自然環境・生物多様性
ライチョウ
1.概要
(1)分類
- キジ目 キジ科
- ライチョウ
- 学名 Lagopus muta japonica
- 絶滅危惧ⅠB類(環境省第4次レッドリスト)
(2)分布及び個体数
- 日本のライチョウは、北半球北部に広く分布する種ライチョウ(Lagopus muta)の中で、分布の最南端に隔離分布する亜種。
- 高山帯に隔離分布しており、現在の分布域は頸城山塊、北アルプス、乗鞍岳、御嶽山、南アルプス。
- 1980年代には約3,000羽と推定されたが、2000年代には2,000羽弱に減少したと推定されている(信州大学)。
2.形態的特徴及び生物学的特性
- 成熟個体で全長37cm。
- 夏羽は白・黒・茶の斑模様で、冬羽は尾を除き全身白色となる。
- メスは6月にハイマツなどの根元など地上に窪みを作って巣とし、6卵ほど産卵する。
- 主な食物は高山植物の芽、種子など植物質。春から夏には昆虫類なども食べる。
- 遺伝子解析から、5つの遺伝集団(頸城山塊、北アルプス、乗鞍岳、御嶽山、南アルプス)に分かれていると考えられている(信州大学ほか)。
3.好適な生息地
- 主に本州中部の標高2,200~2,400m以上の高山帯(ハイマツ林帯や岩石帯)で繁殖し、冬期には亜高山帯にも降りて生活する。
4.生息を脅かす要因
- 捕食者となり得る種の分布拡大による影響(キツネ、カラス等)
- 従来生息していなかった種(ニホンジカ、ニホンザル等)が侵入し、高山植生が採食されることによる生息環境の劣化
- 山岳環境の汚染に起因する感染症の原因菌等の侵入
- 登山客等の増加に伴う攪乱
- 気候変動による営巣環境・植生等への影響
5.保護の取り組み
- 種の保存法に基づく国内希少野生動植物種(平成5年)。保護増殖事業計画策定(24年)
- 国指定の特別天然記念物(大正12年)。
- 生息地の多くが国立公園(妙高戸隠連山国立公園、中部山岳国立公園、南アルプス国立公園)や鳥獣保護区(北アルプス鳥獣保護区)に指定。
- 長野県希少野生動植物保護条例に基づく指定希少野生動植物(平成16年)
- 平成27年より公益社団法人日本動物園水族館協会の協力のもと生息域外保全を開始し、国内の動物園6施設(令和2年5月現在)において飼育・繁殖の知見の集積が行われている。