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研究概要
１．序（研究背景等）
わが国は近年年間500万台を超える自動車を廃棄物として出している。そして、その内半数の約250万台程度（正確には把握されていない）の自動車が東アジアを中心に中古車及び部品として、あるいは材料として利用されている。しかし中古車及び部品としての使用に際して、燃料の品質、利用方法に合わせたエンジン制御方法の変更、触媒の品質管理などが行われることはほとんどない。このため通常よりも多くの温暖化ガスを発生させているだけでなく、NOx、SPM、HC等の自動車排ガス問題を発生させている。さらに再資源化に際してはエアコンの冷媒として利用されている代替フロン、エンジンオイル等の有害物の処理が情報不足や技術不足の為適切に行われず地球温暖化問題や土壌汚染問題を発生させている。こうした状況の発生を未然に防ぎ、適切な広義のリサイクルを実現することは自動車の主要生産国としての責務でもあり、この責務を果たすことによる地球環境改善効果は大きいと考えられる。こうしたわが国からの使用済み自動車及び部品の流出による東アジア諸国でのエネルギー資源の浪費や有害廃棄物の越境移動といった地球環境問題に対して日本の自動車メーカーは中古車、特に一度モノとして流出した自動車及び部品についての責任は無いとの立場から、関与していく姿勢は見られない。これはわが国の自動車メーカーだけでなく全世界の自動車メーカーに共通である。しかし、一方で世界的にも自動車リサイクル法が整備されつつある現状においてこのままで良いという認識には変化が見られる。東アジア諸国での自動車による急激な化石エネルギー消費の増加や使用済み自動車の出現を考えると、わが国発の使用済み自動車の実態の把握と流出先で適切に使用・再資源化していくために必要な技術、人材、制度の支援策を作成し、未然に地球環境負荷の発生を防止していくことはきわめて重要である。
２．研究目的
本研究は、地球温暖化に加え複数の環境問題を引き起こしながら対応が遅れているわが国発の使用済み自動車を輸出先で適切に使用・再資源化していくために必要な体制を構築することを目指し、そのために必要な次の3点を明らかにすることを目的としている。
1. わが国から東アジア諸国へ輸出している使用済み自動車の流動、使用、再資源化の現状を定量的に把握する。
2. 輸出先のアジア諸国を自動車及び部品としての使用が中心の国（例えばタイ）、再資源化が中心の国（例えば中国）、使用と再資源化を行っている国（例えばインドネシア）の3つの典型的なタイプに分け、それぞれのタイプから対象国を1カ国抽出し、自動車・部品としての使用状況、再資源化状況を把握し、それに基づき環境負荷発生量を削減するために必要な制度、技術、情報を明らかにする。
3. 1、2の成果を踏まえわが国の使用済み自動車に関する例えば簡易な車両検査方法の導入、車検制度の改善、高効率・低環境負荷な再資源化技術情報の提供といった政策代替案について評価、提案を行う。
３．研究の内容・成果
研究目的1に対応して以下の(1)、(2)を、研究目的2に対応して(3)、(4)、(5)、研究目的3に対応して(6)、(7)を実施し、以下主要な成果を示す。
（１）日本からの使用済み自動車及び部品の発生量とその適切な使用・再資源化に向けた取り組みの現状
日本で発生する使用済み自動車の中古車及び部品あるいは材料としての輸出量を把握すると共に、日本と海外を対象に、使用済み自動車の輸出に影響を及ぼすことが考えられる政策や自動車リサイクルの取組みについて整理した。
平成15年度は、文献調査、関係者へのヒアリング調査を基に「輸出」の位置付けを明確にした。さらに税関支署へのヒアリング・アンケート調査結果と貿易統計を用いて2000年での日本からの輸出総量を推計した。使用済み自動車輸出に影響を及ぼす政策の影響を明らかにするため、各種統計を用いて日本の自動車NOx法が使用済み自動車発生及び中古車・部品輸出の増加に及ぼした影響量を推計した。また海外調査より先進的な自動車リサイクル事例であるオランダでのARNシステム、ドイツでの中古車輸出問題、韓国での今後の日本からのAプレス（使用済み自動車から有用部品等を回収された後の廃車ガラをプレス加工したもの）の輸入の可能性について整理した。
