環境省
VOLUME.63
2018年2月・3月号

特集:5つのエコ・アイデア IDEA-1 シュタットベルケ【Stadtwerke】再生可能エネルギー・省エネルギー

ドイツ生まれ、
地元密着の新・事業体

シュタットベルケとは、19世紀後半にドイツで生まれた自治体出資の民間事業体のことで、
電力、上下水道など生活インフラの整備や運営を地域密着型で行う。
地域資源を活用した再生可能エネルギー発電事業を担う事業体も多く、
得られた収益を活用して市民生活に必要な公共サービスを提供することもある。

みやま市の日照時間は年間2,066時間と、全国でも上位の太陽光発電の適地。市内の一戸建て住宅の約10%に太陽光パネルが設置されている

みやま市の日照時間は年間2,066時間と、全国でも上位の太陽光発電の適地。市内の一戸建て住宅の約10%に太陽光パネルが設置されている

CASE STUDY
みやまスマートエネルギー株式会社

国内では近年、「日本版シュタットベルケ」設立の動きが広がっています。
2015年に誕生し、その先駆的存在として注目される、福岡県みやま市の「みやまスマートエネルギー」に話を聞きました。

再エネで全国各地を元気にしたい

お話を伺った人/みやまスマートエネルギー株式会社代表取締役社長 磯部達さん

お話を伺った人/みやまスマートエネルギー株式会社代表取締役社長 磯部達さん

 みやまスマートエネルギーは、福岡県みやま市が出資しているメガソーラーによる発電や、一般住宅の太陽光発電の余剰電力を買い取り、地域の公共施設や契約家庭に電力を小売りする事業会社。企業や個人事業主などを含めた現在の契約数は約4,000件。電力を売買した収益の一部を、みやま市と連携した生活情報の配信や、ウェブ上で地元商店から買い物ができる「みやま横丁」、コミュニティスペース「さくらテラス」の運営など、くらしをより良くするための多彩な生活支援サービスの提供によって、利用者へと還元している。
 「多くの方が、私たちから電力を買うことで、まちづくりに協力したいと意欲的に参加してくださっています。」と話すのは、同社代表取締役社長の磯部達さん。2017年12月からは、環境省の委託事業として各家庭の家電ごとの消費電力を数値にして「見える化」し、使用状況に応じて省エネ行動を促すメッセージを送る取り組みもスタート。一つの家電、一人の行動から、地域全体に省エネ行動が広がることを期待している。
 また、2018年4月には、同社が買い取る宮城県気仙沼市のバイオマス発電所で発電した電力を、東京都目黒区の公共施設33カ所へ供給する取り組みを始める。「再生可能エネルギーを通じて各地が連携していくことで、単に電力売買というだけではなく、地域の活性にもつながっていきますし、地方と都市を結ぶことによって新しいニーズも生まれます。」これからもこうした事例を増やして、再エネで地方と都市を繋ぐ「接着剤」の役割を果たしていきたいと磯部さんは意気込む。
 電力自由化によって太陽光、水力などの再生可能エネルギーや、ごみ焼却による発電を行うなど、電力の地産地消がますます加速している。2017年には新たな事業体の設立や運営を支援する「日本シュタットベルケネットワーク」が誕生。「日本版シュタットベルケが全国に広がり、地域活性化や再エネ普及につながるよう、私たちも技術的サポートや事業の立ち上げ支援などを行い、協力していきます。」

 
20,000 枚の太陽光パネルを使用する、みやま市のメガソーラー。一般家庭の約1,500世帯分に相当する電力を供給できる
「さくらテラス」ではイベントやタブレット教室、地場産農作物を使った加工品の開発・販売などを行い、交流の場として親しまれている
ポータルサイト「みやまんサービス」の画面。契約者は、タブレット端末を使って手軽にサービスを利用できる

120,000枚の太陽光パネルを使用する、みやま市のメガソーラー。一般家庭の約1,500世帯分に相当する電力を供給できる 2「さくらテラス」ではイベントやタブレット教室、地場産農作物を使った加工品の開発・販売などを行い、交流の場として親しまれている 3ポータルサイト「みやまんサービス」の画面。契約者は、タブレット端末を使って手軽にサービスを利用できる

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