「インフラシステム海外展開戦略2030」の施策の柱の一つである「GX・DX等の社会変革をチャンスとして取り込む機動的対応」として、グローバルサウス諸国のニーズも踏まえた、実質的な排出削減につながる脱炭素移行政策誘導型インフラ海外展開を推進しています。2021年6月には、二国間クレジット制度(JCM)を通じた環境インフラの海外展開を一層強力に促進するため、「脱炭素インフライニシアティブ」を策定しました(資金の多様化による加速化を通じて、官民連携で事業規模最大1兆円程度)。2025年2月に改定された「地球温暖化対策計画」では、JCMについて、「官民連携で2030年度までの累積で、1億t-CO2程度、2040年度までの累積で、2億t-CO2程度の国際的な排出削減・吸収量の確保を目標とする」ことが定められています。さらに、環境インフラの海外展開を積極的に取り組む民間企業等の活動を後押しする枠組みとして、2020年9月に環境インフラ海外展開プラットフォーム(JPRSI)を立ち上げました。本プラットフォームには現在611の団体(設立当初は277団体)が会員として参加しています。JPRSIでは、セミナー・メールマガジン等を通じた現地情報へのアクセス支援、日本企業が有する環境技術等の会員情報の海外発信、タスクフォース・相談窓口の運営等を通じた個別案件形成・受注獲得支援を行いました。
また、2021年度から、再エネ水素の国際的なサプライチェーン構築を促進するため、再エネが豊富な第三国と協力し、再エネ由来水素の製造、島嶼(しょ)国等への輸送・利活用の実証事業を実施しています。また、2023年度には、これまでJCMを通じた事業化の実績のない先進的な技術導入を目的とした実証事業を新たに開始しました。
アジアの47か国及び41都市を対象として、脱炭素社会に向けて効果的な技術・政策を定量的に検討するために、国立環境研究所等が開発した、GHG排出量の予測や対策、影響を評価するための統合評価モデル「アジア太平洋統合評価モデル(AIM)」を用いたシナリオ作成支援や人材育成を行いました。
2024年度はインドネシアのセメントセクターの脱炭素ロードマップ策定にかかる支援、またラオスにおけるNDC3.0の策定支援を行い、脱炭素社会構築に向けた政策支援を行いました。
国際協力機構(JICA)を通じた研修員の受入れ、専門家の派遣、技術協力プロジェクト等、我が国の技術・知識・経験を活かし、開発途上国の人材育成や、課題解決能力の向上を図りました。
例えば、課題別研修「気候変動への適応」、「脱炭素で持続可能な都市・地域開発のための自治体能力強化」等、地球環境保全に資する講義等の協力を行いました。
地球環境問題に対処するため、[1]国際機関の活動への支援、[2]条約・議定書の国際交渉への積極的参加、[3]諸外国との協力、[4]開発途上地域への支援を積極的に行っています。
(ア)国連や国際機関を通じた取組
○ 地球環境問題の対処における相乗効果(シナジー)拡大・SDGsの統合的達成等に向けた取組
2015年9月の国連サミットにおいて「持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択され、2030年を達成期限とする持続可能な開発目標(SDGs)が定められました。SDGsは、エネルギー、持続可能な消費と生産、気候変動、生物多様性等の多くの環境関連の目標を含む、17の目標と169のターゲットで構成され、毎年開催される「国連持続可能な開発に関するハイレベル政治フォーラム(HLPF)」において、SDGsの達成状況についてフォローアップとレビューが行われます。
2024年7月に開催されたHLPFには、環境省からは、滝沢求環境副大臣(当時)が参加し、2024年3月の第6回国連環境総会(UNEA6)において我が国が提案し、採択された「シナジー・協力・連携の国際環境条約及び他の関連環境文書の国内実施における促進に関する決議」を紹介し、6か国の賛同国とともにシナジーの強化の取組を引き続き支援していく意思を明確にしました。また、シナジーに関する優良事例の収集・共有について多くの国や機関との連携を積極的に進めていくこと、アジア太平洋地域各国のシナジーの事例に関するレポートの作成を進める考えを表明しました。さらに、国連気候変動枠組条約第28回締約国会議(COP28)において公表された「気候・自然・人類に関する共同声明」に我が国も賛同し、パートナーを組み、シナジーを高める政策の推進に貢献していく旨を表明しました。
○ UNEPにおける取組
