、さらには重金属類や難燃剤成分としての残留性有機汚染物質まで幅広い。これらの物質や素材を二次資源としてみる見方は、21世紀の産業や社会の基本とならねばならないが、ELVのどの部位にどの程度の物質が含有されているか、現状のELVリサイクルシステムにおいてどの程度が回収されているか、残渣は適切に安定化処理されているかについての調査研究はほとんどなされていない。 そこで、本研究においては、次の研究を行う。国際比較研究では、欧米やアジアの政策担当者や廃棄物研究者との情報交換や意見交換を含めることとし、資源性物質や有害物質の挙動解析には国内のELVリサイクルやASR処理施設のフィールド研究を実施する。また、アジア地域のELVリサイクルの実態はほとんど調査されていないため、ベトナムなどにおけるELVの取扱いや関連する環境化学的分析を進める。これらの取り組みにより、大きな資源ポテンシャルを有するとみられるELVの事前選別対象物リストやプロセスの提案に繋がる知見を得ること、リサイクル残渣である自動車破砕残渣(ASR:Automobile Shredder Residue)について次の規制対象候補となる残留性有機汚染物質(POPs:Persistent Organic Pollutants)を睨んだASR適正処理方法を検討すること、そして自動車リサイクル制度展開に向けた次の一手を提案することをめざす。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123002「静脈産業の新興国展開に向けたリサイクルシステムの開発とその普及に係る総合的研究」(慶應義塾大学 細田衛士)

  本研究では、日系静脈産業の育成・海外展開及びメジャー化に道筋をつける「静脈産業の新興国展開に向けたリサイクルシステムの開発」に向けて、中国等における都市を対象に廃棄物処理に関する基礎データを収集・解析し、以下の研究を行う。  (1)日中政策課題研究 「廃棄物処理の現状把握:現地調査、先行研究サーベイ」:現地調査と先行研究のサーベイにより研究フィールドとなる中国2都市を中心に、対比される他都市での廃棄物処理の現状把握を行う。分析に基づき、中国のリサイクルシステム構築に向けた日中の政策課題の把握・検討・制度設計を行う。  (2)静脈物流システム研究 「静脈物流の現状把握:現地調査、先行研究のサーベイ」:現地調査と先行研究のサーベイにより中国における静脈物流の現状把握を行う(都市は政策課題研究と同様)。分析に基づき、環境負荷の少ないロジスティクス面での改善策を検討する。  (3)技術開発実証研究 「現地で通用するリサイクル技術のカスタマイズ化」:日本のリサイクル技術(廃蛍光灯希土類含蛍光粉高効率回収、電機電子機器類からの有価金属回収)を、中国及びアジアの現地でビジネスレベルでの実用化とするためのカスタマイズ化の実証研究を実施する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123003「繊維強化プラスチック材の100%乾式法による完全分解と強化繊維の回収・リサイクル技術」(信州大学 水口仁)

  本課題の申請者は独自の「半導体の熱活性」と言う新規なアイディアのもとに、あらゆる種類のプラスチックの完全分解、ならびに揮発性有機化合物の完全浄化を達成している。本技術は、室温では触媒効果を示さない半導体が350-500 度に加熱されると強い酸化力を発現することを見出したことに由来する。この技術をFRPの処理分解に応用し、400-500 度10分程度の処理で、グラス・ファイバーならびにカーボン・ファイバー等をほぼ無傷で完全回収することに成功している。この方法は100%乾式法であり、回収物はリサイクルが可能である。また、リサイクルの採算性に重要な因子である連続処理法の基礎技術を確立している。3年間の研究期間の初年度には、連続処理装置の試作機を製作し、回収した強化繊維を使ったFRPの強度評価を行う。2年目には連続処理装置のスケール・アップ、3年目には実装テストを含めたビジネス戦略を確立し、実用化体制を整える。さらに、ドイツのアーヘン工科大学、ならびにドレスデン工科大学と連携し、ヨーロッパにおける科学技術の拠点を構築する。  (1)「回収した強化繊維を使用したFRPの機械的強度に関する研究」:回収した強化繊維を用いた再生FRPがどの程度の機械的強度を持つかは、リサイクルの応用技術ならびに採算性に重要な因子となる。本研究は繊維強化プラスティックの研究を行っている鮑准教授のグループが担当する。  (2)「アーヘン工科大学ならびにドレスデン工科大学との情報交換」:ヨーロッパは環境問題の先進国であり、中でもドイツは環境問題を産業育成の前提と位置付けている。ドイツのアーヘン工科大学、ならびにドレスデン工科大学と年2回の定期的な情報交換を行い、我々の技術のヨーロッパでの展開拠点としたい。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123004「地域エネルギー供給のための廃棄物系バイオマスのガス化/多段触媒変換プロセスの開発に関する研究」((独)国立環境研究所 川本克也)

  廃棄物系バイオマスの利活用には、地域分散型技術の開発が望ましく、ガス化-改質プロセスがもっとも適当な技術と考えられる。そこで、本研究では、廃棄物及び震災廃棄物として排出される種々のバイオマスを対象に、ガス化-改質プロセスを適用し、さらにH2、COとともに多量に発生するCO2を各温度領域で効率よく触媒変換し、CO及びCH4を回収する実用価値の高いガス化/多段触媒変換プロセスを開発することを目的とする。触媒の適用により、新規性の高いガス生産プロセスを作り出す。  (1)「ガス化及び第二段触媒変換プロセスに関する研究、及び全体システムの設計に関する研究」:最初の工程となるガス化に関し、反応効率向上のための技術的要素および生成ガス特性等を実験に基づき詳細に把握する。調査・実験データから全体プロセスを設計して物質及び熱収支解析を行い、さらに感度解析等を加え、プロセス因子を最適化する。第二段触媒変換プロセスの研究は、比較的高温での逆シフト反応及び低温でのメタン化反応各々に最適なメソポーラスシリカを担体とするニッケル触媒系(NiO-SBA-15)の調製方法を新規開発し、触媒のキャラクタリゼーションにより構造特性を評価し、さらにガス変換反応への適用性を試験・評価する。ガス変換反応では、生成物となるCOおよびCH4の回収効率を向上するための触媒の改良及び高機能化等を図る開発触媒に補助的元素を付加することによる機能向上や担体上有効成分の分散特性の最適化による触媒開発を達成する。  (2)「酸素分離プロセス及び第一段触媒変換プロセスに関する研究」:ガス化プロセスに必要な酸素を供給する新規の固体電解質を用いた電気化学的酸素透過システムの開発においては、安定化ジルコニア等の電解質スクリーニングを行い、装置を製作する。ガス化操作温度で十分な酸素透過の得られる電解質と電極の組み合わせを決定し最適化条件等を探索する。また、酸素供給に伴い電力を並産する濃淡電池構成や供給システムを電的に加速する酸素ポンプ操作の適用性等についても試験・評価する。ガス化ガス中タール成分の高効率改質を目標に、有効な合金を見いだしていく。これは、Ni含有合金管の表面を酸化する触媒調製のスクリーニング手法を用い、同時にタールのモデル化合物を用いた反応のスクリーニングを行う。改質ガスの組成に最適で耐炭素質析出特性の高い触媒を絞り込んでいく。さらに、Niや助触媒としての各種金属酸化物を触媒表面にドープする表面改質による高性能化の可能性を検討する。  (3)「地域への開発プロセス適用システムの評価」:埼玉県内各地域における廃棄物系バイオマスの排出特性及び処理構造を明らかにし、ライフサイクル評価を行って本開発プロセスの導入効果を評価し、地域特性に対応する最適なシステムを提示する。手法は、各自治体へのアンケート調査、ヒアリング調査及びごみ組成調査を行うことで排出特性や処理構造等を明らかにする。また、GISを用いた収集・運搬性評価のために道路情報等を取得し、輸送距離や経路等の特性を評価する。ライフサイクル評価の範囲を拡張すること及びGISによる施設の最適配置法を用いた適切な評価から、地域特性を的確に反映した開発ガス化/多段触媒変換プロセス導入の最適なシステムを提示する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123005「破砕・凝結プロセスを伴う生物スラッジの超高圧圧搾脱水法の開発」 (名古屋大学 入谷英司)

