環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成28年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第2部>第3章 循環型社会の形成>第1節 循環型社会の形成に向けて

第3章 循環型社会の形成

第1節 循環型社会の形成に向けて

1 循環型社会形成に向けた現状と課題

 経済成長と人口増加に伴い、世界における廃棄物の発生量は増大しています。平成23年に発行された「世界の廃棄物発生量の推計と将来予測2011改訂版」(株式会社廃棄物工学研究所)によると、2050年(平成62年)には、世界の廃棄物発生量が2010年(平成22年)の2倍以上となる見通しとされています。

 このような状況の中、我が国における国民の3Rに関する意識は総じて低下の傾向にありました(表3-1-1)。しかし、その一方で具体的な3R行動の実施率は、従来から大きな変化は見られませんでした(表3-1-2)。これらの結果を踏まえ、問題意識が実際の3Rに結び付くような社会システムの在り方、とりわけ2R の取組に関して、検討を行う必要があります。また、循環資源を原材料として用いた製品の需要拡大を目指した消費者への普及啓発や、2R取組実施事業者に対するインセンティブを喚起するための取組を進めることも重要です。


表3-1-1 3R全般に関する意識の変化

表3-1-2 3Rに関する主要な具体的行動例の変化

 個別リサイクル法に関して現状を見てみると、その大部分が目標を達成していました。今後も、法又はその目標等の見直しを踏まえ、循環型社会形成推進の観点を念頭に置いた取組を推進していくことが重要となります。特に使用済小型家電のリサイクルについては、順調に市町村や認定事業者等による取組が進んでいますが、回収量の増大や効率的・効果的なリサイクルシステムの構築に向けて、現在の取組を更に強化していく必要があります。

 産業廃棄物の最終処分量は、平成12年度から平成25年度の間で約74%減少しています。一方で、事業系ごみ排出量は、平成25年度において平成12年度比で約27%削減されていますが、近年の事業系ごみ排出量の推移は横ばいとなっています。

 このような産業廃棄物や事業系ごみ排出量の推移における現況を踏まえ、事業者における更なる自主的取組の深化に向けて、我が国は2Rの取組を進めるとともに、業種に応じて、製品アセスメントや環境配慮設計、資源生産性等の考え方に基づいて取組の方向性や方針、目安を定めることなどを検討する必要があります。また、製造事業者やリサイクル業者間で、有用金属等の含有情報を共有化するための取組を進めることも必要です。さらに、リサイクル原料についても、新規用途への利用促進、地域間での需給調整、有害物質の混入状況に関する基準の策定等の取組や、適正処理困難物の処理体制を構築することについて検討する必要があります。

 これらの検討が必要な事項に加え、資源循環だけでなく、同時に生物多様性や自然環境保全に配慮した統合的取組を進めることや、地域の主体性を尊重しつつ、地域の特性や循環資源の性質に応じた最適な規模の循環を形成するという、地域循環圏の考え方を浸透させるとともに、地域循環圏づくりに向けた体制整備等を進めることも重要です。

 循環資源の輸出入に関しては、不適正な輸出入を防止することを前提とした上で、途上国では適正処理が困難なものの我が国では処理可能な国外廃棄物を受け入れ、有効活用等を図ると同時に、国内での利用量に限界がある一方で他国において需要がある循環資源の輸出円滑化を図ることが求められます。このため、国際的な廃棄物管理の取組に関する情報収集や連携の更なる促進、国際的な資源循環に関する研究、円滑な資源輸送に必要な港湾施設の整備及び受入体制の確保に関して、それぞれ取組を進める必要があります。

 加えて、近年、世界的な資源制約の顕在化、自然災害の頻発化・激甚化等、廃棄物処理・リサイクルを取り巻く状況は大きく変化しており、循環型社会の形成に向けて絶えず取り組んでいくためには、災害により生じた廃棄物についても、適正な処理を確保し、かつ、可能な限り分別、再生利用等による減量を図った上で、円滑かつ迅速な処理を確保することを基本として、備えを平時から進める必要があります。

2 資源循環と低炭素の統合的取組

 我が国における循環型社会とは、「天然資源の消費の抑制を図り、もって環境負荷の低減を図る」社会です。そして、この「天然資源」という言葉が指す資源という言葉には、化石燃料も当然含まれています。循環型社会の形成において、「天然資源の消費の抑制を図る」ことは、低炭素社会の実現にもつながります。

 続いて、温室効果ガスに関するデータからこれら二つの社会の関係性を見てみます。直近のデータによれば、平成25年度の廃棄物由来の温室効果ガスの排出量は、約3,705万トンCO2(平成12年度約4,500万トンCO2)であり、平成12年度の排出量と比較すると、約18%の減少が見られました。その一方で、平成25年度の廃棄物部門以外で削減された温室効果ガス排出量は、約1,863万トンCO2(平成12年度約855万トンCO2)となっており、廃棄物として排出されたものを原燃料への再資源化や廃棄物発電等に活用したことで、平成12年度と比べて約2.2倍と着実に削減が進んでいることが分かりました。このように、3Rの推進が循環型社会形成と低炭素社会構築の統合的推進に貢献していることが分かります。

