G7ネイチャーポジティブ経済アライアンス国際ワークショップの結果について

概要

ネイチャーポジティブ経済に関する知識の共有や情報ネットワークの場の構築を目的に、経団連(経団連自然保護協議会)主催、G7ANPE共催の下、G7 各国の経済界の協力を得て、ネイチャーポジティブに資する技術、製品・サービス、ビジネスモデル等に関する事例共有ワークショップが開催されました。2日間にわたり、日本のみでなく世界各国から、企業、政府、研究機関、NPO/NGO等の関係者、延べ560名以上が参加しました。

開催日:
Day 1:2023年9月27日(水)
Day 2:2023年9月28日(木)
 
開催方法: オンライン
 

結果概要

Day 1

  • 開会の挨拶 環境省 伊藤信太郎大臣
ビデオメッセージで参加者、登壇者、経団連およびネイチャーポジティブ経済アライアンスの協力に対する感謝が示されるとともに、ネイチャーポジティブ経済・社会の実現のための関係者間の協働の重要性が述べられた。
 
  • 経団連 久保田政一副会長・事務総長経団連自然保護協議会 特別顧問
ビデオメッセージで参加者、登壇者、環境省への感謝が述べられ、ネイチャーポジティブ経済の実現に向けた経団連・経団連自然保護協議会の取組みや企業の役割の重要性が紹介された。
  • 基調講演 TNFD Co-Chair, David Craig氏
 TNFDのアプローチ、目的等が概説されるとともに、TNFDのツールとしての有効性が述べられた。また、TNFDの今後の展望として、人材開発、さらなるガイダンスの公表、プロジェクトファイナンスの継続が表明された。
  • OECD Team Leader, Biodiversity, Climate, Biodiversity and Water Division Karousakis Katia氏
導入としてネイチャーポジティブ経済の定義、ネイチャーポジティブ経済の達成に向けた課題が共有された。企業の取り組みに加え、それを促進するための政府の支援も重要であり、そのためのキーアクションとして、生物多様性のためのインセンティブ設定、データを用いた指標策定、エビデンスと教訓の共有、関係者間の対話促進、スケールアップのための環境づくりの重要性が強調された。

ケーススタディ(Day 1)

各企業、団体の取り組みが紹介されたのち、参加者との質疑応答が活発に行われた。
 
(1)  SynecO 舩橋 真俊氏
SynecOが推進する生物多様性を促進する農法であるSynecoculture(シネコカルチャー)のコンセプトが紹介された。Synecocultureは、多様な植物にとって生態学的に最適な環境を不耕起、無肥料、無農薬で作り出し、食料を生産する農法であり、これまでサブサハラアフリカでの実証、中国、日本での事例を通じてその価値を社会に提供してきたことが説明された。
(2)  Unilever Martin Huxtable氏
Unileverの戦略として、パームオイル調達における森林破壊の禁止(Deforestration-free)、森林の再生、持続可能な原料調達、2030年までの生分解性(Biodegradable)素材への切り替え、生産者のエンパワーメントと生産地の保護などがあることが紹介され、インパクトにフォーカスした取り組みの重要性が指摘された。
(3)EDF Claire VARRET氏
EDFの生物多様性強化に向けたコミットメントが示されるとともに、同社の事業活動における重要課題評価(Materiality assessment)から得られた教訓として、環境や自然への影響を評価する際の第三機関による検証の必要性/重要性等が共有された。
(4)清水建設 金子 美香氏
清水建設の環境ビジョンであるBeyond Zero 2050とともに生物多様性と持続性を促進するグリーンインフラの実践に向けた機会、課題が共有された。同社の事例として、高解像度衛星画像と生態系評価を組み合わせたUE-Net(Urban Ecological Network Evaluation system)と、それを用いた取り組みが紹介された。
  • 有識者コメント
WEF Co-Head, Nature-Based Solutions, Nicole Schwab氏
本ワークショップDay1で紹介されたケーススタディの総括が行われた。また、自然資本の棄損によるビジネスへのリスク、2030年までにネイチャーポジティブ経済に移行することによって約10.1兆米ドルの経済的機会があることが説明された。さらに、食料・土地・海洋システム、インフラ・建設システム、エネルギーと採掘システムの3つのエリアで特定された、ネイチャーポジティブに向けた15の方法論について紹介された。

