環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書状況第1部>第2章 東日本大震災及び原子力発電所における事故への対応>第1節 東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理

第2章 東日本大震災及び原子力発電所における事故への対応

 平成23年3月11日14時46分、三陸沖(北緯38.1度、東経142.9度)を震源とするマグニチュード9.0の巨大地震が発生しました。この地震により東北地方、関東地方を中心に強い揺れを観測、さらに、太平洋沿岸を中心に高い津波を観測し、地震及び津波による被害は甚大な規模となりました。

 死者15,858名、行方不明者3,021名、負傷者6,080名(平成24年5月9日現在)の人的被害が発生し、全壊129,855戸、半壊257,739戸の建築物被害が発生しました。震災に伴う被害推計額は約16兆9000億円にものぼり、建築物、農林水産等の産業基盤、社会基盤、その他のライフライン等、被災地域の社会経済のあらゆる分野に甚大な被害をもたらしました。

 震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所において発生した重大な事故によって、大量の放射性物質が環境中に放出されました。これまで、原子力発電は、経済成長を支えるエネルギー源として導入が進められ、また、温暖化対策に資する二酸化炭素を排出しない電源としても期待されてきました。今回の事故によって、原子力発電所がシビアアクシデントの際にもたらす甚大な環境リスクの側面がクローズアップされ、放射性物質による環境汚染は最大の環境問題となることが明らかとなりました。

 発災以降、政府の対応として、震災からの復旧・復興、東京電力福島第一原子力発電所におけるシビアアクシデントへの対応及び電力需給逼迫への対応等、さまざまな取組がなされています。これらに要する政府予算は、平成23年度第1次補正予算で4兆153億円、第2次補正で1兆9,988億円、第3次補正で11兆7,335億円となっています。平成24年度当初予算としては、東日本大震災復興特別会計の予算として3.3兆円が計上され、これらの予算のうち、災害廃棄物の迅速な処理等に要する費用として3,669億円が計上されています。また、環境省分として除染や汚染廃棄物処理等に要する経費が約4,574億円計上されています。


表2-1-1 東日本大震災の被害状況

 この章では、第1節から3節では東日本大震災からの復旧に向けた政府の対応について、第4節及び5節では同原子力発電所の事故に伴って発災から平成24年5月中旬までの主な政府の取組を概観するとともに、環境中に放出された放射性物質による汚染の状況と汚染の除去に関する取組及び原子力発電所事故を踏まえた原子力規制行政の転換について概観します。

第1節 東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理

 東日本大震災に伴う大規模な津波は甚大な被害をもたらし、東北の沿岸部では膨大な量の災害廃棄物が発生しています。震災からの復旧復興は、この災害廃棄物の迅速な処理が大前提となります。

 環境省では、発災以降、災害廃棄物の迅速な処理のために、「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)」等の基本的な方針を示すほか、財政的な支援や職員や専門家の派遣等を通じた必要な助言の提供を行い、地方公共団体や関係団体との協力の下、災害廃棄物の処理を推進してきました。

 また、被災地方公共団体における災害廃棄物の円滑かつ迅速な処理に必要な人員の確保のため、全国の都道府県市町村から被災市町村等へ職員が派遣されているところであり、現在においても被災地方公共団体へ職員の派遣が継続しています。

 これまでのところ、居住地近傍にある災害廃棄物の一次仮置場への搬入は福島県内の警戒区域を除くすべての地域で平成23年8月末までに完了しました。また、その他の災害廃棄物を平成24年3月末までを目途に仮置場へ移動するという目標については、おおむね達成しました。なお、一部市町村においては、要解体家屋が多い等の理由により、別途目標を立てていますが、遅くとも平成25年3月末までに仮置場への搬入を終えることとしています。

 さらに、平成26年3月を目途に仮置場に搬入された廃棄物の再生利用、焼却や最終処分を完了させることを目標としていますが、被災地での処理能力が不足しており、他の都道府県における処理(広域処理)を進めることが必要となっています。

