環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部第3章>第3節 国内における取組

第3節 国内における取組

1 「質」にも着目した循環型社会の形成

(1)2Rの取組がより進む社会経済システムの構築

 リサイクルより優先順位の高い、2Rの取組がより進む社会経済システムの構築を目指し、国民・事業者が行うべき具体的な2Rの取組を制度的に位置付けるため、平成27年度は2Rの取組がより進む社会経済システム構築の実例を作るため、イベントごみ削減に向けた条例制定や持続可能なフードバンクシステム構築を目指すモデル事業を実施し、システム構築に向けた課題の評価・分析を行いました。同時に、我が国全体の2R取組状況を把握するための指標について検討を行いました。また、近年関心が高まっている、食品廃棄物の3R行動に係る環境負荷削減効果を見える化できるツールを作成し、第10回3R推進全国大会、セミナー及び環境省ウェブサイトにおいて情報発信しました。

 さらに、一般廃棄物処理に関するコスト分析方法、標準的な分別収集区分等を示す「一般廃棄物処理有料化の手引き」、「一般廃棄物会計基準」、「市町村における循環型社会づくりに向けた一般廃棄物処理システムの指針」の三つのガイドラインについて、引き続き普及促進を行いました。

 容器包装の3R推進に関しては、産業構造審議会及び中央環境審議会において、3R推進団体連絡会による「容器包装3Rのための第二次自主行動計画」(2011年度~2015年度(平成23年度~平成27年度))に基づいて実施されたリデュースに係る取組の状況について、評価・検討を行い、委員から取組の更なる推進に向けた施策提言等がなされました。さらに、包装の環境配慮設計について共通の考え方として、2015年(平成27年)に包装の環境配慮設計に関する規格(JIS Z 0130群)が制定され、事業者が包装の設計・製造をする際の手順書等として活用できる手引と消費者が事業者の包装の環境配慮設計の取組を理解し商品選択の際に活用できる事例集を作成しました。一方で、2Rの中でも特にリユースを主要な循環産業の一つとして位置付け、リユース品が広く活用されるとともに、リユースに係る健全なビジネス市場の形成につなげるため、事業者、地方公共団体等の関係者が連携し、地域内での瓶リユースを促進するための実証事業を2件実施しました。当該実証事業の中では、各関係者による協議会の設置等についての支援も行いました。また、使用済製品等のリユース促進事業研究会を設置し、市町村や都道府県が、リユース事業者、地域のNPOや市民団体と協力して、新たに使用済製品等のリユースの促進に資するモデルプランを地域の特性に応じて立案してもらうモデル事業を、2件実施しました。

 さらに、食品廃棄物については、フードチェーン全体の改善に向けて、平成27年8月から5業種について食品リサイクル法に基づく食品廃棄物等の発生抑制の目標値を追加し、合わせて食品関連75業種のうち31業種の目標値を設定しました。また、国全体の食品ロスの発生量についてより精緻な推計を実施し、平成24年度における国全体の食品ロス発生量の推計値(約642万トン)を平成27年6月に公表しました。

 旅館・飲食・食肉営業者等の生活衛生関係営業者に関しては、それら主体による食品循環資源の再生利用率向上を図るため、生活衛生関係営業の運営の適正化及び振興に関する法律(昭和32年法律第164号)に基づき、厚生労働大臣が定める「振興指針」について、平成15年度に策定された「食品リサイクル推進指針」の内容を踏まえて改訂を行うことにより、引き続き支援を行いました。

 フードチェーンの一部である容器包装に関しては、リデュース等を促進するための消費者啓発について必要なマネジメントを検討するための前提情報として、消費者の環境配慮型容器包装等に係る意識調査を実施しました。

 長期にわたって使用可能な質の高い住宅ストックを形成するため、長期優良住宅の普及の促進に関する法律(平成20年法律第87号)に基づき、長期優良住宅の建築・維持保全に関する計画を所管の行政庁が認定する制度を運用しています。この認定を受けた住宅については、税制上の特例措置を実施しています。なお、制度の運用開始以来、累計で約64.3万戸(平成27年10月末現在)が認定されており、新築住宅に占める割合は11.3%(平成26年度実績)となっています。

 国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(平成12年法律第100号。以下「グリーン購入法」という。)については、第3節5(1)第3節7(9)を参照。

 無許可の廃棄物回収の違法性に関する普及啓発については、第3節6(1)を参照。

 ウェブサイト「Re-Style」については、第3節8(2)を参照。

(2)使用済製品からの有用金属の回収

 廃棄物の適正処理及び資源の有効利用の確保を図ることが求められている中、小型電子機器等が使用済みとなった場合には、鉄やアルミニウム等の一部の金属を除く金や銅等の金属は、大部分が廃棄物としてリサイクルされずに市町村により埋立処分されています。こうした背景を踏まえ、小型家電リサイクル法が平成25年4月から施行されました。

 平成26年度に小型家電リサイクル法の下で処理された使用済小型電子機器等は、約5万トンとなっています。そのうち、国に認定された再資源化事業者が処理した使用済小型電子機器等は約4万トンであり、そこから再資源化された金属の重量は約2.3万トンとなっています。再資源化された金属を種類別に見ると、鉄が約2万トン、アルミが約1,500トン、金が約140kg、銀が約1,600kg、銅が約1,100トンとなっています。

 このような中で、使用済製品に含まれる有用金属の更なる利用促進を図り、もって資源確保と天然資源の消費の抑制に資するため、レアメタル等を含む主要製品全般について、回収量の確保やリサイクルの効率性の向上を図る必要があります。このため、低炭素型3R技術・システム実証調査事業において、自動車用コンピューター基板等を解体段階で回収し、有用金属をリサイクルすることなどによりリサイクルを高付加価値化する実証的な取組等を支援しました。また、リサイクル優先レアメタル回収技術開発・実証により、平成27年度はコバルトを含む次世代自動車用リチウムイオンバッテリーのリサイクル技術開発・実証事業3件に対して補助を実施しました。

 また、使用済製品のより広域でのリサイクルを行うため、広域的な実施によって、廃棄物の減量化や適正処理の確保に資するとして環境大臣の認定を受けた者については、地方公共団体ごとに要求される廃棄物処理業の許可を不要とする制度(以下「広域認定制度」という。)の適切な運用を図り、情報処理機器や各種電池等の製造事業者等が行う高度な再生処理によって、有用金属の分別回収を推進しました。

 そのほか、環境研究総合推進費による研究・開発支援として、平成27年度に、レアメタル等の回収・リサイクルシステムの構築に係る研究・開発として3件を採択しました。

(3)水平リサイクル等の高度なリサイクルの推進

 これまで進んできたリサイクルの量に着目した取組に加えて、社会的費用を減少させつつ、高度で高付加価値な水平リサイクル等を社会に定着させる必要があります。このため、まず循環資源を原材料として用いた製品の需要拡大を目指し、循環資源を供給する産業と循環資源を活用する産業との連携を促進しています。

 ペットボトルに関しては、使用済ペットボトルからペットボトルを再生するいわゆる「ボトルtoボトル(BtoB)」を推進するため、スーパー等における使用済ペットボトルの店頭回収のモデル事業を実施し、有効性の検証、社会システム化に伴う環境負荷低減効果、社会的費用の削減効果の試算、事業実施地域以外での普及方策等について検討しました。

 食品リサイクルに関しては、食品リサイクル法の再生利用事業計画(食品関連事業者から排出される食品廃棄物等を用いて製造された肥料・飼料等を利用して作られた農畜水産物を食品関連事業者が利用する仕組み。以下「食品リサイクルループ」という。)認定事業の形成支援を通じて、食品循環資源の廃棄物等の発生抑制・再生利用の取組を促進しました。また、バイオマス活用推進基本計画における食品廃棄物の利用率の目標達成に向け、平成24年度に提示した地域特性に応じた利活用パターンや導入見込み、ロードマップ等を踏まえ、市町村等による廃棄物系バイオマスの利活用の促進に係る取組を支援しました。

 さらに、食品関連事業者、再生利用事業者、農林漁業者、地方自治体のマッチングの強化や、地方自治体の理解促進等による食品リサイクルループ形成の促進のため、仙台市、さいたま市、名古屋市、宇部市の4か所において、「食品リサイクル推進マッチングセミナー」を実施したほか、全国7か所において、地方自治体の廃棄物部局担当者を対象とした、各種リサイクル法に係る説明会を開催し、食品リサイクル法に基づく食品リサイクルループ認定事業への積極的な後押しを促しました。

