ビルは“ゼロ・エネルギー”の時代へ

改修ZEBコラム

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改修災害対策と働き方改革を見据えたZEB改修

白鷺電気工業株式会社 本社ビルの外観の写真
白鷺電気工業株式会社 本社ビルの外観
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熊本県熊本市のしらさぎホールディングス株式会社の「白鷺電気工業株式会社 本社ビル」では、2016年4月の熊本地震を機にZEBを含む3つのコンセプト(災害に強いビル、ZEBの導入、働き方改革)を基に震災復興の象徴となるビルを施工(既築改修)されました。

「白鷺電気工業株式会社 本社ビル」は、地中熱利用換気システム、外断熱、Low-E複層ガラス、直流配電システム等の導入により一次エネルギー削減率54%を達成、さらに太陽光発電システムにより創エネを含んだ一次エネルギー削減率も75%を達成し、Nearly ZEBに認証されています。

今回は、「白鷺電気工業株式会社 本社ビル」の既築改修によるZEB化について、白鷺電気工業株式会社の沼田氏(代表取締役社長)、眞田氏(イノベーション経営企画室 主任)、齋藤氏(管理本部 管理部 総務課 主任)にお話を伺いました。

ZEBは建物の災害対策とも相性がよい!?

白鷺電気工業株式会社 沼田社長、眞田主任、齋藤主任の写真
お話を伺った白鷺電気工業株式会社、
沼田社長(中央)、眞田主任(右)、齋藤主任(左)

(司会者)

今回、震災を機にZEB化を検討したと伺いましたが、「災害に強いビル」だけでなくZEBにも取り組まれた経緯をお聞かせください。

(沼田氏)

熊本震災が発生し、我々の社屋も半壊という認定を受け、災害に強いビルも取り入れたBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)を検討しました。他方で、震災以前から会社として環境への取組はしっかりと実施しており、今回の改修の中でもZEBを導入できないか考えました。省エネや創エネは、災害時に自前のエネルギーを用いるという観点で災害対策とも相性が良いのが特徴です。また、自社の業務形態を考えて先進的な設備を導入し、実証的にノウハウを蓄積する狙いもありました。

(司会者)

なるほど。確かに太陽光発電や蓄電池等は、災害時に拠点となるビルには必要不可欠な設備ですね。先進的な設備として具体的にはどのような設備を導入されましたか。

直流配電システムの分電盤の写真
直流配電システムの分電盤

(沼田氏)

本施設では、国内のオフィスビルで初めて中低圧直流配電システムを導入しました。直流配電システムは、太陽光発電や蓄電池に貯めた電気を交流変換せずに直流のまま利用できるシステムで、交流変換時の配電ロスを削減できます。直流で給電した電力は、直流用LEDや換気ファン等に用いています。これによって、災害時に自社の太陽光発電や蓄電池に貯めた電気を有効活用することができます。また、ZEBとは直接関係ありませんが、非常用発電機は、熊本地震の経験を踏まえて災害時に調達が難しかったガソリンや重油ではなく、LPガス発電にしています。

(司会者)

オフィスビルで直流配電システムを導入している施設は初めて拝見しました。今後、直流電流を利用できる電気機器が増えれば、より太陽光発電や蓄電池の電気を有効活用できますね。また、太陽光発電の導入が進む日本では、電気を直流配電で活用した事例として他のオフィスビルや家庭などにも参考になればと思います。

既築改修における地中熱空調の導入とその効果

地中熱利用換気システムの外観の写真
地中熱利用換気システムの外観

(司会者)

直流配電システムや太陽光発電など、災害対策と相性の良い設備をうまく選んで導入されているのですね。他に、設備を選択する際に既築改修ならではの課題や苦労はありましたか。

(眞田氏)

本施設の場合、改修以前の施設の床に梁が入っていた関係から1階床の断熱材導入や建物内に直接地中熱利用換気システムを導入することができませんでした。

地中熱利用換気システムは、年間を通じて安定している地中熱と熱交換を行うことで、室温を一定に保つことができます。今回の地中熱利用換気システムは、施設外部に設置し、1階の天井部分から各階の空調換気に繋ぐことで執務室内の空調を調整します。1階部分は天井からの換気、2階以上は足元からの換気をしています。

熊本市の外気温と地中の温度差を利用の写真
熊本市の外気温と地中の温度差を利用

(司会者)

実際に地中熱利用換気システムを導入してみて、施設内で働く社員は、どのような効果を感じているのでしょうか。

(沼田氏)

社員からは「冬は足元が温かく、夏は涼しくなった」と聞いています。コンセプトの働き方改革にも関わりますが、ZEBの導入によって労働環境は改善しているように感じます。

(眞田氏)

地中熱利用換気システム単体によるエネルギー削減効果を定量評価することはできませんが、感覚的には今回導入した設備の中でも地中熱利用換気システムによる省エネ効果はかなり高いと思います。

(司会者)

なるほど。社員が実際に働くビルだからこそ、数値上の省エネ効果だけでなく、快適な労働環境となるのは魅力的ですね。

既築改修のコストとZEB補助金制度の課題

(司会者)

今回の改修で、コンセプトとしていた災害対策、ZEBの導入、働き方改革の全ての面が大きく改善されたことと思います。一方で、これだけの改修するには、多額の費用が必要だったと思いますが、資金面の対応はどのようにされているのでしょうか。

(沼田氏)

改修にかかる投資資金は、地元と政府系の金融機関に融資していただきました。また、投資回収年は、ZEBの補助金がない場合で40.9年、補助金がある場合で15.6年を想定しています。現在の社会情勢上、将来的な電気代の高騰は避けられないと思いますし、それとは別に固定価格買取制度(FIT)の賦課金による電気代の上乗せが増加していくことを考えると、省エネと創エネによる電気のランニングコスト削減に大きなメリットを感じました。また、今回の国内のオフィスビル初の直流配電システム導入や「 Nearly ZEB」の認証は、多くの事業所や地方公共団体へのアピールに繋がったと感じております。そのような自社を知っていただいた広告宣伝費も考えれば、投資回収年はさらに短くなると思います。

(司会者)

確かに、電気代の高騰やFIT賦課金は今後も上昇する可能性はありますね。それを考えると今から省エネ+創エネの対策をしておくのは、資金面で見てもかなり有効かと思います。
一方で、資金面におけるZEB化の課題や改善点があればご教示いただけますか。

(沼田氏)

ZEBの補助金制度の建て付けとして、事業期間が原則単年度になっており、補助金の交付決定から竣工までを短期間で遂行する必要があり苦労しました。実際に補助金の決定を待つと間に合わない部分もあったため、補助対象外の設備などは先に工事を始めてしまう等、可能な限り前倒しで作業を進めました。複数年度を跨いだ事業期間となれば、工事時期の調整等でより総額を抑えることができ、ZEB導入のハードルが下がると思います。

また、既築設備の改修の場合、改修工事と通常業務の両立が一番のネックになります。改修中に一時的に他のビルに移転するにしても引越し費用や手間がかかりますので、それらの費用に対しても補助金がでると既築改修のZEB事例が増えるのではないでしょうか。

(司会者)

現時点でZEB化を進めるためには、補助制度は有効だと思います。補助制度をうまく活用してZEBを導入していくことが重要ですね。また、引越し費用など、実際に導入を考えてから出てくる問題点は、これからZEB化を検討する人にとっても参考になるかと思います。ありがとうございました。

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