3Rの取組が温室効果ガスの排出削減につながる例としては、金属資源等を積極的にリサイクルした場合を挙げることができます。例えば、アルミ缶を製造するに当たっては、バージン原料を用いた場合に比べ、リサイクル原料を使った方が原料製造も含めた一連の製造工程に要するエネルギーを大幅に節約できることが分かっています。同様に、鉄くずや銅くず、アルミニウムくず等をリサイクルすることによっても、バージン材料を使った場合に比べて温室効果ガスの排出削減が図られるという結果が、環境省の調査によって示されました。これらのことから、リサイクル原料の使用に加え、リデュースやリユースといった、3Rの取組を進めることによって、原材料等の使用が抑制され、結果として温室効果ガスの更なる排出削減に貢献することが期待できます。ただし、こうしたマテリアルリサイクルやリデュース・リユースによる温室効果ガス排出削減効果については、引き続き調査が必要であるともされており、これらの取組を一層進める一方で、継続的に調査を実施し、資源循環と社会の脱炭素化における取組について、より高度な統合を図っていくことが必要です。
廃家電から貴金属、レアメタル、ベースメタル、プラスチック等を資源循環する基盤技術、磁性材料の精錬に係る技術、アルミスクラップを自動車の車体等にも使用可能な素材(展伸材)へとアップグレードする基盤技術の開発を行う「資源自律経済システム開発促進事業」、自動車・バッテリー、電気電子製品、包装、プラスチック、繊維等について、動静脈連携による資源循環に係る技術開発及び実証に係る設備投資等、また長寿命化や再資源化の容易性の確保等に資する「環境配慮型ものづくり」のための技術開発、実証及び商用化に係る設備投資等を支援する「産官学連携による自律型資源循環システム強靱化促進事業」、リチウムイオン蓄電池や太陽光パネル等といった非鉄金属・レアメタル含有製品のリユース・リサイクル技術の実証を行う「国内資源循環体制構築に向けた再エネ関連製品及びベース素材の全体最適化実証事業」、再生可能エネルギー関連製品等の高度なリサイクルを行いながらリサイクルプロセスの省CO2化を図る設備の導入支援を行う「プラスチック資源・金属資源等のバリューチェーン脱炭素化のための高度化設備導入等促進事業」を2024年度に実施しました。そして、プラスチック資源循環促進法に基づき、バイオマスプラスチック・生分解性プラスチック等の代替素材への転換・社会実装及び複合素材プラスチック等のリサイクル困難素材のリサイクルプロセス構築を支援する「脱炭素型循環経済システム構築促進事業」、廃プラスチックの高度なリサイクルを促進する技術基盤構築及び海洋生分解性プラスチックの導入・普及を促進する技術基盤構築を行う「プラスチック有効利用高度化事業」を実施しました。
廃棄物エネルギーの有効活用によるマルチベネフィット達成促進事業、廃棄物処理施設を核とした地域循環共生圏構築促進事業については、第3章第4節を参照。
農山漁村のバイオマスを活用した産業創出を軸とした地域づくりに向けた取組について推進すると同時に、「森林・林業基本計画」等に基づき、森林の適切な整備・保全や木材利用の推進に取り組みました。
海洋環境等については、その負荷を低減させるため、循環型社会を支えるための水産廃棄物等処理施設の整備を推進しました。
港湾整備により発生した浚渫(しゅんせつ)土砂等を有効活用し、深掘跡の埋め戻し等を実施し、水質改善や生物多様性の確保など、良好な海域環境の保全・再生・創出を推進しています。
下水汚泥資源化施設の整備の支援等については、第3章第3節2を参照。
これまでに22の港湾を静脈物流の拠点となる「リサイクルポート」に指定し、広域的なリサイクル関連施設の臨海部への立地の推進等を行いました。また、サーキュラーエコノミーへの移行に向け、2024年度に有識者等からなる検討会を設置し、循環経済拠点港湾(サーキュラーエコノミーポート)のあり方について検討を開始しました。さらに、首都圏の建設発生土を全国の港湾の用地造成等に用いる港湾建設資源の広域利用促進システムを推進しており、近年は、広島港において建設発生土の受入れを実施しました。
循環型社会の構築には、企業活動や国民のライフスタイルにおいて3Rの取組が浸透し、恒常的な活動や行動として定着していく必要があります。そのため、国や地方公共団体、民間企業等が密接に連携し、社会や国民に向けて3Rの意識醸成、行動喚起を促す継続的な情報発信等の活動が不可欠です(表3-5-1、表3-5-2)。