Day2

  • 挨拶
CBD Acting Executive Secretary, David Cooper氏
日本のビジネスコミュニティーによる生物多様性に対するコミットメントに謝意が示された。また、昆明・モントリオール生物多様性フレームワークの適用を最初のステップとして、生物多様性、ネイチャーポジティブの実現に向けたアクションを加速させることが重要であることが強調された。

ケーススタディ(Day 2)

(5)  Pfleiderer Stefanie Eichiner氏
ドイツ政府が支援するUbi(ドイツの企業と経済団体の生物多様性への意識向上と取り組み強化を促すために、知識の共有と生物多様性戦略強化を行うイニシアチブ)について概説するとともに、Pfleidererのサプライチェーンにおける取組として、サーキュラーエコノミー実現への取り組み、持続可能性評価に関するターゲットの設定について紹介された。
(6)  Veolia Stéphanie Moulé Nguyen氏
Veoliaは環境変革(ecological transformation)を目的として人類の進歩と環境保護の両立を目指して事業を行っており、こうした考え方に基づいた廃棄物処理事業における環境戦略の策定と、その核となる環境分析のアプローチが紹介された。
(7)  GSK Claire Lund氏
GSKのアプローチとして、科学的根拠に基づく自然保護目標設定や同社の環境・持続可能性にかかるターゲットが示された。また民間企業と政府の協働の方法として、政策目標や法的なフレームワークの提供、ベストプラクティス共有の機会創出、生物多様性戦略・計画の策定における企業の役割の明確化などが提案された。
(8)  Jacobs Chris Allen氏
Jacobsの持続可能なビジネスのアプローチであるPlanBeyond2.0、ネイチャーポジティブなインフラ・建築に向けたロードマップが紹介された。また同社の取り組み事例として、インフラ開発や不動産開発における気候変動への対応、生物多様性、自然生態系の保護などが紹介された。
(9)  住友化学 水戸 信彰氏
住友化学のグリーントランスフォーメーションはカーボンニュートラルのみでなく、環境システムの保護、健康増進など幅広い社会課題解決の文脈に適応されることが説明された。事例としては、農業を通じたネイチャーポジティブへのアプローチとして、土壌改善、土壌栄養素の効率的利用など様々な効果のある菌根菌(Arbuscular Mycorrhizal Fungi:AMF)を使った製品の事例が共有された。
  • 有識者コメント
WBCSD Executive Vice President, Dominic Waughray氏
Day2で紹介されたケーススタディの総括が行われた。またWBCSDはネイチャーポジティブの実現に向けたロードマップとガイダンスを企業に提供しており、これは食料農業システム、エネルギー、林業など様々な分野でネイチャーポジティブ実現に向けたアクションの基礎となるものであることが示された。
 
  • その他
G7ANPE事務局より、G7以外の政府、企業、研究機関、NGO/NPO等に対して、G7ANPEアライアンスへの参加募集と日本企業のネイチャーポジティブ経済への貢献を示す「ビジネス貢献プロジェクト」のサイトリニューアルについて紹介があった。
 
  • 閉会挨拶
Confindustria(B7 Italy) Vice President for Environment, Sustainability and Culture, Katia Da Ros氏
参加者、登壇者、関係者への謝意が示された。ネイチャーポジティブに向けた取り組みはビジネス、市民社会、政策決定者をはじめ、誰に対しても求められているものであり、ネイチャーポジティブの実現に向けた様々な課題に対して様々な関係者が協働して取り組むことが重要であることが強調された。

ワークショップ動画

youtubeにワークショップの録画を公開していますので、ぜひご覧下さい。


             【1日目】                                                                                           【2日目】
 
                 

※英語版については下記からご参照下さい。
https://www.env.go.jp/en/nature/page_01150.html
 

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