平成16年度は、日本からの使用済み自動車の輸出総量を推計する際の課題であった携帯輸出（ロシア船員による携帯品としての海外持ち出し）について、その量と関連情報を補充するため、港運業者へのアンケート調査を行った。世界一の日本製中古車輸入国であるニュージーランドの輸入中古車の社会的な背景、その量や内容、検査やリサイクルの現状について、現地の関係者へのヒアリング調査より把握した。また将来日本と同じように使用済み自動車の輸出国となる可能性が高い韓国を対象に現地調査を行い、自動車リサイクルの取り組みの現状を把握した。
平成17年度は、2005年7月に中古車の携帯輸出禁止措置を受け、携帯輸出に及ぼした影響を検討した。平成16年度に引き続き、ニュージーランド、韓国の調査を進めると共に、欧州の自動車リサイクル法について整理し、2005年1月より施行された日本の自動車リサイクル法の位置づけを明確にした。
（２）東アジア諸国での日本からの使用済み自動車及び部品の使用・再資源化状況の現状把握
本研究は、日本から東アジア諸国への使用済み自動車の中古車及び部品あるいは材料としての流動、使用、再資源化の状況とそれに伴う環境負荷を把握した。
平成15年度は、使用済み自動車の国際流動と再資源化の状況を定量的に評価するための準備を行った。まず国際流動に関しては、東アジア諸国の貿易統計の作成状況を把握し、自動車関連の品目に関する貿易統計の不整合問題について日本とタイを例に検証した。また国際流動を可視化する方法についても検討した。次に、再資源化に関しては、中国の現状とその間題を明らかにした。
平成16年度は、東アジア諸国における日本からの使用済み自動車の国際流動と再資源化の状況とそれに付随して排出される環境負荷を包括的に把握及び評価できるデータベースの作成法を提案し、その作成を試みた。具体的にはアジア経済研究所が公表するアジア国際産業連関表に、東アジア諸国の貿易統計や運輸統計、関連調査、環境負荷インベントリデータ等から得られる使用済み自動車の部品や材料の詳細なマテリアルフローデータを組み込んだアジア国際自動車リサイクル産業連関表（データベース）を考案した。そして1995年の日本とタイを対象にその作成を行った。
平成17年度は、新たに中国を対象に加え、平成16年度に作成したデータベースの拡充を試みた。
（３）自動車及び部品としての使用の詳細把握と地球環境負荷発生量への影響分析
本研究は、東アジア諸国の中から日本から使用済み自動車を中古車及び部品として使用する国としてタイを選定し、日本発の使用済み自動車が中古車、中古部品、材料として使用・再資源化される際に発生する環境負荷量を定量的に評価する手法を開発した。
平成15年度は、タイの研究者と協力して、政府機関の関係者へのヒアリング調査より手法開発に必要となる基礎統計の整備状況やその性質を把握した。さらに入手した統計を用いてタイでの自動車の保有と使用のモデル化（自動車保有・使用モデル）を試みた。
平成16年度は、タイでの車検制度等の運輸政策の評価が出来るように平成15年度に試作した自動車保有・使用モデルを精緻化し、運輸政策について各種シミュレーション分析を行った。また、自動車の再資源化量やそれに伴う環境負荷量を推計するモデルを開発するため、サブテーマ（２）で作成した日本とタイを対象にしたアジア国際自動車リサイクル産業連関表を基に産業連関モデル（自動車再資源化モデル）を導出した。さらにそのモデルを用いて日本からタイへの使用済み自動車の輸出を全面禁止にして両国が各自に再資源化処理を行う自動車国際再資源化システムと、輸出は自由化にしてタイで発生した使用済み自動車を日本で再資源化処理を行う自動車国際再資源化システムについて評価した。
平成17年度は、平成16年度に精緻化した自動車保有・使用モデルを用いて、車検制度の改善、中古車輸入規制の緩和について影響分析を行った。また平成16年度の自動車再資源化モデルの分析において、自動車国際再資源化システムに、日本に使用済み自動車を輸出せずタイ国内において適切な再資源化処理を行うケースについても分析対象に加えて、その影響を評価した。