  産業廃棄物の中で最も大きな排出量割合を占める汚泥を減量化するための高効率な脱水技術の開発が、現在喫緊の課題となっている。特に最近では生物スラッジが急増しており、エネルギー利用の観点から注目される消化スラッジや排出規制が厳しさを増している食品廃棄物スラッジなどは難脱水性を示し、高分子凝集剤を使用する現存の脱水技術では脱水度と処理速度の両面で不十分な状況にある。本研究では、高い脱水速度と高い脱水度の両者を同時に達成することが可能な難脱水性生物スラッジの脱水法として、破砕・凝結プロセスを伴う超高圧圧搾脱水を提案し、その有効性を検証する。すなわち、スラッジを破砕して、一端フロックを崩壊させることによりフロック内の束縛水を放出させると共に、破砕方法によりスラッジ表面の特性をコントロールし、スラリー中のイオン等を利用して凝集剤を添加することなく緩く凝結した粗大フロックを形成させ、0.1~0.5 MPaの低圧下で圧搾して自由水を迅速に除去し脱水ケークを得た後、圧力のステップ増加により5~50 MPaの超高圧を作用させてフロックを崩壊させつつ束縛水をさらに除去し極低含水率ケークを得て、生物スラッジの高速減量化を図る。生物スラッジの破砕・凝結機構や超高圧下におけるフロックの崩壊、ケークの脱水機構の解明を行い、これらを綜合して、最適な操作法を提示する。具体的には、次の検討項目について研究を進める。  (1)「超音波照射、ビーズミル、ホモジナイザ-による破砕・凝結プロセスの確立と超高圧脱水機構の究明」:代表的な難脱水性生物スラッジである下水余剰汚泥を対象に、破砕・凝結プロセスとステップ超高圧圧搾とを融合した高効率の高速脱水法の適用の可能性を脱水速度と脱水度の両面から探求する。破砕・凝結プロセスでは、超音波照射、ビーズミル、ホモジナイザ-等による破砕法を検討し、一端フロックを崩壊させることによりフロック内の束縛水を放出させると共に、破砕によりスラッジ表面の特性を変化させ、スラリー中のイオン、ポリマー等を利用して凝集剤を添加することなく形成する緩い凝結フロックに関する基礎特性を把握して低圧圧搾での脱水速度の増大への寄与を明らかにし、破砕・凝結プロセスの指針を得る。また、汚泥粒子やその凝結・崩壊フロックへの水の様々な結合状態を調べるとともに、圧搾圧力とケーク脱水度との関係を明らかにし、破砕・凝結プロセスを伴う脱水法における超高圧圧搾操作のための指針を得る。現象をより科学的に解明するため、実際の汚泥と併せてモデル汚泥を用いた検討も行い、破砕・凝結プロセスや超高圧圧搾の機構解明に挑み、最適操作法の確立のための指針を得る。新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123006「起泡クロマトによるGaの選択回収プロセスの確立とレアメタル回収への展開」(名古屋大学 二井晋)

  標的金属と選択的に親和する機能を持つ界面活性剤を用いる『起泡クロマト』法(標的金属イオンを表面に付着させた泡の層をつくり、この層の液流れを巧妙に制御する方法)により、廃棄物からガリウムを単離するためのプロセス開発と、起泡クロマトをガリウム以外のレアメタルに展開するための条件探索を目的とする。  (1)「起泡クロマトによるGaの選択回収プロセスの確立とレアメタル回収への展開」:実際の廃棄物を原料としてガリウムを回収率100%かつ高い分離度で単離できる起泡クロマトプロセスを開発する。また、装置大型化による性能向上を追究する。さらに、ガリウム以外のレアメタルに起泡クロマトを適用して高度分離を実証する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123007「微生物によるバイオディーゼル廃グリセロールからの燃料生産」 (筑波大学 中島敏明)

  本研究では研究代表者が新たに自然界から取得した細菌(Klebsiella variicola)によるBDF廃液からのバイオエタノール生産を試みる。本菌株は純グリセロール培地よりも、実際のBDF廃液を用いた培地において高い生産性を示すのが特長である。本菌株に変異処理を行い、生産性とエタノール耐性を向上させる。さらに、高濃度の菌体を用いた反応装置(リアクター)を構築し、最終的なエタノール生産量を蒸留可能な濃度に向上させる。 また、本菌株はエタノール発酵を行うと同時に、副生するギ酸で廃液を中和・無害化することが明らかとなっている。ギ酸はメタン発酵の良い原料であるため、エタノール生産後の廃液からのメタン生産を行う。廃グリセロール溶液に含まれる高濃度ナトリウムの影響を低減する運転条件を検討する。 最終的に、これら2つのバイオ技術を実用的に組み合わせ、BDFの原料となるパーム油等の植物油脂や廃食用油の性状や量の変化に着目して、経済的に最適な運転条件を検討する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123008「微生物を利用した地域バイオマスキノコ廃菌床からの化学工業原料生産システムの開発」(新潟薬科大学 高久洋暁)

  経済的豊かさと高利便性の生活を支えてきた従来の生産プロセスは、主に石油を原料とし、エネルギーを大量消費するプロセス(石油リファイナリー)である。しかし、このプロセスは化石資源枯渇、地球温暖化、ダイオキシン類による環境汚染など地球的規模の問題を引き起こしている。そのため、カーボンニュートラルで再生可能なバイオマスを用いた環境低負荷のエネルギー・環境調和型循環産業システムによる物質生産、すなわち微生物を利用したバイオプロセスによる生産システム(バイオリファイナリー)への早期転換が必要である。バイオマス原料は、環境条件による年次変動、季節変動、世界情勢問題を克服できる安定供給性を持ち、さらに食糧自給率の低い日本では食料と非競合でなければならない。このような条件をクリアできるバイオマスとして、全国2位のキノコ生産量をほこる新潟県ではキノコ廃菌床の地域バイオマスがあげられる。廃菌床は、セルロース、ヘミセルロースを多く含み、年間を通じてキノコ工場から毎日一定に排出・集積されているので、今の日本で事業化に直結できる最有力の非可食バイオマスである。この廃菌床を、  (1)マイタケ菌の生物的前処理能力を最大限強化し、高効率な前処理プロセスを構築する。前処理産物をセルロース高分解微生物トリコデルマ・リーセイの改良・利用で、リグニン、セルロース、へミセルロースを同時分解してグルコース、キシロースを生成する。前処理、酵素糖化の全てがバイオプロセスで構築され、従来の物理的、化学的前処理より設備投資、排水処理、エネルギーコスト的に有利な環境低負荷型のオールバイオプロセス糖生産システムを構築する。  (2)得られたグルコースは、代謝工学的に改変された組換え大腸菌により100%効率で化学工業原料中間体の2-デオキシ-シロ-イノソース(DOI)に変換し、キシロースはその組換え大腸菌の生育炭素源として利用する。すなわち、セルロース、ヘミセルロース画分から得られた糖は、無駄なく利用される。本研究は、非可食バイオマスから今まで石油から生産されていた付加価値の高い化成品原料を生産する技術であり、石油リファイナリーからバイオリファイナリーへのパラダイムシフトによる持続型循環社会の構築、地球環境問題に貢献することができる。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123009「ハロモナス菌による木材から3-ヒドロキシ酪酸等の生産技術開発に関する研究」((独)産業技術総合研究所 河田悦和)