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「第五次循環基本計画」で循環型社会形成に向けた状況把握のための指標として設定された、物質フロー指標及び取組指標について、2022年度のデータを取りまとめました。また、各指標の増減要因についても検討を行いました。
国民に向けた直接的なアプローチとしては、「限りある資源を未来につなぐ。今、僕らにできること。」をキーメッセージとしたウェブサイト「Re-Style」を年間通じて運用しています(図3-5-1)。同サイトでは、循環型社会のライフスタイルを「Re-Style」として提唱し、コアターゲットである若年層を中心に、資源を有効利用することの重要性や3Rの取組を多くの方々に知ってもらいました。また、「3R推進月間」(毎年10月)を中心に、多数の企業等と連携した3Rの認知向上・行動喚起を促進する消費者キャンペーン「選ぼう!3Rキャンペーン」を全国のスーパーやドラッグストア等で展開しました。また、「Re-Styleパートナー企業」との連携体制について、同サイトを通じて、相互に連携しながら恒常的に3R等の情報発信・行動喚起を促進しました。
3R政策に関するウェブサイトにおいて、取組事例や関係法令の紹介、各種調査報告書の提供を行うとともに、普及啓発用DVDの貸出等を実施しました。
国土交通省、地方公共団体、関係業界団体により構成される建設副産物リサイクル広報推進会議は、建設リサイクルの推進に有用な技術情報等の周知・伝達、技術開発の促進、一般社会に向けた建設リサイクル活動のPRや2020年9月に策定・公表された「建設リサイクル推進計画2020~質を重視するリサイクルへ~」等の周知等を目的として、2024年度は「2024建設リサイクル技術発表会・技術展示会」を開催しました。
我が国は、関係府省(財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、消費者庁)の連携の下、国民に対し3R推進に対する理解と協力を求めるため、毎年10月を「3R推進月間」と定めており、広く国民に向けて普及啓発活動を実施しました。
3R推進月間には、様々な表彰を行っています。3Rの推進に貢献している個人、グループ、学校及び特に貢献の認められる事業所等を表彰する「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰」(主催:リデュース・リユース・リサイクル推進協議会)の開催を引き続き後援し、内閣総理大臣賞の授与を支援しました。経済産業省は、環境機器の開発・実用化による3Rの取組として2件の経済産業大臣賞を贈りました。国土交通省は、建設工事で顕著な実績を挙げている3Rの取組に対して、国土交通大臣賞2件を贈りました。環境省は資源循環分野における3Rの取組として1件の環境大臣賞を贈りました。厚生労働省は、1992年度以降、内閣総理大臣賞2件、厚生労働大臣賞20件、3R推進協議会会長賞6件を贈りました。
循環型社会の形成の推進に資することを目的として、2006年度から循環型社会形成推進功労者表彰を実施しています。2024年度は、計4件を表彰しました。さらに、新たな資源循環ビジネスの創出を支援している「資源循環技術・システム表彰」(主催:一般社団法人産業環境管理協会、後援:経済産業省)においては、経済産業省脱炭素成長型経済構造移行推進審議官賞4件を表彰しました。これらに加えて、農林水産省は「食品産業もったいない大賞」において、農林水産大臣賞等6件を表彰し、農林水産業・食品関連産業における3R活動、地球温暖化・省エネルギー対策等の意識啓発に取り組みました。
各種表彰以外にも、2006年から毎年3R推進月間中に実施している3R推進全国大会において、3R促進ポスター展示、3Rの事例紹介を兼ねた企業見学会や関係機関の実施する3R関連情報等のPRを行いました。さらに同期間内には、「選ぼう!3Rキャンペーン」も実施し、地方公共団体や流通事業者・小売事業者の協力を得て、「リデュース」につながる省資源商品や「リサイクル」などに関連した環境配慮型商品の購入など、3R行動の実践を呼び掛けました。
2024年10月に行われた3R促進ポスターコンクールには、全国の小・中学生から4,630点の応募があり、環境教育活動の促進にも貢献しました。
