ビルは“ゼロ・エネルギー”の時代へ

改修ZEB事例の技術情報

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建物概要

改修
事例5
上田病院医療法人健静会

改修
事例5
上田病院医療法人健静会

太陽光設備やヒートポンプ給湯機により給湯を効率化。また、新設した太陽光発電設備と蓄電池の導入で緊急時に待合室の空調や病室等の照明への電力供給が可能になり事業継続性を向上。

ZEBの分類
ZEB Ready
  • 都道府県(地域区分):長野県(4地域)
  • 新築/既築:既築
  • 竣工年:2020年
  • 延床面積:1,467.48㎡
  • 階数(地上/地下):地上4階
  • 主な構造:S造
  • 建物用途:病院
  • 一次エネ削減率(創エネ除く/含む):50.4%/55.0%
上田病院の写真

導入したZEB技術

建築省エネルギー技術

導入したZEB技術の表

※(本施設のエネルギー使用量)/(同仕様の建物のエネルギー使用量)を示した値であり、数値が小さいほど省エネ性能が高い。

 

外皮 ガラス施工前の写真
外皮 ガラス施工前
外皮 高性能断熱サッシ Low-E ガラス(内窓)の写真
外皮 高性能断熱サッシ
Low-E ガラス(内窓)
高効率空調機①の写真
高効率空調機①
高効率空調機②の写真
高効率空調機②
高効率空調機 ホール停電対応空調機の写真
高効率空調機
ホール停電対応空調機
照明設備 LED照明 病室内の写真
照明設備 LED照明 病室内
照明設備 LED照明 ホール内の写真
照明設備 LED照明 ホール内
給湯設備 エコキュートの写真
給湯設備 エコキュート
太陽熱設備 太陽熱パネルの写真
太陽熱設備 太陽熱パネル
太陽熱設備 貯湯槽の写真
太陽熱設備 貯湯槽
太陽光発電設備の写真
太陽光発電設備
蓄電池設備 リチウムイオン蓄電池の写真
蓄電池設備
リチウムイオン蓄電池
電気設備 高効率トランスの写真
電気設備 高効率トランス
BEMS設備 監視装置の写真
BEMS設備 監視装置

 

ZEB化検討にあたって苦労したこと/工夫したこと

【建築主様のご意見】


ZEB化による初期費用の増加

課題

ZEB化改修を実施するにあたって事業費を算出したところ、当初の予算に対し、2倍以上の費用がかかることが明らかとなった。
そのため、そこまでの費用をかけてまでZEBを実施しなくても良いのではないかとの意見があった。

解決方法

ZEB化の実現には補助金の活用が可能であり、初期費用が抑えられる利点を説明し、理解を得ることができた。

ZEB化に伴う工事期間

課題

ZEB化に取り組む中で改修が必要な設備が増え、当初計画していた改修工事よりも、工事期間が長くなった。

解決方法

工事の際、ご迷惑をかけてしまう方々(入院患者様など)に対し、事前に説明することにより、理解を図った。

【事業者様のご意見】


太陽光パネル設置場所の検討

課題

本施設はZEB実現と合わせ、災害時の設備稼働も可能とする計画であった。
ZEB化改修を実施した棟増築棟は陸屋根であり、ある程度の地震にも耐えうる耐震性を確保したうえで太陽光パネルを設置する場合は、架台+アンカー固定が必要であった。
しかし、陸屋根にアンカー固定を実施する場合、大がかりな屋根の防水工事が必要となる。加えて、屋根には太陽光パネル以外の設備の設置が必要であり、設置スペースの確保も難しい状況であった。

解決方法

太陽光発電の既存棟改修工事を実施しない棟への設置を検討した。既存棟は折半屋根であったため、簡易な工事で必要な耐震性を確保することができた。さらに、他の設備が設置されていなかったため、設置スペースの確保も容易であった。

①高効率室外機 ②太陽熱 ③太陽熱貯湯槽 ④変圧器 ⑤太陽光パネル

一次エネルギー削減量確認のための計算

課題

WEBPRO計算で削減率50%以上にするため省エネプランを確立した。

解決方法

空調メーカ毎、再エネの能力等について、試行錯誤しWEBPRO計算で削 減率50%以上を実現した。

停電時に稼働させる設備の検討

課題

災害時医療救護協定病院であることを踏まえ、停電時にどの設備を稼働させるか検討した。

解決方法

手術室系統は非常用発電設備があった。そのため、本事業で導入した再エネ・蓄エネ設備のエネルギー供給先は、「待合室の空調」及び「病室・廊下・診察室等の照明」とした。

ZEB検討の手順

ステップ1

現状の把握

設備の不具合、老朽化、設備運上の課題、機能性についてヒアリングで現状把握した。

 

