自然環境・生物多様性

スイゲンゼニタナゴ

1.概要

(1)分類
  • コイ目 コイ科
  • スイゲンゼニタナゴ
  • 学名  Rhodeus atremius suigensis
  • 絶滅危惧ⅠA類(環境省第4次レッドリスト)
(2)分布及び個体数
  • 山陽地方の一部にのみ局在する。
  • 主に支流や農業用水路で見られ、それぞれの生息地は分断される傾向にある。
  • 正確な個体数及びその動向は不明。

写真:スイゲンゼニタナゴ

2.形態的特徴及び生物学的特性

  • 全長約5cmで、日本に分布するタナゴの中で最も小型。約1年で成熟し、寿命は約2年である。
  • 淡水二枚貝のイシガイ等のエラに産卵する。主に、平野部から山間部にかけて細い流れや河床湧水がある中小河川、石組護岸や土護岸で自然河床を持つ灌漑用水路の流れの緩やかなところ等に生息。

3.生息を脅かす要因

  • 都市化や圃場整備等にともなう河川中・下流域および水路の改修
  • 農村地域の宅地開発の進行等に伴う水質汚濁
  • 外来魚の影響(オオクチバスによる捕食、タイリクバラタナゴとの競合)
  • 違法捕獲(観賞魚としての流通)
  • 遺伝的多様性の低下(生息地分断と個体数減少の結果)
  • 生息水系の近くで近似種の遺棄が確認され、遺伝攪乱が懸念される

4.保護増殖事業の概要及びその効果

  • 平成14年国内希少野生動植物種に指定、平成16年保護増殖事業計画(農林水産省、国土交通省、環境省)策定。
  • 密漁対策パトロール、分布・繁殖状況調査、関係者・専門家による連絡調整会議、生息域外保全の試行。
  • 密漁対策パトロールでは、不審者を発見、摘発例あり。新聞報道でパトロールが取り上げられ、監視の目が厳しいことを周知、密漁の抑止力として機能。
  • 繁殖状況調査では他種(外来種含む)との二枚貝をめぐる競合、二枚貝への寄生生物(長期的には致死性あり)を確認、対策を研究中。
  • また、二枚貝の生息が非常に良好な箇所を発見、好適な繁殖地の環境条件(水路の構造等)を把握しており、水路等改修時の配慮工法の検討にあたって寄与できる。
  • 連絡調整会議では河川工事部局との連絡調整が円滑化、工事時の事前調査や保護移動、影響の少ない工法の採用等、配慮に関して向上。
  • 生息域外保全では、試行的に人工飼育を開始。有識者の飼育・繁殖技術を一般化・省力化するためのデータ蓄積、一時的な飼育手法についてマニュアル化。
  • 用水路タイプの生息地における保全に必要な環境を調査、整理し関係者と共有。

5.他法令等による保護の状況

  • 広島県野生生物の種の保護に関する条例(平成7年)により、捕獲等の際に届出が義務化。

6.参考