  我々の発見した独自菌株ハロモナスKM-1株を用い、木材から3-ヒドロキシ酪酸等を生産する基礎技術を確立し、持続可能社会実現に向けた環境政策へ貢献する。 培養速度の向上、培養阻害物質に対する一層の対策、利用できる炭素源の種類、量を増やすなど多くの課題を克服し、商業的な生産の指標を目指す。  (1)「ハロモナス菌による木材から3-ヒドロキシ酪酸等の生産技術開発に関する研究」:ハロモナスKM-1株による純粋な炭素源を用いた培養を基準に、ハロモナスKM-1株の3-ヒドロキシ酪酸の生産の限界を確認する。さらに、この培地に、発酵阻害物質を加えたもの、木材糖化液などで、生育の阻害、3-ヒドロキシ酪酸の生産量の変化について調べ、これらが純粋な培地での培養に近づくよう、様々な検討を行う。  (2)「リファイナリー生産に適した木材の糖化技術開発に関する研究」:木材の糖化過程では、製造コストと糖利用率、培養阻害物質の濃度等のバランスが重要である。従って、製造コストを考慮しつつ、生育阻害物質の濃度の低減目指した検討を行う。  (3)「リファイナリー生産の高機能化に関する研究」:木材の糖化、リファイナリーの製造では、製造コストと製品価格のバランスが重要である。そこで、より安価に木材を糖化する過程、より高付加価値のリファイナリーの生産を目指した進歩的な取り組みの研究を行う。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123010「廃有機溶剤の効率的再生処理技術の実用化」(慶應義塾大学 田中茂)

  本研究では、廃溶剤を加熱蒸留するのではなく、溶剤を噴霧し、溶剤と不純物とを蒸発分離して回収する廃溶剤の再生技術を実用化する。これまでの真空蒸発法とは異なり、溶剤の蒸発を更に効率良く行うために、真空容器内へ空気をリークして導入する「空気流動真空蒸発法」を用いる。従来の真空蒸発による膜分離(PV法)では、除去液から蒸発するVOCの膜の透過速度が律則となるので、数Paの高真空にした法が有利であることが常識であった。一方、「空気流動真空蒸発法」では、膜の透過抵抗のない多孔質PTFE膜を用いて、高真空で使用するのではなく、意図的に真空をリークして比較的低真空の状態で真空容器内に空気を流すことにより除去液から大量のVOCを蒸発回収できる。更に、除去液を噴霧ノズルで真空容器内に噴霧することで微小な液滴としVOC蒸発表面積を拡大した結果、従来の膜分離の真空蒸発法と比較して除去液からのVOC蒸発速度が2桁以上向上でき、本法により大量な廃溶剤の連続的リアルタイムでの再生処理が実現できる。  「空気流動真空蒸発法」を用いた廃溶剤の再生処理は、通常の真空蒸発法での数Pa以下と言った高真空領域でなく、1000Pa程度の低真空領域で真空蒸発を行える。従って、真空蒸着、スパタリング装置に使用される高真空用の油拡散ポンプ、ターボ分子ポンプ等の高度な真空ポンプを使用する必要はなく、汎用の安価なドライ真空ポンプを使用できる。 そして、低真空領域での使用のため、真空容器などに厳密な耐圧性、気密性の仕様の必要がなく、装置の軽量、低コスト化が十分期待できる。一方、従来の加熱蒸留法の場合、常に引火、爆発といった危険性が付きまとう。防爆タイプの加熱蒸留装置も市販されているが、バッチ方式の再生処理であり廃溶剤処理能力が充分ではなく、エネルギー・コストの面でも問題があり、加熱蒸留法等の従来の方法では、廃溶剤の再生の充分に行われなかった。そこで、本研究で「空気流動真空蒸発法」を用いた廃溶剤の再生処理技術を実現する。
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K123011「伝熱管表面改質技術による廃棄物焼却炉発電効率の革新的向上」(名古屋大学 成瀬一郎)

  本研究では、一般廃棄物焼却施設のエネルギー回収部である伝熱管において、伝熱阻害や運転障害を引き起こしている灰付着を低減させ得る伝熱管表面改質技術の開発を実施する。表面改質技術は、高温条件に適用可能な溶射法を採用し、灰付着を低減できる耐熱・耐食性溶射材料の開発と実機の焼却炉を想定した溶射施工技術の提案を行う。これにより、発電効率とプラント稼働率の両者の革新的な向上を図ることができ、廃棄物が有しているエネルギーの高効率回収が実現できる。  (1)「灰付着機構解明」:実機廃棄物焼却炉内において実際に付着した灰粒子と伝熱管を採取し、分析用サンプルを作製する。灰粒子および界面近傍の付着層について、CCSEM(Computer Controlled Scanning Electron Microscope)、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析およびMicro-XRD(X-ray Diffraction)を使用して観察・分析する。得られた分析データに基づいて、付着機構のモデリングを高温界面科学の観点から行う。  (2)「灰付着機構解明の整理と表面改質技術開発」:前段階で得られた付着機構の考察結果および耐食性等、開発する溶射材料に求められる特性・品質を整理し、試作材料・成分を検討する。その際にも熱力学化学平衡論等を駆使し、高温界面化学の観点から、材料の最適化を行う。可能性のある溶射材料に関しては、模擬ガス雰囲気における高温濡れ性試験、縦型炉灰付着試験、長期灰付着力測定試験を行い、溶射材料の付着力低減効果を評価する。  (3)「表面改質技術開発」:表面改質した材料を用いた灰付着実験で得られたサンプルの界面分析を行ない、溶射材料の健全性を評価するとともに、付着低減メカニズム解明につなげる。続いて、試作溶射材料についてワイヤー化を行ない、溶射施工確認を実施する。その際に、基本的な溶射特性(電流・電圧・歩留まり等)の評価を行うとともに、溶射皮膜の基本的な物理特性(熱伝導率・密着力強さ等)を、各種試験(レーザーフラッシュ法、三点曲げ試験等)によって定量化する。最終的に、実機への適用方法や溶射手法について構築する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K122012「電気二重層イオン除去による焼却灰洗浄廃水の高度処理技術の開発」 (立命館大学 吉原福全)

  脱塩素洗浄廃液の処理および洗浄水のクローズド化について、既存技術であるRO膜を用いる手法に比べてエネルギーコストおよびメンテナンスコストに優れた電気二重層を用いた溶液中のイオン除去を原理とする洗浄廃液処理法の開発を行う。  (1)「単セルの基礎特性把握と基本性能向上」:焼却灰に含まれる各イオン種について、活性炭電極の細孔分布が吸着性能に及ぼす効果、バインダーと導電性材料の選定、電極表面のアルカリ処理等による親水性の向上、などから基本性能の向上を図る。また、電極間の絶縁性を阻害せず電解質溶液の流動性を確保するためのセパレーター素材の選定と構成の最適化を図るほか、単段システムにおける充放電挙動を明らかにする。  (2)「スタックユニットの開発」:供給電源のジュール損失の低減を図るため、単セルを積層したスタックユニットの要件を明らかにし、その設計、試作、開発を行う。  (3)「エネルギー回生システムの基本設計」:スタックユニット間の連携によるエネルギー回生について基礎データ収集を行い、最適エネルギー回生システムの基礎設計と提案を行う。  (4)「焼却灰の脱塩洗浄によるセメント原料化の要件」:実際の焼却灰を用いて、処理水量、処理時間、脱塩量などの関係を測定し、最適処理時間や処理水の塩濃度の上限などを明らかにする。  (5)「クローズド脱塩システムへの開発」:前処理レベルの有無、処理量、濃縮濃度、除去塩の処理等について検討を行い、全体システムの提案を行うとともに、システムのクローズド化に関する検討を行う。  (6)「システムの評価と実用化」:エネルギー回生を含むシステム全体の評価を行い、実用化の要件を明らかにし、実用化に必要なエンジニアリングデーターの収集を行う。また,本システムのボイラー給水、海水の淡水化への応用、および放射性セシウムの除去について検討する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K122013「使用済み一次乾電池のマテリアルリサイクル」(福岡大学 重松幹二)

  本研究は、低コストのリサイクルプロセスを提案し、使用済み乾電池のマテリアルリサイクルを実現しようとするものである。その方法として、まずマンガン電池とアルカリ電池を分別することで含有成分を単純にすること、乾電池の解体によって内容物を区別して取り出すことを提案する。  (1)「分別と機械的分解によるリサイクルコストの削減」:マンガン電池とアルカリ電池をあらかじめ分別し、さらには機械的に解体する前処理を行ない、化学成分の混入をできるだけ防止する。これにより続く化学的分離操作を単純化させてコストを削減する。  (2)「廃棄物回収現場における問題点の調査と解決」:廃棄物回収現場には、様々な使用済み電池が混在状態で納入される。これらの分別が確実に行われなければ、先に確立したプロセスに支障を与えることが懸念される。そこで、規格外の廃電池が混入した場合の影響を明確にし、影響が大きい場合はその切り分け方法を考案する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K122014「好熱菌の油脂分解酵素の特性解明と廃食用油を添加した好気性発酵システムへの応用」(東京大学 伏信進矢)