 また、リサイクル費用の削減に向けた新技術の研究・開発も必要です。平成27年度の環境研究総合推進費による研究・開発支援については、行政が特に提案を求める重点研究テーマとして「アップグレード・水平リサイクル及びリサイクル材活用に関する研究・技術開発」を示し、テーマに合致する研究として3件を採択しました。また、リサイクルの推進に資する研究・開発として6件を採択しました。

 そのほか、自動車リサイクルに関する事項としては、解体業者や自動車メーカーが連携して、プラスチック製のバンパーの回収を行い、自動車用素材としてリサイクルを行う実証事業を実施し、リサイクルの高度化に資する取組を支援しました。

 プラスチック製容器包装廃棄物を原料とした材料リサイクルによる再生品については、消費者に訴求力の高い商品を試作し、そのPR効果を検討しつつ実用化・商用化に向けたマッチング等を行いました。

 また、3R推進月間(毎年10月)においては、3R推進ポスター展示、リサイクルプラント見学会や関係機関の実施するイベント等のPRを行うとともに、3R活動推進フォーラムと共同で「環境にやさしい買い物キャンペーン」を通じ、消費者向けの普及啓発を行いました。

 「資源循環ハンドブック2015」等の3R普及啓発、3R推進月間の取組については、第3節8(2)を参照。

(4)有害物質を含む廃棄物等の適正処理システムの構築

 安全・安心がしっかりと確保された循環型社会を形成するため、有害物質を含むものについては、適正な管理・処理が確保されるよう、その体制の充実を図る必要があります。

 石綿に関しては、その適正な処理体制を確保するため、廃棄物処理法に基づき、引き続き石綿含有廃棄物の無害化処理認定に係る事業者からの相談等に対応しました。

 高濃度PCB廃棄物については、JESCO全国5か所のPCB処理事業所にて処理が進められています(第1部パート3第4章第1節を参照)。また、微量PCB汚染廃電気機器等については、廃棄物処理法に基づき、無害化処理認定を受けている事業者及び都道府県知事の許可を受けている事業者により処理が進められています。

 化学物質を含有する廃棄物等の有害性の評価や、適正処理に関する技術の開発・普及を目指し、平成27年度の環境研究総合推進費による研究・開発支援においては、有害廃棄物対策と適正処理に係る研究・開発を1件採択しました。

 水銀廃棄物の環境上適正な管理、処分に関しては、水銀に関する水俣条約(以下「水俣条約」という。)の実施に必要となる措置について検討を行い、金属水銀及び高濃度の水銀汚染物を廃棄物として処分する際の環境上適正な処理方法、平成27年2月の中央環境審議会における、金属水銀及び高濃度の水銀汚染物を廃棄物として処分する際の環境上適正な処理方法、並びに水銀添加廃製品の環境上適正な管理等の促進方策等に関しての答申を踏まえ、廃金属水銀を特別管理廃棄物へ指定することなどについて、同年11月に廃棄物処理法施行令改正、同年12月に施行規則等改正により措置しました。

 埋設農薬に関しては、計画的かつ着実に処理するため、農薬が埋設されている県における、処理計画の策定等や環境調査に対する支援を引き続き実施しました。

 有害物質情報については、国際的動向を含めて情報収集を行うとともに、関係者間での情報共有・意思疎通が図られるよう、リスクコミュニケーションを的確に実施する必要があります。このため、化学物質排出移動量届出制度(PRTR制度)対象物質のうち、毒性等の情報を分かりやすく簡潔にまとめた「化学物質ファクトシート」を未作成の物質について、情報の収集・公開を進めました。また、市民、労働者、事業者、行政、学識経験者等の様々な主体が、化学物質と環境に関して意見交換を行い、政策提言を目指す場である「化学物質と環境に関する政策対話」を開催し、化学物質に関する国民の安全・安心の確保に向けたリスクコミュニケーションの取組を推進しました。そのほかにも、化学物質アドバイザー制度を運営し、自治体や事業者が実施する化学物質に係るリスクコミュニケーションの活動を支援しました。

(5)災害時の廃棄物処理システムの強化

 東日本大震災や近年の災害における経験により、事前の備えや、大規模災害時においても適正な処理を確保しつつ、円滑かつ迅速に処理を行うための措置が十分でないことが明らかとなりました。これらを踏まえ、環境省では、災害廃棄物に関する諸課題の検討のため、平成25年10月に「大規模災害発生時における災害廃棄物対策検討会」を開催し、災害廃棄物対策について総合的な検討を進めてきました。

 制度的な対応として、同検討会での提言も踏まえ、災害廃棄物について適正かつ円滑・迅速な処理を実現するべく、平時の備えから、今後発生が予測されている南海トラフ巨大地震や首都直下地震等の大規模災害発生時の対応に至るまで、災害廃棄物対策の強化を図るため、廃棄物処理法及び災害対策基本法(昭和36年法律第223号)が改正されました(平成27年7月17日公布。同年8月6日施行)。廃棄物処理法の改正により、災害廃棄物の処理に係る基本理念を明確にするとともに、災害廃棄物の処理に関する事務手続の一部が簡素化されました。また、災害対策基本法の改正により、大規模災害発生時に、国が災害廃棄物の基本的な処理指針を定めることとし、一定の要件を満たした市町村の要請を受けた場合に国が代行処理を行えることとされました。さらに、平成28年1月に変更された廃棄物処理法の基本方針に災害廃棄物に関する項が盛り込まれ、災害廃棄物に関する施策の基本的考え方や各主体の役割、廃棄物処理施設の整備・運用、技術開発・情報発信について明記されました。

 自治体等における災害廃棄物対策への支援を充実させるため、平成27年9月に災害廃棄物処理支援ネットワーク(以下「D.Waste-Net」という。)を発足させ、平成27年9月関東・東北豪雨災害において茨城県や栃木県、宮城県等の被災自治体の支援を実施しました。また、広域連携を促進するため、地方環境事務所が中心となり全国8か所に地域ブロック協議会等を開催し、都道府県や主要な市町村、地域の民間事業者や有識者等の参加の下、都道府県の枠を越えた地域ブロック内における実効性ある災害廃棄物処理の枠組みの構築を進めています。協議会等では、大規模災害も想定した平時からの備えとして、災害廃棄物の発生量の想定や地域ブロックにおける災害廃棄物処理に係る計画や対策等の検討を行っており、平成27年11月に策定した「大規模災害発生時における災害廃棄物対策行動指針」を活用し、地域ブロックごとに行動計画を策定することとしています。

2 低炭素社会、自然共生社会づくりとの統合的取組

 低炭素社会づくりと循環型社会づくりを統合的に図る観点から、化石系資源の使用量を抑制するため、廃棄物エネルギー導入・低炭素化促進事業を実施しています。平成27年度は民間事業者に対して、1件の高効率の廃棄物熱回収施設及び3件の廃棄物燃料製造施設の整備を支援しました。また、大幅なCO2排出削減が期待できる3R技術・システムの普及拡大に向けて有効性を検証する「低炭素型3R技術・システム実証調査事業」や、高度なリサイクルを行いながらリサイクルプロセスの省CO2化を図る設備の導入支援を行う「省CO2型リサイクル高度化設備導入促進事業」を実施しました。さらに、循環型社会形成推進交付金等において、災害時における廃棄物処理システムの強靱化、地球温暖化対策の強化という観点から、市町村等が行う一般廃棄物処理施設の整備等に対する支援の充実を図りました。

 また、農山漁村のバイオマスを活用した産業創出を軸とした地域づくりに向けた取組について推進すると同時に、「森林・林業基本計画」等に基づき、森林の適切な整備・保全や木材利用の推進に取り組みました。

 さらに、「生物多様性国家戦略2012-2020」及び「農林水産省生物多様性戦略」に基づき、田園地域・里地里山の整備・保全(環境保全型農業直接支払による生物多様性保全に効果の高い営農活動に対する直接支援等)、森林の整備・保全(適切な間伐等)、里海・海洋の保全(生態系全体の生産力の底上げを目指した漁場の整備等)等により、農林水産分野における生物多様性の保全や持続可能な利用を引き続き推進しました。加えて、企業等による生物多様性保全活動への支援等について取りまとめた、農林漁業者及び企業等向け手引及びパンフレットを活用し、農林水産分野における生物多様性保全活動を推進しました。

 化学肥料・化学合成農薬の使用低減や、地球温暖化防止・生物多様性の保全に効果の高い農業生産活動に対する環境保全型農業直接支払については、平成26年度に制定した、農業の有する多面的機能の発揮の促進に関する法律(平成26年法律第78号)に基づき実施し、農業者の連携による地域でまとまりを持った取組等、有機農業を含めた環境保全型農業を引き続き推進しました。