 以下では、災害廃棄物の処理について、処理体制の概要、仮置場への搬入状況、収集された廃棄物の焼却・再生利用や最終処分の状況、広域処理の具体的な事例を概観します。


写真2-1-1 仮置場における災害廃棄物

1 災害廃棄物処理に係る指針等の整備について

 今回の大震災により発生した膨大な量の災害廃棄物を円滑かつ迅速に処理するため、環境省では、地震発生後直ちに情報収集・連絡体制を確立し、本省職員を特に被害の大きかった岩手県、宮城県、福島県に派遣するとともに、環境省内に「災害廃棄物対策特別本部」を設置し、膨大な災害廃棄物を処理するための広域的な協力体制を構築すべく、地方公共団体や関係団体との調整等を実施しています。また、平成23年5月から、被災地の現状・問題点の把握や必要な助言を行うため、環境省職員、研究者及び技術者で構成するチームによる巡回訪問が行われています。

 岩手県、宮城県及び福島県においては、災害廃棄物の処理体制を構築し、現場の状況に応じた迅速かつ円滑な処理方策を検討する場として、県、関係市町村、国等の関係機関により構成される災害廃棄物処理対策協議会を設置し、災害廃棄物の処理に向けた具体的な協議を行っています。

 また、災害廃棄物の処理のために、「東北地方太平洋沖地震における損壊家屋等の撤去等に関する指針」、「損壊家屋等の処理の進め方指針(骨子案)」、「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)」等を発出して、関係団体との協力の下、災害廃棄物の処理を推進してきました。

 被災各地における災害廃棄物については、[1]災害廃棄物に係る仮置場及び最終処分場の早急な確保のための広域的協力の要請等、[2]再生利用の推進等、[3]災害廃棄物処理に係る契約の内容に関する統一的指針の策定等、[4]アスベストによる健康被害の防止等、[5]海に流出した災害廃棄物の処理指針の策定とその早期処理等、[6]津波堆積物等の災害廃棄物に係る感染症・悪臭の発生の予防・防止等、災害廃棄物処理特別措置法に規定される国が講ずべき措置を大きな柱にして取組が進められてきています。

 災害廃棄物を市町村が処理する際に要する費用については、従来から廃棄物処理法に基づく災害等廃棄物処理事業費国庫補助金により、処理を実施した市町村に対しその費用の2分の1を補助していますが、今般の大震災により発生した災害廃棄物の処理費用については、東日本大震災に対処するための特別の財政援助及び助成に関する法律(平成23年法律第40号)において国庫補助率のかさ上げを行うとともに、東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法(平成23年法律第99号)に基づき、グリーンニューディール基金を通じた支援により国の実質負担額が平均95%となるよう措置を講じました。残る地方負担分についても、全額を震災復興特別交付税により措置することとしており、市町村負担が実質的に生じないよう措置を講じました。

2 災害廃棄物処理のスケジュール

 平成23年3月11日の東日本大震災による災害廃棄物は、被災三県の沿岸市町村において、約1,880万トン発生しており、岩手県で約530万トン、宮城県で約1,150万トン、福島県で約200万トンとなっており、それぞれ通常の一般廃棄物の排出量の12年分、14年分、3年分と膨大な量となっています。

 平成23年11月29日には、同年8月26日にとりまとめた復興施策に関する事業計画及び工程表について見直しを行い、以下3つの目標を立てて処理を推進しています(図2-1-1)。第1の目標は、現在住民が生活している場所の近くの災害廃棄物を平成23年8月末までに仮置場へおおむね移動させることであり、この目標は、福島県内の警戒区域を除くすべての沿岸市町村において達成しました。第2の目標は、災害廃棄物を原則として平成24年3月末までに仮置場へ移動させることとし、これは、福島県内の警戒区域を除く市町村においておおむね達成しました。また宮城県石巻市のように、家屋等の解体量が特に多い等の事情を有する自治体については、個別に目標を定め、遅くとも平成25年3月末までに仮置場への移動を完了させることとしています。


図2-1-1 災害廃棄物の処理に向けた工程表

 第3の目標は、震災から3年後の平成26年3月末までに災害廃棄物の処理を終えることであり、岩手県及び宮城県では、ブロック単位での処理委託契約や仮設焼却炉の設置などが進められています。平成24年5月現在で、被災三県の沿岸市町村の合計で約291万トン(災害廃棄物の推計量全体の約16%)の処理が完了しています。

