◯テーマ:地域振興とエコツーリズム
「地域にお客様を呼ぶために何が必要か。知床や屋久島等豊かな自然がある地域以外での取組み事例と実践方法を学ぶ」
◯開催日時:平成22年9月25日(土)12:30〜17:00
◯会場:東京ビッグサイト レセプションホールA
(東京都江東区有明3-21-1 会議棟1階)
◯主催:環境省・(社)日本旅行業協会
◯協力:NPO法人日本エコツーリズム協会
◯参加者数:約110名
◯総合司会:総合司会/進行:小林寛子氏
(NPO法人日本エコツーリズム協会)
主催者挨拶として、環境省大臣官房審議官の渡辺綱男氏より、生物多様性条約の第10回締約国会議(通称COP10)開催もふまえ、エコツーリズムが、自然環境の保全だけではなく、観光の振興や地域の活性化にも繋がる取り組みであることをお話頂きました。つづいて同じく主催者挨拶として、(社)日本旅行業協会環境対策本部長の黒川惠氏より、エコツーリズムの考えを入れた旅行商品の造成と流通方法を提案する目的としてフォーラムを開催することをお話頂きました。そして協力団体挨拶として、NPO法人日本エコツーリズム協会会長愛知和男氏より、エコツーリズム推進法や観光立国推進基本法をふまえ、経済の視点から、エコツーリズムについてお話頂きました。
内閣府地域活性化伝道師・跡見学園女子大学 マネジメント学部准教授 篠原 靖氏
◆地方からの人口流出、観光の交流人口の拡大について経済の観点からお話頂きました。
地域観光づくりの5つのポイント
1)資源発掘の視点
地域資源を活かす上で、どのような点に着目するか?
2)顧客価値の視点
その資源を活かす上での「顧客価値」は何であるのか?
3)資源の編集の視点
顧客価値創出のための資源の編集・加工の視点は何か?
4)事業モデル化の視点
継続的な事業として発展させるための事業(ビジネス)モデルとして、どのような工夫をするのか?
5)人材育成の視点
事業を発展させるために、必要となる人材とその育成について、どのような工夫が考えられるのか?
上記5つのポイントから、地域観光のコンセプト作りの話をさせていただきたいと思います。(本日の参加者の皆様も)これから地域づくりをしていこうという方がいらっしゃると思うのですが、皆さんの地域を振り返って頂きながら、この5つのポイントを考えてみたいと思います。そこには3つの法則点があります。
ひとつめは外部の人。外からの人を連れてきて見せてみる。そうすると、自分達の住んでいるところだけでは見極められなかったですね、部分が外からの指摘でわかる。 ふたつめは、若者。地域の若者をどれだけ巻き込めるかということが勝負であります。 みっつめは、バカ者。バカといっても本当のバカではなくて、一生懸命何かやっているけれど、地域では浮いているというような方をベースにしてこうした資源の発掘をもう一度してみる。 それをベースにしていくと色々なお宝が出てくる、ということになります。その出てきたお宝を、顧客価値の視点で、やはり精査をするという事。これらが重要です。
最後に、やはり自分達が楽しみながらその町をいかに生き生きさせていこうかという原点を忘れてはいけないよと。先を急いでですね、人を呼ぶためにどうしましょう先生? と言われる事があるのですが、そんな簡単にいきませんと。住民の皆さんの心の中からいい町を作っていくことが一番大事だよということです。
株式会社JTB関東 法人営業水戸支店 支店長 市川 友英氏
◆(株)JTB関東が取組んでいるCO2ゼロ旅行を軸にお話いただきました。
CO2ゼロ旅行にみる、売れる旅行商品の作り方のキーワードがあります。それは以下の6点です。
1)本物(感動)かどうか。
2)オンリーワン商品。
3)NO1になろう!
4)付加価値について。
5)女性に支持される。
6)楽しくなくちゃ旅行じゃない。
CO2ゼロ旅行とは、カーボンオフセット(※)の仕組みを利用した旅行です。
CO2を排出しないで発電する自然エネルギー(風力・ソーラー・バイオマス発電など)を購入して旅行をすることで、間接的に旅行中に排出するCO2をうちけすことができます。参加の証として、団体に額入りの「グリーン電力証書」、参加者全員に「バッジ」(別料金)が配布されます。
(※)カーボンオフセット:日常生活で排出してしまうCO2を、自然エネルギー購入、植林活動、排出権購入などで、うちけす仕組み。
そしてエコツーリズム・あるいは着地型商品の売り方(プロモーション)のキーワードも以下の6点です。
1)どこの(Where)
2)誰に(Who)
3)いつ(When)
4)何を(What)
5)どのくらい(How many)
6)どのように(How)
昨今の家族形態の移り変わりにも着目し、家族連れならば「子どもが楽しめるものを」、男性向けならば「冒険心が刺激されるものを」キャッチコピーなどで表現できるようにしています。どういったツアーを、どの層に楽しんでもらいたいのか、を明確にしていくことが重要です。
■コーディネーター
南 正人 氏(麻布大学獣医学部 動物応用科学科 講師)
■パネリスト
篠原 靖 氏(内閣府地域活性化伝道師)◆地域の資源という環境、自然、あるいは自然に根ざした文化、あるいは人情というようなものを資源として、それをガイドする、ガイダンスによって付加価値をつけて、旅行をしていく。それによって経済が発展していきます。エコツーリズムによる地域への経済的効果、さらに、自然環境を持続的に活用するそのルールを決めて、自然を資源の保全をして、それをまた旅行に活かしていく。こういうふうにやっていくことにより、地域も潤い、自然も保たれるというのがエコツーリズムの考え方です。
◆旅行会社にエコツアーの販売を頼めば売れるのかというと、これがなかなかうまくはいかないということだと思います。そのためには商品作りをどうするのか、流通はどうするのか、そして地域の組織をどういうふうに作っていくのかということが問題になると思います。
◆自分のことだけでなく、地域のことも今からすぐにでもやらないと自分達の努力は報われずあっという間に時間がたってしまうのではないかという焦りもあり、それから地域のことに関わるようになりました。
◆どれだけお金をいただいても、地元にきちんと還っていかないと意味がありません。観光業は裾野が広いというお話がありましたが、それを意識してもっと裾野を広げた観光業をしていかないということもありまして、だいたい40%以上は地元に還元されています。
◆エコツーリズムの商品戦略を考えるときに、そこにはナンバーワンやオンリーワン、あるいは女性目線、楽しいとか、付加価値とか、本物とかがあるのですけれども、まずこういったことを念頭において、自分の商品をもう一回見直すことです。本当に自分の商品がお客様のニーズに応えているのか、お客様が欲しがっているのかということをもう一回見直すということから始めるべきと思っています。
◆地域の商品多様化させていくことが「地域を売っていく」ことであって、そしてそれが「本物の塊」になり、結果として「地域が売れていく」ということになります。