 加えて、海洋環境等については、その負荷を低減させるため、今後も循環型社会を支えるための水産廃棄物等処理施設の整備を推進しました。

 使用済再生可能エネルギー設備(太陽光発電設備、太陽熱利用システム及び風力発電設備)のリユース・リサイクル・適正処分に関しては、平成26年度に有識者検討会においてリサイクルを含む適正処理の推進に向けたロードマップを策定しています。平成27年度は本ロードマップに基づき、太陽光発電設備が使用済みになった後のリユース・リサイクルや適正処理に関する留意事項の整理やリユース・リサイクルの推進に向けて実証事業を実施しました。

 そのほか、航路等の整備により発生した浚渫(しゅんせつ)土砂を活用し、東京湾、大阪湾において深掘跡の埋戻しを実施し、水質改善や生物多様性の確保等、良好な海域環境の保全・再生・創出を推進しています。

 木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業、エコタウン等に関する取組については、第3節3を参照。

 下水汚泥資源化施設の整備の支援等については、第3節4を参照。

 モーダルシフト・輸送効率化による低炭素型静脈物流促進事業については、第3節5(2)を参照。

3 地域循環圏の高度化

 地域循環圏の形成に向けては、これまで循環資源の種類に応じて、適正な規模で循環させることができる仕組み作りを進めてきたところであり、今後はこれらの取組を拡充、発展させ、地域循環圏づくりを具体化させていく必要があります。このため、地方の実情や循環資源の性質に応じた複層的な望ましい循環の構築に向けて、地域循環圏の高度化を図るモデル事業を実施し、その成果も踏まえた地域循環圏形成推進ガイドラインの改善を行いました。

 エコタウンに関しては、エコタウン等と循環資源(廃棄物)の排出者である動脈産業との最適な連携等により、エコタウン等の能力を最大限活用する手法を実証することを目的とした「地域循環拠点(エコタウン等)高度化モデル事業」を実施しました。また、循環資源の循環的利用と低炭素化の両方でゼロ・エミッションを実現する先進的なモデル地域を形成するため、エコタウン等を有する自治体及びエコタウン等において循環産業に取り組んでいる事業者を対象に、先進的なモデル地域を形成するための事業性評価調査又は計画策定に対する補助金事業を行っています。さらに、エコタウン事業関係者(エコタウン承認自治体、エコタウン内事業者等)が集う、全国エコタウン会議を開催しました。同会議は、これまで各地域が培ってきた環境まちづくりに向けた取組による経験・ノウハウ・課題を共有化し、課題解決に向け連携、意見交換するとともに情報発信を行う場を設けることを目的としています。

 浄化槽に関する取組としては、浄化槽の設置を行う者に対して、市町村が設置費用を助成する浄化槽設置整備事業、市町村が設置主体になって浄化槽の整備を行うのに必要な費用を国が助成する浄化槽市町村整備推進事業に加え、一定の要件を満たす省エネルギー型浄化槽の整備について助成率をかさ上げする低炭素社会対応型浄化槽整備推進事業を実施しました。また、浄化槽の整備事業の推進に向け、PFI等の民間活用手法に関する調査検討を行ったほか、浄化槽システム全体での更なる低炭素化に向けた調査検討を行いました。

 また、特に地球温暖化の観点からは、地球温暖化対策の推進に関する法律(平成10年法律第117号)に基づく地方公共団体実行計画に位置付けられた施策の実現に必要な設備導入等を補助することで、地域の創意工夫をいかした体系的な施策による地域への普及を後押しし、豊かな低炭素地域づくりを推進する「グリーンプラン・パートナーシップ事業」を平成26年度から実施しています。また、平成26年度に引き続き、自治体職員を対象とし、地方公共団体実行計画策定から事業実施までの基礎的・実務的知識を習得するための研修会(全5回※初回は全国9か所、2回目以降は東京1か所のみ)を開催しました。

 さらに、下水道の分野では、下水道革新的技術実証事業において、平成26年度に採択された水素改質技術の継続実証、及び平成27年度に採択されたバイオガスの活用技術2件、再生水利用技術1件の実証を行いました。

 バイオマスエネルギーについては、木質バイオマスエネルギーを活用したモデル地域づくり推進事業において、伐採されながら森林内に放置されている未利用間伐材等をエネルギーとして有効活用する先導的な技術やシステムの実証に、地域が一体となって取り組んでいます。平成27年度は、平成25年度及び平成26年度に採択した計9件の実証事業を行うことで、より効率的・安定的な木質バイオマス利用の取組を推進しました。また、バイオマスエネルギーの地域自立システム化実証事業においては、バイオマスエネルギー導入に係る技術指針・導入要件の調査を実施し、木質系、湿潤系、都市型系、それぞれのバイオマス産業が地域でビジネスとして健全に自立するための技術指針・導入要件を策定しました。あわせて、地域自立システム化実証に向けた事業性評価を行い、策定された技術指針・導入要件について、木質系、湿潤系、都市型系、それぞれの地域実証へ向けて事業性を検討しました。

 製品系循環資源や枯渇性資源を含む循環資源については、より広域での循環のため、廃棄物処理法によって定められた制度等を適切に活用する必要があります。平成27年度においては、廃棄物の再生利用で一定の基準に適合しているとして、環境大臣の認定を受けた者について廃棄物処理業や廃棄物処理施設の設置許可を不要とする制度(以下「再生利用認定制度」という。)と広域認定制度に関して、適切な運用を図りました。この結果、産業廃棄物については、平成28年3月末時点で、再生利用認定制度では41件、広域認定制度では199件が認定を受けています(広域認定制度については、第3節1(2)を参照)。

 「食品リサイクル推進マッチングセミナー」については、第3節1(3)を参照。

 農山漁村のバイオマスを活用した産業創出を軸とした地域づくりについては、第3節2第3節4を参照。

4 循環資源・バイオマス資源のエネルギー源への利用

 東日本大震災以降、分散型電源であり、かつ、安定供給が見込める循環資源や、バイオマス資源の熱回収や燃料化等によるエネルギー供給が果たす役割は、一層大きくなっています。

 このような中で、主に民間の廃棄物処理事業者が行う地球温暖化対策を推し進めるため、平成22年度の廃棄物処理法の改正により創設された、廃棄物熱回収施設設置者認定制度の普及を図るとともに、廃棄物エネルギー導入・低炭素化促進事業を実施しています。平成27年度は民間事業者に対して、1件の高効率な廃棄物熱回収施設及び3件の廃棄物燃料製造施設の整備を支援しました。

 バイオ燃料に関しては、バイオエタノールを3%混合したレギュラーガソリン「E3」の普及と併せて、バイオエタノールを10%混合した、より二酸化炭素排出削減効果の高いレギュラーガソリン「E10」の普及促進及び供給体制の整備拡大を行いました。

 農山漁村において豊富なポテンシャルを有する食品廃棄物や家畜排せつ物等に由来するバイオガスを活用し、自家使用だけでなく広く地域で利用する資源循環利用モデルを構築していくため、バイオガス製造・供給技術等につき、二酸化炭素削減効果や事業性等についての実証を行う「地域循環型バイオガスシステム構築モデル事業」を実施しました。平成25年度採択案件事業については、実証の最終年度となることから、二酸化炭素削減効果を始め、成果(地域資源から効率的にメタンを回収するための適正な原料組成割合に係る知見、副産物の量の把握と活用の方法・事業性等)の取りまとめを実施しました。平成26年度採択案件事業については、実証に向けたシステム構築及びモデル実証を進めました。

 さらに、未利用間伐材等の木質バイオマスの供給・利用を推進するため、ペレット製造設備や木質ペレットボイラー等の整備を支援しました。また、未利用木質バイオマスを利用した発電、熱供給又は熱電併給の推進のために必要な調査を行うとともに、全国各地の木質バイオマス関連施設の円滑な導入に向けた相談窓口・サポート体制の確立に向けた支援を実施したほか、発熱量を高めたペレット製造技術の開発・実証等、木質バイオマスの利用拡大に資する技術開発等への支援を8件実施しました。同時に、これらの取組に資する技術の研究開発を進めることも重要です。このため、農山漁村で豊富に得られる草本を利用したバイオエタノールの低コスト・安定供給技術の開発、林地残材を原料とするバイオ燃料等の製造技術の開発、微細藻類を利用した石油代替燃料等の製造技術の開発を実施したほか、農山漁村のバイオマスを活用した産業創出を軸とした、地域づくりに向けた取組を支援しました。