  廃棄物として大量に排出されている高含水率の食品加工残渣に廃食用油を添加し、発酵および乾燥により飼料や燃料へと再生利用する、好熱菌を利用した新規なシステムを構築する。好熱性油脂分解酵素生産微生物をスクリーニングにより取得し、実証装置を用いてシステムの運転条件を確立し、高度化を目指す。  (1)「好熱菌の油脂分解酵素の特性解明」:既知の微生物や高温発酵中の堆肥等から、好熱菌の中でリパーゼなどの油脂分解酵素生産能が高い微生物をスクリーニングし、それらの微生物特性および酵素の性質を明らかにする。  (2)「好熱性油脂分解菌を利用した廃食用油添加型好気性発酵システムの開発」:実際の装置にて廃食用油を添加したオカラの発酵乾燥飼料化処理の実証を行う。好熱性油脂分解酵素生産微生物の分離源の提供と、分離された微生物を添加した運転条件の確立、さらに、システムの高度化を図る。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123015「スラッジ再生セメントと産業副産物混和材を併用したクリンカーフリーコンクリートによる鉄筋コンクリート部材の開発研究」(鹿島建設 閑田徹志)

  本研究では戻りコンクリートから製造したSRセメントを主たる結合材とし、FA等の副産物混和材を大量混和したRCCFコンクリートを開発し、一般技術と同等以上の耐久性および構造性能を確保することで、プレキャスト製造によるRC部材として建設構造物へ汎用的に適用する技術を開発することを目的とする。  (1)「コンクリート用スラッジ再生セメント(SRセメント)の開発研究」:普通ポルトランドセメントに対する強度比が40%以上を目標に、①SRセメント製造実験による製造条件確立(注水から再生処理開始までの限界時間に与える外気温の影響把握など)、②戻りコンクリート初期水和による逸散成分の同定と練混ぜ実験による補助材の検討(石膏等の逸散鉱物を加えフレッシュ・硬化性能を改善検討)を行う。  (2)「RCCFコンクートの配(調)合方法の確立に関する研究」:設計基準強度24N/mm2以上、プレキャストRC部材製造が可能な施工性を目標に、広範なコンクリートの練混ぜ実験により、水結合材比、フラアッシュ・高炉スラグ微粉末の置換率、環境温度、初期養生条件を実験要因とし、フレッシュ性状と硬化後の材料力学性能について実験的に検討し、適切な材料・配(調)合を選定する。  (3)「RCCFコンクートの耐久性確保に関する研究」:高炉セメントB種コンクリートと同等以上の中性化抵抗性、10×10-4以下の乾燥収縮率、プレキャストRC部材ひび割れ制御方法の確立を目標に、①中性化促進試験に基づく中性化抵抗性予測方法の検討、②乾燥収縮率の抑制およびひび割れ制御検討、③暴露実験による耐久性検討の3つの検討を行う。  (4)「RCCFコンクートによるプレキャストRC部材の実用化に向けた耐久性・構造性能の確保と製造方法確立に関する研究」:計画供用期間60年を満足する耐久性、一般プレキャスト工場で製造が可能、一般RCと同等の曲げ構造性能を目標に、プレキャストRC部材を対象として、①鉄筋腐食抵抗性の検討、②プレキャスト工場での製造検討、③曲げ構造性能の検討を行う。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123016「炭素同位体分析による化石由来二酸化炭素排出量の高精度推定手法の開発と適用」(京都大学 平井康宏)

  本研究は、化石由来炭素と生物由来炭素とを識別する手法である14C法を日本のごみ焼却炉排ガスに適用し、化石由来CO2排出量の正確な把握に寄与することを目的とする。また、排ガス常時監視データ(水分, O2, CO2濃度等)を援用することで、14C法の測定回数を削減し、測定コストの低減を目指す。さらに実機への適用により本測定手法の有効性を検証する。  (1)「炭素同位体分析による化石由来二酸化炭素排出量の高精度推定手法の開発と適用」:焼却炉排ガス中の生物由来炭素の割合(バイオマス度)は、「焼却炉排ガス炭素中の14C割合÷生物系廃棄物炭素中の14C割合」で求められる。測定精度を高めるには、分子と分母の精度を向上させればよい。分母の精度向上のため、木くずおよび紙くず(長寿命バイオマスであり、1960年代の大気核実験の影響を受けている)向けの補正係数を、樹木成長・住宅寿命モデル等を構築してめる。分子の精度向上のため、サンプリング誤差の制御、すなわち排ガス中14C割合の時間変動特性の把握に取り組む。また、測定コストは14C測定の回数に依存するため、コスト低減に向けて、14Cと相関を持ち安価に測定可能な指標を探索し、回帰式を援用した推計手法を開発する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K122017「エタノール発酵糸状菌を活用した製紙廃棄物からの効率的バイオエタノール製造法の開発(富山大学 星野一宏)

  製紙製造工程から大量に発生するペーパースラッジ(PS)からカーボンニュートラルなバイオ燃料を効率よく生産させることを目的として、PS中のセルロース成分などから効率よく発酵糖を生産する酵素カクテル剤の開発と、この酵素剤とペントースおよびヘキソースを高収率で発酵でき、さらに多様なセルロース分解酵素を分泌する野生型のエタノール発酵糸状菌を組み合わせた同時糖化発酵システムを構築し、PSから高収率でバイオエタノールを製造するさせる技術を開発する。  (1)「ペーパースラッジの成分分析」:実現場である製紙工場から排出されるペーパースラッジ中の糖質、有機成分、無機成分などを詳細に分析し、ペーパースラッジ発生源の相違による成分分布を明らかにする。  (2)「ペーパースラッジの加水分解の最適化」:ペーパースラッジ中の糖質成分を踏まえて、最適なペーパースラッジ前処理法の検証を行うとともに、統計学的手法(実験計画法, DOE)を用いてペーパースラッジから発酵糖を効率よく生産するための最適酵素カクテル剤の開発を行う。  (3)「ペーパースラッジの加水分解物の発酵へ影響」:ペーパースラッジの前処理物質あるいは酵素カクテル剤を用いた発酵糖液中に含まれる発酵阻害物質(フルフラール、リグニン、無機成分など)のエタノール発酵糸状菌への影響を検討し、発酵阻害物質除去を確立する。  (4)「エタノール発酵糸状菌を利活用したペーパースラッジからのバイオエタノール生産」:酵素カクテル剤とエタノール発酵糸状菌を組み合わせた同時糖化発酵プロセスにより、ペーパースラッジからエタノールを直接高収率で生産させることを検討するとともに、炭酸ガス発生及び省エネルギー的観点から本プロセスの有用性を実証する。さらに、発酵残渣中無機成分の回収・リサイクル法を検討する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123018「湿式分離とイオン液体電析を融合した省エネルギー型レアアース回収技術の開発 」(横浜国立大学 松宮正彦)

  本研究では実廃棄物からのレアアース回収に向けて、湿式分離法とイオン液体電析法を融合して、効率的な回収を行う。具体的には、湿式分離法で鉄族金属を先行分離させた後、酸溶解~金属塩合成工程を経由し、最終的にイオン液体電析法によりレアアース群を再資源化できるリサイクル技術の構築を目指す。  (1)「湿式分離とイオン液体電析を融合した省エネルギー型レアアース回収技術の開発」:本リサイクル技術では使用済みHDDを解体した実廃磁物VCMを使用し、レアアース群の溶解・分離・回収に至る一連のプロセスを実施する。また、各プロセス設計を基本とするシステムの機能性を順次確立することで、電解回収では高電流効率:90%以上を達成目標とする。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123019「乾式試金法を基にして鉛ガラスを媒介とした廃棄物からの各種金属の回収方法」(北海道立総合研究機構 工業試験場 稲野浩行)

