化学物質管理政策対話
化学物質による環境汚染を防止
第17回
日中韓化学物質管理政策対話
(2023年11月韓国・済州島)
近年、中国および韓国をはじめ東アジア各国との化学物質や各種製品の輸出入がますます盛んになってきていることから、各国における化学物質管理制度の適正な運用は、我が国を含む東アジア地域の環境汚染を防止する上で重要となっています。また、化学物質の製造・輸入を行う事業者などからは、各国の化学物質管理政策の整合性に大きな関心が寄せられています。東アジア地域における化学物質による環境汚染を防止するため、三カ国の連携・協力、国際調和がますます重要になっています。
こうした状況を踏まえ、平成18年12月に開催された第8回日中韓三カ国環境大臣会合(TEMM8)における合意に基づき、化学物質管理政策対話を毎年開催しています。政策対話では、化学物質管理政策の最新動向と今後の方向性、化学物質管理に関する国際動向への対応、各国の最新の課題に関する対応の状況等について情報・意見交換を行い、今後の化学物質管理政策の連携・協力の進め方について議論を進めています。
第1回
2007.11(日本・東京)
GHS等の各国の共通課題に関して、各国の取組みの現状及び課題等が報告され、これらの分野についてさらなる情報交換を進めていくことが合意されました。
第2回
2008.9(韓国・ソウル)
GHS専門家会合では、日中韓における化学物質の有害性分類の比較などの検討作業がなされ、公開のセミナーも開催されました。また、日中韓の政府事務レベル会合では、今後の連携・協力の進め方について議論がなされました。
第3回
2009.9(中国・北京)
日中韓の政府関係者により意見交換を行い、化学物質管理に関する最新動向についての情報・意見交換が行われました。また、優良試験所基準(GLP)、化学物質の試験方法及びリスクアセスメント分野における環境協力強化の必要性が合意されたとともに、製品中の化学物質管理の重要性について認識が共有されました。
第4回
2010.9(日本・東京)
日中韓の政府関係者により意見交換を行い、化学物質管理の最新動向に関する情報・意見交換や今後の三カ国での連携・協力の進め方について議論がなされ、テストガイドライン、優良試験所基準(GLP)、リスク評価分野における協力強化の必要性等が合意されました。
第5回
2011.8 9(韓国・済州島)
日中韓の政府関係者により、化学物質管理政策、化学物質事故への対応、毒性及びばく露の評価手法及び化学物質のデータベースに関する情報・意見交換が行われました。今後も引き続き、各国において実施される化学物質の審査におけるリスク評価等について情報共有を行い、調和を目指すことが合意されました。
第6回
2012.10(中国・杭州)
日中韓の政府関係者により、化学物質管理政策、毒性及びばく露の評価方法等について活発な意見交換を行うとともに、化学物質管理に関する国際動向への対応等について情報交換がなされました。今後も引き続き、各国において実施される化学物質の審査におけるリスク評価等について情報共有を行い、調和を目指すことが合意されました。
第7回
2013.11(日本・京都)
日中韓の最新の化学物質管理政策、化学物質管理に関する国際動向への対応等に関する情報交換及び意見交換を実施しました。また、次回会合に向けて、PRTRの技術的事項に関する情報交換や化学物質の生態毒性試験に関する共同研究等を進めることを合意しました。
第8回
2014.11(韓国・済州島)
大きく進展している日中韓3カ国の化学物質管理政策に関して意見交換を行うとともに、化学物質管理に関する国際動向への対応、水銀に関する水俣条約に対応するための水銀管理の状況等について情報交換を行いました。専門家会合においては、生態毒性試験の実施手法の国際調和に向けて、日中韓の共同研究として各国で実施した甲殻類急性毒性試験の比較結果が報告され、その成果が確認されました(報告書はこちらをご覧ください。)。また、次回会合においては、既存化学物質のリスク評価手法や評価結果、水銀に関する水俣条約の批准に向けた対応等について情報交換を行うことなどが合意されました。
第9回
2015.11(中国・南京)
化学物質管理に関する国際動向への対応、水銀に関する水俣条約の早期発効に向けた各国の国内対応の状況等について情報交換を行いました。また、我が国で開催される次回会合では、化学物質の審査・評価手法(生物試験の代替手法(QSAR 等)、内分泌かく乱作用の評価手法を含む。)、化学物質排出移動量届出制度(PRTR)等についての情報交換を新たに開始するとともに、化学物質管理分野における3カ国の共同行動計画の採択を目指すことに合意しました。詳細はこちらをご覧ください。
