ビルは“ゼロ・エネルギー”の時代へ

改修ZEB事例の技術情報

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建物概要

改修
事例14
久米島博物館沖縄県久米島町

久米島博物館の写真

離島の地元企業でもメンテナンス・修理可能な高効率な輻射式冷暖房システムの導入や照明設備等の更新、太陽光発電の導入で年間420万円のランニングコストを削減。光熱費を気にせず、夏季の展覧会の企画が可能に。

ZEBの分類
Nearly ZEB
  • 都道府県(地域区分):沖縄県(8地域)
  • 新築/既築:既設
  • 竣工年:2019年
  • 延床面積:2,096㎡
  • 階数(地上/地下):地上1階/地下1階
  • 主な構造:鉄筋コンクリート造
  • 建物用途:集会所等
  • 一次エネ削減率(創エネ除く/含む):70%/82%
久米島博物館の写真

導入したZEB技術

導入したZEB技術の表

 

輻射式冷暖房システムの写真
輻射式冷暖房システム
太陽光発電設備の写真
太陽光発電設備
LED照明の写真
LED照明
高効率パッケージエアコンの写真
高効率パッケージエアコン
LED照明 展示室の写真
LED照明 展示室
BEMS設備の写真
BEMS設備

 

ZEB化の実施検討にあたって苦労したこと/工夫したこと

【施主様のご意見】


ZEB化を目指した理由

課題

当時、開館から20年を迎えようとしており、老朽化した空調設備・ 照明の省エネ化・リニューアルが運営上の大きな課題になっていた。
費用面から一般財源では厳しいということで財政担当課からは、何らかの補助事業等、財政的に有利な事業導入が求められていた。

解決方法

環境省ZEB化事業が対象事業費の6割が補助金対応可能な事業であり採択の可能性が高い事、事業の内容が当館の上記課題に合致していることから、ZEB化を目指すこと決定した。

【事業者様のご意見】


空調設備

課題

改修前は、離島内の業者が対応できないデシカント内蔵型ビルマルチ空調機を採用していて、メンテナンスと修理に時間と費用がかかっていた。

解決方法

地元企業でもメンテナンスと修理対応ができて、除湿効果と省エネ性を兼ね備えた高性能エアコンと輻射式ハイブリット空調機を採用した。

展示室の照明設備

課題

展示室照明のLED化を行う上で、展示品種類別照明設計を行う必要があり依頼先の専門家や費用、納期が分からず苦労した。

解決方法

博物館展示照明プランナーの協力を得て、照明設計プランは完成した。費用が予定の2倍になったが、補助金の活用で理解を得た。

ZEB検討の手順

ステップ1

開口部(窓)の断熱を検討

設備の不具合、老朽化、設備運用上の課題、機能性についてヒアリングで現状把握した。

 

ステップ2

外壁・屋根の断熱を検討

現状で、BPIが1.0以下になっているか既設図面で確認した。

 

ステップ3

高効率設備の検討

高効率空調、照明設備について検討した。

 

ステップ4

展示室照明設備の検討

展示照明プランナー専門家による検討。

 

ステップ5

再エネの検討

太陽光発電設備について予算と設置場所・スペースを考慮して導入可能な能力を検討した。

 

ステップ6

省エネ性・経済性の検討

STEP1~5までの検討結果をもとに再エネを導入する方向で様々なぷらん省エネ性及び経済性を検討した。

 

ステップ7

スケジュールの検討

ZEB化実現のための施工スケジュールを検討した。

 

ZEB化実現までのスケジュール

ZEB化実現までのスケジュールの画像

「ZEB化改修計画」の具体的内容

建築研究所計算プログラム(標準入力法)にてZEB化改修が可能かを確認し、ZEB実現のための計画を策定した。実施内容は以下の通りである。

  1. ① 外皮性能の向上:元々断熱性に優れていた
  2. ② 空調システムの変更提案:ビル用マルチエアコン→輻射式ハイブリット空調機
  3. ③ 再生可能エネルギー設備の検討
  4. ④ コージェネレーションシステムの検討
  5. ⑤ 建築研究所計算プログラム(標準入力法)を使用したZEBの評価
  6. ⑥ 概算事業費、想定補助金額、事業者想定負担金額の算出
  7. ⑦ 実施後のための情報整理(CO2削減量、経済性)
  8. ⑧ 補助事業活用の検討
  9. ⑨ ZEB化改修のスケジュール作成

事業実施後の運用改善状況

運用改善の実施状況

空調設備稼働の自動制御や詳細な温度設定が可能になったこと。担当職員が可視化された電力使用量のデータを随時確認した上で、自動制御設定のチューニングを行っており、継続的な省エネにつながっている。

ZEBの効果

CO2削減量

157.3t-CO2/年(計算値)
※(建物のエネルギー使用量基準値)-(建物のエネルギー使用量設計値)

ランニングコスト
削減額

約420万円/年(想定値)

総工費

ZEB化費用:13,240万円
実質負担額:6,996.6万円

※国庫補助金:6,243.4万円

投資回収年数

約16.7年
※実質負担額 ÷ ランニングコスト

その他の効果

空調設備稼働の自動制御や詳細な温度設定が可能となったことに加え担当職員で、可視化された電力使用量のデータを随時確認した上でこまめに自動制御設定のチューニングを行っており、継続的な省エネにつながっている。

改修前は、光熱費の高騰を意識するあまり、冷房を満足に利用できず、夏場に実施できる展示が制限されていたが、ZEB化により省エネ化することで、光熱費が削減され、予算を気にせずに展覧会を企画できるようになった。
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