（４）再資源化の現状とその技術的な問題点の抽出と改善策の作成
本研究は、東アジア諸国の中から日本発の使用済み自動車を材料として再資源化する国として中国を選定し、日本発の使用済み自動車を材料として再資源化する際に発生する環境負荷量を把握し、その技術的な問題を明らかにし、改善策を提案した。
平成15年度は、中国のなかでも上海市に焦点をあて、現地の研究者と協力し、中古車販売業者、解体業者ヘヒアリング調査を行い、上海市の自動車保有・使用・廃棄の全体像を把握し、さらに整備業者へのヒアリング調査を行い、整備量、整備体制、整備内容、車検内容について整理した。そして技術的な視点から自動車整備に伴って発生する問題を明らかにした。
平成16年度は、資源の国際流動の特徴を把握するため、鉄・非鉄屑の国際フローを把握した。次に中国における日本から輸入されるＡプレス（使用済み自動車から有用部品等を回収した後、プレス加工したもの）の現状について、その輸入量、主な輸入地域、分解技術、成分及び構成、利用ルートについて把握した。
平成17年度は、平成16年度に引き続き、�，濃餮擦旅餾殞�動の特徴を把握するため、中国の鉄、アルミ、銅と、サブテーマ（２）で作成した中国のデータベースより使用済み自動車のマテリアルフローを把握した。さらに、日本から輸入されるＡプレスの輸入政策の最新の動向も把握すると共に、サブテーマ（３）で開発した自動車再資源化モデルを用いて、Ａプレス輸入政策の影響分析を行った。
（５）自動車及び部品の使用・再資源化の現状と使用段階における改善策の作成
本研究は、日本発の使用済み自動車を中古車及び部品として使用し、その後は自国内で材料として再資源化するインドネシアを選び、日本発の使用済み自動車を中古車及び部品として使用とその再資源化の現状と問題点を適切にかつ定量的に把握し適切な環境負荷発生量の削減のための改善策を作成した。
平成15年度は、日本発の使用済み自動車を中古車及び部品の輸入に注目し、インドネシアでの研究協力者と協力し、関係者へのヒアリング調査より、インドネシアの輸入政策、輸入の実態、輸入に関連する登録・車検制度の問題を整理した。さらに中古車及び部品に関連したデータベースの構築のための準備も行った。
平成16年度は、輸入の実態をより正確に把握するため日本とインドネシアの統計より中古車の輸入状況やシンガポール経由の現状を把握した。また登録・車検制度の改善策を提案し、その評価するための準備として、インドネシア政府が行ったクリーンバス・プログラムの概要とその効果について把握した。また車検の導入に必要となるコストについて、日本の車検をケーススタディとし、検査機器コストを把握した。
平成17年度は、インドネシアの再資源化の問題としてバッテリーの不適切処理の実態を紹介すると共に、その環境負荷量の推計を行った。また、インドネシアで車検制度の導入と排出ガス規制を強化した場合の排出ガス削減効果についても推計を試みた。
（６）LCAによる日本からの使用済み自動車及び部品の適切な使用・再資源化システムの設計
地球温暖化に加え複数の環境問題を引き起こしながら対応が遅れているわが国発の使用済み自動車および部品を、流出先で適切に使用・再資源化していくため適切な使用・再資源化システムを設計することが必要となる。本研究はそのシステム設計のための評価手法として製造から使用、廃棄までのライフサイクルを評価するライフサイクルアセスメント（LCA）に注目し、日本発の使用済み自動車の東アジア諸国における第二ライフサイクル、第三ライフサイクルを考慮できるよう現存の自動車LCA手法の拡張を行った。
平成15年度は、東アジア諸国のなかで日本発の使用済み自動車を中古車として利用し、その後国内で再資源化する代表的な国の1つであるインドネシアを例に日本からのガソリン車とディーゼル車の第二ライフサイクルを対象に途上国における自動車の環境負荷増加要因を抽出しLCAインベントリ分析を用いて定量化し、さらに産業技術総合研究所が開発した日本版被害算定法（LIME法）を用いて社会的な外部コストを推計することで環境影響を評価した。