我が国は、UNEPの環境基金に対して継続的に資金を拠出するとともに、我が国の環境分野での多くの経験と豊富な知見を活かし、多大な貢献を行っています。とりわけ本年度は、環境基金に対する拠出に加え、UNEA6で我が国が提案し採択された「シナジー・協力・連携の国際環境条約及び他の関連環境文書の国内実施における促進に関する決議」の実施を推進するためUNEPに拠出金を拠出し、決議に基づくUNEPの活動を支援しました。
大阪に事務所を置くUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)に対しても、継続的に財政的な支援を実施するとともに、UNEP/IETC及び国内外の様々なステークホルダーと連携するために設置されたコラボレーティングセンターが実施する開発途上国等への環境上適正な技術の移転に関する支援、環境保全技術に関する情報の収集・整備・発信、廃棄物管理に関するグローバル・パートナーシップ等への協力を行いました。さらに、関係府市等と協力して、同センターの円滑な業務の遂行を支援しました。また、UNEP/IETCは、2019年度から民間企業の協力も得て、持続可能な社会を目指す新たな取組である「UNEPサステナビリティアクション」の展開を開始しており、環境省としても支援しています。
UNEPが、気候変動適応の知見共有を図るために2009年に構築したGAN及びアジア太平洋地域の活動を担うAPANへの拠出金等により、脆(ぜい)弱性削減に向けたパートナーシップの強化、能力強化活動を支援しました。その活動の一環として、適応に関する世界全体の目標(Global Goal on Adaptation, GGA)や変革的適応などの新たな課題に関する理解を深め、活発な意見交換を促すためのテクニカルウェビナーを開催しました。
○ 経済協力開発機構(OECD)における取組
OECDは経済・社会分野において、調査、分析や政策提言を行う「世界最大のシンクタンク」で、環境分野においても質の高いスタンダードを形成し、先進的課題のルールづくりを先取りしています。我が国は、2010年より環境政策委員会のビューローを務めており、同委員会や関連作業部会の活動に積極的に参加しています。OECD加盟60周年にあたる2024年の5月に開催されたOECD閣僚理事会では議長国を務め、岸田文雄内閣総理大臣(当時)が議長国基調演説を行い、議論を主導するなど、いわゆる「環境外交」における我が国の国際的なプレゼンスにも貢献しています。また、2024年には、環境政策委員会の下で我が国の環境政策の取組状況に対する4度目の環境保全成果レビューが進められ、同年12月の環境保全成果作業部会におけるOECD加盟各国による審査を経て、審査結果は「評価及び勧告」として承認され、報告書は、2025年3月にOECDより公表されました。
○ 国際再生可能エネルギー機関(IRENA)における取組
我が国は、国際再生可能エネルギー機関(IRENA)の設立当初より2018年まで理事国に選出、2019年のアジア太平洋地域の理事国を務め、2020年は代替国に就任しました。具体的には、IRENAに対して分担金及び任意拠出金を拠出するとともに、特に島嶼(しょ)国における再生可能エネルギー普及の観点から、2025年2月には、IRENA及びGCFとの共催により小島嶼開発途上国(SIDS)における脱炭素フォーラムを開催しました。また、2024年12月にコートジボワール共和国で開催された第3回日アフリカ官民経済フォーラムに関連して、IRENAはサイドイベントやウェビナーを開催し、アフリカにおける再生可能エネルギーの普及に向けた可能性や課題、国際協力などについて議論を行いました。
○ アジア開発銀行(ADB)及び欧州復興開発銀行(EBRD)における取組
我が国では、ADBと2014年6月に環境協力に関する覚書(LOI)に署名しており、毎年、環境政策対話を実施しているほか、JCM日本基金(JFJCM)に拠出を行い、ADBと連携して二国間クレジット制度(JCM)の案件形成を進めています。また、2025年3月に、EBRDとJCMに関する基金の設立に向けた意向表明書の署名を行い、気候変動等における協力関係を強化していくこととしました。
(イ)アジア太平洋地域における取組
○ 日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM)
2024年9月に第25回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM25)が韓国・済州島において開催されました。TEMM25では、日中韓三カ国の大臣により気候変動、生物多様性の損失、環境汚染といった環境危機への対策を強化する旨の共同コミュニケが採択されたとともに、各国とのバイ会談を通じて環境課題について意見交換を行い、こうした課題に協力して取り組んでいくことを確認しました。
