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諸外国における自然再生事業事例(ヨーロッパ)


マーチンダウン低木林維持管理計画

対象事業名
マーチンダウン低木林維持管理計画
(Martin Down Scrub Management)
事業主体
・ハンプシャー行政府(Hampshire County council)
・英国自然協会(English Nature)
・The Forum for the Application of Conservation Techniques(FACT)
事業実施年度
2000年~
上位計画
英国生物多様性行動計画(The UK Biodiversity Action Plan(BAP),1994
自然再生を行う対象
低木林(藪から極相林までさまざまな低木林)
上位計画の概要
リオ地球サミット'92での生物多様性条約締結を受けて、英国政府は The Conservation (Natural Habitats, &c.) Regulations 1994 の制定と同時に、生物多様性行動計画(BAP)を策定した。また同時に政府は、英国生物多様性行動計画(UK BAP )運営グループを組織してデータベースの整備や公民への啓発や参加促進に努め、'95~'99に同グループがNational Habitat and Species Action Plan , Local Biodiversity Action Plans,同ガイドラインを策定した。
再生目標
・マーチンダウンは、342haの白亜層(chalk)の裸地から樹林地までを含んだ低地環境で、白亜層(chalk)の低地とscrub(低木林)がモザイク的に結びついた地域であり、重要な植物相及び動物相が認められる。
・前世紀に過放牧が行われなかったため、歴史的価値のある植生と貴重な野生生物が残存している。
・そのため、適正な放牧と雑草の防除により未改良の白亜層(chalk)の低地草地を保護(protect)することが目標とされている。
事業背景
低木林は、英国生物多様性行動計画(BAP)の生息地及びEUにおいて、優先順位の高い生息地の多くを占める重要な構成要素とされている。それは田舎の重要な特徴であることに加え、野生生物の重要な生息環境であり、景観上の自然な美しさに貢献するためである。 いくつかの低木林タイプは侵略的なため、土地所有者や農家にとって問題となる面もある。そのため、かつては保全地域管理者や専門家までもが、低木林を過小評価していた。
しかしながら、今日はこの低木林群生地が野生生物の生息地として生態系や景観を形成しているという意識が土地保有者や専門家に広がってきた。低木林の縁部は特に重要で、注意深い管理により、開放的空間と低木林とのバランスを保つことが出来る。そのような管理においては、歴史的な景観保全とともに、訪問者のアクセスにも配慮しなくてはならない。低木林の生態系は非常に複雑である。適切な保全・管理を達成するために生態学的な知識および経営技術が要求される。そのような管理を実施するため、「低木林(Scrub)管理の手引き(The Scrub Management Handbook)」が策定され、いくつかのケーススタディが実施された(そのうちの一つが、このマーチンダウン低木林維持管理計画である)。
このような管理の手引き(Management Handbook)には、低木林のほかに低地草地(Lowland Grassland)、高地(Upland)、老齢木(Veteran Trees)、除草剤(Herbicide)がある。(下記URL参照)
事業実施場所/規模
英国ハンプシャー州の Fordingbridge/対象エリア115ha。
事業費/資金源
「低木林(Scrub) 管理の手引き(The Scrub Management Handbook)」のケーススタディは英国全体で年間£108,245。事業費は各ケーススタディで積み上げている。最低£200~最大£1800/ha
資金源/ESA scheme、 Countryside scheme、 Wildlife Enhancement scheme他 LIFE Funding、 Rural Development Scheme、 Heritage Lottery Fund、 Landfill Tax or sponsorship
事業内容
・低木林をSpecies(種)やCommunity(群集)の重要性に応じて4段階にサイトアセスメント評価し,それぞれの管理目的(Management Objectives)を設定する。
・種や群集ごとに,観光や経済活動の需要に応じて利用範囲を定めたうえで,管理目標や管理技術を指定し,最後に調査とモニタリング手法についてまとめる。
・低木林を維持するために適正な放牧と低木林の管理を行う。
参考文献/URL
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