3 災害廃棄物の処理

 災害廃棄物の処理は、現場からの撤去、仮置場への搬入、中間処理、再生利用、最終処分という手順で行われます。災害廃棄物の量が膨大であるため、宮城県及び岩手県では、県内で処理しきれない災害廃棄物について、県外での広域処理を求めています。

(1)災害廃棄物の現場からの撤去と仮置場への搬入

 損壊した家屋等の災害廃棄物の現場からの撤去・仮置場への搬入は、復旧・復興の前提となるものです。

 仮置場に積み上がった災害廃棄物は自然発火による火災の発生や、気温が上昇する季節にはハエ等の衛生害虫の大量発生などをもたらすことが懸念されます(図2-1-2)。仮置場における火災発生の防止策として、ガスボンベや灯油タンク等の危険物が搬入されないように確認を強化すること、仮置場に防火水槽、消火器等の設置を行うこと、可燃物内からの煙の発生等について目視確認を定期的に行うこと、可能であれば可燃物内の温度や一酸化炭素濃度の測定を行って管理を行うこと、可燃物や木くずを5メートル以上の高さに積み上げることは避けるべきこと等が考えられます。


図2-1-2 仮置場における火災の発生

 また、災害廃棄物の推計量の中には、今後の解体を待つ被災家屋等が相当量含まれますが、これらは現在仮置場にある廃棄物を処理し、搬入スペースを確保しなければ解体作業に移れません。

 発生現場において危険物、資源物を分けて集めるなど可能な限り粗分別を行った後に仮置場等へ搬入し、混合状態の廃棄物の量を少なくする必要があります。また、仮置場等において混合状態の廃棄物を重機や破砕・選別設備等で可燃物、不燃物、資源物、危険物等に分別し、それぞれの特性に応じた適切な処理を行うことにより、総処理コストの低減、最終処分量の削減等に資することが重要です。

 災害廃棄物等の処理を円滑に進めるため、損壊した家屋・自動車・船舶の撤去に関すること、貴金属等の取扱、位牌・アルバム等の取扱、これらの処理のための私有地への立入りに関すること等について、撤去や処理の方法に関する指針を策定しました。また、災害廃棄物の中に混入している廃石綿、PCB廃棄物、感染性廃棄物、自動車、家電リサイクル法対象品目等の取扱について、注意を促すために指針を通知しました。

(2)災害廃棄物の中間処理、再生利用の現状

 震災に伴って発生した膨大な災害廃棄物の処理にあっては、再生利用を前提にした中間処理を行い、コンクリートがら、金属くず、木質の廃棄物など再生利用可能なものは再生利用を進めることが必要です。災害廃棄物の再生利用の進め方については、「東日本大震災に係る災害廃棄物の処理指針(マスタープラン)」等において示されています。環境省では、関係省庁と連携して、土木工事の原材料等として災害廃棄物の再生利用の推進が図られるように、「災害廃棄物の有効利用のための協力体制」を整備して関係省庁連絡会の実施等で情報交換を行っています。また、リサイクルルートが確立している自動車などについても、災害廃棄物は通常の排出状態とは異なることから、円滑にリサイクルが行われるよう関係者と連携を図っています。

 さらに、災害廃棄物の処理のより一層の推進を図るため、内閣総理大臣を議長とする「災害廃棄物の処理の推進に関する関係閣僚会合」において、災害廃棄物の広域処理、再生利用の推進などの取組についての総合調整、進捗管理等を行っています。この一環として、例えば、瓦くずのように、有害でなくても市場における競争力がないために従来は廃棄物として最終処分していたような品目については、分別され、品質が確認され、公共工事で確実に活用されること等を要件に、道路の路盤材や海岸防災林、高台の盛土材等に活用することを可能とすべく検討することとなりました。なお、災害廃棄物の再生利用に当たっては、通常の再生資材と同様に、環境保全上の安全を確保する必要があります。

(3)災害廃棄物の処理状況

 地震による大規模な津波により膨大な災害廃棄物が発生しており、被災地の復旧・復興のためには、災害廃棄物の迅速な撤去・処理が大前提となります。被災地で仮設焼却施設等を設けて処理を推進していますが、なお処理能力が不足しています。岩手県、宮城県では災害廃棄物処理計画を策定し、市町村の求めに応じ、県が市町村から事務委託を受けて直接処理を行うこととしています。