 同時に、これらの取組に資する技術の研究開発を進めることも重要です。ビジネスとして成立するバイオマスエネルギー利用技術の開発を行う、戦略的次世代バイオマス利用技術開発事業(実用化技術開発)においては、草本系固形燃料(ペレット化)(平成25年度採択:1件)について、多原料混合での効率的なペレット化技術の開発を進めています。

 さらに、廃食油等から作成されたバイオディーゼル燃料の一体的・先進的な流通システムや、技術課題に取り組む地域の主体を支援する「地域バイオディーゼル流通システム実証事業費補助金」において、平成25年度までの取組である、流通インフラの整備による流通経路の確保、自治体等との連携によるバイオディーゼル燃料利用拡大等を継続し、その規模を拡大していきました。

 また、セルロース系バイオマスからのエタノール製造技術開発に取り組む、セルロース系エタノール生産システム総合開発実証事業において、セルロース系エタノール一貫生産システムの構築のためのパイロットプラントの建設に向けて、前処理・糖化と発酵プロセスの最適な組合せを検証しました。エタノール生産技術の開発を行う、バイオ燃料製造の有用要素技術開発事業においては、燃料用バイオマス高生産植物の評価・改良技術、土壌選別等の植栽技術等を用いた収量アップ等の基盤技術研究、高収率エタノール生産技術開発のための有用微生物の改良及びパイロット詳細設計のためのデータ取り、パイロット設備の設計・建設、安価かつ高活性な酵素生産技術開発のための高活性酵素生産菌の改良及びパイロット詳細設計のためのデータ取り、パイロット設備の設計・建設を行いました。

 さらに、下水処理場を地域のバイオマス活用の拠点としてエネルギー回収を行う取組として、下水汚泥資源化施設の整備の支援、下水道資源の循環利用に係る計画策定の推進(社会資本整備総合交付金)、下水道資源の再生利用・エネルギー利用に係る技術実証(下水道革新的技術実証事業における水素改質技術1件、バイオガスの活用技術2件、再生水利用技術1件の実証)を実施しました。

 循環型社会形成推進交付金、廃棄物エネルギー導入・低炭素化促進事業については、第3節2を参照。

5 循環産業の育成

(1)廃棄物等の有効活用を図る優良事業者の育成

 優良事業者が社会的に評価され、不法投棄や不適正処理を行う事業者が淘(とう)汰される環境をつくるために、優良処理業者に優遇措置を講じる、優良性評価制度を平成17年度に創設しました。平成23年4月からは、更に優良処理業者へのインセンティブを改善した優良産廃処理業者認定制度を運用しています。また、平成27年度は、産業廃棄物の排出事業者と優良処理業者の参加するフォーラムを東京、名古屋、広島の3か所で開催し、これらの事業者間の連携・協働に向けたきっかけの場を創設するとともに、優良処理業者の情報発信サイト「優良さんぱいナビ」(http://www3.sanpainet.or.jp/(別ウィンドウ))の利便性向上のためのシステム改良を引き続き実施しました。平成25年に国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する法律(平成19年法律第56号。以下「環境配慮契約法」という。)に類型追加された「産業廃棄物の処理に係る契約」では、優良処理業者が産廃処理委託契約で有利になる仕組みとなっています。環境配慮契約の実施割合は、平成25年度が11.7%、平成26年度が31.7%と増加しています。それに伴い、優良認定業者数も20%増加するなどの効果が見られました(平成25年度末で713社、平成26年度末で859社)。

 リユース市場の拡大に向けては、使用済製品等のリユース促進事業研究会の事業として、リユース業界団体との意見交換会を開催しました。

 これらの取組に加え、国自らが率先して、3R製品等を調達することも重要であり、環境ラベルに関する情報を提供する「環境ラベル等データベース」(http://www.env.go.jp/policy/hozen/green/ecolabel/(別ウィンドウ))に関しては、その掲載情報を随時更新しました。また、グリーン購入法及び環境配慮契約法に基づく基本方針について、必要な見直し等を行うため、有識者等による検討会を開催しました。各省庁等は、グリーン購入法及び環境配慮契約法に基づき、環境物品等の調達の推進を図るための方針の策定や契約締結実績の概要公表を実施しており、国等においては、ほぼ100%のグリーン購入が実施されるなど、率先したグリーン購入及び環境配慮契約の推進がなされています。

 また、各事業者における、環境マネジメントシステムの導入、環境報告書や環境会計の作成・公表等の取組の促進のため、ISO14001の改定等を踏まえ、中小企業向け環境マネジメントシステムである「エコアクション21」のガイドライン改訂に着手しました。また、環境マネジメントシステムに取り組む中小企業の裾野を拡大するため、「エコアクション21の簡易版環境マネジメントシステム」の実証事業を行いました。さらに、環境報告書の更なる利用促進を図るため、環境情報開示基盤の整備事業を推進するとともに、情報開示の世界的潮流や企業を取り巻くガバナンスの在り方の変容を踏まえ、「環境報告ガイドライン2012年版」や「環境会計ガイドライン2005年版」改訂の検討に向けた調査を行いました。

 加えて、特定廃棄物最終処分場における特定災害防止準備金の損金又は必要経費算入の特例や廃棄物処理施設に係る課税標準の特例といった税制措置を活用することにより、廃棄物処理施設の整備及び維持管理を推進しました。

 ペットボトルの高度なリサイクル、プラスチック製容器包装廃棄物を原料とした材料リサイクルによる再生品については、第3節1(3)を参照。

(2)静脈物流システムの構築

 静脈物流に係る更なる環境負荷低減と輸送コスト削減を目指し、モーダルシフト・輸送効率化による低炭素型静脈物流促進事業を実施しています。平成27年度は、海上輸送による低炭素型静脈物流システムを構築する事業を3件採択しました。

 また、これまでに22の港湾を静脈物流の拠点となる「リサイクルポート」に指定し、広域的なリサイクル関連施設の臨海部への立地の推進等を行うとともに、D.Waste-Netの参画メンバーとして、リサイクルポート推進協議会が日本内航海運組合総連合会と共に環境大臣により任命されました。さらに、首都圏の建設発生土を全国の港湾の用地造成等に用いる港湾建設資源の広域利用促進システム(スーパーフェニックス)を推進しており、小名浜港等において建設発生土の受入れを実施しました。

6 廃棄物の適正な処理

(1)不法投棄・不適正処理対策

 不法投棄等の未然防止・拡大防止対策としては、不法投棄等に関する情報を国民から直接受け付ける不法投棄ホットラインを運用するとともに、産業廃棄物の実務や関係法令等に精通した専門家を不法投棄等の現場へ派遣し、不法投棄等に関与した者の究明や責任追及方法、支障除去の手法の検討等の助言等を行うことにより、都道府県等の取組を支援しました。さらに、毎年5月30日(ごみゼロの日)から6月5日(環境の日)までを「全国ごみ不法投棄監視ウィーク」として設定するとともに、国と都道府県等とが連携して、不法投棄等の撲滅に向けた普及啓発活動、新規及び継続の不法投棄等の監視、海洋環境保全等の取組を一斉に実施しています。平成26年度は、全国で3,672件の普及啓発活動や監視活動等が実施されました。

 また、不法投棄等の残存事案対策として、平成9年の廃棄物の処理及び清掃に関する法律の一部を改正する法律(平成9年法律第85号。以下「廃棄物処理法改正法」という。)の施行(平成10年6月17日)前の産業廃棄物の不法投棄等については、特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(平成15年法律第98号。以下「産廃特措法」という。)に基づき、平成27年度は12事案の支障除去等事業に対する財政支援を行いました。平成9年の廃棄物処理法改正法の施行以降の産業廃棄物の不法投棄等については、廃棄物処理法に基づく基金からの財政支援が実施されており、平成27年度は4事案について支障除去等事業に対する財政支援を行ったほか、平成27年4月~平成27年9月に開催された「支障除去等に対する支援に関する検討会」において、平成28年度以降の財政支援の在り方が取りまとめられました。

 一方で、産業廃棄物が適正に運搬され、処理されたことを確認するための管理票システムであるマニフェスト制度の電子化の普及に向け、電子マニフェストの普及率50%を目標とした、「電子マニフェスト普及拡大に向けたロードマップ」に基づき、研修会、操作講習会を開催したほか、スマートフォンやタブレットに対応させるためのシステム改修を実施しました。