○ 日ASEAN環境協力イニシアティブ
2023年8月の日ASEAN環境気候変動閣僚級対話において、日ASEAN気候環境戦略プログラム(SPACE)が発足しました。SPACEは、我が国が気候変動、汚染、生物多様性の損失という3つの世界的危機にASEANと協力して対処していくためのイニシアティブです。2017年に安倍晋三総理(当時)が提唱した「日ASEAN環境協力イニシアティブ」、2021年に岸田文雄総理(当時)が提唱した「日ASEAN気候変動アクション・アジェンダ2.0」等、既存の首脳級イニシアティブの下で行ってきた協力関係を、日ASEAN友好協力50周年を契機に更に強化するものです。
SPACEに基づく主要な協力分野は以下のとおりです:(i)気候変動(温室効果ガス排出量算定・報告に関わる透明性の向上、緩和、適応)、(ii)汚染(プラスチック汚染、電気・電子機器廃棄物及び重要鉱物に関するパートナーシップ、水・大気汚染等)、及び(iii)生物多様性の損失(生物多様性日本基金(JBF)を通じた生物多様性国家戦略及び行動計画(NBSAP)策定支援、SATOYAMAイニシアティブの促進等)
特に、気候変動の透明性については、我が国が設立した透明性パートナーシップ(PaSTI)に基づき、ASEAN加盟国における企業等の温室効果ガス排出量の透明性向上の制度構築に向けた技術的助言や、透明性向上に係るインセンティブに関する調査や発信等を実施しました。ベトナムにおいては、温室効果ガス排出量報告制度について、日本の知見を共有し、制度構築支援を行いました。
(ウ)アジア太平洋地域における分野別の協力
気候変動については第1章第1節8、資源循環・3Rについては第3章第6節2、汚水処理については第3章第6節3、水分野については第4章第2節6、大気については第4章第5節5を参照。
(ア)先進国との連携
○ 米国
2022年9月、西村明宏環境大臣(当時)とマイケル・リーガン米国環境保護庁長官は、日米環境政策対話を行い、日米共通の重要課題である気候変動と脱炭素、海洋ごみと循環経済、化学物質管理、環境教育と若者の分野における日米の協力強化や連携について、意見交換を行い、本対話の成果として「日米環境政策対話共同声明」を発表しました。2024年4月、八木哲也環境副大臣(当時)は、G7トリノ気候・エネルギー・環境大臣会合に出席のため訪問したトリノ(伊)で、マッケイブ環境保護庁副長官と会談し、環境・気候分野における意見交換を行い、引き続き緊密に連携していくことを確認しました。
○ EU
2021年5月、菅義偉内閣総理大臣(当時)とシャルル・ミシェル欧州理事会議長及びウァズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長はテレビ会議形式で会談を行い、「日EUグリーン・アライアンス」の立ち上げを発表しました。これは、グリーン成長と2050年温室効果ガス排出実質ゼロを達成するため、気候中立で、生物多様性に配慮した、かつ、資源循環型の経済の実現を目指すものであり、日EUで、[1]エネルギー移行、[2]環境保護、[3]民間部門支援、[4]研究開発、[5]持続可能な金融、[6]第三国における協力、[7]公平な気候変動対策の分野での協力を定めています。2024年11月、浅尾慶一郎環境大臣は、COP29に出席するため訪問したバクー(アゼルバイジャン)で、フックストラ欧州委員と会談し、気候分野における意見交換を行い、今後も緊密に連携していくことを確認しました。
○ カナダ
2024年4月、伊藤信太郎環境大臣(当時)は、G7トリノ気候・エネルギー・環境大臣会合に出席のため訪問したトリノ(伊)で、カナダのスティーブン・ギルボー環境・気候変動大臣と会談を行い、生物多様性、プラスチック対策、気候変動、資源循環、シナジー推進等の重要課題について意見交換しました。
○ 韓国
2024年9月、伊藤信太郎環境大臣(当時)は、TEMM25の出席の際に金琓燮(キムワンソップ)環境部長官と会談し、環境・気候分野における意見交換を行い、引き続き緊密に連携していくことを確認しました。
(イ)開発途上国との連携
〈アジア〉
○ 中国