 例えば、岩手県の計画では、国のマスタープランに則り、復興資材等に利用可能なものはできる限り再生利用し、焼却や最終処分場で処理・処分する量を極力減らすとの方針の下、まず、被災現場において解体・撤去を行った災害廃棄物を一次仮置場に集め、「柱材・角材」、「可燃系混合物」、「コンクリートがら」等におおまかに選別することとされています。そして、二次仮置場において、「可燃系混合物」や「不燃系混合物」等をさらに細かく選別した上で、再生利用を進め、再生利用できないものについては、既存焼却炉及び新たに仮設焼却炉を設置して最大限県内で処理することとされています。これに関して、岩手県では、2基の仮設焼却炉の整備、また、宮城県では、29基の仮設焼却炉の整備を予定しています。


図2-1-3 岩手県における災害廃棄物の処理手順

(4)災害廃棄物の広域処理

 災害廃棄物の処理については、岩手県及び宮城県では、仮設焼却炉の設置、再生利用の推進により、最大限地域内の施設を活用することを前提に処理を進めているところですが、被災地における処理能力は不足しており、被災地以外での広域処理を進めることが不可欠となっています。しかしながら、広域処理を推進するに当たっては放射性物質による災害廃棄物の汚染が懸念されており、環境省では、災害廃棄物の広域処理の推進のために、平成23年8月に広域処理の推進に関するガイドラインを取りまとめ、関係都道府県に通知しています。この中で、仮置場における災害廃棄物の放射能濃度の測定や県外に搬出する際の空間線量率の測定のあり方を示すとともに、平成23年10月、11月及び平成24年1月に改定を行い、再生利用における安全性の考え方や新たなデータを追加するなど、広域処理に当たっての安全性の確認方法について示しています。さらに、平成24年4月、これらの広域処理に関する基準等について「東日本大震災により生じた災害廃棄物処理に関する特別措置法」を実施するための告示として示されました。また、ガイドラインのQ&A、広域処理に係る説明資料、パンフレット、映像等の作成や広域処理情報サイトの開設等により積極的に広報を展開しています。さらに、広域処理に意欲のある各地の地方公共団体での説明会に職員・専門家を派遣する等により、地域の理解を得るよう取り組んできています。

 災害廃棄物の広域処理・再生利用の推進等については、政府を挙げて取組を強化していくことが必要であることから、平成24年3月13日、内閣総理大臣の下、「災害廃棄物の処理の推進に関する関係閣僚会合」の第1回会合が開催されました。また、「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法(平成23年法律第99号)」に基づいて、平成24年3月23日及び3月30日に、野田内閣総理大臣及び細野環境大臣は、対象自治体に対し災害廃棄物の処理に係る広域的な協力の要請を行いました。

 こうした取組により、平成24年5月現在、山形県、東京都、青森県及び秋田県では災害廃棄物の受入れを実施していただいています(表2-1-3)。山形県では、平成23年8月、「災害廃棄物等の山形県内への受入れに関する基本的な考え方」を表明しました。東京都では、岩手県、宮城県の災害廃棄物の受入れについて、平成23年9月及び11月にそれぞれ各県と協定を結び、3年間で50万トンを予定しています。また、青森県では、平成24年2月以降、気仙沼市及び石巻市内の災害廃棄物の処理について実施しています。また秋田県においても、宮古市の木くずの受入れについて5月より本格的に実施しています。さらに広域処理を広げることが必要であることから、現在、政府を挙げて働き掛けを行っているところであり、多くの地方公共団体に受入れを検討していただいているところです。


表2-1-3 地方公共団体における災害廃棄物の受入れ状況

 例えば、富山県、三重県が被災県との間で覚書、確認書を締結したほか、静岡県、群馬県、埼玉県にて試験焼却が行われ、受入れに向けた調整が行われています。また、多くの自治体において住民への説明を行うなど、広域処理の受入れに向けた取組が着実に広がりつつあります。今後とも、広域処理に対する国民的な理解が進むよう、最大限取り組んでいきます。