  鉛の含まれるブラウン管ガラスを使い、乾式試金法により、プリント基板、シュレッダーダストなどの廃棄物から有価金属を鉛と共に回収するプロセスを構築する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123020「擬似酵素型光触媒システムによるプラスチック混合廃棄物の易分解および部分生分解化」(北見工業大学 中谷久之)

  TiO2/PEO擬似酵素システムを用いたプラスチック・木質混合廃棄物の易分解および部分生分解化を行う。 (1)「擬似酵素型光触媒システムによるプラスチック混合廃棄物の易分解および部分生分解化」:擬似酵素システムを用い、プラスチック・木質混合混合廃棄物の易分解および部分生分解化による安全かつ低コストな処理法を開発する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123021「し尿汚泥等の焼却灰からのリン回収技術の開発研究(愛媛県立衛生環境研究所 中村洋祐)

  本研究は、し尿汚泥等焼却灰中のリンをリン酸カルシウムとして回収することを目的としている。その手法として、これらの焼却灰から、硫黄酸化細菌を用いてリン酸として溶出させ、溶出液から吸着材を用いてリン酸カルシウムとして回収する計画であり、最終的に、これらの過程が一連で連続的に稼動可能な装置を試作し、性能等を評価する計画である。  (1)「し尿汚泥等焼却灰中のリン溶出技術に関する研究(主として衛生環境研究所が担当する)」:初年度は、県下でし尿汚泥焼却灰を排出する事業所について、リンや金属成分等の含有量調査を実施し、振とう培養により種々の条件で最もリンの溶出濃度、溶出率の高い条件を確認する。次年度以降は、従来の振とう培養に替えて通気や撹拌によるさらに実用的な培養法によるリンの効率的な溶出法を検討する。  (2)「溶出液からリン酸を分離回収する技術に関する研究(主として愛媛大学が担当する)」:初年度は、硫黄酸化細菌による溶出液を対象に、各種吸着材のリン酸に対する吸着性能、選択性等の基礎的事項を幅広く検討し、次年度以降、最適と考えられる数件の吸着材について、リン酸カルシウムとしての回収能力、回収物の安全性等の確認を行う。  (3)「実証ミニプラントの試作及び運転管理技術の研究(主としてダイキアクシスが担当する)」:初年度は、硫黄酸化細菌を用いて、し尿汚泥等焼却灰からリンを溶出させるための撹拌条件、反応容器の形状等効率的な生物反応を得るための化学工学的な事項について検討を行い、次年度以降、他の2機関の研究結果を踏まえながら実証ミニプラントを設計、試作し、3機関合同で性能確認、総合評価を行う。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123022「ホスト分子による希少金属オンサイト分離のためのマイクロリアクターシステムの構築に関する研究」(佐賀大学 大渡啓介)

  本申請では、申請代表者により、カリックス[4]アレーンを基体とする各種分離試薬を分子設計し、適宜合成する。カリックス[4]アレーン化合物はテーラーメイド型の大環状ホスト化合物であり、イオン認識機能が期待できるため金属イオンの個別分離に最適な化合物である。対象となる金属イオンに応じて設計・合成されたこれらカリックス[4]アレーン誘導体を用いて、バッチ実験における溶媒抽出挙動の検討や相互分離に関する最適化を行う。(既報データについても必要に応じて利用する。)対象となる元素は、実績のある銀イオンとその分離に関わる貴金属イオンとするが、可能であれば、適宜、対象レアメタルを増やしていく。また、研究分担者により、まず単元素分離系のためのマイクロリアクターの設計と試作を行い、マイクロリアクターを用いた単独系での数種の金属イオンの回収を行う。さらに、多元素混合系における相互分離・回収のためのカスケード型マイクロリアクターの設計と試作を行う。必要に応じて、パラレル型のマイクロリアクターシステムの設計と試作を行い、性質の類似した金属群毎の群分離を行い、さらに可能であればカスケード型マイクロリアクターを組み込んだシステム構築を行い、使用済み小型家電などの廃棄物を回収する地域・行政・企業のオンサイトでのレアメタルなどの金属資源の相互分離と回収を行う。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123023「廃棄竹材の次世代電池材料へのゼロエミッション利用技術の開発」 (大分大学 衣本太郎)

  従来方法に比べて簡便に廃棄竹材から竹繊維を低炭素な方法で製造する工程を確立し、得られる竹繊維を炭化・成形して竹炭繊維シートを得て、最終的には燃料電池や金属-空気二次電池などの次世代電池の材料として利用する技術を開発する。  (1)「竹繊維製造工程の検討と竹チップの繊維化」:独自で新規な方法により廃棄竹材から従来方法に比べて飛躍的簡便に竹繊維を製造する方法を開発するとともに,新規に竹チップから竹繊維を製造する技術も開発する。  (2)「竹繊維のシート加工とその炭素化」:竹繊維のシート成形とその炭素化を行い、得られる竹炭繊維シートの電池用材料としての物性を評価する。  (3)「竹炭繊維シートを用いるガス拡散電極の作製と電池性能評価」:電池性能評価を行うとともに製造方法の改善を進め、技術の有効性を実証して廃棄竹材の低炭素処理方法と次世代電池材料としての利用方法を開発する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K122024「国際的な資源依存構造に着目したレアメタルに関する3R効果評価手法の開発」((独)国立環境研究所 南齋規介)

  未曾有の震災を受け、その重要性が更に増した新エネルギー技術への需要の高まりに呼応し、技術性能の要となるレアメタルの需要増加が世界的に見込まれている。わが国は、レアメタルの安定供給の柱として、海外資源確保、リサイクル、代替材料開発、備蓄を挙げているが、リサイクル以外に循環型社会の形成を軸とした重要な取り組みである、リデュースとリユースによる貢献を見落としている。わが国の海外への資源依存は不可避である。重要なことは、如何に安定した資源依存を形成していくかである。3Rは確実にわが国の安定的な資源依存の形成に貢献するものであるが、その効果を計測する指標すら開発されていない。3Rをわが国の資源管理政策に活かしていないのが現状である。また、わが国へ資源として直接輸入されるレアメタルのみに着目し、リサイクルの効果を論じることが多い。貿易商品に含有されているレアメタルや、国際サプライチェーンを通じたレアメタルへの間接的な消費を含めた広い視野での考察が行われていない。  本研究では国際サプライチェーンを含む直接間接の資源依存の実態を踏まえ、3Rがどれだけ資源依存の安定性に貢献するかを定量的に示す。新たな指標を開発し、主要なレアメタルを対象に適用する。本研究は三課題で構成する。[1]レアメタルの国際マテリアルフローの実態把握とわが国との構造的関係性の解明、[2]資源依存の安定性評価の枠組設計と定量化手法の開発、[3]3R活動を対象とした資源依存安定性指標の計測である。期待される研究成果は,主要なレアメタルに関する国際フローの実態解明,日本経済の国際的なレアメタル依存構造の同定,資源依存の安定性を評価する新しい指標の開発、そして3Rに関する指標の計測とそのデータベース化である。この成果は、3R政策を温暖化、廃棄物、資源管理の三つ観点から立案することを支援する。また,国民と産業界の3Rへの関心を高めることで,3R活動の促進に繋がることが期待できる。更に、「都市鉱山」を活用したリサイクルシステムを国際的な資源依存の観点から設計することを可能とする。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123025「水熱処理技術の活用した新規下水処理システムに関する研究」(名古屋大学 小林信介)