対中国政府開発援助(ODA)が2021年度末に終了し、今後は、日中両国に裨益がある形で二国間の環境協力を発展させるため、ODAに代わって官民連携が主体となる日中環境協力の新段階においては、両国企業の連携による環境ビジネスを通じた脱炭素で環境汚染の少ない社会の構築への貢献を促していくことが望まれます。一方、優れた技術を有するものの、経営資源の制約により十分なビジネス展開ができない日本の中小企業にとっては、単独で中国市場に進出するのは困難です。そのようなことから、環境ビジネス市場に係る情報提供や官公庁との関係構築、中国企業との連携促進等を支援するため、日中友好環境保全センターが設立した国家生態環境科学技術成果実用化総合サービスプラットフォーム(CEETT)を介して、中国における日本企業と中国企業とのビジネスマッチングを進める体制を整備してきました。また、中国政府・関係機関の若手職員を対象に環境及び防災意識の啓発を図ることなどを目的に外務省の「日中植林・植樹国際連帯事業」を活用して、2024年1月下旬から2月上旬及び同年10月下旬から11月上旬にかけて日本に招聘するとともに、中国政府も日本政府・関係機関の若手職員を同年6月下旬に中国に招聘するなど、日中両国の環境分野業務従事者の若手職員が相互に交流する事業を行っています。2024年9月、伊藤信太郎環境大臣(当時)は、TEMM25の出席の際に黄潤秋(ホアンルンチウ)生態環境部長と会談し、環境・気候分野における意見交換を行い、引き続き緊密に連携していくことを確認しました。
海洋プラスチックごみについては、2023年10月に第16回日中高級事務レベル海洋協議において合意された、第5回日中海洋ごみ協力専門家対話プラットフォーム会合及び第5回日中海洋ごみワークショップを2024年7月に中国主催で開催しました。両国の行政官及び専門家出席の下、海洋におけるマイクロプラスチックの特性及びそれに応じた生態影響・リスクの評価、情報技術を活用した海洋ごみの実態把握、地域における対策の事例、普及啓発・教育・市民参加の取組等について議論を行い、協力を継続していくことで一致しました。
○ インドネシア
2019年6月に署名された海洋担当調整大臣との共同声明等に基づき、海洋プラスチックごみについては、モニタリングに関する技術協力として、研修を行いました。
2022年8月には、環境林業省との間で環境協力に関する協力覚書に署名し、また、海洋投資調整府との間で、日インドネシア包括環境協力パッケージに合意・署名し、インドネシアが重視する優先課題に関して、脱炭素移行、生物多様性保全、循環経済の同時推進を目指した包括的な協力を進め、官民投資の促進を図っています。2024年4月に環境林業省と開催した技術対話では協力の進捗状況を確認し、今後の進展に向けた協議を行うとともに、2024年8月には協力覚書を更新しました。さらに、気候変動分野の協力として、2024年10月、「日・インドネシア共和国間の二国間クレジット制度(JCM)及びインドネシアの温室効果ガス排出削減認証制度に関する日本国環境省とインドネシア共和国環境林業省との間の相互承認取決め」の大臣間の署名が完了しました。これに続き、同年12月、第10回合同委員会を開催し、パリ協定第6条に沿ってJCMを実施するための改定規則及びガイドライン類等の採択や二酸化炭素回収・貯留(CCS)及び二酸化炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)事業に関するガイドライン類を新たに採択しました。
また、2017年の日尼首脳会談を契機に、環境省、JICA、IFCが共同で西ジャワ州レゴックナンカ廃棄物発電PPP事業の案件形成を支援しています。環境省では制度構築(焼却灰規制等)支援を行い、2023年7月に日本企業を含む国際コンソーシアムが落札者に選定され、2024年6月に西ジャワ州とコンソーシアムとの間で契約署名が行われました。
○ インド
2018年10月にインド環境・森林・気候変動省と署名した環境分野における包括的な協力覚書に基づき、「第1回日本・インド環境政策対話」を2021年9月に開催しました。本政策対話では気候変動分野の二国間協力等について議論するとともに、JCMに関する政府間協議の実施等、今後両省の協力を一層推進していくことに合意しました。この覚書に基づき、2023年1月に日・インド環境ウィークを開催し、気候変動や廃棄物管理、大気汚染対策などに関するセミナーや両国企業による展示・ビジネスマッチ等、複数のイベントを一体的に開催する等、官民における二国間環境協力を推進しています。
○ モンゴル
2022年5月のバトウルジー・バトエルデネモンゴル国自然環境観光大臣来訪時に行われた協力の進捗に係るハイレベル意見交換時に更新されたモンゴル自然環境・観光省との環境協力に関する協力覚書に基づき、「第15回日本・モンゴル環境政策対話」を2023年6月にウランバートルで開催し、大気汚染対策、気候変動対策(GOSATシリーズ、JCM)、生物多様性等について、意見交換を行いました。
