環境省:Ministry of the Environment

温室効果ガス排出削減等指針

求められる基本姿勢と取組

事業者が脱炭素経営を進める上で、ステップ毎に事業者に求められる基本的な取組(基本姿勢)を整理しています。

ここでは、ステップごとチェックポイントと解説・参考情報(中小事業者向け)を掲載しています。Stepの番号をクリックするとその場所へジャンプできます。
ファクトリストでは、大規模事業者・先進事業者が参考にできるステップごとの解説も掲載しています。

Step 0:脱炭素化に向けた意識醸成・体制整備

「カーボンニュートラル」に係る日本政府の方針・取組を知っていますか?

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすることです。カーボンニュートラルへの挑戦が、自社や日本全体の大きな成長につながるという発想で取り組んでいく意識を持つことが重要です。国の方針や具体的な取組を把握する上では、下記ポータルサイトが参考になります。

環境省「脱炭素ポータル」

検討・対策を行うための社内体制は整っていますか?

まずは脱炭素化を進めるための検討・実施体制を構築しましょう。人員不足の場合は診断機関や以下のような環境省支援事業等の外部リソースを活用することも有効です。

環境省「工場・事業場における先導的な脱炭素化取組推進事業(SHIFT事業)のうち計画策定支援事業」

Step 1:事業に影響を与える気候変動関連リスク・機会の把握

気候変動が自社の事業に与える影響(リスク・機会)について理解、分析していますか?

前章までに示した中小事業者も含めて脱炭素化に取り組む重要性やその意義・メリットに加え、取り組まないことのリスクについても正しく理解し、自社内で共通見解を持つことが、取組の出発点となります。

主な脱炭素化の取組の遅れによるリスクには、取引先からの契約打ち切り、市場ニーズの変化に伴う製品の競争力低下、炭素税(カーボンプライシング)の導入等が考えられます。カーボンプライシングについては、我が国でも本格導入に向けた議論がなされており、実際に導入された場合、排出量に応じて直接的な金銭的負担が発生することとなります。

また、ウクライナ危機等の影響で、昨今エネルギー価格が高騰していますが、再生可能エネルギーの自家消費や省エネ等の取組は、外部からのエネルギー調達量を削減できるため、こうした価格高騰のリスク回避にもつながります。

売上・収益の低下につながるリスク(例)
・取引先からの契約打ち切り
・市場ニーズに伴う製品の競争力低下
コスト負担の増加につながるリスク(例)
・炭素税(カーボンプライシング)の導入
・エネルギー価格高騰

脱炭素化の取組の重要性(リスク、機会)をより広く理解する上では、下記文献が参考になります。

環境省「TCFDを活用した経営戦略立案のススメ」

Step 2:排出実態の把握

事業所全体のエネルギー使用量を把握していますか?

エネルギー種類別の使用量の把握には、電力会社、ガス会社等からの明細書の活用が有効です。月別推移、前年同期との比較などを可視化することにより改善点が見つかります。

事業所全体のGHG排出量を算定していますか?

エネルギー起源CO2については、下式のとおり、各燃料種のエネルギー消費量から排出量への換算が可能です。エネルギー消費量からCO2排出量への換算方法・換算に用いる排出係数、エネルギー起源CO2以外のGHGの算出方法等は下記資料を参考にしてください。

環境省「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度 ー算定方法・排出係数一覧」
CO2排出量=エネルギー使用量×エネルギー種別CO2排出係数

日本商工会議所では、エネルギー使用量やCO2排出量を簡単に見える化するツールを無料で提供していますので、必要に応じて活用することも一案です。

日本商工会議所「CO2チェックシート」

自社のみで算定することが難しい場合、排出量の算定・可視化サービスを提供する事業者や同様のサービス事業者と提携する金融機関も増えていることから、付き合いのある診断機関、事業者、金融機関等に相談してみるのもよいでしょう。なお、以下のページのアクションプランに登録している支援機関を参照して、排出量算定・可視化サービス等を提供している機関を探すこともできます。

経済産業省「中小企業支援機関によるカーボンニュートラル・アクションプラン」

用途・設備別のエネルギー使用量、GHG排出量を把握・算定していますか?