平成16年度は、前述のLCAモデルの改良・拡張をおこない、低年式の輸出中古車が第二、第三ライフサイクルを全うするシステムと第二、第三ライフサイクルに対してそれぞれ新車を供給し、自国でライフサイクルを全うするシステムを比較し、環境対策の効果を外部コストから評価した。
平成17年度は、さらなるLCAモデルの改良・拡張を行い、モデルを精緻化するとともに、インドネシア、タイを対象に、自動車国際使用・再資源化システム（使用済み自動車自体の輸出入に制約を設けず各国の使用・再資源化状況に応じた最適な個別防止策を講じる）と自動車国内使用・再資源化システム（各国が自国内で排出された使用済み自動車を自国内で全て再資源化する）の比較を行った。
（７）日本からの使用済み自動車及び部品の適切な使用・再資源化実現のための政策の検討
本研究では日本から東アジア諸国へ輸出される使用済み自動車の適切な使用・再資源化システムの構築に必要となるわが国の国際貢献策とその継続的改善策を検討した。
平成15年度は、タイ、インドネシアへ赴き、現地の研究者に本研究の説明を行い、相手の研究との関係も含め共同研究体制を構築し、さらに海外の研究者を日本へ招聘し、各研究者の取り組んでいる研究と本研究との関係を確認し、互いに協力・補完できる共同研究案を検討した。本研究成果をアジア各国の関連する研究者や政府関係者に宣伝し議論することにより効果的にわが国の国際貢献を検討するための準備を行った。さらに東アジア諸国を中心に各国の中古車及び部品に関連した輸入政策に関して、文献調査を基に関税と関税を伴わない規制の両面から整理した。
平成16年度は、タイ、中国、インドネシアを対象に整理された自動車の使用・再資源化に関する各政策課題とその個別の改善策についてまとめ、個別の改善策の評価に必要となる手法開発やより適当な改善策を検討する際に必要となる情報やデータの入手を目的とした共同研究会をタイと中国で行った。そしてタイでは、チェンマイ大学の研究者と、タイを対象に運輸政策の評価ツールである自動車保有・使用モデルの課題について議論し、現地での自動車性能の評価の重要性が明らかになり、その課題の克服に必要となる現地の詳細な自動車燃費データを入手した。また中国では、大連理工大学の研究者と議論し、自動車の使用やリサイクルの現状が中国省間で大きく異なることが明らかになり、昨年度の上海に加え、大連における自動車の使用やリサイクルの現状を把握するための共同研究体制を構築した。
平成17年度は、各サブテーマの成果を、海外の共同研究者と共に総合的に検討することで、東アジアでの日本からの使用済み自動車が引き起こす環境問題に対する適切な防止策を検討した。国内外の研究会より、防止策として各国状況に応じた最適な個別防止策を講じる自動車国際使用・再資源化システムと使用済み自動車を全て国内再資源化する自動車国内使用・再資源化システムを提案した。輸出先での自動車使用・再資源化体制に問題があるほど自動車国際使用・再資源化システムが有効であるという知見が得られたため、各国の現状に加え将来の動向についてより正確かつ網羅的な把握と、システム導入には日本を含めた関係国間の協力体制の構築が重要であることを確認した。
４．考察
（平成15年度）
（１）日本から使用済み自動車の総輸出量を把握する際に携帯品輸出のように現状の貿易統計では捉えることが出来ない量を正確に把握することは重要である。
（２）日本から東アジア諸国への使用済み自動車の流動量は、各国の輸入政策に加え、わが国の環境関連政策により影響を受ける可能性があるのでこうした点への配慮が必要である。
（３）国際流動量を把握する際に有効な各国貿易統計は、対象になっていない部分や輸出側と輸入側の統計値が異なるなど問題が存在するため、その扱いには充分な注意が必要である。
（４）輸出先での使用に伴う環境負荷量を推計するために開発した手法は、それぞれの国の統計資料の整備状況に合わせて修正していくことが重要である。
（５）中国での再資源化方法は手作業が中心であり、資源の徹底利用が行われている。しかし長期的にその方法が継続するかは未知であり、また現状でも不適正処理は行われておりため、将来的に大きな環境問題となる可能性が高い。
（６）中古車及び部品の使用時環境負荷を評価するためには東アジア諸国の自動車の保有・使用に関連する統計が必要となる。その時にその統計精度を検討することが重要である。