 広域処理の対象となるのは、岩手県及び宮城県の沿岸部の災害廃棄物のみで、当該地域の空間線量の計測結果は関東その他の地域の空間線量とほぼ同等です(表2-1-2)。また実際に当該地域の災害廃棄物を測定した結果をみても、その放射能濃度は不検出又はごく微量となっており、当該地域の災害廃棄物は、通常の廃棄物と同じ方法で処理可能です。


表2-1-2 広域処理対象地域の空間線量

 その上で、広域処理を推進するに当たっては、広域処理ガイドライン及び各地方公共団体で状況に応じて定めた手順に従って災害廃棄物の搬出、移動、受入れ先での管理、焼却、埋立て処分等が実施されています(図2-1-4)。搬出や焼却等の要所で放射能濃度又は放射線量を測定し公表するとともに、試験溶融等の場合には、住民自らが測定することにより、実際に目で見てその安全が確認できるようにしています。


図2-1-4 災害廃棄物の処理の流れ

 一般的な焼却施設には、ダイオキシン対策等のため、バグフィルター等の高性能の排ガス処理装置が備わっています。

 可燃物の焼却にともなって焼却灰に濃縮されるセシウムについては、可燃物の放射性セシウム濃度が240~480Bq/kg以下の場合、災害廃棄物だけを焼却した場合であっても、焼却灰の放射性セシウム濃度は、8,000Bq/kgを下回ると評価されています。排ガス中のセシウムについては、バグフィルター付きの焼却炉で99.9%以上、電気集じん器付の焼却炉で96.6%以上の除去率が確認され、排ガス中の微粒子の灰を除去するこれらの高度の機能を有する排ガス処理装置によって、大気中への放射性セシウムの放出を防ぐことができます。

 東京都等で行われている災害廃棄物の実際の焼却においても、実測値により除去が確認されています。焼却された灰は通常の一般廃棄物と同様に一般廃棄物の最終処分場(管理型処分場)において埋立処分されます。飛散防止等のため50cm以上の覆土をした後は、周辺住民が受ける放射線量は0.01mSv/年以下と健康影響を無視できるレベルとなります。これは、日本人が自然界から受ける平均的な放射線量1.48mSv/年の約150分の1以下です。


図2-1-5 焼却処分と埋立て処分における特別措置

 速やかな復旧・復興のためには、被災地での自助努力に加えて、一定量の災害廃棄物の被災地外での広域処理が不可欠です。被災地を全国民で支える観点からも広域処理に係る理解を促進するとともに、誰もがいつ何時、被災する側に回る可能性があることに鑑みれば、今後、平時から災害廃棄物の相互の受入れ等に関する仕組みを検討しておくことが重要です。


災害廃棄物の広域処理に関するよくある質問


[1] 低い放射能濃度の災害廃棄物であっても大量に埋め立てた場合は安全性は確保されるのでしょうか。

 放射性セシウムを含む焼却灰の埋立てを実施する場合の周辺住民や作業員への影響については、十分に安全側に立った評価を行っています。具体的には、埋立て容量が40万立方メートルの処分場(200m×200m×10m)のすべてに8000Bq/kgの焼却灰を埋め立てるというケースを想定して評価を行っています。この場合であっても、埋立て終了後は、周辺住民への健康に対する影響を無視できるレベルである0.01mSv/年以下に抑えられます。実際に埋め立てられる焼却灰の量はもっと少なく、濃度も低いものです。

[2] 焼却施設で災害廃棄物を燃やすと、放射性セシウムは気化して排ガスとともに漏れ出てしまうことはないのですか。

 ダイオキシン対策等のため、焼却施設には、排ガスを200℃以下に冷却する装置と排ガス中の微粒子の灰(ばいじん)を除去する高性能の排ガス処理装置(バグフィルター等)が備わっています。セシウムは650℃前後で気化しますが、冷却装置により、排ガスは大気中に排出される前に冷やされるため気体状態では存在せず、ばいじんに凝集したり吸着されます。この放射性セシウムが吸着したばいじんは排ガス処理装置でほぼ100%除去できます。

 廃棄物に含まれる放射性セシウム濃度が高く、広域処理の対象とはならない廃棄物を焼却している施設においても、排ガス中の放射性セシウムの放射能濃度はほとんどの施設で不検出、又は検出された場合でもモニタリングの目安としている濃度限度を大きく下回っていることが確認されています。