  本研究開発では、水熱処理技術を活用し、汚泥の加水分解による減量化を図るとともに、水熱処理汚泥の脱水性能向上による脱水プロセスの省エネルギー化と低コスト化、水熱処理溶液のメタン発酵による高効率エネルギー回収、さらにアンモニアの吸着による水熱処理残渣の肥料化を複合的に融合した新たな下水汚泥処理システム(Integrated Sludge Treatment System, ISTS)を構築することにより下水処理トータルシステムの高度化を目指している。ISTS構築のためにはその要素技術として水熱処理スラリー脱水特性を把握し、処理溶液のメタン発酵特性について把握するとともに、固体残渣活性炭によるアンモニア吸着特性についても明らかにする必要がある。しかしながら、それら要素技術に関する詳細な研究報告はほとんどなされていない。そこで本研究開発は、①水熱処理条件が処理スラリーの脱水特性に与える影響について明らかにするとともに、②水熱処理溶液の高速メタン発酵特性を明らかにし、また③水熱処理残渣活性炭の製造条件、吸着最適条件を明らかにすることを本研究開発の目的とする。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123026「ネオジム磁石廃材からの非加熱式全元素回収プロセスの開発」(島根大学 笹井亮)

  本研究では自動車からハイテク家電までの多くの製品で必要不可欠な部材の一つであるネオジム磁石を処理対象として、これに含まれるすべての元素を非加熱で個別かつ迅速に、直接工業利用可能な化学形態で分離回収できる再資源化システムの構築を最終目標とする。この目標を達成するために、研究代表者が最終的に提案しようとするシステムを構成するいくつかの基盤技術の研究・開発を実施する。近年その回収・再資源化技術が熱望されている希土類元素を非加熱で回収するために、脱磁し粗粉砕したネオジム磁石の湿式ボールミル処理を溶解溶剤と析出溶剤の混合溶媒を用いて行う。この技術では、従来の冶金技術に基づいた高温印加を必要とする処理とは異なり、希土類元素(ネオジムやディスプロシウム)の溶解析出現象を促進させるために、ボールミルによる力学エネルギーの添加と薬剤による化学反応を利用することで室温下での処理が可能となる。力学的エネルギーと溶解・析出反応を組み合わせたこの技術の完成により、高温印加を必要とする冶金技術に基づいた処理とは異なり、ネオジム磁石から希土類元素を直接工業利用可能な化学形態、例えばシュウ酸塩として低消費エネルギーで高効率かつ迅速に高純度で回収することが可能となる。またこの希土類元素回収処理は湿式であるため、ネオジム磁石に含まれる他の有価元素(Fe, Ni, Cu, Bなど)の溶解した溶液が発生する。通常このような廃液は有価金属を含んでいるにもかかわらず単なる無害化処理のみが施され廃棄されるが、本研究では現行の処理工程では廃棄されている有価元素をも工業原料として利用可能な化学形態で高効率かつ迅速に高純度で回収するために、中和沈降現象の精密な制御のための技術開発を進める。ここまでの処理でも廃液中にはホウ素が残留する。これに関しては研究代表者がすでに保有している水熱鉱化廃水処理技術により鉱石として回収できる。このようにして開発した各基盤技術を組み合わせ実用的な非加熱型全元素回収システムとして具現化するために、ラボスケールでの可能性試験を行うと共に、関連企業の協力を得るためのアウトリーチ活動を展開し、本研究の実施期間終了後には、国内に約10,000 t/年程度の量が廃棄物という名で保有されているネオジムをリサイクルし、再資源として利用可能になる。  (1)「ネオジム廃材からの非加熱式全元素回収プロセスの開発」:強力な磁力を有するネオジム磁石の取り扱いを容易にするためには脱磁処理は必要不可欠である。これをできるだけ低温で実現するために積極的に酸化反応を利用した加熱処理を検討する。得られた脱磁磁石から湿式ボールミル法によりネオジム等希土類を非加熱で高効率(90%以上)、高純度(90%以上)で選択的に回収するための基盤技術の研究開発を行う。ボールミル処理により脱磁磁石を粉砕するだけでは選択的な元素回収は不可能であるため、代表者のこれまでの研究でネオジム磁石の溶解に対して有効であることが明らかとなっている塩酸-シュウ酸混合水溶液を中心に、様々な組合せの混合溶媒による処理実験を行い、最適溶媒を選定する。さらに、その最適溶媒を用いて処理条件(回転数、処理時間など)の最適化を進める。このような検討を進めることで、湿式ボールミル法によるネオジム磁石からのネオジム等希土類元素の選択的回収のための基盤技術の確立を目指す。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K122101「光触媒コーティング無電極ランプによる被災地の汚染水浄化装置の開発」(上智大学 堀越智)

  本申請研究では、光触媒をコーティングしたマイクロ波励起紫外線無電極ランプ(無電極ランプと省略)を用いて、被災地における有機汚染物質を含んだ水のオンサイト浄化を目的とし、その装置の開発と評価を行う。この技術は、申請者らが既に10年以上行ってきた二つの要素研究を融合させ、新しい水処理方法を提案する。 要素研究1:光触媒は日本が世界に誇れる科学技術の一つであり、申請者らも20年近くその研究を行ってきた。しかし、既存の水処理法に比べ水質汚染物質の分解時間に問題があることから大型化には至っていない。申請者らは光触媒二酸化チタンへ紫外線とマイクロ波を同時照射すると、既存の光触媒反応に比べ、様々な有機汚染物質の分解が数十倍に促進することを発見した。また、マイクロ波による光触媒活性促進効果についても学術的研究を重ねてきた。 要素研究2 :蛍光灯を電子レンジに入れてマイクロ波を照射すると発光することが知られているが、電極やソケットを持たない水銀およびアルゴンを封入した電球(無電極ランプ)へマイクロ波を照射すると、蛍光灯と同様に内封ガスがマイクロ波により励起し、強い真空紫外光/紫外線を発生させる。申請者らはこの無電極ランプを環境保全に利用すべく、無電極ランプの最適化に加え、マイクロ波照射装置のデザインを先導的に行ってきた。この方法を用いて、水中の農薬、殺虫剤、VOC(揮発性有機化合物)、フッ素系化合物(PFOA)、ダイオキシン、PCB(ポリ塩化ビフェニル)、大腸菌、し尿などの処理で行ってきたが、数十~数百倍の分解促進効果があることを確認いている。また、この無電極ランプは既存の紫外線ランプに比べ、ランプの寿命・小型化・省エネ・分解効率の点で優れていることを示唆した。  無電極ランプがマイクロ波で駆動することから、二酸化チタンを無電極ランプ表面に薄膜コーティングすることで、マイクロ波と紫外線を同時に照射することがで可能となり、メンテナンスフリーで容易なオペレーティングの高効率浄化装置を提案することができる。また、この方法は被災地のような過酷なオペレーティング状況においても、その効果を発揮できる装置であると考えられる。 (1)「光触媒コーティング無電極ランプの試作と最適化に関する研究」:平成24年度は、(1)光触媒をコーティングした無電極ランプの試作および(2)試作したランプの点灯装置および反応容器の試作を行う。ランプは数mmサイズのビーズ状に形成し、ランプ表面へ二酸化チタンをゾルゲル法または化学気相蒸着でコーティングする。点灯効率と消費電力の点から、ランプ試作を行い、また光触媒活性や固定化強度の観点からの最適な二酸化チタン合成法を確定する。この評価には試作した、無電極ランプ点灯装置を用いて評価する。 (2)「光触媒コーティング無電極ランプを用いた汚染水浄化装置の開発に関する研究」:25年度は、24年度に試作した装置を用いて、モデル水質汚染物質の分解処理実験を行う。モデル汚染物質としてハロゲン含有有機汚染物質(塩化物およびフッ化物)や色素水溶液を用いる。また、実際の被災地の汚染水を処理を行い、本装置の特徴を体系化し、その改善に努める。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K122102「放射性セシウムを含有する焼却残渣の性状把握と効率的かつ安全な処分技術」(九州大学 島岡隆行)