事業所全体の使用量、GHG排出量だけでなく用途・設備別に分解して把握することで、主要な排出源や削減ポテンシャルが大きい用途・設備を特定することができ、削減目標の設定、削減対策の検討、削減計画の策定にもつなげやすくなります。用途・設備別の使用量を求めるためには、計算による推計を行うか、計器等による計測が必要です。具体的な方法については、下記資料が参考になります。

環境省「事業者向けCO2排出削減のための自己診断ガイドライン」

Step 3:削減目標の設定/削減対策の検討/削減計画の策定

削減目標を設定していますか?

取引先からの要請や脱炭素化しないことのリスクへの備えや、他社との差別化・ビジネスチャンスの獲得の観点から、中小企業向けのSBTやRE Actionといった既存のイニシアティブに参画し、中長期の削減目標を定める中小事業者も増えています。これらの目標を設定する場合には下記文献等が参考になります。

環境省「中長期排出削減目標等設定マニュアル」

削減対策について検討していますか?

設備導入、運用改善については、主要な排出源や削減余地の大きい設備を特定した上で、3章で後述する対策メニューや指針のファクトリスト等を参考にどのような対策が実施可能か把握しましょう。

その他の対策として、再生可能エネルギー(電気・熱)の調達(太陽光発電設備の導入、再エネ電力メニューへの切替、木質バイオマス熱利用等)や燃料転換等を検討しましょう。なお、検討の際には下記文献等が参考になります。

環境省「はじめての再エネ活用ガイド(企業向け)」

自然エネルギー財団「自然エネルギーの電力を増やす 企業・自治体向け 電力調達ガイドブック 第6版(2023年版)」

削減計画を策定していますか?

洗い出した削減対策を踏まえて、その対策によって目標達成は可能か、温室効果ガス排出削減対策実施に係る追加的な費用支出や投資回収年数等を許容できるか(投資金額と光熱費・燃料費の増減、実施時期)等の観点から、削減計画の策定をしましょう。

具体的な検討・策定手順や先進的な中小事業者の取組事例については下記文献が参考となります。外部診断を活用した場合には、これらに関するアドバイスも貰うことも可能です。

環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」

削減計画の策定イメージ

削減計画の策定イメージ図
出所)環境省「中小規模事業者のための脱炭素経営ハンドブック」

Step 4:削減対策の実行

設備導入対策の場合、具体的に導入する設備まで選定できていますか?

設備導入時には、以下に示す各設備の利用可能な最高性能水準やコスト水準等が掲載されている、温室効果ガス排出削減等指針の拡充に向けた基礎的な技術情報(「指針のファクトリスト」)やLD-Tech(Leading Decarbonization Technology)認証制度等を参考に選定を行いましょう。

環境省「指針の拡充に向けた事業活動に係るファクトリスト [XLSX 564 KB]」

環境省「指針の拡充に向けた日常生活に係るファクトリスト [XLSX 167 KB]」

環境省「LD-Tech認証制度」

また、GHG削減効果を高めるとともに、イニシャルコストを抑える観点から、高効率型を選択するだけでなく、負荷実態にあった適正な容量を選択することも重要となります。

対策の実行にあたり、どのような資金調達手法(補助事業等)が活用できるか把握していますか?

費用効率的な実行のため、活用可能な補助制度・資金調達手法に関する情報収集をすることも重要です。

補助制度や中小事業者向けのサステナビリティ・リンクボンド/ローンについては、下記サイトが参考となります。

環境省「脱炭素化事業支援情報サイト(エネ特ポータル)」

環境省「グリーンファイナンスポータル」

Step 5:情報開示

情報開示の意義を把握していますか?

国際的なESG投資の流れの中で、企業に対して気候変動に対応した経営戦略や脱炭素化に向けた目標策定等に係る情報開示が求められるようになっており、プライム市場上場企業についてはScope3排出量も含めた情報開示が実質義務化されています。

こうした流れを受けて情報開示を進める企業が、自社のScope3排出量算定・開示の一環として、バリューチェーン上の関連企業に対しても排出状況・取組状況を求めるケースも増えてきています。

情報開示の効果的な訴求方法を把握していますか?

効果的な訴求方法として中小企業向けのSBTやRE Actionといった既存のイニシアティブの枠組みを活用するとよいでしょう。他社がどのように情報公開しているかといった観点からは、以下記サイトが参考になります。

環境省「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム:取組事例」