消費者のライフスタイルの変革やプラスチックのリデュースを促進する取組として、各国でレジ袋の有料化やバイオマスプラスチック等の代替素材への転換など、その実情に応じて様々な取組が行われています。我が国においても、2020年からレジ袋の有料化の取組を開始するとともに、使い捨てのプラスチック製品の使用の合理化や代替素材への転換などの取組を進めています。
優良事業者が社会的に評価され、不法投棄や不適正処理を行う事業者が淘(とう)汰される環境をつくるために、優良処理業者に優遇措置を講じる優良産廃処理業者認定制度を2011年4月から運用開始しています。優良認定業者数については、制度開始以降増加しており、2024年3月末時点で1,604者となっています。また、優良産廃処理業者の情報発信サイト「優良さんぱいナビ」の利便性向上のためのシステム改良を引き続き実施していきます。
税制上の特例措置により、廃棄物処理施設の整備及び維持管理を推進しました。廃棄物処理業者による、特定廃棄物最終処分場における特定災害防止準備金の損金又は必要経費算入の特例、廃棄物処理施設に係る課税標準の特例及び廃棄物処理事業の用に供する軽油に係る課税免除の特例といった税制措置の活用促進を行いました。
プラスチックごみの削減に向け、プラスチックとの賢い付き合い方を全国的に推進する「プラスチック・スマート」において、企業、地方公共団体、NGO等の幅広い主体から、不必要なワンウェイのプラスチックの排出抑制や代替品の開発・利用、分別回収の徹底など、プラスチックごみの発生抑制に向けた取組を募集、登録数は3,500件を超えました。これらの取組を特設サイトや様々な機会において積極的に発信しました。
2024年度は、地震や台風、豪雨など全国各地で多くの災害に見舞われました。また、引き続き、令和6年能登半島地震からの復旧・復興への支援を行いました。災害によって生じた災害廃棄物の適正かつ円滑・迅速な処理のため、被害の程度に応じて、被災自治体に対して、環境省職員や災害廃棄物処理支援員制度に登録している支援員、災害廃棄物処理支援ネットワーク(D.Waste-Net)の専門家の派遣、地方環境事務所によるきめ細かい技術的支援、災害廃棄物処理や施設復旧のための財政支援等の実施により、着実な処理を推進しています。さらに、損壊家屋の解体を行う際の流れや体制の整備の参考となるよう「公費解体・撤去マニュアル」の策定・改訂や、環境省・法務省連名の事務連絡の発出等により公費解体の申請手続等の円滑化・簡素化を自治体へ周知するなど、公費解体の推進を図っています。
近年の広範囲で甚大な被害を生じた災害対応における経験・教訓により、特に災害時初動対応に係る事前の備えや、大規模災害時においても適正かつ円滑・迅速に処理を行うための体制確保を一層推進する必要性が改めて認識されました。環境省では、災害廃棄物対策推進検討会を開催し、近年の災害廃棄物処理実績の蓄積・検証を実施しました。さらに、地方公共団体における災害廃棄物処理計画の策定や災害廃棄物対策の実効性の向上等の支援を実施しました。
県域を越え地域ブロック全体で相互に連携して取り組むべき課題の解決を図るため、地方環境事務所が中心となって都道府県、市区町村、環境省以外の国の地方支分部局、民間事業者、専門家等で構成される地域ブロック協議会を全国8か所で開催し、災害廃棄物対策行動計画に基づく地域ブロックごとの広域連携を促進するため、図上演習や実施訓練等を実施しました。
全国規模で災害廃棄物対応力を向上させるため、日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震を対象とした全国的な処理シナリオの検討や災害廃棄物発生量新推計式のフォローアップ、令和4年度に発生した災害における災害廃棄物の対応に関する具体的検証を行いました。また、災害廃棄物処理を経験し、知見を有する地方公共団体の人材を「災害廃棄物処理支援員」として登録し、被災地方公共団体の災害廃棄物処理に関するマネジメントの支援等を行う「災害廃棄物処理支援員制度」について、2025年3月時点で353名が支援員に登録されています。2024年は令和6年能登半島地震をはじめとする全国の被災市町村に計93名の支援員と計79名の補佐する職員を派遣し、現地での支援を行っています。