ステップ2

開口部窓の断熱を検討

BPIを1.0以下にするため、開口部の断熱性向上を検討した。

 

ステップ3

負荷削減の検討

空調負荷を削減するために照明負荷削減にLED照明及びセンサーについて検討した。

 

ステップ4

高効率設備の選定

高効率空調、照明、給湯、変圧器設備について検討した。

 

ステップ5

再エネの検討

太陽光発電設備と太陽熱設備について予算と設置スペースを考慮して導入可能な能力を検討した。

 

ステップ6

蓄エネの検討

停電時に稼働させる設備を選定し、その設備を稼働させるための必要な電力量をもとに蓄電量を検討した。

 

ステップ7

省エネ性・経済性の検討

STEP1~6までの検討結果をもとに再エネ・蓄エネを導入する方向で様々なプラン省エネ性及び経済性を検討した。

 

ステップ8

スケジュールの検討

ZEB化実現のための施工スケジュールを検討した。

 

ZEB化実現までのスケジュール

ZEB化実現までのスケジュールの画像

「ZEB化改修計画」の具体的内容

建築研究所計算プログラム標準入力法にてZEB化改修が可能かを確認し、ZEB実現のための計画を策定した。実施内容は以下の通りである。

  1. ① 外皮性能の向上
  2. ② 空調システムの変更提案:ガスエンジンエアコン→空冷式ヒートポンプエアコン(電気)
  3. ③ 再生可能エネルギー設備の検討
  4. ④ コージェネレーションシステムの検討
  5. ⑤ 建築研究所計算プログラム(標準入力法)を使用したZEBの評価
  6. ⑥ 概算事業費、想定補助金額、事業者想定負担金額の算出
  7. ⑦ 実施後のための情報整理(CO2削減量、経済性)
  8. ⑧ 補助事業活用の検討
  9. ⑨ ZEB化改修のスケジュール作成

事業実施後の運用改善状況

運用改善の実施状況

  • 年に2回、ZEBプランナーよりエネルギー使用状況の報告を受けている。また、その際に必要に応じて運用改善のアドバイスをいただいている。

ZEBプランナーからの運用改善の提案

  • BEMS装置による空調機のスケジュール運転を実施した。(消し忘れの防止)
  • 空調温度設定の見直しを行った。
  • 改修工事前は、経年劣化により空調機器の能力が低下していたため、非常に高い設定温度であった。更新直後も、更新前と同じ温度設定であったため、BEMS装置にて設定温度の見直しを実施した。
  • 本改修工事後に給湯設備を更新したが、BEMSにより給湯の利用状況をモニタリングしていたため、能力の適正化を図ることができた。

事業実施後の運用改善を見越して実施した工夫


BEMSの導入

運用改善のためには、設備の稼働、エネルギー使用量及び室内環境のモニタリングが重要である。
上田病院では、空調、照明、給湯、太陽光発電、太陽熱熱量、その他を10分単位で計測している 。
管理点数83点である。

ZEBプランナーにBEMSデータの分析を依頼

BEMSのデータの分析は、データ量が多く専門的であるため、一般の人には難しい。ZEBプランナーに分析を依頼することで、持続的な運用改善を図っている。

ZEBの効果

CO2削減量

86.24t-CO2/年(計算値)
※(ZEB改修前のCO2排出量)-(ZEB化改修後のCO2排出量)

ランニングコスト
削減額

250万円/年(想定値)

ZEB化費用

総工費:9,900万円
実質負担額:4,000万円

国庫補助金:5,900万円

投資回収年数

16年
※(実質負担額)÷(ランニングコスト削減額)

その他の効果

  • 空調設備更新予算(空調+電気)で全体工事ができた。
  • 太陽光蓄電池を導入したことにより、事業継続性が向上した。
  • 内窓を導入により、窓側のコールドドラフトの改善、防音性の向上効果が得られた。
※施工上改修できなかった事務室の職員から、窓際が寒い、防音性が違いすぎる等とクレームが発生している
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