 一般廃棄物の適正処理については、当該処理業が専ら自由競争に委ねられるべき性格のものではなく、継続性と安定性の確保が考慮されるべきとの最高裁判所判決(平成26年1月)や、市町村が処理委託した一般廃棄物に関する不適正処理事案の状況を踏まえ、平成26年10月に通知を発出し、市町村の統括的責任の所在、市町村が策定する一般廃棄物処理計画を踏まえた廃棄物処理法の適正な運用について、周知徹底を図っています。

 加えて、家庭等の不用品を無許可で回収し、不適正処理・輸出等を行う不用品回収業者、輸出業者等の対策として、自治体職員のキャパシティビルディングのため、「自治体職員向け違法な廃棄物回収業者対策セミナー」を全国8か所で開催しました。また、適正な排出方法を利用するように呼び掛けるモデル的な普及啓発事業を地方自治体と連携して実施しました。

 また、海洋ごみ(漂流・漂着・海底ごみ)問題への対策も必要です。美しく豊かな自然を保護するための海岸における良好な景観及び環境の保全に係る海岸漂着物等の処理等の推進に関する法律(平成21年法律第82号)に基づき、全国の地方自治体が実施する海洋ごみの回収・処理、発生抑制対策事業への補助金による支援を実施しました。また、海岸や沿岸、沖合海域における海洋ごみの組成や分布密度等を定量的に把握するため、モニタリングを実施しました。近年、生態系を含めた海洋環境へ与える影響が懸念されているマイクロプラスチックについても、日本海周辺や日本から南極までの海洋中において分布状況等の調査を進めました。さらに、国際的な協議の場等を通じ、関係国と海岸漂着物の削減に向けた取組について情報共有を実施しました。

 海岸漂着ごみについては、洪水、台風、海外からの漂着等により広範囲にわたり堆積し、海岸保全施設の機能を阻害することとなる海岸漂着ごみや流木等を処理する場合に、災害関連緊急大規模漂着流木等処理対策事業による支援を行うこととしています。

 船舶の航行に支障を来さないよう、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海、有明・八代海の閉鎖性海域での漂流ごみの回収を行うとともに、海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律(平成45年法律第136号。以下「海洋汚染等防止法」という。)等にのっとり、船舶の事故等により発生した浮流油について、油回収装置及び航走拡散等により油の防除を行っています。また、油及び有害液体物質の流出への対処能力強化を推進するため、資機材の整備、現場職員の訓練及び研修を実施したほか、関係機関との合同訓練を実施するなど、連携強化を図り、迅速かつ的確な対処に努めています。そのほか、2009年の船舶の安全かつ環境上適正な再生利用のための香港国際条約(仮称)(シップリサイクル条約)の早期発効に向けて、主要解体国であるインドへ条約の締結を促す取組、日本の条約締結に向けた国内法制化の検討等を行いました。

 さらに、全国において廃棄物処理法に基づく広域認定制度を活用した「FRP(繊維強化プラスチック)船リサイクルシステム」の本格運用を開始しました。また、全国ブロックごとに地方運輸局、地方整備局、都道府県等で組織する地方廃船処理協議会を開催し、不法投棄された廃FRP船対策やFRP船リサイクルの促進を図るために、情報提供及び意見交換等を実施しました。

食品廃棄物の不適正な転売事案の再発防止のための環境省の対応について

 平成28年1月、産業廃棄物処理業者によって食品関連事業者等から処分委託を受けた食品廃棄物が不正に転売され、その後食品として販売されていたことが判明しました。

 本事案は、食品廃棄物が最終処理されず不正に転売されたことにより、消費者に食品として販売され、食品に対する消費者の不安を招いた、極めて深刻な問題です。

1 政府としての対応

 本事案を受けて、政府においては平成28年2月26日に食品安全行政に関する関係府省連絡会議の申合せとして「廃棄食品の不正流通に関する今後の対策」を取りまとめました。

 申合せにおいては、まず本事案への対処について、今回問題となった事業者については厳正に対処することが重要であり、これまで国民の健康保護が最優先されるべきとの基本認識の下、地方公共団体と連携して必要な調査を行い、消費者等に対して積極的な情報公開を行うとともに、法令違反に対して適切な措置が講じられるよう対処してきましたが、今後も、引き続き本事案の全容解明に向けて迅速かつ適切に調査を行うとともに、改めて消費者等に対して分かりやすい情報提供を行うなど、本事案への対処に万全を期すこととしています。

 また、今後の対策について、これまでの調査によって明らかになった事実関係を基に課題を整理し、現時点で対応可能な対策を取りまとめました。本事案で明らかになった課題に対しては、関係行政機関及び関係事業者が連携し、食品廃棄物の処理に係る対策と、食品関係事業者による食品の適切な取扱いに係る対策の両面から、隙間なく対策を講ずることが重要です。

 今後、事案の全容が明らかになった段階で、現行の関係法令についてどのような問題があるか改めて検証を行い、必要に応じて今後の対応を検討することとしています。

2 環境省の対応

 環境省としては、まず、今回の事案で問題となった事業者に対しては、食品リサイクル法に基づく登録を平成28年3月10日付けで取り消しました。また、廃棄物処理法の権限を有する関係自治体と連携を密にして、同法に基づき厳正に対応することとしています。

 今回の事案を未然に防げなかったことを踏まえ、有識者や関係事業者の意見等や中央環境審議会循環型社会部会における審議を踏まえ、平成28年3月14日に再発防止策を取りまとめました。

 この再発防止策では、[1]電子マニフェストの機能強化、[2]廃棄物処理業者に対する監視体制の強化並びに適正処理の強化及び人材育成、[3]排出事業者による食品廃棄物の転売防止対策の強化に取り組んでいくこととしています。

(2)最終処分場の確保等

 一般廃棄物の最終処分に関しては、ごみのリサイクルや減量化を推進した上でなお残る廃棄物を適切に処分するため、最終処分場の設置又は改造、既埋立物の減容化等による一般廃棄物の最終処分場の整備を、引き続き循環型社会形成推進交付金の交付対象事業としました。また、産業廃棄物の最終処分に関しても、産業廃棄物処理施設のモデル的整備事業の補助制度により、平成27年度は、廃棄物処理センターが管理型最終処分場を整備する2事業に対して支援することで、公共関与型産業廃棄物処理施設の整備を促進し、産業廃棄物の適正な処理の確保を図りました。

 同時に海面処分場に関しては、港湾整備により発生する浚渫(しゅんせつ)土砂や内陸部での最終処分場の確保が困難な廃棄物を受け入れるために、事業の優先順位を踏まえ、東京港等で海面処分場を計画的に整備しました。海面処分場の廃止に関する情報については、廃棄物処理法並びに一般廃棄物の最終処分情報及び産業廃棄物の最終処分場に係る技術上の基準を定める省令等、現行法に基づいて整理した上で、海面処分場の廃止等の基本的な考え方としてまとめました。また、海面処分場の廃止に関する技術的な情報を広く周知することは有用であると考えられるため、技術情報集として、これを取りまとめました。

 さらに、陸上で発生する廃棄物及び船舶等から発生する廃油については、海洋投入処分が原則禁止されていることを踏まえ、海洋投入処分量の削減を図るとともに適切に廃油を受け入れる施設を確保する必要があります。「1972年の廃棄物その他の物の投棄による海洋汚染の防止に関する条約の1996年の議定書」を担保する海洋汚染等防止法において、廃棄物の海洋投入処分を原則禁止とし、平成19年4月から廃棄物の海洋投入処分に係る許可制度を導入しました。当該許可制度の適切な運用による海洋投入処分量のより一層の削減に取り組みました。また、船舶等から発生する廃油についても同様に海洋投入処分が原則禁止されていることを踏まえ、廃油処理事業を行おうとする者に対し、廃油処理事業の需要適合性、事業計画及び当該事業者の事業遂行能力等について、引き続き適正な審査を実施しました。

7 各個別法の対応

(1)廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)

ア 法の概要

 廃棄物処理法は、廃棄物の排出を抑制し、かつ、廃棄物を適正に処理(分別、保管、収集、運搬、再生、処分等)し、並びに生活環境を清潔にすることによって、生活環境の保全及び公衆衛生の向上を図ることを目的とするものです。近年では、平成22年5月の法改正において、産業廃棄物処理業の優良化の推進を目的に、優良産廃処理業者認定制度を創設しました。また、排出事業者による適正な処理を確保するため、建設工事に伴い生ずる廃棄物については、元請業者に処理責任を一元化するなどの施策を講じました。さらに、災害発生時の廃棄物処理を円滑かつ迅速に行うため、廃棄物処理法及び災害対策基本法の一部が改正(平成27年7月17日公布。同年8月6日施行)され、平時からの備えを基本方針や廃棄物処理計画に記載することなどが定められました。