港湾においては、大規模災害時に発生する膨大な災害廃棄物の受入施設を把握し、広域処理にあたって必要となる港湾機能や実施体制の検討を行いました。
不法投棄等の未然防止・拡大防止対策としては、不法投棄等に関する情報を国民から直接受け付ける不法投棄ホットラインを運用するとともに、産業廃棄物の実務や関係法令等に精通した専門家を不法投棄等の現場へ派遣し、不法投棄等に関与した者の究明や責任追及方法、支障除去の手法の検討等の助言等を行うことにより、都道府県等の取組を支援しました。さらに、不法投棄等の残存事案対策として、1997年の廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律(平成9年法律第85号。以下「廃棄物処理法平成9年改正法」という。)の施行(1998年6月)前の産業廃棄物の不法投棄等については、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(平成15年法律第98号)失効後も、生活環境保全上の支障又はそのおそれがない状態を継続させるために対策を行う必要がある13事案に対し、財政支援を行いました。一方で、廃棄物処理法平成9年改正法の施行以降の産業廃棄物の不法投棄等の支障除去等については、1事案に対し廃棄物処理法に基づく基金からの財政支援を行いました。そのほか、盛土の総点検により確認された危険が想定され、産業廃棄物の不法投棄等の可能性がある盛土について、都道府県等が行う調査及び支障除去等事業に対する支援を措置したほか、本基金による今後の支援のあり方について、「支障除去等に対する支援のあり方検討会」を設置して検討を行い、その基本的方向性について取りまとめました。
関係府省庁と都道府県等とが連携して取り組む、不法投棄等の撲滅に向けた普及啓発活動、新規及び継続の不法投棄等の監視等については、2023年度においては全国で7,351件実施されました。
一般廃棄物の適正処理については、当該処理業が専ら自由競争に委ねられるべき性格のものではなく、継続性と安定性の確保が考慮されるべきとの最高裁判所判決(2014年1月)や、市町村が処理委託した一般廃棄物に関する不適正処理事案の状況を踏まえ、2014年10月8日に通知を発出し、市町村の統括的責任の所在、市町村が策定する一般廃棄物処理計画を踏まえた廃棄物処理法の適正な運用について、周知徹底を図っています。また、廃棄物処理事業を確実に実施し、構造的な賃上げを実現するためには、昨今の物価の状況なども踏まえた適切な委託料・処理料金が事業者に支払われることが重要であることを踏まえ、一般廃棄物処理業務における労務費、原材料費、エネルギーコスト等の適切な転嫁のための重要事項について取りまとめ、必要な措置の実施に努めることについて、2024年9月30日に通知を発出しました。
2018年12月には大量のエアゾール製品の内容物が屋内で噴射され、これに引火したことが原因とみられる爆発火災事故が発生したことから、2018年12月27日に通知を発出し、製品を最後まで使い切る、缶を振って音を確認するなどにより充填物が残っていないか確認する、火気のない風通しの良い屋外でガス抜きキャップを使用して充填物を出し切るといった適切な取扱いが必要であることなど、廃エアゾール製品等の充填物の使い切り及び適切な出し切り方法について、周知を徹底しています。また、2023年1月にも同様のエアゾール製品が原因とみられる爆発事故が発生したことから、2023年1月19日に事務連絡を発出し、廃エアゾール製品等の事故防止について、改めて周知を図りました。
また、リチウム蓄電池及びリチウム蓄電池を使用した製品(以下「リチウム蓄電池等」という。)が、地方公共団体が定める適切な分別区分で廃棄されず、廃棄物の収集・運搬又は処分の過程において、火災が発生しています。