特に、GOSATシリーズについては、モンゴル国の温室効果ガスインベントリに計上された二酸化炭素の排出量と、GOSATの観測データ等より推計した排出量が高い精度で一致することを確認しました。モンゴル政府は、2023年11月に、この結果を自国の隔年更新報告書の一部として、日本政府への謝辞とともに国連に提出しました。
○ フィリピン
2023年12月、フィリピン環境天然資源省と「環境保護分野における協力覚書」に署名し、廃棄物管理から協力範囲を広げ、気候変動やプラスチック汚染、生物多様性といった分野を始めとする包括的な環境協力を進めていくことに合意しました。2024年10月には、2015年よりフィリピン環境天然資源省と開催している廃棄物分野に関する環境対話(第9回)を実施しました。2025年1月13日(月)から15日にかけては、フィリピン・マニラで、フィリピン環境天然資源省とともに、環境政策対話、テーマ別セミナー、ビジネスピッチ等といった一連のイベントを一体的に開催する「第2回日本・フィリピン環境ウィーク」を開催しました。また、小林史明環境副大臣は、環境ウィークの出席のために訪問したマニラで、マリア・アントニア・ユロ・ロイザガ環境天然資源大臣と会談し、今後の協力について方向性を確認しました。さらに、海洋プラスチックごみについては、モニタリングに関する技術協力として、研修を行いました。加えて、水田から排出されるメタン削減に資する水管理技術とJCMとを組み合わせるための具体的手法(方法論)をフィリピンと共同で開発し、現地でプロジェクトが開始されました。
○ シンガポール
2017年6月に更新されたシンガポール環境水資源省との間の「環境協力に関する協力覚書」に基づき、2023年2月に持続可能性・環境省と「第7回日本・シンガポール環境政策対話」を東京で開催し、循環経済・廃棄物管理、気候変動、大気汚染、プラスチック汚染等について意見交換を行いました。また、2023年8月に閣僚級政策対話を実施しその成果として今後の二国間及びASEAN地域における環境協力に関する共同声明を発出しました。2024年9月には「第8回日本・シンガポール環境政策対話」をシンガポールで開催し、循環経済・廃棄物管理、大気汚染・騒音対策、プラスチック汚染、日・ASEAN協力、気候変動等に関して意見交換を行い、引き続き両国で連携していくことを確認しました。
○ タイ
2018年5月にタイ王国天然資源環境省と署名した「環境協力に関する協力覚書」について、2024年7月に協力強化を目的として覚書を更新するとともに、第4回日本・タイ環境政策対話や環境技術・サービスに関する日本・タイのビジネス連携を促進することを目的とした「日本・タイ環境ビジネスマッチングセミナー」を開催しました。また、2022年4月に環境省環境再生・資源循環局とタイ王国工業省工業局(DIW)で署名した産業廃棄物管理に関する協力覚書に基づき、産業廃棄物の適正管理に関する知見の共有等を進めるとともに、2022年8月に環境省環境再生・資源循環局とタイ王国内務省地方自治振興局(DLA)で署名した都市廃棄物管理に関する協力覚書に基づき、一般廃棄物の適正管理に関する知見の共有等を進めたほか、廃棄物管理に係るオンライン研修を実施し、タイ政府のキャパビル向上に貢献しました。2024年7月には、二国間クレジット制度(JCM)に関する協力覚書の更新が行われました。JCMについては、同年9月、第6回合同委員会を開催し、タイ国内制度の構築に伴うJCMに係る新たな規則及びガイドライン類等の採択、新規案件の承認やパリ協定第6条に関する各国の取組について情報交換を行いました。さらに、海洋プラスチックごみについては、モニタリングに関する技術協力として、研修を行いました。
○ ベトナム
ベトナム天然資源環境省と2013年12月に「環境分野に関する協力覚書」に署名し、以来同国と緊密な協力関係を築いています。2024年1月にハノイにて第8回日本・ベトナム環境政策対話を開催するとともに、同覚書を再更新しました。また同月には、ベトナムの2050年までのカーボンニュートラル目標の実現のため、2021年11月に両大臣により署名された「2050年までのカーボンニュートラルに向けた気候変動に関する共同協力計画」に基づく第3回合同作業部会を開催し、本共同協力計画に基づく気候変動分野などの協力を議論しました。2024年10月には、日・ベトナム間の二国間クレジット制度(JCM)の第9回合同委員会を開催し、9事業からのJCMクレジット発行量を決定しました。