  本研究では、2つの視点から放射能を帯びた都市ごみ焼却残渣の処理・処分を検討する。一つは、焼却主灰中のCsの存在形態と溶出特性を把握することにより、埋立層内での長期的な安全性を検証する。二つ目は、焼却飛灰に関して、溶脱させたCsを吸着剤へ移行させ、濃縮物を低レベル放射性廃棄物として処分し、処理した焼却飛灰を管理型処分場へ処分可能とする技術開発に資する研究を行う。  (1)「都市ごみ焼却残渣(焼却主灰、焼却飛灰)のセシウム化合形態の解明とセシウム溶出特性把握」:焼却主灰中のCsは大半が残留物態である。粘土ではCsが層状珪酸塩の層間に強く吸着される機構が明確であるが、焼却主灰においては残留物態中のCsの形態が不明である。長期の安定性を論ずるには、Csの存在形態を明確にする必要がある。本研究では、Csの逐次抽出試験に加え、複数の機器分析および多角的な溶出試験を適用し、Csの存在形態を明らかにする。Cs濃度が汎用分析装置にとって低い場合は、高濃度(>数百ppm)にCsを含有する調整焼却主灰を作製し、分析に供する。(2)「焼却主灰の風化変質がセシウムの動態に与える影響の把握と埋立層内におけるセシウムの長期挙動予測シミュレーション」:焼却主灰は埋立層内において長期的に風化変質する.焼却主灰中のCsの存在形態によっては変質過程の影響を受けると考えられる。そこで,風化促進実験により変質を促進させ、Csの溶出挙動を追跡する。また、申請者らが開発済みの埋立地シミュレータと地球化学平衡モデルの連結モデルを用い、様々なシナリオ条件下でCsの長期動態を予測する。(3)「焼却残渣(焼却主灰、焼却飛灰)からのセシウムの効率的な抽出、分離技術の構築」:焼却残渣中に高濃度で存在するCsを効率的に溶脱させ、溶液中に移行させる。溶脱させたCsは、リグニン誘導体による吸着技術を援用し、溶液からCsを選択的にリグニン誘導体へ濃集させる.使用済みのリグニン誘導体は、有機物であることから焼却処理により減容化とさらなる濃縮をはかる。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K122103「放射能汚染廃棄物処理施設の長期管理手法に関する研究」((独)国立環境研究所 大迫政浩)

  本研究では、焼却などの中間処理や埋立(埋設)による最終処分、中間貯蔵の過程における放射性セシウム(Cs)の長期的な挙動を把握、解明し、今後の施設の維持管理や解体撤去に係る長期的な管理手法を確立し、提示する。  (1)「 焼却処理等の中間処理施設における放射性Cs挙動解明と長期的管理手法」:中間処理の主な技術である焼却処理については、放射性Csが特に高濃度化すると考えられる炉材(耐火レンガやキャスタブル耐火物等)への蓄積について、安定Csを指標として既設焼却炉の実態調査を行うとともに、Csの存在形態に関する熱力学的なシミュレーション解析や、検証のためのラボスケールの燃焼炉によるモデル試験を行う。それらの検討を踏まえて、放射性Csの炉内存在状態や、炉材内部への移行、炉内濃度の変化に伴う可逆的又は不可逆的移動などについて現象解明を行い、長期的な挙動の予測モデルを構築する。予測モデルを用いたシミュレーションにより、炉内蓄積の回避による作業者被ばく防止や、生じた廃棄物の濃度レベル低減のための、定期的炉内点検・解体撤去前のクリーニング手法を提示し、検証する。クリーニング手法としては、放射性Csフリーの廃棄物や燃料のみ一定時間の燃焼による炉内除染を検討する。  (2)「埋立処分施設における放射性Cs挙動解明と長期的管理手法」:埋立処分については、放射性Csの存在形態やその長期的変化、移動性、土壌への吸着保持などについて、様々な角度から検討を行う。安定Csの挙動に着目し、埋立後数十年経過した焼却灰主体の既存処分場においてボーリング調査を実施し採取した試料について、逐次抽出法によって存在形態を推定する。また、現在発生している放射性Csを含む焼却主灰、飛灰についても同様に逐次抽出法を適用し、放射性Cs及び安定Csの存在形態についてボーリング試料と比較考察する。また、既存処分場においてボーリング調査とともに電気探査法を適用し、内部構造や水の滞留状態を把握し、安定Csの挙動との関係を考察する。一方、多数の既存処分場の浸出水塩類濃度と安定セシウム濃度のデータを集積し、両者の関係を考察し電気伝導度等を代理指標とした安定Csの長期挙動予測の経験則を得る。さらに、層内の土壌の吸着保持能力を吸着試験により確認し、それらの効果も含めた長期的な放射性Cs挙動予測モデルを確立する。以上の知見を踏まえて、最終処分場の長期的な監視手法や廃止基準・方法について提示する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K122104「津波堆積物を用いた放射線汚染掘削土壌被覆のための高機能性覆土材の開発」(東北大学 高橋弘)

  研究代表者が開発した繊維質固化処理土工法を津波堆積物に応用し、津波堆積物を用いて高機能性(高耐久性、高耐侵食性、難透水性、高耐震性)を有する地盤材料を作成し、福島県内の放射線汚染掘削土壌を安全に保管できる覆土材を開発する。  (1)「覆土材の耐侵食性・耐久性に関する研究」:水中噴流試験機および人工降雨機による侵食試験を行い,山砂に対して10倍以上、固化処理土(セメントだけで固めた土)の2倍以上の耐侵食性を有する覆土材を作成する。さらに40度炉乾燥2日間、20度水浸1日間を1サイクルとし、10サイクル繰り返しても劣化しない高い耐久性を有する覆土材を開発する。 (2)「覆土材の難透水性に関する研究」:作成した覆土材を用いて透水試験を実施し、透水係数を評価する。一般に遮水材として用いられているベントナイトと同程度の透水係数を有する覆土材を開発する。  (3)「覆土材の耐震性に関する研究」:作成した覆土材を用いて繰返し三軸圧縮試験を実施し、液状化抵抗力を計測する。様々な種類の覆土材に対して試験を行い、山砂に対して2倍以上、固化処理土に対して1.5倍以上の耐震性を有する覆土材を開発する。  (4)「覆土材を用いた現場施工試験による総合評価」:耐侵食性・耐震性・耐久性が高く難透水性の覆土材を用いて実際の掘削土壌を被覆し、空間線量の減少を確認するとともに、自然環境下に晒して、覆土内の水の動きや自然降雨による侵食量を測定し、前述の機能性を総合評価する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K122105「半導体コンプトンカメラ技術を用いた放射性汚染物のイメージング分析技術の開発」(理化学研究所 本村信治)

  本研究では、本研究代表者らが医学・生物学研究用の多核種同時ガンマ線イメージング装置として開発を行ってきた半導体コンプトンカメラ「GREI」をさらに機能拡張し、放射性物質に汚染された恐れのある廃棄物をイメージング分析することでその汚染部位の特定と核種の同定を可能にすることを目的とする。  (1)「半導体コンプトンカメラ技術を用いた放射性汚染物のイメージング分析技術の開発」:本研究代表者らが特許を保有している半導体コンプトンカメラ技術を基にして、さらに遠方にあるガンマ線源を高感度で撮像するためのイメージングシステムの最適化を行う。また、可搬性・メンテナンス性を向上させるためのシステム要素の開発も行い、それらを組み込んだイメージングシステムを構築する。このイメージングシステムの撮像性能を、様々な放射性同位元素を用いた撮像実験により検証する。
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K122106「焼却・溶融処理を用いた放射能汚染土壌・廃棄物の放射能分離・減容・固定化技術の確立」(京都大学 米田稔)

  現在の廃棄物焼却・溶融施設でのCsなどの挙動調査を行い、既存の廃棄物処理施設における放射能汚染廃棄物・土壌の適正処理方法を検討し、できるだけ放射性物質を含む飛灰を濃縮し、放射性廃棄物として保管処理する分量を減らし、同時に一般廃棄物処分場などで処分可能な焼却灰の割合を高くする方法を明らかにする。また、今後、最終処分場への移行を考慮し、溶融処理による放射性物質の確実な固定化方法も明らかとする。これら研究目的達成のため、以下のテーマを設定して研究を進める。 (1)「放射能で汚染された焼却・熱処理対象物質の発生量予測」:既存のGISデータ、統計データ、環境パラメータ値などを用いた数値シミュレーションを実施し、実測値を用いて計算モデルの検証を行って、有効性を確認した後、将来予測を行う。 (2)焼却・溶融処理における現状把握とCsの分離・濃縮・固定化条件の最適化」:実験室レベルでの実験、および実際の焼却処理プラントでのCs等の挙動観測からCs等の焼却・溶融処理施設内での挙動、および分離・濃縮・固定化に関する各種条件を明らかにする。 (3)「放射能汚染土壌の浄化処理における放射能濃縮効率の最適化」:実験室レベルでの実験、および協力企業と連携してのミニプラントレベルでの実験により、放射能で汚染された土壌を洗浄分級処理する場合の最適条件を求める。 (4)「労働者の被曝リスク評価と安全作業マニュアルの策定」:実データから詳細な被曝量評価モデルを作成して、各作業シナリオのリスク評価を実施し、安全作業マニュアルの策定を行う。
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K122107「防災・減災を志向した分散型浄化槽システムの構築に関する研究」((独)国立環境研究所 蛯江美孝)