（７）本研究課題は自動車に関連する政策の位置付けを自動車製造、輸出入、保有、使用、再資源化の各段階のなかで明確にすることは、今後政策提案する際に重要である。
（８）本研究で開発した第二、第三ライフサイクルを考慮したLCA手法は、現状の一台ベースでの評価に加えシステム単位での評価が可能なように拡張する必要がある。
（９）海外の関連分野の研究者とネットワークを構築することは、研究を迅速に進めるうえで必要不可欠である。このため海外の研究者との充分な議論が重要である。
（平成16年度）
（１）日本から使用済み自動車の中古車及び部品あるいは材料として輸出される総量を把握する際の課題であった携帯輸出を精度良く推計するには、携帯輸出を行うロシア船の港湾間の周遊行動を考慮した推計方法を検討する必要がある。
（２）近い将来ASEANにおいて輸入が解禁となったとき、日本からの使用済み自動車の流動状況がどのように変化するかを捉えるために、関税が撤廃され中古車が大量に輸入されるようになったニュージーランドの現状を明らかにすることは重要である。
（３）アジアという統計インフラが貧弱な地域を対象に、日本発使用済み自動車の国際流動、使用、再資源化の状況を定量的に評価する際に、できるだけ既存の統計・調査結果や本研究の現地調査結果を有効に活用するアプローチを採用することが重要である。
（４）輸出先での使用や再資源化に伴う環境負荷量を推計するために開発した手法を精緻化するためには、それぞれの国の既存統計を基本とし、足りない部分は、現地で比較的に近い研究を行っている研究者の意見等を参考にすることが重要である。
（５）日本から使用済み自動車を東アジア諸国で再資源化する際に、フロン、液類の適正処理は基本的に行われておらず、現状のまま何も対策を講じないとオゾン層破壊や土壌汚染といった環境問題がより深刻化する可能性が高い。
（６）本研究課題は自動車に関連する政策として輸入政策、自動車登録制度、車検制度、環境規制自動車関連税制等を取り上げているが、それぞれの有効性を評価するため、すでに行われいる政策の効果や要した費用について把握することは、対策の費用対効果を推計するときの重要な数値資料となる。
（７）本研究で開発した第二、第三ライフサイクルを含む広域/個別リサイクルの評価を可能にしたLCA手法は、現状の一台ベースでの評価に加えシステム単位での評価が可能なように拡張する必要がある。
（８）本研究で提案する政策を具体的に実施するには、海外の研究者以外にも政府関係者とのネットワークを構築し、本研究の成果について充分な議論を行うことが重要である。
（平成17年度）
（１）日本から使用済み自動車の輸出量を把握する際の課題であった携帯輸出は、2005年7月より中古車については禁止されたが、実際は中古部品として携帯輸出されているため、その把握困難性は変化していない。今後も携帯輸出に注視する必要がある。
（２）ニュージーランド、韓国の実態調査より、近い将来ASEANにおいて輸入が解禁となったとき、日本、韓国からの使用済み自動車の流動状況が大幅に増加する可能性があり、それに由来する環境問題がより深刻化する恐れがあるため、関係国間での問題解決に向けての協力関係を今のうちから構築することが重要である。
（３）本研究では、輸出先での使用量、再資源化量、またそれに伴う環境負荷量のデータベース作成法や使用、再資源化に関する個別防止策の評価モデルを開発したが、その適用はタイ、中国など特定国に偏っており、今後他のアジア諸国にも適用することが重要である。その際には、今までの調査結果の有効利用と、各国政府関係者、研究者の協力が必要である。
（４）日本から使用済み自動車を東アジア諸国で再資源化する際に、法律は存在するもののバッテリーのように適正処理が行われていないのが実情であり、法律の制定以外にもその運用に対する対策を講じることが急務である。
（５）日本発使用済み自動車が使用・再資源化の際の環境問題を促す要因の一つとして、輸出先での輸入政策、自動車登録制度、車検制度、環境規制といった関連諸制度が機能していないもしくは内容自体が十分でないといった問題点が明らかになった。以上の問題に対処するための現実的な改善策や支援策が必要である。