環境省ではこれまで、自治体の分別区分を見直すことなどによる効果的な回収体制の構築等を支援するモデル事業や、先進的な対策を講じている自治体への調査などを行い、そこで得られた成果等については、「リチウム蓄電池等処理困難物対策集」にまとめて公表(2025年4月最新版公表)し、自治体間での好事例の横展開を図るとともに、自治体が回収したリチウム蓄電池を適正処理できる廃棄物処理業者を取りまとめて公表しています。自治体での使用を想定したポスター、動画の啓発ツールの作成、Jリーグクラブ、製造事業者、自治体と連携した市民向けの回収キャンペーンなど、分別回収の重要性等に関する普及啓発も実施しています。また、廃棄物処理法に基づく広域認定制度を活用し、製造事業者等による処理体制の構築を支援してきました。2024年度は、複数市区町村の連携による広域的な回収体制の構築を支援するモデル事業を実施し、市区町村によるリチウム蓄電池等の回収量の増加及び処理コストの削減を図ることで、処理体制の更なる強化を図りました。また、新たにCMや学生向けの出前授業の実施、モバイルバッテリーの製造事業者と連携した啓発キャンペーンなども実施し、適正排出に向けた普及啓発に取り組んでいます。
電子マニフェストは、排出事業者、廃棄物処理業者における情報管理の合理化に加え、偽造がしにくいため、都道府県等における廃棄物処理の監視の効率化や不適正処理の原因究明の迅速化に役立つなどのメリットがあります。2024年3月末時点の電子マニフェストの普及率は81%に達しましたが、産業廃棄物の委託処理量に対する電子マニフェストの割合では60%程度にとどまっていると見込まれたため、「第五次循環基本計画」において、産業廃棄物委託処理量に対する電子マニフェストの捕捉率を2030年度までに75%にすることを目標として掲げ、操作体験セミナーの開催等各種施策に取り組むこととしました。
また、適切な環境対策を講じずに物品を取扱う事業場、いわゆる「不適正ヤード」において、金属スクラップ等の不適正な保管や処理に起因する騒音、悪臭、火災、公共水域及び土壌の汚染等が発生しています。
このような廃棄物処理法の規制対象外である物品の取扱いに起因して、生活環境保全上の支障が発生している現状を踏まえ、2024年10月から2025年3月まで、有識者から構成される「ヤード環境対策検討会」を開催し、ヤードにおける環境対策における取組の基本的方向性について取りまとめました。引き続き、中央環境審議会のもとに設置された廃棄物処理制度小委員会において、当該検討会の報告書を踏まえ、制度的措置に関する議論を深めていきます。
家庭等の廃棄物を無許可で回収し、不適切処理・輸出等を行う違法な回収業者、輸出業者等の対策として、地方公共団体職員の知見向上のため、「自治体職員のための違法な廃棄物回収業者対策セミナー」を2回開催しました。
海洋ごみ対策については、第4章第4節1を参照。
使用済FRP(繊維強化プラスチック)船は、その製品特性(材料が高強度、大型、製品寿命が長い、等)から処理が困難であり、それが不法投棄の要因となっているため、リサイクルが適切に進むよう、地方ブロックごとに行っている地方運輸局、地方整備局、都道府県等の情報・意見交換会の場を通じて、一般社団法人日本マリン事業協会が運用している「FRP船リサイクルシステム」の周知・啓発を図りました。
一般廃棄物の最終処分に関しては、ごみのリサイクルや減量化を推進した上でなお残る廃棄物を適切に処分するため、最終処分場の設置又は改造、既埋立物の減容化等による一般廃棄物の最終処分場の整備を、引き続き循環型社会形成推進交付金の交付対象事業としました。また、産業廃棄物の最終処分に関しても、課題対応型産業廃棄物処理施設運用支援事業の補助制度により、2024年度までに、廃棄物処理センター等が管理型最終処分場を整備する8事業に対して支援することで、公共関与型産業廃棄物処理施設の整備を促進し、産業廃棄物の適正な処理の確保を図りました。
同時に海面処分場に関しては、港湾整備により発生する浚渫(しゅんせつ)土砂や内陸部での最終処分場の確保が困難な廃棄物を受け入れるために、事業の優先順位を踏まえ、東京港等で海面処分場を計画的に整備しました。また、「海面最終処分場の廃止に関する基本的な考え方」及び「海面最終処分場の廃止と跡地利用に関する技術情報集」を取りまとめました。
陸上で発生する廃棄物及び船舶等から発生する廃油については、海洋投入処分が原則禁止されていることを踏まえ、海洋投入処分量の削減を図るとともに、廃油処理事業を行おうとする者に対し、廃油処理事業の事業計画及び当該事業者の事業遂行能力等について、適正な審査を実施し、適切に廃油を受け入れる施設を確保しました。船舶等からの廃棄物等の海洋投入処分による海洋汚染の防止を目的としたロンドン条約1996年議定書を担保する海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(昭和45年法律第136号)において、廃棄物の海洋投入処分を原則禁止とし、2007年4月に廃棄物の海洋投入処分に係る許可制度を導入しています。当該許可制度の適切な運用により、海洋投入処分量が最小限となるよう、その抑制に取り組みました。