 第三次循環型社会形成推進基本計画(以下「第三次循環基本計画」という。)では、2030年(平成42年)頃までに、各地域のバイオマス系循環資源のエネルギー利用等により自立・分散型エネルギーによる地域づくりを進めるとともに、廃棄物焼却施設等が熱や電気等のエネルギー供給センターとしての役割を果たすようになることで、化石燃料など枯渇性資源の使用量を最小化する循環型社会の形成を目指すこととしています。その観点から3Rの取組を進めながら、なお残る廃棄物等について廃棄物発電の導入等による熱回収を徹底し、廃棄物部門由来の温室効果ガスの一層の削減とエネルギー供給の拡充を図る必要があります。

 3Rの取組が温室効果ガスの排出削減につながる例としては、金属資源等を積極的にリサイクルした場合を挙げることができます。例えば、アルミ缶を製造するに当たっては、バージン原料を用いた場合に比べ、リサイクル原料を使った方が製造に要するエネルギーを大幅に節約できることが分かっています。同様に、鉄くずや銅くず、アルミニウムくず等をリサイクルすることによっても、バージン材料を使った場合に比べて温室効果ガスの排出削減が図られるという結果が、環境省の調査によって示されました。これらのことから、リサイクル原料の使用に加え、リデュースやリユースといった、3Rの取組を進めることによって、原材料等の使用が抑制され、結果として温室効果ガスの更なる排出削減に貢献することが期待できます。ただし、こうしたマテリアルリサイクルやリデュース・リユースによる温室効果ガス排出削減効果については、引き続き調査が必要であるともされており、これらの取組を一層進める一方で、継続的に調査を実施し、資源循環と社会の低炭素化における取組について、より高度な統合を図っていくことが必要です。また、今後、大量に導入されることが予想される太陽光パネルや風力発電、蓄電池等の再生可能エネルギーに関連する製品・設備については、使用済みになった後のリユース・リサイクルや適正処分が問題となる可能性があり、これらについて引き続き注視していく必要があります。

3 欧州における資源効率性

 我が国では、循環型社会を形成することを目指して、関連施策を総合的かつ計画的に推進してきましたが、同様に他国においても類似の取組が進められています。

 例えば、欧州連合(EU)では、環境へのインパクトを最小化し、持続可能な形で地球上の限られた資源を利用し、より少ない資源投入で、より大きな価値を生み出すことを意味する「資源効率」をコンセプトに各種施策が進められています。これに関連して、EUでは2011年(平成23年)に策定された「資源効率的なヨーロッパに向けたロードマップ(Roadmap to a Resource Efficient Europe)」を、さらに2014年(平成26年)には「循環経済に向けて(Towards a circular economy)」という政策文書を策定し、これらをEUの資源効率等に関する施策の方針として示しています。

 「資源効率的なヨーロッパに向けたロードマップ」は、EUの資源効率に関する今後の活動のデザインと実施の枠組みについて定めたもので、2020年(平成32年)時点での目標を含む、2050年(平成62年)までの構造的かつ技術的な変革のアウトラインを示すものです。EUは、ここで示されたアウトラインに従い、2050年(平成62年)までに経済を持続可能なものとし、資源生産性を向上させ、資源の利用及び環境への影響と、経済成長との連動をデカップル(decouple)させることを目的としています。また、本ロードマップ全体のビジョンとして、2050年(平成62年)までに、EUの経済は資源制約を考慮し、世界経済の変革に貢献しながら成長していることなどを目指すとしており、それらに向けて、2020年(平成32年)までの取組の定義や、資源効率の進捗を評価するための資源効率指標群についての提案がなされています。

 この提案を踏まえ、2015年(平成27年)12月に欧州委員会から、「EU新循環経済政策パッケージ(Closing the loop - An EU action plan for the Circular Economy)」が公表され、欧州における今後の政策プラン及び欧州指令の改正が提案されました(詳細については第1部パート3第3章第1節2を参照)。

 この流れを受けて、2015年(平成27年)9月~11月には、議長国であるドイツの主催で、国際機関との連携、産業共生及び革新的な生物由来製品に関する三つのワークショップが開催されました。国際機関との連携に関するワークショップでは、ビジネス界、労働界、学術界のG7代表者による資源効率性に関するプレゼンテーションを行ったほか、産業共生に関するワークショップでは、産業共生の課題と今後の発展等について、経済・国際・政治など多様な視点から発表と議論を行いました。また、革新的な生物由来製品に関するワークショップでは、G7各国におけるアプローチや、持続可能で革新的な製品例の紹介、建築分野における取組、更にバイオマス生産や生物由来製品の国際貿易に関連して発表と議論が行われました。2016年(平成28年)2月には、G7議長国である我が国により、国際協力に関するワークショップを開催し、持続可能な開発目標(SDGs)や資源に係る問題における途上国の重要性や、G7の取組の成果をいかに途上国に波及させるべきか、という議論を行いました。

 我が国は、このような国際的な動向も踏まえながら、循環型社会の形成に関する政策課題を克服するための有効かつ効果的な取組をより一層検討し、資源効率性に関する国際的議論において、リーダーシップをとっていく必要があります。