環境省
VOLUME.71
2019年6・7月号

神奈川県小田原市

地域や世代を超えたつながりで地域の課題を解決

大学との連携の中で、地域課題に取り組んでいる神奈川県小田原市。
大学生という若い世代の発想や思考を取り込んだ活動を進めています。

神奈川県小田原市

木材の色、木目、材質などの違いを組み合わせて、市松や麻の葉などの美しい模様を描き出す寄木細工。この伝統工芸品の「木」を「気」に置き換えて冠したのが、神奈川県小田原市が進める「小田原森里川海インキュベーション事業“寄気”」である。「気」とは人の気持ち、やる気、意気込み、元気などに通じる言葉だが、それを市内だけでなく市外に求め、協働で新しいプロジェクトを立ち上げ進めてきたのがこの事業の特徴である。事業の発端について、「ひとつは外から小田原を見てもらい、地域内にいたのでは気づかない新しい価値や資源を掘り起こし、問題解決の糸口を見いだしたかった。もうひとつは若い人の力で何か仕掛けてほしかったんです」と、小田原市環境政策課の杉田智史さんは語る。結果として県内外6つの大学と協定を結び、大学生および研究室とタッグを組み、地域の課題解決に向けた活動を行ってきた。

 その中で慶應義塾大学総合政策学部、環境情報学部の学生が所属する一ノ瀬友博研究室と石橋地区において実施したのが「わなオーナー制度」だ。「わな」とは狩猟のために仕掛ける箱わなやくくりわなのこと。費用を払ってオーナーになると、狩猟免許を持つ学生の案内によるわなの仕掛けや見回り、獣の解体などの狩猟体験ができる。獣害の背景には自然環境の変化、耕作放棄地の増加、わな設置の費用負担、高齢化などの問題があるが、今回のオーナー募集の呼び掛けに市内外から31名の登録があり、農家がわな設置の費用と手間を負担することなく害獣5頭を捕獲した。

 モデルとなった石橋地区は、みかん畑の先に青い海が広がる風光明媚な地域である。参加者からは「狩猟に必要な知識を得られた」「子どもたちに教育の一環として体験させたい」などの声が寄せられた。「この地に足を運んでもらうことで環境問題を肌で感じてもらい、地域や世代を超えたつながりの中で課題解決を進めることができました」と杉田さん。今後は地域が主体となってこの制度を運営できるよう検討していく。

小田原市環境部環境政策課 杉田 智史さん

CLOSE UP!

慶應義塾大学

地域ぐるみの獣害対策「わなオーナー制度」モデルの提案と検証

近年農村部で深刻化している獣害について、1カ月4,000円で「わなオーナー」を募り人的・経済的交流を生み出し、持続的かつ地域ぐるみで獣害対策を行おうというものである。地域内外の交流を通して地域の魅力発信、自然資源の価値化などにもつなげていく。

狩猟免許を持つ学生からわなの説明を受けるオーナーの方々

文教大学

おだわら森里川海エコツーリズム展開に向けた可能性調査

小田原市の自然資源と人的資源を活用したエコツアーを企画し、交流を通して経済が循環する小田原流エコツーリズムの展開を目指す。モニターツアーとして「小田原のホンモノに触れホンモノを愛するツアー~小田原の『木』と『職人技』の魅力に迫る」を実施した。

辻村山林農園代表の辻村百樹氏らによる案内

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