  今回の東日本大震災において顕在化した分散型システムの必要性を鑑み、災害時の公衆衛生の確保を目指した災害対応浄化槽の技術基準の確立や関連施設のデジタルマッピングによるGISを活用した支援システムの確立を図り、その防災・減災効果の総合評価を実施する。  (1)「防災・減災を志向した分散型浄化槽システムの構築に関する研究」:ハード技術として、浄化槽の被害・補修状況詳細調査と耐震構造・施工方法に関する解析、避難所仕様の自立型浄化槽システムの設計を行うとともに、ソフト技術として、関連施設のデジタルマッピングによる情報把握と復旧支援のための最適化アルゴリズムの開発、社会インフラとしての整備効果の評価指標の検討を実施する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K123108「災害廃棄物の処理における石綿の適正管理に関する研究」((独)国立環境研究所 山本貴士)

  東日本大震災あるいは今後発生するおそれのある災害廃棄物の処理において、石綿による健康被害を未然に防止するための石綿の適正管理手法の確立を目的とし、以下の研究を実施する。  (1)「災害廃棄物や被災建築物等に含まれる石綿含有物の迅速判定方法の検討」:災害廃棄物中の石綿含有物の有無を迅速かつ簡易に判定できる方法、具体的には実体顕微鏡や偏光顕微鏡を用いた方法について検討する。また、被災建築物の石綿含有建材使用の有無を主に目視判定するための方法について検討する。いずれの方法についても実際の災害廃棄物や被災建築物に適用して有効性について評価する。 (2)「被災地における石綿含有物の発生量推定方法の検討」:建築物の築年数や構造(RC造、S造等)毎に石綿含有建材使用の有無や使用量について推定する方法、また被災地の属性(都市、工業地域、農漁業地域等)毎の建築物の分布を推定する方法について検討し、これらから被災地における石綿含有物の発生量を推定するスキームについて開発・評価する。 (3)「災害廃棄物の処理過程での石綿混入及び石綿飛散対策方法の検討」:廃棄物処理過程において石綿が飛散しやすい破砕選別過程に石綿含有物が混入することを防止するための手法、同過程での石綿飛散を制御するための手法について検討する。また、災害廃棄物やそれが混入した土壌等からの石綿飛散量について実験的に検討するとともに、それを抑制する手法について検討する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K122109「放射能で汚染された廃棄物を対象とした海面最終処分場に関する研究」(広島大学 土田孝)

  本研究では、放射能に汚染された廃棄物を安全に埋立処分できる海面処分場の開発を目的とし、以下の研究を実施する。これらの一連の研究成果により、1箇所で100万m3から1000万m3以上の容量を有し、廃棄物1m3あたりの処分コストを2万円以下の範囲で最終処分を行う新たな海面処分システムを開発し提案する。  (1)「廃棄物の放射能特性・溶出特性の解明と、それに基づいた最終処分場の必要性能の検証に関する研究」:現地調査を実施し、放射性レベルの高い災害廃棄物、除染によって発生した表土、焼却灰、下水汚泥、河川底泥など、本研究が対象とする廃棄物の放射能特性、溶出特性を調べ、放射能汚染の実態を把握する。調査結果をもとに、最終処分場の遮蔽・遮水層の必要性能を検証する。 (2)「遮蔽・遮水に用いる新地盤材料の透水吸着性能・変形追随性能に関する研究」:遮蔽遮水層は底面および側面において厚さ4m程度の変形追随性地盤材料により構築することを想定する。海成粘土にベントナイト、ゼオライト、製鋼スラグ・銅スラグ等の重量材を添加し、難透水性で放射性物質の吸着性能を有し、透過した水が含む放射性物質が原発排水の濃度限界セシウム137 90Bq/kg以下とする性能を有する地盤材料を開発する。 (3)「遮蔽・遮水に用いる地盤材料の遮水性能、施工性能に関する研究」:海成粘土にベントナイト、ゼオライト、製鋼スラグ・銅スラグ等の重量材を添加混合し、施工直後の透水係数として10-9m/s以下を達成し、海上で安定した品質管理と施工を行うために必要な特性を有する地盤材料を開発する。 (4)「放射能で汚染された廃棄物の最終処分にともなう大気、海水、地盤中の放射線環境と周辺環境の安全モニタリングシステムの開発」:放射性レベルの高い災害廃棄物、除染によって発生した表土、焼却灰、下水汚泥、河川底泥などの放射能特性、溶出特性の調査結果に基づき、これらの廃棄物を海面に埋立処分した場合の大気、海水および地盤内における放射線環境の予測を行う。処分作業中における放射線環境のモニタリング、処分場周辺環境の安全性に関するモニタリングシステムを開発する。 (5)「余水(海面埋立により発生する余剰水)を発生させない埋立工法の開発および地震・津波に対して安全を維持できる海面処分場の構造開発」:埋立時に処分場内の地下水を海面水位よりも低下させ、埋立による余水を発生させない放射性廃棄物の埋立方法を開発する。水位を数m低下させた場合の構造安全性、地盤材料による遮蔽遮水層の安定について実験および数値解析で検討する。水中振動台実験により、埋立中および埋立後にレベルⅡ級の地震および津波が発生した場合における海面処分場の構造安全性の検討、地震による変形を受けた後の遮蔽遮水層の性能評価を行う。 新規課題一覧へ 課題一覧へ

K122110「東日本大震災による漂流ごみの移動経路把握による二次災害防止に関する研究」(鳥取環境大学 松村治夫)

  東日本大震災に起因する津波によって発生した大量の漂流ごみは、沿岸地域に漂着して港湾の閉塞、船舶の航行等への障害をもたらしたが、その多くは未だ太平洋上を漂流しており、その移動経路次第では海外において新たな二次災害が発生する可能性もある。これらの問題に対処し海外の地域住民に及ぼす被害を最小限に止めるため以下の研究を実施する。  (1)「漂流ごみの移動経路調査」:東日本大震災による漂流ごみの現在地を発見し、その後の移動を追跡し、漂着の時期や場所を予測することを目的として調査を進める。コンピュータシミュレーションによる移動経路予測が他機関で行われているため、シミュレーション結果を補うための実データの把握と利用に重点を置いて、位置情報を発信する模擬ごみの放流による調査を中心に進める。 (2)「漂流ごみによる被害状況と発生源の調査」:今回の大震災で発生した漂流ごみによってこれまでに国内で生じた被害状況とその漂流ごみの発生源調査を行うことにより、漂流ごみの移動経路やそれによって生じる二次災害の内容を明らかにするとともに、今後起こりうる被害を最小化するための方策についての情報を収集する。 (3)「漂流ごみ情報の多面的活用策の提案」:津波による漂流ごみの実態と移動経路調査から得られた結果をもとにして、漂流ごみによって発生する被害を最小化するための関係者への漂流ごみ情報に関する発信のあり方について提案する。 (4)「漂流ごみの移動予測モデルの構築」:今回の大震災で発生した漂流ごみの移動経路をいち早く把握して迅速な二次災害対策を行うため、項目(1)、(2)の調査結果などを活用して、ごみの種類、気象や季節の変動に伴う海流の変化等を反映できる漂流ごみの移動予測モデルを、関係者の協力を得て構築する。 新規課題一覧へ 課題一覧へ


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