廃棄物のうち爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものを特別管理一般廃棄物又は特別管理産業廃棄物(以下「特別管理廃棄物」という。)として指定しています。事業活動に伴い特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者は、特別管理産業廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせるため、事業場ごとに特別管理産業廃棄物管理責任者を設置する必要があり、特別管理廃棄物の処理に当たっては、特別管理廃棄物の種類に応じた特別な処理基準を設けることなどにより、適正な処理を確保しています。また、その処理を委託する場合は、特別管理廃棄物の処理業の許可を有する業者に委託する必要があります。
これまでに、表3-5-3に示すものを特別管理廃棄物として指定しています。
石綿による健康等に係る被害の防止のための大気汚染防止法等の一部を改正する法律(平成18年法律第5号)が2007年4月に完全施行され、石綿(アスベスト)含有廃棄物の安全かつ迅速な処理を国が進めていくため、溶融等の高度な技術により無害化処理を行う者について環境大臣が認定した場合、都道府県知事等による産業廃棄物処理業や施設設置の許可を不要とする制度(無害化処理認定制度)がスタートしています。2025年3月時点で2事業者が認定を受けています。また、2010年の廃棄物処理法施行令の改正により、特別管理産業廃棄物である廃石綿等の埋立処分基準が強化されています。2021年3月には前年の大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)等の改正に伴って、「石綿含有廃棄物等処理マニュアル」を改定しています。
石綿を含む家庭用品が廃棄物となったものについては、他のごみと区別して排出し、破損しないよう回収するとともにできるだけ破砕せず、散水や速やかな覆土により最終処分するよう、また、保管する際は他の廃棄物と区別するよう、市町村に対して要請しています。
永続的な措置として、石綿含有家庭用品が廃棄物となった場合の処理についての技術的指針を定め、市町村に示し、適正な処理が行われるよう要請しています。
2016年4月から特別管理産業廃棄物に指定されている廃水銀等について、廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令の一部を改正する政令(平成27年政令第376号)及び関係省令等において、廃水銀等及び当該廃水銀等を処分するために処理したものの処分基準並びに廃水銀等の硫化施設の産業廃棄物処理施設への指定等が規定されています。また、排出事業者により水銀使用製品であるか判別可能なものを水銀使用製品産業廃棄物、水銀又はその化合物を一定程度含む汚染物を水銀含有ばいじん等とそれぞれ定義し、これまでの産業廃棄物の処理基準に加え、新たに水銀等の大気への飛散防止等の措置を規定するなど処理基準が強化されています。さらに、これらの基準について具体的に解説するための「水銀廃棄物ガイドライン」を策定しています。国際的にも、水銀廃棄物の環境上適正な管理に関する議論が進められており、2019年5月には水俣条約締約国会議の決議に基づく専門家会合を我が国で開催するなどし、これに貢献しました。
また、退蔵されている水銀血圧計・温度計等の回収を促進するため、2016年度に改訂した「医療機関に退蔵されている水銀血圧計等回収マニュアル」や2017年度に作成した「教育機関等に退蔵されている水銀使用製品回収事業事例集」を参考に、医療関係団体や教育機関、地方公共団体等と連携し、回収促進事業を実施しています。
市町村等により一般廃棄物として分別回収された水銀使用製品から回収した廃水銀については、特別管理一般廃棄物となります。
