感想文

平成22年度 日中環境学生ミーティングに参加して

竹内友理
竹内友理
 東京大学
 法学部第二類(公法)4年

提案した活動:
中国大連にある汚染された川に関する公共意識向上を目標に、1. 教育用映像資料の作成(現地の川及び過去の類似事例を取り上げる)、2. 資料を使用して中国人学生リーダーのトレーニング、及び現地の人々のための上映を行う、3. (トレーニングを経験した学生や現地ボランティアをガイドとした)川下りツアーを行うことで上流の汚染と下流の被害の関係を伝えること。

提案した活動にいたった経緯:
現地の川では上流の鉱山排水、及び周辺の村による川へのゴミ捨ての主に2原因により汚染が進んでいる。目に見える水質汚染の他、アレルギー体質の人の増加等身体への被害も徐々に出てきているが、現地の人々はそれを理解していない。現時点ではBlue Dalian等現地環境団体が汚染原因の調査をすることや、それらを簡単な地図に纏めることで位置関係を明らかにすること等は行っている。原因の特定と結果の発生がある中で決定的に欠けているのは周辺の人々によるこれら相互の因果関係の理解であるという問題意識のもと、我々はこの空間を埋めるために上述の活動を提案した。多少挑発的で政府にとって望ましくないような内容であっても映像媒体であれば文化活動として受入れられ易いことからトレーニングに映像を取り入れ、上映等は基本的に現地の人々主導で行うことにした。更に、現地の川の汚染を具体的に示すため、現地の人々を対象に川を下りながら汚染状況を説明するツアーを企画した。

自身の活動や日本の事例が貢献した点:
過去の岩手の赤川が非常に大連の川の汚染状況と似ていることや、鉱山からの汚染が進行し川が赤くなる等目に見える被害が多かったことから、映像には日本の事例も取り入れることにした。環境関連の活動に関しては政府が敏感であるとのことからあまり積極的に日本側がリーダーシップをとることは望ましくないとの指摘を受け、日本側は事例提供、映像編集、日本の研究室や専門家による分析等専門知識の提供等の役目を担うことになった。

自分の関わり方、また今後の役割:
日本側として今後は赤川、水俣病等過去の水質汚染事例のリサーチ及び関係者へのインタビュー、それらの映像編集等を行う。また、大連で交流活動を行う日本人学生の選抜や派遣可能な専門家、研究者とのコーディネート等も担当する。

今後どのようにこの経験、ネットワークを活かしていくのか:
環境関連の活動に積極的な学生・若者と知り合えたことは非常に貴重であり、彼らとの会話から環境政策や市民団体の活動状況だけでなく社会状況や規範を変えるための活動と政府との関係が非常に繊細なものであること等、より広く中国に関係する知識も得ることが出来た。4月からは民間企業で働くことになるが、これからの時代では如何なる経済活動においても環境への配慮は非常に重要なものになる。今後中国を含む新興国で仕事をしたいと考えているため、今回知り合うことが出来た学生や若者とは今後も連絡を取り合い意見交換をし、アドバイスを頂き、願わくば共に仕事をすることが出来ればと考えている。

この会議で得たものや、新たな情報・知識など:
・ 中国の学生環境活動に関する知識
・ 環境活動と政府の関係(大変繊細であり、行動の方法が制限される。また、日本の環境意識・政策改善の過程においてひとつのツールであった法律争いに関しては最初から「政府との関係においては勝ち目がない」と諦めの姿勢にあることが印象的であった。同時に、映像資料を上映する行為は「文化活動」として認められうる等、正当化の過程も一筋縄ではなく他の目的とあわせてしまえば活動がし易いことも非常に興味深かった。)

この会議に参加してよかったこと:
・意識の高い参加者と率直な意見交換が出来たことは有意義であった。
・一部不必要であったという意見もあった川散策だったが、専門家の先生と直接会話をしながら歩いたため個人的には中国の水政策に関して非常に参考になる話を伺うことが出来た。

 

 