また、海洋プラスチックごみについては、これまで、2019年度以来、研究者及び政府担当者の人材育成のための研修を行い、2020年度には海洋ごみモニタリングの分野における協力に関する基本合意書に署名していたところですが、同合意書の終期に伴い、協力を更に進展させるため、2023年8月、ベトナム天然資源環境省との間で、海洋ごみの管理等に関する協力に係る基本合意書に署名しました。これも踏まえ、2024年度にも継続して、ベトナム周辺で海洋ごみ共同パイロットモニタリング調査・研究の実施、モニタリングや処理を含む、海洋ごみ(廃棄物)管理に関する人材育成研修の実施、海洋ごみ(廃棄物)管理に関する知見共有、マニュアル等の策定支援等を行いました。また、第5回日越政策対話(2018年)において設置が合意された廃棄物管理に関する合同委員会では、ベトナムにおける廃棄物管理や3R、公衆衛生の向上等を目的に、廃棄物処理基準やガイドライン等の制度設計支援、廃棄物発電の案件形成、重点取組自治体への支援等を促進したほか、廃棄物管理に係る研修を実施し、ベトナム政府のキャパビル向上に貢献しました。
○ マレーシア
2024年11月、浅尾慶一郎環境大臣は、COP29に出席するため訪問したバクー(アゼルバイジャン)で、ニック・ナズミ天然資源・持続可能性大臣と会談し、環境・気候分野における意見交換を行い、緊密に連携していくことを確認しました。
〈中東〉
○ UAE
2022年11月にアラブ首長国連邦気候変動・環境省と署名した「日本国環境省とアラブ首長国連邦気候変動・環境省との間の環境協力に関する協力覚書」に基づき、2023年9月、「日・UAE政策共有会」をオンラインで開催し、循環型経済、グリーンファイナンス、大気環境政策についての取組を紹介するとともに、今後の協力に向け意見交換を行いました。
〈ラテンアメリカ〉
○ ブラジル
2024年11月、浅尾慶一郎環境大臣は、COP29に出席するため訪問したバクー(アゼルバイジャン)で、マリナ・シルバ環境・気候変動大臣と会談し、環境・気候分野における意見交換を行い、緊密に連携していくことを確認しました。
2025年3月、浅尾慶一郎環境大臣はシルヴァ環境気候変動大臣と会談を行うとともに、「日本国環境省とブラジル連邦共和国環境気候変動省との間の環境分野の協力覚書」に署名を行いました。
〈東ヨーロッパ〉
○ ウクライナ
2022年11月、環境省とウクライナ環境保全天然資源環境省との間で環境保全分野の協力に関する覚書を署名しました。また、環境省はJICAが進めているがれき処理支援に対する協力を行っています。2024年2月、二国間クレジット制度(JCM)の構築に関する協力覚書の署名が行われました。
○ モルドバ
2024年9月、日・モルドバ間の二国間クレジット制度(JCM)の第1回合同委員会を開催し、パリ協定6条に沿ってJCMを実施するための規則及びガイドラインを採択しました。
〈アフリカ〉
○ セネガル
2024年5月、日・セネガル間の二国間クレジット制度(JCM)の第1回合同委員会を開催し、パリ協定6条に沿ってJCMを実施するための規則及びガイドラインを採択しました。
〈中央アジア〉
○ カザフスタン
2023年2月に学校法人中央大学はGOSATの協力覚書に署名しました。2025年1月、日・カザフスタン間の二国間クレジット制度(JCM)の第1回合同委員会を開催し、パリ協定6条に沿ってJCMを実施するための規則及びガイドラインを採択しました。
○ ウズベキスタン
2022年10月に学校法人中央大学はGOSATの協力覚書に署名しました。2022年12月に環境省とウズベキスタン共和国国家生態系・環境保護委員会との間で環境保護分野における協力覚書に署名し、セミナーの開催等の具体的な協力活動に向けた準備を進めています。2025年2月、日・ウズベキスタン間の二国間クレジット制度(JCM)の第1回合同委員会を開催し、パリ協定6条に沿ってJCMを実施するための規則及びガイドラインを採択しました。
○ キルギス
2024年7月に学校法人中央大学はGOSATの協力覚書に署名しました。
○ タジキスタン
2023年12月に学校法人中央大学はGOSATの協力覚書に署名しました。
海外に向けた情報発信の充実を図るため、英語での報道発表、環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書の英語抄訳版等、海外広報資料の作成・配布や環境省ウェブサイト・SNS等を通じた海外広報を行いました。
