自然環境・生物多様性
南西諸島陸産貝類3種
1.種ごとの分類、概要
分類 種名(学名) | 種の概要 |
マイマイ目 ナンバンマイマイ科 アマノヤマタカマイマイ (Satsuma amanoi ) ![]() |
①種の特徴:殻長約25mm、殻径約20mm程度で、高円錐形状。殻色は全体的に乳白色で色帯をもたない。琉球石灰岩上の発達した常緑広葉樹を利用して生活する樹上性の貝類で、生活史の一部を除き、一生のほとんどを樹上で過ごすものと考えられる。枯葉や、樹上・葉上の菌類などを餌資源として利用する。1~2年ほどで成貝となり、繁殖する。雌雄同体で、産卵は樹幹のウロや石灰岩の窪みで行われる。世代間寿命は長くとも3年程度である。比較的湿潤で連続した林を必要とする。 ②分布:沖縄島。現在の分布は沖縄島南部に限られる。かつては沖縄島中南部に広く分布していたと考えられる。 ③生息状況:近年、外来捕食者の侵入により個体数及び生息地点が急激に減少。野生絶滅が目前の状態。 ④減少要因:土地造成、道路建設、公園整備等の開発等に伴う生息適地の減少のほか、国内外来種であるヤエヤママドボタル(Pyrocoelia atripennis) などの侵入に伴う捕食圧により急激に減少。採集圧も懸念される。 |
マイマイ目 オナジマイマイ科 ヘソアキアツマイマイ (Nesiohelix omphalina omphalina) ![]() |
①種の特徴:殻長約20㎜、殻径約25㎜程度の低円錐形状。殻色は黒褐色から黄褐色を呈し、一部の個体では明瞭な茶褐色の色帯を具える。臍孔部は窪んで狭く深い。島内に残存する良好なビロウの優占する湿度の保たれた森林の林床に生息する。本亜種は樹上の利用が見られることもある。世代間寿命は2~3年程度。 ②分布:北大東島 ③生息状況:かつては島内の森林に広域的に生息していたと考えられるが、現在は島内に残されたごく一部の森林に生息地が点々と残るのみとなっている。近年、外来捕食者の影響により、個体数と生息地点が著しく減少。野生絶滅が目前の状態。 ④減少要因:開墾に伴う開発や森林の減少、乾燥化や外来植物の侵入による植生の変化等のほか、近年はニューギニアヤリガタリクウズムシ(Platydemus manokwari)等の外来種による捕食圧により急激に減少。 |
マイマイ目 オナジマイマイ科 オオアガリマイマイ (Nesiohelix omphalina bipyramidalis) ![]() |
①種の特徴:殻長約20㎜、殻径約25㎜程度の低円錐形状。殻色は褐色から黄褐色を呈し、体層周縁の上下に褐色帯を具えるが、色帯は不鮮明。体層周縁に明瞭な竜骨が見られるほか、殻表面は微細な突起によりサメ肌状となる。臍孔部は窪んで狭く深い。島内に残存する良好なビロウの優占する湿度の保たれた森林の林床に生息する。世代間寿命は2~3年程度。 ②分布:南大東島 ③生息状況:かつては島内の森林に広域的に生息していたと考えられるが、現在は島内に残されたごく一部の森林に生息地が点々と残るのみとなっている。近年、外来捕食者の影響により、個体数と生息地点が著しく減少。野生絶滅が目前の状態。 ④減少要因:開墾に伴う開発や森林の減少、乾燥化や外来植物の侵入による植生の変化等のほか、近年はニューギニアヤリガタリクウズムシ(Platydemus manokwari)等の外来種による捕食圧により急激に減少。 |
2.保護の取り組み
・3種とも絶滅危惧ⅠA類(CR)(環境省レッドリスト2020)。・アマノヤマタカマイマイは平成29年(2017年)国内希少野生動植物種に指定されている。
・ヘソアキアツマイマイ及びオオアガリマイマイは平成30年(2018年)国内希少野生動植物種に指定されている。
・3種とも絶滅の可能性が高まっていたため、令和元年度から生息域外保全の技術開発を開始。現在は複数施設で分散して飼育・繁殖に取り組んでいる。