第10回
2016.10(日本・東京)
化学物質管理政策の最新動向と今後の方向性、化学物質管理に関する国際動向への対応、各国の最新の課題に関する対応の状況等について情報・意見交換を行いました。具体的には、日本からは化審法のリスク評価、PRTR、環境モニタリングの取組、中国からは既存化学物質のリスク評価の制度化に向けた検討、韓国からは2015年(平成27年)に導入された化学物質登録評価法(K-REACH)の取組等について紹介され、相互に理解を深めました。専門家会合においては、生態毒性試験の実施手法の国際調和に向けて、日中韓の共同研究として各国で実施した魚類急性毒性試験の比較結果が報告され、その成果が確認されました(報告書はこちらをご覧ください。)。また、日中韓の化学物質管理政策における共通の課題を明確にし、それらの課題を効率的、効果的に解決するため、日中韓の情報交換及び共同研究等の取組を進めていくこと等を定めた、2019年(平成31年)までの日中韓化学物質管理政策対話3カ国共同行動計画に合意しました。
第11回
2017.10.11(韓国・麗水)
化学物質管理政策の最新動向と今後の方向性、化学物質管理に関する国際動向への対応、各国の最新の課題に関する対応の状況等について情報・意見交換を行いました。具体的には、日本からは化審法のリスク評価、化審法の改正、POPs条約への対応、中国からは既存化学物質のリスク評価の制度化に向けた検討、韓国からは2015年(平成27年)に導入された化学物質登録評価法(K-REACH)の取組、新たな消費者製品及び殺生物製品の規制法案等について紹介され、相互に理解を深めました。引き続き、化学物質管理政策対話及び専門家会合を継続し、日中韓の情報交換及び共同研究等の取組を進めていくことに合意しました。
第12回
2018.6(中国・蘇州)
日中韓の政府関係者により、①化学物質管理政策の最新動向、②化学物質リスク評価の情報収集システム、③各国の最新の課題等について、活発な情報・意見交換を行いました。具体的には、日本からは化審法における化学物質の審査・評価、既存化学物質のリスク評価における情報収集手法、環境モニタリングの実施状況、中国からは新規化学物質登録の情報収集、化学物質の規制の状況、そして今後のリスク評価の制度化に向けた検討、韓国からは2015年(平成27年)に導入された化学物質登録評価法(K-REACH)の取組と改正案、化学物質登録のためのK-CHESAR、消費者製品のリスク評価について紹介され、意見交換を通じ、相互に理解を深めました。今後の協力の課題について、各国における化学物質の環境保全のための管理制度と他の管理制度との状況、化学物質管理の運営に関する課題について意見交換をしていくことが提案されました。専門家会合では、日中韓の共同研究として各国で実施した魚類慢性毒性試験の比較結果が報告され各国の試験結果の差について原因を究明するとともに、試験実施の共通の条件(プロトコル)を提案していくこと、化学物質管理に関するデータベースについて情報交換を行うこと等に合意しました。
第13回
2019.10(日本・福岡)
日中韓の政府関係者により、①化学物質管理政策の最新動向と今後の方向性、②化学物質管理に関する国際動向への対応、③各国の最新の課題に関する対応の状況等について、活発な情報・意見交換を行いました。具体的には、日本からは化審法下における化学物質管理の最新進捗、残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約への対応、化学物質排出移動量届出制度(PRTR制度)や環境モニタリングの取組、中国からは新規化学物質管理弁法の改定案の内容や環境リスク評価と管理に関する規制、韓国からは2015年(平成27年)に導入された化学物質登録評価法(K-REACH)の取組や消費者向け化学製品の安全管理システムに関する取組等が紹介され、相互に理解を深めました。専門家会合では、日中韓の化学物質のリスク評価における技術的手法についての情報交換を行いました。また、生態毒性試験の実施手法の調和に向けて行った、同一試験法、同一魚種、同一被験物質を用いた日中韓の魚類慢性毒性試験の共同研究について、その比較結果が報告され、成果が確認されました。今後は、日中韓が共同で魚類慢性毒性試験を継続していくこと等に合意しました。
第14回
2020.11(Web開催、事務局韓国)