我が国は政府開発援助(ODA)による開発協力を積極的に行っています。環境問題については、2023年6月に閣議決定した「開発協力大綱」において複雑化・深刻化する地球規模課題への国際的取組の主導を重点政策の一つとして位置付けるとともに、地球環境の保全は地球の未来に対する我々の責任であると認識し、生物多様性の主流化やプラスチック汚染対策を含む海洋環境・森林・水資源の保護等の自然環境保全の取組を強化していくことが明記されています。また、特に小島嶼(しょ)開発途上国については、気候変動による海面上昇等、地球規模の環境問題への対応に関して、ニーズに即した支援を行っています。
(ア)無償資金協力
居住環境改善(都市の廃棄物処理、上水道整備、地下水開発、洪水対策等)、地球温暖化対策関連(森林保全、クリーン・エネルギー導入)等の各分野において、無償資金協力を実施しています。
草の根・人間の安全保障無償資金協力についても貧困対策に関連した環境分野の案件を実施しています。
(イ)有償資金協力
下水道整備、大気汚染対策、地球温暖化対策等の各分野において、有償資金協力(円借款・海外投融資)を実施しています。
(ウ)国際機関を通じた協力
我が国は、UNEPの環境基金、UNEP/IETC技術協力信託基金等に対し拠出を行っています。また、我が国が主要拠出国及び出資国となっているUNDP、世界銀行、ADB、東アジア・アセアン経済研究センター(ERIA)等の国際機関も環境分野の取組を強化しており、これら各種国際機関を通じた協力も重要になってきています。
地球環境ファシリティ(GEF)は、開発途上国等が地球環境問題に取り組み、環境条約の実施を行うために、無償資金等を提供する多国間基金です。第8次GEF増資期間(2022年7月-2026年6月)の増資規模は53.3億ドルであり、このうち我が国からは総額6.38億ドルの拠出を行っています。我が国はGEFのトップドナーとして、意思決定機関である評議会の場を通じ、GEFの活動・運営に係る決定に積極的に参画しています。
開発途上国の温室効果ガス削減(緩和)と気候変動の影響への対処(適応)を支援する緑の気候基金(GCF)については、初期拠出(2015年-2019年)の15億ドルと第1次増資(2020年-2023年)への15億ドルの拠出に続いて、第2次増資(2024年-2027年)については、2023年10月のハイレベル・プレッジング会合において、我が国から、第1次増資時と円貨で同規模の最大1,650億円の拠出表明を行い、2024年11月までに我が国を含む34か国・1地方政府が総額約136億ドルの拠出を表明しました。また、2024年11月までに133か国における285件の支援案件がGCF理事会で承認されました。我が国は基金への主要ドナー国の1つとして資金面での貢献に加え、GCF理事国として、支援案件の選定を含む基金の運営に積極的に貢献しています。また、我が国は、途上国の要請に基づき技術移転に関する能力開発やニーズの評価を支援する「気候技術センター・ネットワーク(CTCN)」に対して2024年度に約36.5万ドルを拠出し、積極的に貢献しました。加えて、ADBや国連工業開発機関(UNIDO)と連携し、JCMプロジェクト形成に取り組みました。
脱炭素社会形成に関するノウハウや経験を有する日本の地方公共団体等の協力の下、アジア等各国の都市との間で、都市間連携を活用し、脱炭素社会実現に向けて基盤制度の策定支援や、優れた脱炭素技術の普及支援を実施しました。2024年度は、北海道札幌市、富山県富山市、神奈川県川崎市、神奈川県横浜市、東京都、埼玉県さいたま市、静岡県静岡市、滋賀県、大阪府大阪市、大阪府堺市、兵庫県神戸市、岡山県真庭市、愛媛県、福岡県、福岡県北九州市、鹿児島県大崎町、沖縄県浦添市による25件の取組を支援しました。
独立行政法人環境再生保全機構が運営する地球環境基金では、プラットフォーム助成制度に基づいて、国内の環境NGO・NPOが国内又は開発途上地域において他のNGO・NPO等との横断的な協働・連携の下で実施する環境保全活動に対する支援を行いました。国際社会及び国内におけるSDGsの実施状況を共有するとともに、環境側面からのSDGsの取組を推進するため、民間企業や自治体、NGOなどの様々な立場から先行事例を共有して認め合い、更なる取組の弾みをつける場として、SDGsステークホルダーズ・ミーティングを2016年度から開催しており、2025年3月には第16回会合を開催しました。
