環境省
VOLUME.63
2018年2月・3月号

特集:5つのエコ・アイデアIDEA-2 CLT【Cross Laminated Timber】省エネルギー

はじめから終わりまで、
ずっとエコな建築材

CLTとは、板を各層で互いに直交するように積層接着させた厚型パネルのこと。
1995年頃からオーストリアを中心に発展してきた新しい木質構造材料で、集合住宅や商業施設などの
壁や床として普及している。近年、日本でも国産のスギ、ヒノキ、カラマツなどを用いたCLTが生産され、
地域の木材を活かした建物が全国各地で建設されている。

茨城県つくば市の建築研究所内に建設された、CLTの実験棟「CoCo CLT」。CLTの施工性能、居住環境などを検証している-写真撮影/Nacasa & Partners茨城県つくば市の建築研究所内に建設された、CLTの実験棟「CoCo CLT」。CLTの施工性能、居住環境などを検証している-写真撮影/Nacasa & Partners

茨城県つくば市の建築研究所内に建設された、CLTの実験棟「CoCo CLT」。CLTの施工性能、居住環境などを検証している

CASE STUDY
一般社団法人日本CLT協会

高性能でエコロジカル……
建築の未来を担う「新たな木材=CLT」が、いま注目を浴びています。
日本の森林資源の有効活用にもつながるCLTの可能性とは?

新時代の建材「CLT」の普及推進

お話を伺った人/一般社団法人日本CLT協会業務推進部部長 中島洋さん

お話を伺った人/一般社団法人日本CLT協会業務推進部部長 中島洋さん

 日本CLT協会は、「CLTを建築構造材として使用できるようにすること」、「将来的に、CLTを用いた中層や大規模の建築を可能にすること」を目的として、2012年1月に設立された。会員は建材メーカー、住宅メーカーなど約340社(2017年12月現在)。それぞれ「設計」「防耐火」「施工」などのワーキンググループに分かれて、CLTの技術的な課題解決、用途の拡大や性能向上に向けた研究・開発活動などを行っている。
 「日本では2013年12月に製造規格となるJAS(日本農林規格)が制定されました。さらに2016年4月には、CLT関連の建築基準法告示が公布・施行され、いよいよ本格的にCLTの一般利用がスタートしたのです」そう語るのは、同協会業務推進部部長の中島洋さん。CLTのさまざまな特徴についても話してくれた。
 「CLTは構造材として建物を支えるだけでなく、断熱性や遮熱性、遮炎性、遮音性などに優れており、複合的な効果が期待できます。木の表面を活かして使用すれば、木目や木の肌触りを感じる心地のよい空間ができます。また、国内には莫大な森林資源が存在する一方で、木材の需要は減少傾向。CLTによってそうした森林資源を有効活用することで、環境負荷が少なく、リサイクルが可能であるなど、エコロジカルな建物を建てることができます」
 施工面でも、CLTには大きなメリットがあるという。「CLTパネルは工場で製造・加工が行なわれます。パネル同士はビスや金物を使ってつなぎ合わせているので、従来の建造材と比べて施工しやすいため、熟練の技を必要としないのが特徴です。近年、建設業界では人手不足が深刻ですが、そうした観点からもスピーディで正確な施工ができる点は大きなメリットと言えるでしょう」
 今後も更なる普及が期待されるCLT。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、新国立競技場の建物の一部にCLTが使用される見込み。国内外に向け、CLTが広く知られる好機となりそうだ。

 
変なホテル/長崎・ハウステンボスの豊かな自然と融和する木造ホテル。宿泊施設としては国内で初めてCLT工法が採用された/写真提供/ハウステンボス
コエボハウス(慶應義塾大学SFC研究所)/慶應義塾大学の研究室と企業が連携し、『2030年の家』というテーマの下、エコロジカルな住環境を提案するモデルハウス/写真提供/慶応義塾大学池田靖史研究室
ぷろぼの福祉ビル/奈良の市街地に建つ、木造5階建ての福祉施設。奈良県産のスギやヒノキを使ったCLTを用い、林野庁「ウッドデザイン賞」を受賞した/写真提供/ぷろぼの

1長崎・ハウステンボスの豊かな自然と融和する木造ホテル。宿泊施設としては国内で初めてCLT工法が採用された 2慶應義塾大学の研究室と企業が連携し、『2030年の家』というテーマの下、エコロジカルな住環境を提案するモデルハウス 3奈良の市街地に建つ、木造5階建ての福祉施設。奈良県産のスギやヒノキを使ったCLTを用い、林野庁「ウッドデザイン賞」を受賞した

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