（６）本研究では、使用、再資源化に関する個別防止策を総合的に評価できるLCAモデルを開発し、それより、自動車国際使用・再資源化システムの有効性を示した。しかし、今回得られた結果はタイ、インドネシアの特定国、ガソリン車といった特定車種である。より現実的なシステムを提案するためには、評価対象の代表性を向上されることが重要である。
（７）本研究で提案した自動車国際使用・再資源化システムを具体的に実施するには、海外の研究者以外にも政府関係者とのネットワークを構築し、本研究の成果について充分な議論を行うことが重要である。
（８）今回作成したデータベースは自動車国際使用・再資源化システムを構築する際に役立つものであるため、データベースの拡充・精査を進めると共に、その公表を行う予定である。
５．研究者略歴
| 課題代表者:鹿島 茂 |
| 1948年生まれ、東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了、工学博士、現在、中央大学理工学部教授 |
| 主要参画研究者 |
| （１）鹿島 茂（同上） |
| （２）鹿島 茂（同上） |
| （３）谷下 雅義 |
| 1967年生まれ、東京大学大学院工学研究科博士課程中退、工学博士、現在、中央大学理工学部 助教授 |
| （４）寺園 淳 |
| 1966年生まれ、京都大学大学院工学研究科単位取得退学、工学博士、現在、独立行政法人国立環境研究所地球環境システム研究領域 主任研究員 |
| （５）湊 清之 |
| 1947年生まれ、東京理科大学大学院理工学研究科修士課程修了、工学修士、現在、財団法人日本自動車研究所総合研究部 首席研究員 |
| （６）稲葉 敦 |
| 1952年生まれ、東京大学大学院工学研究科博士課程修了、工学博士、現在、東京大学人工物工学研究センター教授独立行政法人産業技術総合研究所ライフサイクルアセスメント研究センター センター長（兼務） |
| （７）鹿島 茂（同上） |
６．成果発表状況（本研究課題に係る論文発表状況。投稿中は除く。）
(1)査読付き論文
� ”杙楡偽如ΣＥ諜彁福γ�下雅義・鹿島茂：環境情報科学、32巻3号、59-68頁（2003年）「中古貨物車の地域間移転から見た自動車排出ガス規制の影響分析」
�◆”杙楡偽如⊆�島茂：廃棄物学会論文集、vol.16, no.5, pp.508-519 (2005) 「自動車リサイクル産業連関表の作成」
�� 布施正暁、鹿島茂：日本LCA学会誌、vol.2, No.1, pp.65-72 (2006) 「自動車リサイクルの産業連関分析」
�ぁ�Terazono, A.Yoshida, J.Yang, Y.Moriguchi, S.Sakai: J. Material Cycles and Waste Management, Vol.6, No.2, 82-96 (2004) "Material Cycles in Asia -especially recycling loop between Japan and China"
�ァ�Inanc, A.Idris, A.Terazono, S.Sakai: J. Material Cycles and Waste Management, Vol.6, No.2, 97-103 (2004) "Development of a database of landfills and dump sites in Asian Countries"
�Α�Yoshida, A. Terazono, T. Aramaki, K. Hanaki: J. Material Cycles and Waste Management, Vol.7, No.1, 8-15 (2005) "Secondary materials transfer from Japan to China: destination analysis in China"
(2)査読付論文に準ずる成果発表
� ヽ粟邨魄譟А愆超�と公害』34-3，岩波書店（2004）「自動車リサイクルとアジア諸国の実情」
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