ここ数年、欧州を中心に様々なバリューチェーンに関する規制や企業の情報開示ルールが導入または提案されており、グローバル企業を中心にバリューチェーンレベルでの循環性向上に関する取組も進んでいます。環境省は、G7サミットで承認された「循環経済及び資源効率性原則(CEREP)」に基づき、国際機関や民間企業とも連携し、資源循環分野の国際ルール形成を進めています。2024年11月には「資源循環に関する企業レベルの情報開示スキームの開発に係る検討会」を実施しました。資源効率性の高い国際社会の実現に向け、ISO/TC323(サーキュラーエコノミーの国際標準)、ISO/TC297(廃棄物の収集及び輸送管理に関する専門委員会)やISO/TC300(廃棄物固形燃料を含む廃棄物固形マテリアルに関する専門委員会)等でのサーキュラーエコノミーに関連する国際標準化の取組等を、日本発提案等によりイニシアティブを発揮しつつ、諸外国とも協力して進めています。
地球規模での循環型社会形成と、我が国の循環産業の海外展開を通じた活性化を図るためには、国、地方公共団体、民間レベル、市民レベル等の多様な主体同士での連携に基づく重層的なネットワークを形成する必要があります。アジア太平洋諸国における循環型社会の形成に向けては、3R・循環経済に関するハイレベルの政策対話の促進、3R・循環経済推進に役立つ制度や技術の情報共有等を目的として、2025年3月に「アジア太平洋3R・循環経済推進フォーラム」第12回会合をインド・ジャイプールにて開催し、2025-2035年の3R・循環経済の共通ビジョンと13のゴールを定めたジャイプール宣言の採択が行われました。また、アフリカにおいては、都市廃棄物管理に関するアフリカ各国の知見・経験の共有と、人材・組織の能力向上等により、官民の投資を促進し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に貢献するため、アフリカ24か国と環境省、国際協力機構(JICA)等が中心となって、2017年4月に「アフリカのきれいな街プラットフォーム(ACCP)」を設立しました(2025年2月現在、ACCPメンバーは47か国・196都市に拡大。)。ACCPの枠組みの下、廃棄物に関する知見やデータの収集・整備や、我が国の廃棄物管理制度や技術に関する研修等の活動を実施しており、SDGsの目標年である2030年に「きれいな街と健康な暮らし」がアフリカで実現することを目指しています。アジア各国に適合した廃棄物・リサイクル制度や有害廃棄物等の環境上適正な管理(ESM)の定着のため、JICAでは、アジア太平洋諸国のうち、ベトナム、インドネシア、マレーシア、スリランカ、カンボジア、タイ、大洋州等について、技術協力等により廃棄物管理や循環型社会の形成を支援しました。また、政府開発援助(ODA)対象国からの研修員受入れを実施しました。
国際的な活動に積極的に参画し、貢献することも重要です。2024年11月にアゼルバイジャン共和国で開催された国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)では、「循環経済及び資源効率性原則(CEREP)」と「グローバル循環プロトコル(GCP)」を通じたグローバルスタンダード形成をテーマとしたサイドイベントを持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)及び世界経済フォーラム(WEF)と共同で開催し、グローバルなリサイクルシステムや各国の政策調和、循環性を評価する共通の枠組みの必要性とそのためのGCPへの期待などについて議論を深めました。
外務省及び環境省は、我が国に誘致したUNEP国際環境技術センター(UNEP/IETC)の運営経費を拠出しています。UNEP/IETCは、2016年の国連環境総会決議(UNEA2/7)で廃棄物管理の世界的な拠点として位置付けられ、主に廃棄物管理を対象に、開発途上国等に対し、研修及びコンサルティング業務の提供、調査、関連情報の蓄積及び普及等を実施しています。
バーゼル条約については、2019年のバーゼル条約第14回締約国会議(COP14)にて規制対象物に廃プラスチックを加える附属書改正が決議され、2021年1月1日より改正附属書が発効しています。本改正について、我が国では2020年10月にプラスチックの輸出に係るバーゼル法該非判断基準を公表し、規制対象となるプラスチックの範囲を明確化することで、改正附属書の着実な実施を行っています。
2022年6月に開催されたバーゼル条約第15回締約国会議(COP15)においては、同条約の附属書を改正し、非有害な電気及び電子機器廃棄物についても条約の規制対象とすることなどが決定され、2025年1月1日より改正附属書が発効しています。本改正についても、我が国では2024年10月に電気及び電子機器廃棄物の輸出入に係るバーゼル法該非判断基準を公表し、規制対象となる電気及び電子機器廃棄物の範囲を明確化することで、改正附属書の着実な実施を行っています。加えてCOP15では我が国がリード国を務めた有害廃棄物の陸上焼却に関するガイドライン、水銀に関する水俣条約において考慮することとされている水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する技術ガイドラインが採択に至りました。
2023年5月に開催されたバーゼル条約第16回締約国会議(COP16)においては、我が国が英国、中国と共にリード国を務めたプラスチック廃棄物の適正処理に関するガイドラインや、POPs廃棄物の環境上適正な管理に関する総合技術ガイドライン等が採択に至りました。