 廃棄物処理法第5条の2に規定されている「廃棄物の減量その他その適正な処理に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るための基本的な方針」については、平成28年1月に変更を行い、新たな基本方針においては、平成32年度を目標年度とし、一般廃棄物については排出量を約4,000万トン、再生利用量を約1,100万トン、最終処分量を約400万トン、産業廃棄物については、排出量を約3億9,000万トン、再生利用量を約2億1,840万トン、最終処分量を約1,300万トンにするという目標をそれぞれ定めています。

 さらに、廃棄物処理法第5条の3に規定されている「廃棄物処理施設整備計画」(平成25年5月閣議決定)では、平成29年度を目標年度とし、ごみのリサイクル率を26%、一般廃棄物最終処分場の残余年数については平成24年度水準維持(約20年分)、浄化槽処理人口普及率を12%にするという目標を定めています。

イ 施行状況

 平成26年度には、一般廃棄物(災害廃棄物は除く)については、排出量が約4,432万トン、再生利用量が約913万トン、最終処分量が約430万トンとなっています。一方で、産業廃棄物については、平成25年度の排出量が約3億8,460万トン、再生利用量が約2億541万トン、最終処分量が約1,172万トンとなっています。

 平成26年度では、一般廃棄物処分場の残余年数が約20年、ごみのリサイクル率が約20.6%、ごみ減量処理率(直接焼却率+資源化等の中間処理率)が約98.7%、浄化槽処理人口普及率が約8.92%(平成25年度実績は約8.88%)となっています。

(2)資源の有効な利用の促進に関する法律(資源有効利用促進法)

ア 法の概要

 資源有効利用促進法は、資源の有効な利用の促進を図るために、製品の設計・製造段階から回収・リサイクルに至る各段階における製造業者等のリデュース、リユース、リサイクルのための義務や取組の判断の基準について定めています。

イ 施行状況

 平成27年度は、施行状況調査を実施し、指定業種、製品ごとの取組状況等を把握しました。また、この調査結果を踏まえ、有識者等からなる検討会において、今後の資源有効利用の取組の方向について検討しました。

(3)容器包装に係る分別収集及び再商品化の促進等に関する法律(容器包装リサイクル法)

ア 法の概要

 容器包装リサイクル法は、家庭から排出される一般廃棄物の重量の約2割~3割、容積で約6割を占める容器包装廃棄物について、リサイクルの促進等により、廃棄物の減量化を図るとともに、資源の有効利用を図るため、平成7年6月に制定され、平成12年4月から完全施行されています。

 一般廃棄物については、市町村が全面的に処理責任を担うという従来の考え方を基本としつつも、容器包装の利用事業者や容器の製造等事業者、消費者に一定の役割を担わせることとしました。具体的には、排出者である消費者は分別排出を行い、市町村は分別収集を行い、事業者は再商品化を行うという役割を担わせています。

イ 施行状況

 全市町村に対する分別収集実施市町村の割合は、ガラス製容器、ペットボトル、スチール製容器、アルミ製容器が前年度に引き続き9割を超えました。紙製容器包装については約4割、プラスチック製容器包装については7割を超えています。

 また、平成28年3月の中央環境審議会と産業構造審議会の第17回合同会合で容器包装リサイクル制度の施行状況の評価・検討に関する報告書(案)を取りまとめました。

(4)特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)

ア 法の概要

 家電リサイクル法は、廃棄物を減量するとともに、資源の有効な利用を推進することを目的とし、平成13年4月に本格施行しました。対象となる特定家庭用機器(エアコン、ブラウン管テレビ、液晶式・プラズマ式テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機・衣類乾燥機)を、小売業者が収集・運搬し、製造業者等が有用な部品や材料を回収して、同法で定める基準(再商品化率)以上の割合で再商品化することを規定しています。

 平成26年10月に取りまとめられた同法の報告書を踏まえ、家電リサイクル法第22条第1項に定める再商品化率の基準を改正し、平成27年度からは、エアコンが80%、ブラウン管テレビが55%、液晶式・プラズマ式テレビが74%、冷蔵庫・冷凍庫が70%、洗濯機・衣類乾燥機が82%となっています。さらに、社会全体で適正なリサイクルを推進していくため、平成27年3月に特定家庭用機器廃棄物の回収率目標(平成30年度までに特定家庭用機器の出荷台数に対する適正に回収・リサイクルされた台数の割合を56%以上とする)を基本方針に規定しました。

イ 施行状況

 平成26年度、製造業者等により引き取られた特定家庭用機器廃棄物は、前年度(1,273万台)と比べ約15%減(1,086万台)となっています。また、平成26年度の再商品化実績は、エアコンが92%、ブラウン管テレビが75%、液晶式・プラズマ式テレビが89%、冷蔵庫・冷凍庫が80%、洗濯機・衣類乾燥機が88%となっています。一方で、平成26年度の不法投棄台数は、前年度(9万2,500台)と比べ約19.4%減(7万4,600台)となっています。

(5)建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(建設リサイクル法)

ア 法の概要

 建設リサイクル法は、対象建設工事において、対象となる特定建設資材の分別解体等及び再資源化等を促進するための法律であり、平成12年5月に施行しました。同法では、対象建設工事を床面積の合計が80m2以上の建築物の解体工事等とし、対象特定建設資材をコンクリート、コンクリート及び鉄から成る建設資材、木材、アスファルト・コンクリートの4品目と定めています。また、解体工事業を営もうとする者を都道府県知事へ登録させることにより、適正な分別解体等を推進しています。

イ 施行状況

 「建設リサイクル推進計画2014」に位置付けた新たに取り組むべき重点施策である、「地域固有の課題解決の促進」等について取組を進めています。

(6)食品循環資源の再生利用等の促進に関する法律(食品リサイクル法)

ア 法の概要

 食品リサイクル法は、食品循環資源の再生利用並びに食品廃棄物等の発生抑制及び減量に関する基本的事項を定めるとともに、登録再生利用事業者制度等の食品循環資源の再生利用を促進するための措置を講ずることにより、食品に係る資源の有効利用及び食品廃棄物の排出抑制を図ることなどを目的として、平成12年に制定され、平成13年5月1日に施行されました。

 食品関連事業者による再生利用等の実施率に関して、平成31年度までに食品製造業にあっては全体で95%、食品卸売業にあっては全体で70%、食品小売業にあっては全体で55%、外食産業にあっては全体で50%に向上させることとする新たな目標を平成27年7月に公表しました。また、食品廃棄物等の発生抑制の目標値に関しては、平成27年8月から5業種について目標値を追加し、合わせて食品関連75業種のうち31業種の目標値を設定しました。

イ 施行状況

 平成19年6月の食品リサイクル法改正により措置された、食品リサイクルループの構築を要件とする新たな再生利用事業計画については、平成27年10月現在、52件が認定されています。

 平成25年度の再生利用実施率は食品産業全体では85%となっていますが、業態別では、食品製造業が95%、食品卸売業が58%、食品小売業が45%、外食産業が25%と格差が見られます。

 また、平成26年9月に環境大臣から中央環境審議会に、同年10月に農林水産大臣から食料・農業・農村政策審議会に諮問した「食品循環資源の再生利用等の促進に関する基本方針の策定等について」の審議が食料・農業・農村政策審議会及び中央環境審議会の合同会合において行われ、それぞれ平成27年3月及び4月に答申がなされました。上記答申を踏まえ、新たな食品リサイクル法基本方針を含めた食品リサイクル法関連省令及び告示を平成27年7月に公布しました。

(7)使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)

ア 法の概要

 自動車リサイクル法は、自動車製造業者等及び関連事業者による使用済自動車の引取り及び引渡し、並びに再資源化等を適正かつ円滑に実施するための措置を講ずることにより、使用済自動車に係る廃棄物の減量並びに再生資源及び再生部品の十分な利用等を通じて、使用済自動車に係る廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保等を図り、もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的として、平成17年1月に施行されました。自動車リサイクル法第25条第2項に基づく再資源化を実施すべき量に関する基準(目標値)は、自動車破砕残渣(さ)については平成22年度~平成26年度は50%、平成27年度以降の各年度は70%、エアバッグ類については85%と定められています。

