南極の自然と環境保護

国際的な取組

南極地域の環境保護に関する国際的な取り組みは、南極条約をはじめとするさまざまな条約によって行われています。また、議定書締約国により南極地域における各国の取り組みに関する年次報告書が作成されています。

南極条約/南極条約体制

昭和基地
昭和基地
南極条約は1961年、日本を含む12カ国(他11カ国はアルゼンチン、オーストラリア、ベルギー、チリ、フランス、ニュージーランド、ノルウェー、ロシア(当時ソ連)、南アフリカ、イギリス、アメリカ)により発効しました。その条約は次の4つの基本原則を有しています。

南極条約に示されている原則は、以下の通りです。

  1. 南極地域の利用を平和目的に限る
  2. 科学的調査の自由と国際協力を促進する
  3. 南極地域における領土権主張を凍結する
  4. 核爆発・放射性物質の処理を禁止する

南極を国境のない平和な理想郷とする目標を掲げたこの条約の先進性は高く評価され、後に他の分野に対しても影響を与えるとともに、南極地域の法的な枠組みを構築するうえで大きな役割を果たしています。

また、南極条約では、定期的な会合を開くことが定められています。その会合は、南極条約協議国会議(Antarctic Treaty Consultative Meeting:ATCM)と呼ばれ、ATCMでは、南極に関わる情報交換や問題が議論され、南極観測の円滑な実施、自然環境の保護などに関する勧告や措置が採択されています。これらの勧告、措置をとりまとめ、南極地域のあざらし猟を規制する「南極のあざらしの保存に関する条約」(1972年採択)、魚類・軟体動物・オキアミ(プランクトン)などの捕獲量、区域、方法などを制限する「南極の海洋生物資源の保存に関する条約」(1980年採択)、南極の環境と生態系を包括的に保護するとともに南極における鉱物資源に関する活動を禁止する「環境保護に関する南極条約議定書」(1991年採択)が採択されており、南極条約の下で採択された条約とATCMの勧告、措置によりつくられる法的枠組みを総称して「南極条約体制」と呼んでいます。

南極条約の締約国は、2015年10月までに53か国に拡大しており、そのうち、南極に基地を設ける等、積極的に科学的調査活動を実施してきている29か国を「南極条約協議国」している。協議国は毎年会議を持ち回りで開催し、南極地域をめぐる様々な課題について議論を行っている。

近年のATCMにおいては、会議の運営方法、南極地域での活動に関する情報交換、南極地域での活動とその安全の確保といった運営面に加え、環境保護の面では、協議国による南極活動に対する環境影響評価、南極地域における観光等の活動が及ぼす環境への影響、南極地域の動物相、植物相の保存といった内容について活発な議論が行われています。

関連ワード

ページトップへ

南極のあざらしの保存に関する条約(以下、あざらし保存条約)(1972年採択、1978年発効)

ウェッデルアザラシ
ウェッデルアザラシ
19世紀、ミナミゾウアザラシやナンキョクオットセイはあざらし猟のために絶滅の危機に瀕しました。あざらし保存条約は南極地域におけるあざらし猟を規制し、南極で見られる6種のあざらしの保護を目的としています。

関連ワード

ページトップへ

南極の海洋生物資源の保存に関する条約(1980年採択、1982年発効)

南極の海洋環境保全及び生態系保護を目的とした本条約が、1980年に採択されました。南極収束線以南の魚類、軟体動物、オキアミ等の資源量を配慮し、本条約で適用される区域の採捕に係る活動について、捕獲量、捕獲区域、捕獲方法などが制限されています。

関連ワード

ページトップへ