また、バーゼル条約の円滑な運用のための国際的な連携強化を図るため、我が国主催の有害廃棄物の不法輸出入防止に関するアジアネットワークワークショップを2024年10月にラオスにおいて開催し、アジア太平洋地域の12の国と地域及び関係国際機関が参加しました。
国、国際機関、NGO、民間企業等が連携して自主的に水銀対策を進める「世界水銀パートナーシップ」において廃棄物管理分野の運営を担当し、技術情報やプロジェクト成果の共有を進めました。また、同分野内のパートナーを集い、水銀廃棄物の処理技術や各国の課題等に関する情報交換等を行い、水銀廃棄物対策技術の普及促進に取り組みました。
我が国は、2019年3月に2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再資源化のための香港国際条約(以下「シップ・リサイクル条約」という。)への加入書を国際海事機関に寄託し、締約国となりました。我が国は、このシップ・リサイクル条約の策定をリードしてきた国として、同条約の早期発効に向けて、各国に対する働きかけを行ってきました。2023年4月には、最大解撤国のバングラデシュとの首脳会談において同国の早期条約締結の必要性を確認するとともに、同国に対するシップ・リサイクル分野での支援を検討することを表明しました。これを受けて、国土交通省は、バングラデシュ工業省との間で次官級の協力覚書を締結いたしました。その後、2023年6月にバングラデシュ及びリベリアが条約を締結したことにより、発効要件を充足し、2025年6月にシップ・リサイクル条約が発効することが確定しました。国土交通省は円滑な条約の発効に向けた国際協力を推進するため、JICAを通じてバングラデシュへの技術協力(専門家派遣)等を実施しております。また、日本国内においては、シップ・リサイクル条約を適切に実行するため、船舶の再資源化解体の適正な実施に関する法律(平成30年法律第61号)を円滑に執行します。
そのほか、港湾における循環資源の取扱いにおいては、リサイクルポートが活用されました。
近年、世界各国において自然災害が頻発化・激甚化しています。災害大国である我が国が蓄積してきた災害対応のノウハウや経験の供与は、アジア太平洋地域のような災害が頻発する地域においても有効です。そこで、環境省では、我が国の過去の災害による経験、知見を活かした国際支援の一環として、2018年に策定したアジア太平洋地域向けの災害廃棄物管理ガイドラインの周知活動を実施しています。また、2018年に大地震が発生したインドネシア共和国に対して、災害廃棄物対策に関する政策立案への支援を実施し、2024年度には同政策に基づき災害廃棄物対策における体制構築等に関するワークショップを実施しました。また、2025年3月に、フィリピンで開催された第6回Symposium of IWWG-ARB(International Waste Working Group- Asia Regional Branch)と連携し、災害廃棄物対策の主流化に向けたワークショップを開催しました。
我が国の廃棄物分野の経験や技術を活かした、廃棄物発電ガイドラインの策定等アジア各国の廃棄物関連制度整備と、我が国循環産業の海外展開を戦略的にパッケージとして推進しています。我が国循環産業の戦略的国際展開・育成事業等では、海外展開を行う事業者の支援を2024年度に7件実施しました。2011年度から2023年度までの支援の結果、2025年3月時点で、事業化を開始し、既に収入を得ている件数が6件、事業化のめどが立っており、最終的な準備を進めている件数が2件、事業化に向けて、特別目的会社(SPC)・合弁企業設立準備、覚書(MOU)締結準備、入札プロセス開始等をしている件数が9件、事業化に向けて、引き続き調査をしている件数が17件となっています。また、我が国企業によるアジア等でのリサイクルビジネス展開支援については、2018年度から継続して実施している国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)による技術実証と併せて、相手国政府との政策対話を実施し、我が国企業の海外展開促進と相手国における適切な資源循環システム構築のためのリサイクルシステム・制度構築を支援しています。
各国別でも様々な取組を行っています。インドネシア、ガーナ、エチオピア、ウガンダ、タイ、フィリピン、ベトナム、マレーシア、モザンビーク等に対し、政策対話や合同ワークショップの開催、研修等を通じて、制度設計支援や、人材育成を行いました。
アジア地域等の途上国における公衆衛生の向上、水環境の保全に向けては、浄化槽等の我が国発の優れた分散型生活排水処理システムの国際展開を実施しています。2024年度は、第12回アジアにおける分散型汚水処理に関するワークショップを2024年11月に開催しました。テーマとしてアジア各国で見られる分散型排水処理施設の性能評価試験に関する制度や試験法の知見を共有し、各国に共通する課題や固有の課題を整理し、その解決に向けた方策を議論することで、今後のアジアにおける高性能な分散型排水処理施設の協力かつ健全な普及を促進しました。
また、2024年8月にはスリランカ政府とスリランカにおける分散型生活排水管理の推進に向けたセミナーを開催し、我が国における浄化槽の法体制等について知見を提供し、スリランカでの分散型汚水管理に関する今後の課題や取組について議論を重ねることで、我が国の浄化槽の海外展開の促進を図りました。