環境省環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書平成24年版 環境・循環型社会・生物多様性白書>平成23年度 環境の状況  平成23年度 循環型社会の形成の状況  平成23年度 生物の多様性の状況>第1部 総合的な施策等に関する報告>序 「絆」が紡ぐ未来

平成23年度 環境の状況

平成23年度 循環型社会の形成の状況

平成23年度 生物の多様性の状況

第1部 総合的な施策等に関する報告

序 「絆」が紡ぐ未来

 安全安心で持続可能な社会を実現すること、つまり、将来を担う子どもたちに地球の恵みを引き継ぐことが、現代世代の私たちに課せられた責務です。しかし、世界の持続可能性の状況は、依然として厳しい状況にあります。世界の人口は2050年には93億人まで増加すると予想されており、世界自然保護基金(WWF)によると、人口増加や消費のトレンドが現在のまま持続した場合、2030年には、人類の資源消費や環境負荷の規模は地球の自然再生能力の2倍になると予想されています。現に世界各地では、経済活動の進展及び貧困格差の拡大によって、水不足の深刻化や資源のボトルネックの悪化、気候変動、水・大気環境の汚染、回復不能な生物多様性の喪失といった問題が発生しています。

 我が国においても、東日本大震災以降、被災地の復興と日本再生に向けた挑戦が続いています。日本観測史上最大の地震と津波は、広範な地域における人々の生活の基盤を破壊し、また、原子力災害をもたらしました。放射性物質による汚染の影響は甚大であり、地域再生や自然災害リスクの軽減、エネルギー需給問題など、深刻かつ長期的な課題が山積しています。

 本年6月に開催されるリオ+20では、「我々の望む未来(The Future We Want)」がキーワードになっています。世界と日本におけるこれらの諸課題は、我々人類がこれまで享受してきた生活の質や社会経済活動、さらには文明のあり方そのものについて、再考を促すものであるといえます。あらゆる主体が将来のビジョンを共有し、50年100年先も持続可能な社会を実現するためには、互いの利害や立場を超えて共感し、行動を起こす必要があります。そしてその行動は、人々が「絆」を意識することによって、さらに強固なものとなります。

 東日本大震災は、絆の大切さを再認識する大きなきっかけとなりました。被災地の人々が手を取り合って、震災発生後の悲惨な状況に立ち向かう姿は、海外のメディアでも大きく取り上げられ、話題を呼びました。全国からボランティアの人々が被災地に集い、日本中が物資支援や節電に取り組んだことなども、被災直後の危機的な状況を乗り越える上で大きな力となりました。持続可能性をめぐる現代の危機的状況についても、これらを克服するためには、人々のつながりが生み出すエネルギーを再認識することが必要であるといえます。

 これらの状況を踏まえ、平成24年版環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書では、第1部第1章でリオ+20を踏まえた地球環境及び我が国を、第2章では東日本大震災からの復旧の状況を、第3章では地域に着目して震災からの復興と持続可能な地域社会づくりを、第4章では、世界をリードする環境技術や知恵によるグリーン成長の実現に向けた世界への我が国の貢献について、それぞれ記述しています。


地球を見つめる


 東日本大震災に際し、私たちは自然の猛威を目の当たりにするとともに、人間が自然界の一員であり、地球に生かされていることを実感することとなりました。私たちは、地球そのものの存在を強く意識し、考えるようになったとも考えられます。

 2011年12月10日の21時45分に始まって、翌12月11日1時18分まで見られた皆既月食は、日本全国で食の始めから終わりまで観察できたという点で、2000年7月16日以来、約10年ぶりの出来事でした。

 月食は、地球の影が月面に投影されているものであり、地球上にいながらにして、地球そのものを観察することのできる、数少ない機会であるとも考えられます。

 古来より人類は、地球のこと、月や太陽などの天体のこと、さらには宇宙のことを観察し、理解しようと努めてきました。

 地球から最も離れた場所で太陽系の姿を観察し続けているのは、1977年、米国が打ち上げたボイジャー1号です。現在でも宇宙空間を航行するボイジャー1号は、地球から177億km離れた場所にあって、その探査機能が失われていなければ、数年以内には太陽系外からの探査ができるとされています。

 人類がその肉眼によって宇宙から地球の姿を最初に見たのは、ガガーリンが宇宙船ボストーク1号から見た1961年のことであり、最も遠くから地球を直接眺めたのは、アームストロングをはじめとするアポロ計画のクルーが月面から見た1969年のことでした。

 世界で宇宙開発が進んでいる中にあって、日本人の宇宙滞在日数は、2011年11月現在で延べ615日であり、ロシア、米国に次いで、世界第3位となっています。

 月食などの宇宙空間で生じる物理的な現象をはじめとして、科学技術の発達、宇宙開発における人々の活躍によって、私たちが地球そのものを知ることのできる機会は増えています。

 世界で高い評価を受けている日本人宇宙飛行士の中で、2011年11月22日に地球に帰還した古川聡宇宙飛行士は、カザフスタン共和国の草原に着陸後、受けたインタビューにおいて「重力のおかげでいすに座ることができます」と笑顔で答えました。

 地球の重力がなければ、人間は立つことも座ることもできません。地球の存在を考えることのできるこれらの機会に、その地球に住んでいる私たちの暮らしが持続可能なものなのか、ということを見つめ直すことも大切ではないでしょうか。


皆既月食

ソユーズ宇宙船着陸直後の古川聡宇宙飛行士