環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第3節 資源循環のための事業者間連携によるライフサイクル全体での徹底的な資源循環

第3節 資源循環のための事業者間連携によるライフサイクル全体での徹底的な資源循環

製造業・小売業等の動脈産業と廃棄物処理・リサイクル業等の静脈産業との連携を通じてこれまで培われてきた高い技術力を一層効果的に活用することで市場に新たな価値を生み出す動静脈連携は、我が国の新たな成長の鍵です。2021年に設立したJ4CE(循環経済パートナーシップ)、2023年に設立したCPs(サーキュラーパートナーズ)を活用し、先進的な取組事例の共有・発信、ビジネスマッチングの実施、コミュニケーションの促進等を通じて、産官学の幅広い主体の連携を促進しています。あわせて、各種リサイクル法に基づく取組を着実に進めるべく、素材・製品ごとの取組を次のとおり進めました。

1 プラスチック・廃油

容器包装の3R推進に関しては、3R推進団体連絡会による「容器包装3Rのための自主行動計画2025」(2021~2025年度)に基づいて実施された「事業者が自ら実施する容器包装3Rの取組」と「市民や地方自治体など主体間の連携に資するための取組」について、フォローアップが実施されました。

2022年4月に施行したプラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(令和3年法律第60号。以下「プラスチック資源循環促進法」という。)は、プラスチック使用製品の設計から廃棄物処理に至るまでのライフサイクル全般にわたって、3R+Renewableの原則にのっとり、あらゆる主体のプラスチックに係る資源循環の促進等を図るためのものです。同法第33条に基づく再商品化計画については、2024年4月に京都府京都市に対して、2024年5月に三重県津市に対して、2024年9月に佐賀県江北町を始め、岐阜県羽島市に対して、2024年11月に富山県射水市を始め、鳥取県琴浦町、愛知県岩倉市、秋田県大仙市・美郷町、長野県安曇野市、福島県石川地方生活環境施設組合に対して、2024年12月に神奈川県川崎市を始め、愛媛県西予市、大阪府大阪市、富山県小矢部市に対して、2025年1月に神奈川県藤沢市に対して、2025年3月に東京都大田区を始め、岡山県岡山市に対して認定を行い、計31件となりました。また、同法第39条に基づく自主回収・再資源化事業計画については、2024年7月に1件、2024年8月に1件の認定を行い、計5件となりました。同法第48条に基づく再資源化事業計画については、2024年4月に1件、2024年7月に1件、2024年9月に1件の認定を行い、計6件となりました。このほかにも、環境配慮設計の製品の製造・販売、プラスチック製品の使用の合理化、分別収集・リサイクルの取組など、各主体による取組が進展しているところです。特に、環境配慮設計の製品の製造・販売に関して、特に優れた環境配慮設計を行っているプラスチック使用製品の認定制度を設けており、2024年10月に清涼飲料用ペットボトル容器、文具、家庭用化粧品容器、家庭用洗浄剤容器の4つの製品分野において認定基準の議論を行いました。また自治体の取組を後押しするため、市区町村が実施するプラスチック使用製品廃棄物の分別収集・再商品化に要する経費について、昨年度に引き続き特別交付税措置を講じたほか、「プラスチックの資源循環に関する先進的モデル形成支援事業」を実施しました。同法を円滑に施行するとともに、引き続き「プラスチック資源循環戦略」(2019年5月消費者庁・外務省・財務省・文部科学省・厚生労働省・農林水産省・経済産業省・国土交通省・環境省策定)で定めたマイルストーンの達成を目指すために必要な予算、制度的対応を行いました。また、プラスチック資源循環促進法に基づき、化石由来プラスチックを代替する再生可能資源への転換・社会実装化及び複合素材プラスチック等のリサイクル困難素材のリサイクル技術・設備導入を支援するための実証事業及び日本国内の廃プラスチックのリサイクル体制の整備を後押しすべく、「プラスチック資源・金属資源等のバリューチェーン脱炭素化のための高度化設備導入促進事業」及び「脱炭素型循環経済システム構築促進事業」を2024年度も実施しました。

2 バイオマス(食品、木など)

東日本大震災以降、分散型電源であり、かつ、安定供給が見込める循環資源や、バイオマスの熱回収や燃料化等によるエネルギー供給が果たす役割は、一層大きくなっています。

このような中で、主に民間の廃棄物処理事業者が行う地球温暖化対策を推し進めるため、2010年度の廃棄物処理法の改正により創設された、廃棄物熱回収施設設置者認定制度の普及を図るとともに、廃棄物エネルギーの有効活用によるマルチベネフィット達成促進事業を実施しました。2024年度は民間事業者に対して、2件の高効率な廃棄物熱回収施設、1件の廃棄物燃料製造施設の整備を支援しました。