市町村等において、使用済の蛍光灯や水銀体温計、水銀血圧計等の水銀使用製品が廃棄物となった際の分別収集の徹底・拡大を行うため、「家庭から排出される水銀使用廃製品の分別回収ガイドライン」及び分別収集についての先進事例集を作成し、普及啓発を行ってきました。また、家庭で退蔵されている水銀体温計等の回収について、「市町村等における水銀使用廃製品の回収事例集(第2版)」を公表しました。
2023年には水銀に関する水俣条約第5回締約国会議が開催され、製造・輸入を禁止する水銀使用製品の見直しが行われました。今後一層、水銀使用廃製品の回収が求められていくことから、「水銀使用廃製品の適切な分別・回収について」のリーフレットを作成し、2024年5月にホームページにて公表をしました。
ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(平成28年法律第34号。以下、ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法を「PCB特別措置法」という。)が2016年8月に施行され、PCB廃棄物の濃度、保管の場所がある区域及び種類に応じた処分期間が設定されました。これにより、PCB廃棄物の保管事業者は、処分期間内に全てのPCB廃棄物を処分委託しなければなりません。PCB特別措置法で定める、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物処理基本計画」に基づき、政府一丸となってPCB廃棄物の期限内処理に向けて取り組んでいます。
環境省は都道府県と協調し、費用負担能力の小さい中小企業者等による高濃度PCB廃棄物の処理を円滑に進めるための助成等を行う基金「PCB廃棄物処理基金」を造成しています。
高濃度PCB廃棄物は、中間貯蔵・環境安全事業株式会社(JESCO)の全国5か所(北九州、豊田、東京、大阪、北海道(室蘭)(うち北九州、大阪、豊田は2024年3月で処理事業を終了。))のPCB処理事業所において処理する体制を整備し、各地元関係者の理解と協力の下、処理を推進してきました。さらに、2024年8月にPCB廃棄物処理基本計画の一部変更が閣議決定され、北海道(室蘭)の対象エリアに、2023年度末で処理事業を終了した西日本(北九州・大阪・豊田)を追加し、東京と北海道(室蘭)の2か所で処理事業を実施する体制へと変更しました。2025年3月末時点で、JESCOに登録されている高濃度PCB廃棄物のうち、変圧器・コンデンサー等の99%、安定器・汚染物等の98%の処理が完了しています。
なお、処理事業が終了した施設については順次解体・撤去を進めています。
低濃度PCB廃棄物は、民間事業者(環境大臣認定の無害化認定業者又は都道府県許可の特別管理産業廃棄物処理業者(2025年3月末時点でそれぞれ31事業者及び2事業者))によって処理が進められています。また、2025年4月1日からPCB廃棄物処理基金を活用して、費用負担能力の小さい中小企業者等による低濃度PCB廃棄物の処理を円滑に進めるための助成を開始しました。
低濃度PCB廃棄物の処理が更に合理的に進むよう、処理体制の充実・多様化を図っていきます。
ダイオキシン類は、物の燃焼の過程等で自然に生成する物質(副生成物)であり、ダイオキシン類の約200種のうち、29種類に毒性があるとみなされています。ダイオキシン類の主な発生源は、ごみ焼却による燃焼です。廃棄物処理におけるダイオキシン問題については、1997年1月に厚生省(当時)が取りまとめた「ごみ処理に係るダイオキシン類発生防止等ガイドライン」や、1997年8月の廃棄物処理法施行令及び同法施行規則の改正等に基づき、対策が取られてきました。環境庁(当時)でも、ダイオキシン類を大気汚染防止法の指定物質として指定しました。さらに、1999年3月に策定された「ダイオキシン対策推進基本指針」及び1999年に成立したダイオキシン類対策特別措置法(平成11年法律第105号)の二つの枠組みにより、ダイオキシン類対策が進められました。2023年におけるダイオキシン類の排出総量は、削減目標量(2011年以降の当面の間において達成すべき目標量)を下回っています(表3-5-4)。
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2023年の廃棄物焼却施設からのダイオキシン類排出量は、1997年から約99%減少しました。この結果については、規制強化や基準適合施設の整備に係る支援措置等によって、排出基準やその他の構造・維持管理基準に対応できない焼却施設の中には、休・廃止する施設が多数あったこと、また基準に適合した施設の新設整備が進められていること(廃棄物処理体制の広域化、廃棄物処理施設の集約化を含む。)が背景にあったものと考えられます。
