自然環境・生物多様性
イヌワシ
1.概要
(1)分類
- タカ目 タカ科
- ニホンイヌワシ
- 学名 Aquila chrysaetos japonica
- 絶滅危惧ⅠB類(EN)(環境省第4次レッドリスト)
(2)分布及び個体数
- 北海道、東北から中部、中国地方の日本海側を中心に生息。四国、九州ではごくわずかに生息。
- H16年時点での推定個体数は650羽(H16環境省希少猛禽類調査)、R4年時点での推定個体数は約500羽(※)、繁殖成功率は、全国平均(R4年)17.4%(※)。
2.形態的特徴及び生物学的特性
- 全長で81cm~89cm、翼開長168~213cm。
- ノウサギ、ヤマドリ、ヘビ類等を主な食料とするが、カモシカやニホンジカの幼獣、テン等のほ乳類も捕食。
- つがいごとに広い行動圏(20~250km2平均60 km2(※))を持ち、その中に営巣や採餌場所を含む。
- 繁殖活動は1~3月頃に産卵し、抱卵期間は40~45日程度、巣内育雛期間70~94日程度(※)。
- 概ね年間を通じ雌雄2羽で生活を共にし、山地帯に生息する。
- 岩棚や高木の枝上で営巣する。
3.生息を脅かす要因
森林や草原の手入れ不足による狩場適地及び餌動物の生息環境の減少、ダム建設や林道工事などの大規模開発や、その他レジャー等の不用意な接近による撹乱(特に繁殖初期における営巣放棄)が生息環境の減少要因と考えられている。
農薬や鉛などの化学物質の蓄積による影響を示唆する意見もある。
近年は風力発電施設建設による生息環境の悪化やバードストライクも要因として指摘されている。
4.保護増殖事業の概要及びその効果
【平成5年】 国内希少野生動植物種に指定
【平成8年】 保護増殖事業計画(農林水産省、環境省)を策定
【平成12年】 山形県の鳥海山南麓に猛禽類保護センターを設置(環境省)
【平成16年】 生息個体数は約650羽、つがい数は少なくとも200つがいと推定(環境省)
【平成18年】 東北地方において、繁殖状況調査を実施
【平成24年】 「猛禽類保護の進め方(改訂版)」を公表
【平成27年】 「イヌワシ保護増殖事業マスタープラン」を策定
【令和元年】 「将来的な野生復帰に備えたイヌワシ飼育下個体群の管理方針」を策定
【令和3年】 「イヌワシ生息地拡大・改善に向けた全体目標」を公表
【令和7年】 保護増殖事業計画(文部科学省、農林水産省、環境省)を変更
5.他法令等による保護の状況
【昭和40年】 国の天然記念物に指定(文化財保護法)
【平成14年】 希少鳥獣に指定(鳥獣保護法)
6.参考
・保護増殖事業計画[PDF 13.1KB]・保護増殖事業計画(変更後)[PDF 174KB]
・東北地方環境事務所イヌワシ保護増殖事業
※は日本イヌワシ研究会公表のデータによる