ビルは“ゼロ・エネルギー”の時代へ

改修ZEB事例の技術情報

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建物概要

改修
事例1
前田住設社屋株式会社前田住設

前田住設社屋の写真

寒冷地域において断熱性能の向上と全熱交換器の導入による空調のダウンサイジングと、積雪の影響を受けにくい壁面太陽光発電の設置等により「Nearly ZEB」を実現。

ZEBの分類
Nearly ZEB
  • 都道府県(地域区分):北海道(1地域)
  • 新築/既築:既存建築物
  • 竣工年:2020年
  • 延床面積:882.62㎡
  • 階数(地上/地下):地上3階
  • 主な構造:S造
  • 建物用途:事務所
  • 一次エネ削減率(創エネ除く/含む):59.2%/82%
前田住設社屋の写真

導入したZEB技術

導入したZEB技術の表

※1 既存ストックの再生案件のため、更新前の設備は不明である。
※2 (本施設のエネルギー使用量)/(同仕様の建物のエネルギー使用量)を示した値であり、数値が小さいほど省エネ性能が高い。

 

太陽光発電設備の写真
太陽光発電設備
リチウムイオン蓄電池の写真
リチウムイオン蓄電池
LED照明の写真
LED照明
高効率空調機の写真
高効率空調機
全熱交換換気扇の写真
全熱交換換気扇
Low-E ペアガラスの写真
Low-E ペアガラス

 

ZEB化検討にあたって苦労したこと/工夫したこと

【建築主様のご意見】


限られた期間内での工事

課題

以下の理由から、特に空調改修においては、限られた期間内で工事を実施しなければならなかった。
  • 補助事業の活用による工事期間の制限
  • 冬季までの空調工事の完了(※)
※本施設の所在地は北海道旭川市であるため、他の地域と比較して、暖房が必要となる時期が早い。

解決方法

施工期間を指定したうえで、施工業者と契約した。

【事業者様のご意見】


省エネ地域区分1地区における既存ストックのNearly ZEB化

課題

北海道(省エネ地域区分1地区)において、既存ストックのリニューアルによるNearly ZEBを達成方法の検討が必要であった。

解決方法

北海道という地域の特性上、外気による空調負荷が大きいため、断熱性能の向上(外壁、事務所床及び天井)及び全熱交換器の導入により、冬季における快適な室内環境は維持しつつ、空調のダウンサイジングを実現した。
加えて、旭川市は降雪が多い地域のため、積雪の影響を受けにくい、壁面に太陽光発電を設置した。

老朽建築ストックの再生

課題

改修前の外皮断熱性能が低く、建物の省エネ性能向上のためには、断熱性能の向上が必要であった。

解決方法

高性能断熱材を壁面、床面に用いることで高断熱を実現した。

空調負荷の低減

課題

冬季の外気負荷の低減及び暖房負荷の削減を図る必要があった。

解決方法

導入外気を全熱交換器を通して行い、断熱性能の向上+高効率空調機の導入による負荷の軽減を実現した。

ZEB検討の手順

ステップ1

現状把握

室内の快適性+建築物の状況把握を行った。

 

ステップ2

断熱性の向上

主に使われる部屋である事務室の断熱性を確保した。

 

ステップ3

適正負荷の検討

熱負荷計算を行い、適切な空調負荷を計算した。

 

ステップ4

負荷の削減

空調負荷削減のための高効率空調機+全熱交換器、照明負荷削減のためのLED+人感センサーを検討した。

 

ステップ5

再エネ・蓄エネの検討

太陽光発電の導入量は、壁面に導入可能な枚数とした。
蓄電池の容量は、以下の2点に考慮し決定した。
・停電時、太陽光発電量+蓄電量で事業継続に必要な電力を賄えること
・太陽光の余剰電力を蓄電できること。(※)
※太陽光の発電量は、蓄電池を活用することにより、余剰売電をせずに自家消費している。

 

ステップ6

省エネ性・経済性の検討

STEP1~STEP5までの検討結果をもとに、Nearly ZEBに相当するよう省エネ計算を行い検討した。

 

ステップ7

スケジュールの検討

ZEB化実現のための施工スケジュールについて検討。

 

ZEB化実現までのスケジュール

ZEB化実現までのスケジュールの画像

「ZEB化改修計画」の具体的内容

建築研究所計算プログラム(標準入力法)にて前田住設社屋がNearly ZEBに該当することを確認し、ZEB実現のための計画を策定した。実施内容は以下の通りである。

  1. ① 外気負荷低減のため高性能断熱材の導入
  2. ② 太陽光発電、蓄電池の導入検討
  3. ③ 建築研究所計算プログラム(標準入力法)を使用したZEB評価
  4. ④ 概算事業費の算出
  5. ⑤ 実施検討のための情報整理
  6. ⑥ 補助事業活用の検討
  7. ⑦ ZEB化改修のスケジュール作成

事業実施後の運用改善状況

運用改善の実施状況

外部事業者より、毎月、エネルギー使用量の報告を受けている。 現時点では、毎月、エネルギー使用量が目標値を上回っている。さらにエネルギー使用量を見える化したことにより、社員の省エネ意識が高まったと実感している。

事業実施後の運用改善を見越して実施した工夫

  • BEMSを設置し、エネルギー使用量を見える化した。
  • 共用部分の照明について、ゾーニング制御を導入し、各エリアの作業特性に合わせて照度を細かく設定できるようにした。

ZEBの効果

CO 2削減量

28.26t-CO2/年(計算値)
※(建物のエネルギー使用量基準値)-(建物のエネルギー使用量設計値)

ランニングコスト
削減額

117万円/年(計算値)
※既存ストック改修案件であり、改修前のエネルギー使用量データがないため、エネルギー使用量の基準値と設計値の差をもとに算出した。
※電力単価は24円/kWhと仮定した。

ZEB化費用

ZEB化費用:8,240万円
実質負担額:4,680万円

※1 国庫補助金:3,560万円
※2 設計費は含まない

投資回収年数

40年
※(実質負担額)÷(ランニングコスト削減額)

その他の効果

  • 太陽光+蓄電池により、事業継続性が向上した。
  • 高断熱化により、快適性が向上した。
  • 全熱交換器+高効率空調機により、快適性が向上した。
  • 照明の人感センサー制御により、省エネ効果が向上した。
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