感染性廃棄物については、2020年1月以降の国内における新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け、新型コロナウイルス感染症に係る廃棄物の適正処理のための対策とそれ以外の廃棄物も含めた処理体制の維持に係る対策を講じました。具体的には、法令に基づく基準や関係マニュアル等について、地方公共団体、廃棄物処理業界団体、医療関係団体等に改めて周知するとともに、感染防止策や留意事項についてのQ&Aやチラシ、動画の作成・周知や、感染拡大状況下における特例措置の制定、さらにはそれらの内容を取りまとめた「廃棄物に関する新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン」の策定・周知を行いました。また、廃棄物処理に必要な防護具が不足しないよう廃棄物処理業者等への防護具の斡旋等の処理体制維持に係る取組も行いました。2021年4月には、新型コロナウイルス感染症に係るワクチンの接種に伴い排出される廃棄物の処理に関する留意事項を取りまとめて通知を発出しました。また、新型コロナウイルス感染症への対応で得られた知見を基に「廃棄物処理法に基づく感染性廃棄物処理マニュアル」を2022年6月に改訂し、2023年5月には、新型コロナウイルス感染症の感染症法上の位置付けが新型インフルエンザ等感染症から5類感染症に変更されたことに伴い改訂しました。
残留性有機汚染物質(POPs)を含む廃棄物については、国際的動向に対応し、適切な処理方策について検討を進めてきました。2009年8月にPOPs廃農薬の処理に関する技術的留意事項を改訂、2011年3月にペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項を改訂し、2022年9月にPFOS及びペルフルオロオクタン酸(PFOA)含有廃棄物の処理に関する技術的留意事項を策定し、その周知を行ってきました。その他のPOPsを含む廃棄物については、POPsを含む製品等の国内での使用状況に関する調査や分解実証試験等を実施し、その適正処理方策を検討するとともに、POPsの物性情報や分析方法開発等に係る研究を推進しています。また、2016年からは、POPsを含む廃棄物の廃棄物処理法への制度的位置付けについて検討を行っています。
廃棄物に含まれる有害物質等の情報の伝達に係る制度化については、適正処理に必要な情報が産業廃棄物処理業者に確実に伝達されるよう、委託処理基準に係る廃棄物処理法施行規則を改正するとともに、情報伝達に係る自主的取組の促進を図るため、WDSガイドラインを改正する方針としました。
さらに、核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律(昭和32年法律第166号)に基づき、原子炉等から排出されるもののうち、放射線防護の安全上問題がないクリアランスレベル以下の廃棄物については、トレーサビリティの確保に努めています。
安全・安心がしっかりと確保された循環型社会を形成するため、有害物質を含むものについては、適正な管理・処理が確保されるよう、その体制の充実を図る必要があります。
石綿に関しては、その適正な処理体制を確保するため、廃棄物処理法に基づき、引き続き石綿含有廃棄物の無害化処理認定に係る事業者からの相談等に対応しました。
高濃度PCB廃棄物については、JESCO全国5か所のPCB処理事業所にて各地元関係者の理解と協力の下、処理が進められています。また、低濃度PCB廃棄物については、廃棄物処理法に基づき、無害化処理認定を受けている事業者及び都道府県知事の許可を受けている事業者により処理が進められています。
埋設農薬に関しては、計画的かつ着実に処理するため、農薬が埋設されている県における、処理計画の策定等や環境調査に対する支援を引き続き実施しました。
海洋ごみについては、第4章第4節1を参照。
生活環境保全上の支障等のある廃棄物の不法投棄等については、第3章第5節3(1)を参照。
東日本大震災からの環境再生については、第3章第7節を参照。