未利用間伐材等の木質バイオマスの供給・利用を推進するため、木質チップ、ペレット等の製造施設やボイラー等の整備を支援しました。また、木質バイオマスのエネルギー利用を推進するために必要な調査を行うとともに、相談窓口・サポート体制の確立に向けた支援を実施しました。このほか、木質バイオマスの利用拡大に資する技術開発については、スギ材のリグニンを化学的に改質し取り出した素材(改質リグニン)を用いた高付加価値材料の開発や大規模製造技術実証を推進しました。また、農山漁村におけるバイオマスを活用した産業創出を軸とした、地域づくりに向けた取組を支援しました。

2050年ネット・ゼロへの移行を実現するためには、エネルギー部門の取組が重要となり、化石燃料由来のCO2排出削減に向けた取組が必要不可欠です。特に、航空分野については、CO2排出削減に寄与する「持続可能な航空燃料(SAF)」の技術開発を加速させる必要があり、三つの技術開発を進めました。[1]HEFA技術(微細藻類培養技術を含む):カーボンリサイクル技術を活用した微細藻類の大量培養技術とともに、抽出した油分(藻油)や廃食油等を高圧下で水素化分解してSAFを製造。[2]ATJ技術:触媒技術を利用してアルコールからSAFを製造。[3]ガス化・FT合成技術:木材等をH2とCOに気化し、ガスと触媒を反応させてSAFを製造。また、可燃性の一般廃棄物や木質系バイオマスからSAFの原料となるエタノールを製造する実証事業を実施しました。

下水汚泥資源については、農林水産省と国土交通省が連携して、「下水汚泥資源の肥料利用の拡大に向けた官民検討会」を2022年に開催し、関係者の役割や取組の方向性を取りまとめました。「食料安全保障強化政策大綱」(2022年12月食料安定供給・農林水産業基盤強化本部決定)においては、2030年までに堆肥・下水汚泥資源の肥料としての使用量を倍増するという目標が新たに掲げられています。このような背景を踏まえ、下水道管理者は今後、下水汚泥は肥料としての利用を最優先し、最大限の利用を行うこととして基本方針を整理しました。また、2024年度には、19団体を対象とした流通確保に向けた案件形成支援事業、35処理場を対象とした下水汚泥資源の重金属・肥料成分分析を実施しており、下水汚泥資源の肥料利用の大幅な拡大に取り組んでいます。

また、下水汚泥資源についてはエネルギー利用も推進しており、2023年度末時点における下水処理場でのバイオガス発電施設は134施設となっています。さらに、下水処理場に生ごみや刈草等の地域のバイオマスを集約することによる、効率的な資源・エネルギー回収の推進も行っており、具体的な案件形成のための地方公共団体へのアドバイザー派遣事業等を行っています。

食品廃棄物については、食品リサイクル法に基づく食品廃棄物等の発生抑制の目標値を設定し、その発生の抑制に取り組んでいます。また、国全体の食品ロスの発生量について推計を実施し、2022年度における国全体の食品ロス発生量の推計値(約472万トン)を2024年6月に公表しました。

食品リサイクルに関しては、食品リサイクル法の再生利用事業計画(食品関連事業者から排出される食品循環資源を用いて製造された肥料・飼料等を利用して作られた農畜水産物を食品関連事業者が利用する仕組み。)を通じて、食品循環資源の再生利用の取組を促進しました。

3 ベースメタルやレアメタル等の金属

廃棄物の適正処理及び資源の有効利用の確保を図ることが求められている中、小型電子機器等が使用済みとなった場合には、鉄やアルミニウム等の一部の金属を除く金や銅等の金属は、大部分が廃棄物としてリサイクルされずに市町村により埋立処分されていました。こうした背景を踏まえ、小型家電リサイクル法が2013年4月から施行されました。

2023年度に小型家電リサイクル法の下で処理された使用済小型電子機器等は、約8万6,000トンでした。そのうち約1,500トンが再使用され、残りの約8万5,000トンから再資源化された金属の重量は約4万3,000トンでした。再資源化された金属を種類別に見ると、鉄が約3万6,000トン、アルミが約3,800トン、銅が約2,200トン、金が約300kg、銀が約3,100kgでした。

このような中で、使用済製品に含まれる有用金属の更なる利用促進を図ることにより、資源確保と天然資源の消費の抑制に資するため、レアメタル等を含む主要製品全般について、回収量の確保やリサイクルの効率性の向上を図る必要があります。このため、技術開発から技術実証、設備導入にあたるまでの支援を実施することとして、廃家電から貴金属、レアメタル、ベースメタル、プラスチック等を資源循環する基盤技術、磁性材料の精錬に係る技術、アルミスクラップを自動車の車体等にも使用可能な素材(展伸材)へとアップグレードする基盤技術開発を実施し、電子基板や車載用リチウム蓄電池から、リチウムやコバルト等の有用金属を回収する実証支援の実施、リサイクルが困難な使用済み製品に含まれる希少金属について、レアアースの安価回収技術や金属資源高効率回収技術に係る設備投資支援や省CO2のリサイクル設備導入支援を実施しました。

