環境省
VOLUME.71
2019年6・7月号

原田義昭環境大臣特別インタビュー

今月、長野県軽井沢町で開催する
「G20環境・エネルギー関係閣僚会合」で共同議長をつとめる
原田環境大臣に、会合に向けた意気込みなどを伺いました。(2019.5.28時点)

5月にフランス・メッスで開催されたG7環境大臣会合に参加していかがでしたか

 G7環境大臣会合では、生物多様性の保全を中心として幅広い地球環境問題が議論され、その内容をまとめたコミュニケや、生物多様性に対するG7などの今後の取り組みをまとめた「生物多様性憲章」などが採択されました。
 G7各国は、我が国が議長国として2010年に取りまとめた生物多様性に関する愛知目標(2020年が目標年)の達成、そしてさらにその先の目標に向け、この憲章に沿って野心的かつ現実的な取り組みを進めることが重要です。

G7環境大臣会合の参加閣僚ら

G7環境大臣会合の参加閣僚ら

「生物多様性」という言葉は一般的にはまだなじみがないと思われます

 生物多様性とは、生きものたちの豊かな個性とつながりのことです。生きものも人も、自然のさまざまな恩恵を受けながら直接、間接に支え合って生きています。それだけでなく、私たちの暮らしは、豊かな水、きれいな空気、食料や資材、自然の上に成り立つ特色ある文化など、森・里・川・海やその連環がつくり上げる豊かな自然の恵みによって支えられています。エコジンの今回のテーマですね。
 さらに、そうした自然的なつながりだけでなく、人や資金などの経済的なつながりを含めて、地域がその特性を活かし、自立・分散型の活力ある社会を形成していこうというのが、環境省が打ち出している「地域循環共生圏」という考え方です。このことは、6月15・16日に長野県軽井沢町で開催する「G20環境・エネルギー関係閣僚会合」でも、我が国の取り組みとして発信したいと考えています。

地域循環共生圏の概念図

地域循環共生圏の概念図

G20環境・エネルギー関係閣僚会合では、他にどのようなことを議論しますか

 世界的な課題である気候変動や海洋プラスチックごみ問題などについて議論します。
 気候変動については、我が国として、G20までにパリ協定に基づく長期戦略を策定します。世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑える努力を追求するため、今世紀後半のできるだけ早期に「脱炭素社会」、すなわち実質排出ゼロの実現を目指すことで、気候変動問題の解決に向けたイノベーションに関する議論を牽引したいと思います。
 特に、利用時にCO2を排出しない究極の“環境型エネルギー”である水素については、議論するだけでなく、最新の技術を集めた展示も披露したいと思っています。
 海洋プラスチックごみ問題に関しては、G20までに、我が国の「プラスチック資源循環戦略」を策定し、就任直後に打ち出したレジ袋の有料化に向けた取り組みを含めて、国内での積極的な施策を講じます。
 そしてこの問題は、先進国だけでは解決できません。G20の場では、我が国の優れた取り組みや技術を諸外国にアピールし、新興国・途上国を巻き込んだ海洋プラスチックごみ対策の実効性ある枠組みを構築したいと思っています。
 プラスチックそれ自体は大変有用な素材です。ただ、ポイ捨てをなくし、不必要なワンウェイのプラスチックなどを極力減らしていく、そうした“プラスチックとの賢い付き合い方”が必要です。環境省は、昨年「プラスチック・スマート」キャンペーンを立ち上げました。さまざまな創意工夫で、行政はもちろん、企業や国民一人ひとりに、それぞれの立場でできることに取り組んでいただき、運動の輪を広げていきたいと思います。

「プラスチック・スマート」キャンペーンのロゴマーク

「プラスチック・スマート」キャンペーンのロゴマーク

最後に一言お願いします

 令和の時代となりました。四季折々の美しい自然を次の時代へと引き継いでいく、万葉集に詠まれた梅の花のように一人ひとりの花を大きく咲かせるとの願いも込められているとされています。決意を新たに環境行政の先頭に立つつもりです。

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