イ 施行状況

 自動車リサイクル制度が着実に機能するよう行った、施行状況の確認結果は以下のとおりです。平成26年度の自動車破砕残渣(さ)及びエアバッグ類の再資源化率は、それぞれ96.8%~98.1%及び94%~95%と、引き続き自動車リサイクル法に基づく目標を大幅に超過して達成しています。また、平成26年度の使用済自動車の不法投棄・不適正保管の件数は7,116台(不法投棄1,924台、不適正保管5,192台)で、前年度からは横ばいとなりましたが、法施行時と比較すると97.8%減少しています。そのほか、平成26年度末におけるリサイクル料金預託状況及び使用済自動車の引取については、預託台数が7,843万3,659台、預託金残高が8,408億9,787万5,000円、また使用済自動車の引取台数は343万台となっています。さらに、平成26年度における離島対策支援事業の支援実績支援自治体数は87、支援金額は9,378万2,000円となっています。

 また、平成26年8月には、産業構造審議会・中央環境審議会の合同会合において、自動車リサイクル法の評価・検討を開始し平成27年9月に報告書が取りまとめられました。同報告書の中では、環境配慮設計の推進や再生資源の活用拡大といった自動車における3Rの推進・質の向上や、不法投棄・不適正処理への対応の強化等を始めとした安定的かつ効率的な自動車リサイクル制度への発展に向けた取組の実施・検討を進めることが提案されました。

(8)使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法)

ア 法の概要

 小型家電リサイクル法は、使用済小型電子機器等の再資源化を促進するための措置を講ずることにより、廃棄物の適正な処理及び資源の有効な利用の確保を図るため、使用済小型電子機器等の再資源化を行おうとする者が、再事業化事業計画を作成し主務大臣の認定を受けることで廃棄物処理業の許可を不要とし、使用済小型電子機器等の再資源化を促進するものです。

 小型家電リサイクル法の基本方針では、回収され再資源化を実施する量の目標を、平成27年度までに一年当たり14万トン、一人一年当たりに換算すると約1kgとしています。

イ 施行状況

 市町村の取組状況については、平成27年度に環境省が実施した市町村アンケートで1,073市町村(全市町村の約62%)が「実施中」と回答しました(平成27年4月1日時点)。また、環境省で市町村における小型家電の回収体制の構築を支援することなどを目的に、平成24年度から実施している「使用済小型電気電子機器リサイクルシステム構築実証事業」について、平成27年度までに500近い市町村が参加しました。

 また、環境イベント等を通じて、小型家電リサイクル制度の周知を図るとともにパンフレットを各方面に配布しました。なお、平成28年3月末時点で、47件の再資源化事業計画が小型家電リサイクル法に基づき認定されています。

(9)国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律(グリーン購入法)

ア 法の概要

 循環型社会の形成に向けては、再生品等の供給面の取組に加え、需要面からの取組が重要との観点から、平成12年5月に循環型社会形成推進基本法(平成12年法律第110号)の個別法の一つとしてグリーン購入法を制定し、平成13年4月より完全施行しました。

 グリーン購入法は、国等及び地方公共団体による環境物品等の調達の推進、環境物品等に関する情報の提供、そのほか環境物品等への需要の転換を促進するために必要な項目を定めることにより、環境への負荷の少ない持続的発展が可能な社会の構築を図ることを目的としています。

 我が国は、国等における環境物品等の調達を総合的かつ計画的に推進するため、環境物品等の調達の推進に関する基本方針を定め、各省庁等はこの基本方針に即して、毎年度、環境物品等の調達の推進を図るための方針を作成し、予算の適正な使用に留意しつつ、環境物品等を選択するよう努めなければならないとされています。同様に、地方公共団体等も環境物品等の調達の推進を図るための方針を作成し、環境物品等への需要の転換を図るための措置を講ずるよう努めるものとされています。さらに、環境物品等の提供者は、環境物品等に関する情報提供に努め、国はその情報について、整理及び分析を行い、その結果を提供することとされています。

イ 施行状況

 環境物品等の調達の推進に関する基本方針に定められる特定調達品目及びその判断の基準等については、その開発・普及の状況、科学的知見の充実等に応じて適宜見直しすることとしており、平成27年度も有識者等による検討会を開催し、必要な見直しを行いました。また、国等の各機関は、同基本方針に即して、平成27年度の環境物品等の調達の推進を図るための方針の作成及び公表を行い、これに従って調達を実施しました。そして、地方公共団体に対しては、グリーン購入の取組状況を把握するためのアンケート調査を行うとともに、地方公共団体にグリーン購入の知識を有する人材派遣を行うモデル事業を実施しました。

(10)ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(PCB特措法)

ア 法の概要

 昭和43年に発生したカネミ油症事件によりPCBの人体に対する毒性が明らかとなり、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律(昭和48年法律第117号)が昭和48年10月に制定され、その製造・輸入等が禁止となりました。しかし、PCB廃棄物については、処理施設建設候補地の地方公共団体や周辺住民の理解が得られないなどの理由で処理体制の構築がされず、長期にわたり事業者による保管が続いてきました。

 また、2001年(平成13年)5月に採択された残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(以下「POPs条約」という。)では、PCBの2025年(平成37年)までの使用の全廃、2028年(平成40年)までのPCB廃棄物の適正な管理が定められています。このような状況の中、PCBによる環境汚染を防止し、将来にわたって国民の健康を保護し、生活環境の保全を図るため、平成13年6月にポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正な処理の推進に関する特別措置法(平成13年法律第65号。以下「PCB特措法」という。)の制定等が行われました。

 これにより、国はJESCOを活用した全国5か所のPCB処理事業所の整備の推進、都道府県と連携して、費用負担能力の小さい中小企業等によるPCB処理への助成等を行う基金「PCB廃棄物処理基金」の創設等、PCB廃棄物の処理体制の構築に向けた施策を実施することとなりました。保管事業者は法施行当初、平成28年7月までにPCB廃棄物の処理を行うことが義務付けられましたが、PCB特措法施行後に微量PCB汚染廃電気機器等の存在が明らかになるなど、当初設定された期間内の処理完了が困難な状況となったことから、平成24年12月に、処分の期間が平成39年3月31日まで延長されました。

 また、PCB廃棄物処理基本計画の変更から一年が経過したことを踏まえ、平成27年7月にPCB廃棄物適正処理推進に関する検討委員会において同基本計画変更後の取組状況についてフォローアップを行ったところ、これまでの進捗状況に鑑みれば、処理期限内の処理完了は決して容易ではないとされたことから、安全かつ確実に一日でも早く処理期限内に処理を完了するための追加的方策について検討し、平成28年2月に報告書「PCB廃棄物の期限内処理の早期達成に向けた追加的方策について~確実な処理完了を見据えて~」を取りまとめました。これを踏まえ、「ポリ塩化ビフェニル廃棄物の適正処理の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」が平成28年3月に閣議決定されました。

イ 施行状況

 平成26年6月にPCB特措法に基づき、環境大臣が定めるPCB廃棄物処理基本計画を変更し、JESCOによる処理体制等を変更しました。この同基本計画の変更により、高濃度PCB廃棄物はJESCOを活用し、全国5か所のPCB処理事業所において一日でも早く処理を行うこととなりました。また、都道府県と連携し「PCB廃棄物処理基金」の造成を行いました。

 なお、微量PCB汚染廃電気機器等の無害化処理認定施設については、平成28年3月末までに30事業者が認定され、それぞれで処理が進められています。

 そのほか、我が国の高濃度PCB廃棄物処理体制、PCB廃棄物に関するこれまでの経緯等については、第1部パート3第4章第1節第2節1~3及び第4節2を参照。

(11)特定産業廃棄物に起因する支障の除去等に関する特別措置法(産廃特措法)

ア 法の概要

 産廃特措法は、平成9年の廃棄物処理法改正法の施行(平成10年6月17日)前に行われた、産業廃棄物の不法投棄等に起因する生活環境保全上の支障の除去等を計画的かつ着実に推進するため、都道府県等が実施する特定支障除去等事業に関する特別の措置を講じ、もって、国民の健康の保護及び生活環境の保全を図ることを目的とし、10年間の時限法として平成15年6月に施行されました。その後、同法の有効期限は、平成24年8月の改正により、平成35年3月31日まで延長されています。

イ 施行状況

 平成27年度については、産廃特措法の規定により環境大臣が同意した計画に基づき実施される特定支障除去等事業として、香川県豊島事案等12事案について、同法に基づく財政支援を行いました。

8 環境教育等の推進と的確な情報共有・普及啓発

(1)環境教育等の推進

 環境教育等による環境保全の取組の促進に関する法律(平成15年法律第130号。以下「環境教育等促進法」という。)に基づき、環境教育のための人材認定等事業の登録制度(環境教育等促進法第11条第1項)、環境教育等支援団体の指定制度(同法第10条の2第1項)、体験の機会の場の認定制度(同法第20条)の運用等を通じ、環境教育等の指導者等の育成や体験学習の場の確保等に努め、ウェブサイト「環境教育・環境学習・環境保全活動のホームページ」(https://edu.env.go.jp/system.html(別ウィンドウ))等を通じて、広く情報提供を行いました。