2024年4月、イタリアが議長国を務めたG7トリノ気候・エネルギー・環境大臣会合では、気候変動、生物多様性の損失及び汚染という3つの世界的危機に対処するため、必要な取組間のシナジーの推進が重要であることを確認するとともに、気候変動対策について、気温上昇を工業化以前より1.5℃に抑えるための削減目標の進捗を確認し、野心的な次期NDC(国が決定する貢献)を策定することをすべての国に呼びかけました。またG7広島サミットの成果に盛り込まれた循環経済原則、重要鉱物の国際リサイクル、ネイチャーポジティブ経済、侵略的外来種対策、プラスチック汚染対策等を更に推進することを確認しました。
2024年6月のG7プーリア・サミットでは、気候変動対策について、1.5℃目標に沿った、全経済分野及びすべての温室効果ガスを対象とした総量削減目標を含む次期NDCの提出をG20や他の主要経済国に呼びかけました。また、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の迅速かつ完全な実施、質の高い炭素市場やカーボンプライシングの野心的な活用の加速、2040年までに追加的なプラスチック汚染をゼロにする野心を共有しました。
2024年10月にブラジル・リオデジャネイロで開催されたG20環境・気候持続可能性大臣会合では、海洋、生態系サービスへの支払い、気候変動適応行動と資金の向上、廃棄物・循環経済の4つの優先課題に関する成果文書が取りまとめられました。また、2024年10月にアメリカ・ワシントンD.C.で開催されたG20財務大臣、気候・環境大臣、外務大臣及び中央銀行総裁合同会合(議長国:ブラジル)では、気候変動に対する行動を加速させるため、国際経済・金融システムにおける行動を大胆にリードする決意が示されました。さらに2024年11月のG20リオデジャネイロ・サミットにおいて、気候変動については、1.5℃の気温上昇による気候変動の影響は、2℃の気温上昇による影響と比べてはるかに小さいことを強調し、1.5℃目標の達成のための努力を追求する決意を再確認しました。また、生物多様性については、G20各国の、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」の迅速かつ完全で効果的な実施へのコミットメントを再確認し、2030年までに森林減少及び森林劣化を止め、反転させるための取組の重要性を強調しました。循環経済や汚染の防止については、未管理の廃棄物及び不適切に管理された廃棄物の発生を大幅に削減する決意を再確認しました。プラスチック汚染対策については、プラスチック汚染を終わらせる決意を固め、2024年末までにプラスチック汚染に関する法的拘束力のある国際文書を策定するための政府間交渉委員会(INC)の交渉に野心を持って協力することにコミットしました。
なお、宇宙空間のごみ(スペースデブリ)が、新たな国際的な課題となっており、国際社会が協力してスペースデブリ対策に取り組む必要があることから、我が国では、JAXAにおいて、2019年4月から、大型デブリの除去技術獲得及び民間による事業化を目指して、商業デブリ除去技術実証プロジェクトを進めています。
また、「G20海洋プラスチックごみ対策実施枠組」に基づき報告された国・機関等の海洋プラスチックごみ対策を、2024年のG20議長国だったブラジルが我が国支援の下、「第6次G20海洋プラスチックごみ対策報告書」として取りまとめました。第6次報告書では、23か国と7の国際機関・NGOの優良事例や課題が共有されました。
また、2023年8月に日ASEAN環境気候変動閣僚級対話において発足した、日ASEAN気候環境戦略プログラム(SPACE)において、気候変動対策に加え、2019年に設立された海洋プラスチックごみ地域ナレッジ・センター(RKC-MPD)の活用を含むプラスチック汚染に関する日ASEAN協力アクション・アジェンダ、及び、電気電子機器廃棄物(E-waste)及び重要鉱物に関する日ASEAN資源循環パートナーシップ(ARCPEC)を立ち上げました。
パリ協定6条(市場メカニズム)の実施により、脱炭素市場や民間投資が活性化され、世界全体の温室効果ガスが更に削減されるとともに、経済成長にも寄与することが期待されている一方、パリ協定6条を実施するための体制整備や知見の共有等が課題とされています。国際的な連携の下、6条ルールの理解促進や研修の実施等、各国の能力構築を支援するため、我が国は、2022年11月、COP27において「パリ協定6条実施パートナーシップ」(2024年12月時点において83か国、200機関が参加)を立ち上げ、各国の6条実施に向けた支援を実施しています。今後も我が国が率先して、パートナーシップ参加国、国際機関等と連携しつつ、各国の6条実施に向けた支援を加速し、パリ協定6条に沿った市場メカニズムを世界的に拡大し、世界の温室効果ガスの更なる削減に貢献していきます。