COVID 19に対する感染対策として、本年度の日中韓化学物質管理政策対話は、専門家会合を含め1日のみのWeb開催となりました。政府関係者による政策対話では①中国からは中国における最新の化学物質管理について、改正された「新規化学物質環境管理弁法」についての解説、②日本からは化学物質管理の最新進捗についての紹介、③韓国からは化学物質の登録及び評価制度(K-REACH)の現状、化学物質管理法と政策及び生活化学製品及び殺生物剤の安全管理に関する法律の内容について紹介され、自国の制度との比較を行いながら活発な議論が行われました。また、専門家会合では①韓国より魚類初期生活段階毒性試験の再試験の結果報告、②中国よりOECD/TG 203の改定により新TGで実施された試験結果の報告、③日本より次の共同研究の対象候補試験としてのTG 201(藻類生長阻害試験)について、日本での試験結果の紹介を行い、議論により相互理解を深めました。また、次の共同研究のテーマとして藻類生長阻害試験を行うことに合意いたしました。さらに、日本より、2020年からの日中韓化学物質管理政策についての5カ年計画案の説明が行われ、この案に対して中韓2カ国の意見を踏まえ、5カ年計画を決定することに3カ国で合意いたしました。
第15回
2021.11(Web開催、事務局中国)
日中韓化学物質管理政策対話は、昨年度に引き続き、COVID 19に対する感染対策として専門家会合を含め1日のみのWeb開催となりました。専門家会合では、共同研究で予定しているOECD/ TG201(藻類生長阻害試験)について、各国から試験結果の概要が紹介され、共同研究の試験方法等に関する具体的な議論を行いました。また、各国の内分泌撹乱化学物質の試験及び評価方法や、各国の化学物質の環境リスク評価手法について情報交換を行いました。政府関係者による政策対話では、各国の化学物質管理政策の最新動向について活発な情報・意見交換を行いました。具体的には、日本からは化審法に基づく化学物質管理の枠組みと環境省の役割、既存化学物質等のリスク評価手法、POPs条約対応、製品中の化学物質や不純物の取扱い等について、中国からは「新化学物質環境管理登記弁法」(第12号令)に係る環境管理登録ガイドライン、新汚染物質管理行動計画(案)等について、韓国からは化学物質登録評価法(K-REACH)の概要、登録に必要な試験データ、新規導入されたCBI(企業秘密情報)承認制度等について紹介され、各国制度との比較を行いながら、相互理解を深めました。更に2020年の第14回会合で日本から提案していた2020年~2024年の5か年に係る「日中韓化学物質政策対話の3か国共同行動計画」が合意、採択されました。
第16回
2022.11(Web開催、事務局日本)
日中韓化学物質管理政策対話は、昨年度に引き続き、COVID-19に対する感染対策として、専門家会合と政府事務レベル会合を合わせて1日のみのWeb開催となりました。専門家会合では、生態毒性試験の実施手法の調和に向けた新たな共同研究として前回決定したOECD/ TG201(藻類生長阻害試験)について、各国の試験結果が報告され、具体的な議論が行われました。そして、3カ国で本共同研究の統合報告書を作成していくことに合意しました。また、各国の化学物質のリスク評価における技術的手法についての情報交換として、各国から毒性や環境動態の予測モデルの開発と活用が紹介され、活発な意見交換が行われました。政府事務レベル会合では、各国の化学物質管理政策の最新動向について情報交換を行い、各国の最新政策やリスク評価の取組、法改正に向けた検討状況等が紹介され、相互に理解を深めました。また、化学物質管理に関する国際動向への対応について、日本及び韓国からはPOPs条約への国内対応の詳細、中国からは欧州の新化学物質戦略に関する分析と今後の対応について紹介され、活発な意見交換により相互に理解を深めました。最後に今後の政策対話においても、引き続き各国の化学物質管理政策の最新動向と国際対応について情報交換をしていくことに合意しました。
第17回
2023.11(韓国・済州島)
日中韓化学物質管理政策対話は、2019年から4年ぶりの対面開催となりました。
政府事務レベル会合に先立って開催された専門家会合では、生態毒性試験の実施手法の調和に向けて、同一試験法により日中韓3か国で実施した藻類生長阻害試験の共同研究について、その比較結果の取りまとめを行いました。また、日中韓の既存化学物質のリスク評価や代替毒性試験における技術的手法について相互に紹介され、活発な意見交換が行われました。今後、日中韓が共同でミジンコ繁殖試験に関する研究を実施していくこと等に合意しました。
政府事務レベル会合では、日中韓の政府関係者により、化学物質管理政策の最新動向、化学物質管理に関する国際動向への対応、各国の最新の課題に関する対応状況等について、活発な情報・意見交換を行いました。
最後に、今後も政策対話及び専門家会合を継続し、日中韓の情報交換及び共同研究等の取組を進めていくことに合意しました。