 また、環境教育等の実践の中に「持続可能な開発のための教育(ESD)」の視点を取り入れるための支援として、小・中学校向けの環境教育プログラムを作成するとともに、教員を始めとする環境教育等の指導者等に対する研修を開催しました。

 このほか、学校以外の場でも、ESDの視点を取り入れた環境保全活動に取り組む団体や活動等のネットワーク化を充実させるため、「+ESDプロジェクト」(https://www.p-esd.go.jp/(別ウィンドウ))、「エコ学習ライブラリー」(https://www.eeel.go.jp/news/(別ウィンドウ))といったウェブサイトにより、広く情報提供を行いました。

 また、文部科学省や関係団体と連携して、ESD活動に取り組む様々な主体が参画・連携する地域活動の拠点を形成し、地域が必要とする取組支援や情報・経験を共有できる「ESD活動支援センター」を開設しました。

 さらに、企業に対する取組として、大学、企業、NPO・NGO、国際機関等による産学官民連携プラットフォーム「環境人材育成コンソーシアム」と連携し、主に中小企業を対象としたモデル教育プログラムの開発、企業の自発的な取組を促進するためのセミナーの実施、社員向けに優良な環境教育等を行う企業の表彰(環境 人づくり企業大賞)を行いました。

 環境教育に関する優れた実践を促し、その成果の全国への普及を図るため、平成25年・26年度の環境のための地球規模の学習及び観測プログラム(GLOBE)協力校として、全国16校を指定しました(第10期目)。また、環境を考慮した学校施設(エコスクール)の整備推進に関するパイロット・モデル事業のモデル校として、平成27年度は47校を認定しました。その結果、平成27年度までの認定実績は計1,611件となりました。さらに、平成26年度には、公民館等を中心として、地域の社会教育関係団体等が連携して地域の課題を解決する取組を支援している「社会教育活性化支援プログラム」において、環境保全に関係するものとして、3件の取組を採択しました。平成27年度は、本プログラムの成果に関する情報提供を行い、引き続き公民館等の社会教育施設における自主的な取組を促進しました。

 森林に関しては、学校教育における森林の活用に関する情報交換を推進するとともに、森林環境教育の活動に対する支援を行いました。また、学校等が森林体験活動を実施するために、国有林のフィールドを提供する「遊々の森」の協定締結を推進するとともに、学校等と連携した森林教室等を実施しました。

 さらに、「木育」として、木のおもちゃでの遊びを通じて、木への親しみや木の文化への理解を深めるような木材や木製品との触れ合いの場づくり、木材の良さや利用の意義を学ぶ木育プログラムの開発を図りました。

 「国連持続可能な開発のための教育(ESD)の10年」後の取組については、第6章第5節6を参照。

(2)3Rに関する情報共有と普及啓発

 国民の3Rに関する高い意識を具体的な行動につなげ、3R型ライフスタイルへの変革を促すためには、3Rをめぐる国内外の最新の状況や行動の根拠となる情報を国民全体で共有し、3Rの行動の意義と効果が十分に理解される必要があります。

 これに向けて、第三次循環基本計画で循環型社会形成に向けた状況把握のための指標として設定された、物質フロー指標及び取組指標について、平成25年度のデータを取りまとめました。また、各指標の増減要因についても検討を行いました。

 個々の取組については、多様な媒体や場を用いて情報発信を行っています。インターネットを利用する若い世代に対しては、恒常的に周知徹底を図るため、ウェブサイト「Re-Style」(http://www.re-style.env.go.jp(別ウィンドウ))を運営し、循環型社会の形成に関する最新データやレポート等の掲載、第三次循環基本計画の周知及び循環型社会に向けた多様な活動等の情報発信を行い、国民、民間団体及び事業者等における活動の促進を図りました。また、ソーシャルネットワークサービス(Facebook)を活用した、更なる情報発信の効率化を行いました。

 また、3Rに関する法制度やその動向をまとめた冊子「資源循環ハンドブック2015」を5,000部作成し、関係機関に配布したほか、3Rに関する環境教育に活用するなど、一般の求めに応じて配布を行いました。同時に、3R政策に関するウェブサイト(http://www.meti.go.jp/policy/recycle/(別ウィンドウ))において、取組事例や関係法令の紹介、各種調査報告書の提供を行うとともに、普及啓発用DVDの貸出等を実施しました。

 同時に、国土交通省、地方公共団体、関係業界団体により構成される建設リサイクル広報推進会議は、建設リサイクルの推進に有用な技術情報等の周知・伝達、技術開発の促進、一般社会に向けた建設リサイクル活動のPRを目的として、建設リサイクル技術発表会・技術展示会を毎年実施しており、平成27年度は宮城県で開催しました。

 さらに、各主体間のネットワークを構築し、循環型社会の形成を着実に推進するための情報の集積、交換、提供等を目指して、地球環境パートナーシッププラザ(GEOC)において、パートナーシップの促進、NGO支援、環境情報の提供・普及を実施しました。同時に、ウェブサイト(http://www.geoc.jp/(別ウィンドウ))や、メールマガジン、情報誌等も効果的に活用しています。また、地方環境パートナーシップオフィス(EPO)の設置や、NPO等との協働での事業を実施したほか、環境教育等促進法に基づく協働取組の加速化事業を国内各地で実施しました。

 一方で、我が国は、関係府省(財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、消費者庁)の連携の下、国民に対し3R推進に対する理解と協力を求めるため、毎年10月を「3R推進月間」と定めており、平成27年度も引き続き広く国民に向けて普及啓発活動を実施しました。

 3R推進月間には、様々な表彰を行っています。3Rの推進に貢献している個人、グループ、学校及び特に貢献の認められる事業所等を表彰する「リデュース・リユース・リサイクル推進功労者等表彰(以下「3R表彰」という。)」(主催:リデュース・リユース・リサイクル推進協議会)の開催を引き続き後援しました。経済産業省は、リサイクル製品の製造や、生産活動における3Rの取組として1件の経済産業大臣賞を贈りました。国土交通省は、建設工事で顕著な実績を挙げている3Rの取組10件に対して国土交通大臣賞を贈りました。文部科学省は、学校等の教育分野における3Rの優れた取組1件に対して文部科学大臣賞を贈りました。そのほか、製薬企業の事業所等に対しても、平成4年度以降、内閣総理大臣賞1件、厚生労働省大臣賞19件、3R推進協議会会長賞20件が公布されており、製薬業界においても確実に3Rの取組が定着しています。

 また、循環型社会の形成の推進に資することを目的として、平成18年度から循環型社会形成推進功労者表彰を実施しています。平成27年度の受賞者数は、2個人、5団体、14企業の計21件であり、「第10回3R推進全国大会」式典において、表彰式が行われました。さらに、新たな資源循環ビジネスの創出を支援している「資源循環技術・システム表彰」(主催:一般社団法人産業環境管理協会、後援:経済産業省)においては、経済産業大臣賞2件を表彰しました。これらに加えて、農林水産省は、3R表彰及び「食品産業もったいない大賞」を通じ、農林水産業・食品関連産業における3R活動、地球温暖化・省エネルギー対策等の意識啓発に取り組みました。

 各種表彰以外にも、3R推進ポスター展示、リサイクルプラント見学会や関係機関の実施するイベント等のPRを3R推進月間中に行いました。同期間内には、3R活動推進フォーラムと共同で「環境にやさしい買い物キャンペーン」も実施し、都道府県や流通事業者・小売事業者の協力を得て、環境に配慮した商品の購入、マイバッグ持参等、3R行動の実践を呼び掛けました。

 そのほかにも、平成27年11月には「第10回3R推進全国大会」を福井県及び3R活動推進フォーラムと共催し、イベントを通じて3R施策の普及啓発を行いました。同大会式典で環境大臣表彰を行う、3R促進ポスターコンクールには、全国の小・中学生から約1万点の応募があり、環境教育活動の促進にも貢献しました。また、循環型社会の形成を推進した優れた取組の環境大臣表彰、我が国の3R制度・技術・経験の変遷についての調査研究を実施するとともに、これら3Rに関する情報を各取組のウェブサイトやメールニュース等により、全国に提供しました。

 個別分野の取組として、容器包装リサイクルに関しては、改訂後の普及啓発資料の増刷や、国の施策や取組等に係る研修を行い、容器包装廃棄物排出抑制推進員(3Rマイスター)の活動を支援しました。