広域認定制度の適切な運用を図り、情報処理機器や各種電池等の製造事業者等が行う高度な再生処理によって、有用金属の分別回収を推進しました。

4 土石・建設材料、建築物

長期にわたって使用可能な質の高い住宅ストックを形成するため、長期優良住宅の普及の促進に関する法律(平成20年法律第87号)に基づき、長期優良住宅の建築・維持保全に関する計画を所管行政庁が認定する制度を運用しています。この認定を受けた住宅については、税制上の特例措置を実施しています。なお、制度の運用開始以来、累計で約159万戸(2024年3月末時点)が認定されており、新築住宅着工戸数に占める新築認定戸数の割合は14.5%(2023年度実績)となっています。

5 自動車、小型家電・家電

自動車について、使用済自動車全体の資源循環における温室効果ガス排出量を削減するため、環境省において2022年度から「自動車リサイクルのカーボンニュートラル及び3Rの推進・質の向上に向けた検討会」を開催し、解体・破砕業者向け温室効果ガス排出量削減の手引き及び自動車リサイクルにおけるカーボンニュートラルに向けた事業者等の取組一覧を取りまとめました。また、使用済自動車の解体・破砕段階におけるプラスチックやガラスの資源回収を強化するため、使用済自動車に係る資源回収インセンティブ制度を創設することとしており、参画する意思のある事業者等が制度に対する理解を深め、取組を円滑に進めることができるようにするため、環境省及び経済産業省は2025年3月にガイドラインを策定しました。

また、我が国の自動車向け再生プラスチックの市場構築を実現するため、2024年11月、環境省は、経済産業省と連携し、産官学からなる「自動車向け再生プラスチック市場構築のための産官学コンソーシアム」を立ち上げました。産官学コンソーシアムでは、これまで連携が十分でなかった自動車製造業から資源循環産業までのサプライチェーンを横断する業界団体が一堂に会し、有識者の参画を得て、自動車向けの再生プラスチック市場構築を通じた我が国の関連産業の目指す姿や、動静脈連携に基づく取組(設備投資や実証事業)の必要性、そして、その実現に向けた国の支援策等について議論し、2025年3月末に「自動車向け再生プラスチック市場構築アクションプラン」を取りまとめました。

小型家電については、中央環境審議会循環型社会部会小型家電リサイクル小委員会において、小型家電リサイクル法の基本方針に定める回収量目標未達の原因分析や論点整理の検討を開始しました。また、GIGAスクール構想に基づき全国の小中学校に一体的に配備された情報端末が、今後更新を迎え一斉に廃棄されることに備え、小型家電リサイクル制度等に基づく適正な処理・リサイクルを推進するため、全国の市区町村及び教育委員会向けに説明会や個別コンサルティングを実施しました。

家電については、特定家庭用機器の適切なリユース・リサイクルの実施に向け、「小売業者による特定家庭用機器のリユース・リサイクル仕分け基準作成のためのガイドラインに関する報告書」(平成20年9月)の見直し等を検討するため、関係者・有識者から助言を得るための検討会を設置しました。検討会では、リユースの現状・課題等を整理するとともに、その結果等を踏まえたガイドラインの改定案を取りまとめました。

6 地球温暖化対策等により新たに普及した製品や素材

第1部第2章第4節2(5)を参照。また、2024年8月に「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けたガイドライン(第三版)」を策定しました。

7 繊維製品(ファッション)

繊維製品のうち衣類については、「大量生産・大量消費・大量廃棄」によって製造時の資源やエネルギー使用の増加、ライフサイクルの短命化等から環境負荷が非常に大きいとも指摘されるようになり、EUを始め、我が国・企業においても、環境対策の動きが進んでいます。

我が国においては、経済産業省と環境省で2023年1月に「繊維製品における資源循環システム検討会」を立ち上げ、「回収」「分別・再生」「設計・製造」「販売」の4つのフェーズにおける、繊維製品の資源循環システムの構築に向けた課題の整理と取組の方向性を検討し、同年9月に報告書を取りまとめました。これを受け、経済産業省では、産業構造審議会繊維産業小委員会において取り組むべき具体的な政策について議論を行い、2024年6月に、「繊維産業におけるサステナビリティ推進等に関する議論の中間とりまとめ」、「繊維製品における資源循環ロードマップ」を公表・策定しました。また、2024年3月には「繊維製品の環境配慮設計ガイドライン」、同年6月に「繊維・アパレル産業における環境配慮情報開示ガイドライン」をそれぞれ策定し、ガイドラインの普及に向けた取組を推進しています。2024年11月には、消費者庁、経済産業省及び環境省による「サステナブルファッションの推進に向けた関係省庁連携会議」を開催し、今後連携する取組について確認しました。さらに、経済産業省・環境省では、リサイクル技術等の開発等に取り組むとともに、環境省では企業と家庭から排出される衣類の量の把握、使用済衣類回収のシステム構築に関するモデル実証事業の実施等の取組を進めています。