今野明咲香
今野明咲香
 岩手県立大学
 総合政策学部総合施策学科環境講座3年

提案した活動:
碧流河における水質汚濁の改善と市民教育

提案した活動にいたった経緯:
碧流河は大連地区における最も長い河で,市街地の主な水の供給源になっている。この河には大きく3つの水質汚濁要因があり、上流にある金鉱山、蛍石鉱山からの排出土砂、万福鎮に大量に捨てられる生活ゴミ、双塔鎮にある石材加工所からの排水である。
Water Pollutionのチームメンバーの1人が、実際にその河での活動を行っており、水質を改善したいという強い思いや、日本もかつては河川の汚染は深刻でそれを改善してきたという歴史があることからも支援できるのではないかと言うことで、この計画に決定した。

自身の活動や日本の事例が貢献した点:
実際に私が調査に参加した岩手県にある北上川の支流の赤川でも、かつては東洋一の硫黄鉱山と呼ばれた松尾鉱山からの強酸性の坑廃水の影響で、上流付近ではpHが2という高い数値を出しており、魚の住めない「死の川」とよばれていました。鉱山が閉山したあともその坑廃水は川を汚染し続け、川の色は赤く染まり、赤川と呼ばれるようになりました。その後、中和処理施設が造られ、川のpHは4まで下がり、魚も川にかえってきました。この経験を碧流河で活動を続ける人や、付近に住む人に伝えることで、活動の参考や市民教育に貢献できると思います。

自分の関わり方、また今後の役割:
今後は大連で活動している学生と連絡を取り、碧流河の汚染に関心のない市民に対してのVTR作りを日本メンバーと協力して作成します。具体的には、日本の事例を紹介して赤川における水質改善が生活や農業にどんな利益をもたらしたか、放っておくとどうなってしまったのかなどを水質データとともに公開します。

今後どのようにこの経験、ネットワークを活かしていくのか:
今回の会議で得られた知識や経験、それに多くの友人はこれからの私の研究活動におおいに力になってくれると思います。既に私は、この会議に参加したことで様々な可能性を感じ始めています。その一つに、会議開催中に仲良くなった大連民族学院の友人を通して、会議には参加することができなかった、私と専門分野を同じにする学生と知り合うことができました。彼は現在、モンゴルにおける土壌の調査をしていて、メールでお互いの研究について議論を交わすことができました。彼は今年の秋に修士課程で日本の大学へ留学することになっており、彼が今後も私の研究活動に大きな影響を与えることに違いはありません。日本には若い研究者というのはまだまだ少なく、そのため自然地理学という限られた分野において知り合う事は難しく、今回の出会いはとても貴重なものでした。今後は日本と中国の若い研究者によって構成される組織形成や、両国での共同研究や研修を行い、日本と中国間で地理学の発展に貢献できればいいと考えています。

この会議で得たものや、新たな情報・知識など:
今回の会議に参加した中国の学生の環境保全活動や研究は、とても高い水準のものであり興味が湧くものでした。日本の高度経済成長期には、環境問題に対して意識の高い学生は少なかったと思いますが、現在の中国は経済の成長が勢いよく進んでいるなかで、その妨げになるかもしれないというのに、環境への意識ははるかに高く、非常に驚きました。この会議に参加するまでは、中国は環境問題に対してまだ後進国であるという認識がありましたが、そのようなことはまったく感じさせず中国の学生は環境に対しての知識が深く、活動は活発でした。しかしながら、市民レベルでは環境活動は活発なようですが、政府レベルではまだあまり受け入れられてはいないようです。日本国内にいて中国の環境について知ろうとすると、その手段としては主にインターネットに頼らざるを得ませんが,そうするとどうしても政府が発信する情報に偏りがちになってしまいます。しかし今回のように実際に環境活動をしている学生と話すことで、中国のリアルな環境問題について知ることができました。北京市内の川の汚染状況であったり、市民生活であったり、彼らの日常の生の声を聞くことができて大変中国への理解が深まりました。

この会議に参加してよかったこと:
日本と中国の環境に関心のある、意識の高い学生と出会えたことです。私は普段、東北という枠の中に収まってしまっており、その土地柄ゆえ他の県や国の学生と交流する機会がなかなかありません。そのため今回、東京や北京の学生に出会って彼らの行動力やリーダー性、高い意識にとても驚かされるとともに(東北にはなかなかこの様な人はいませんので)、自分の非力さを痛感しました。一緒にプログラムを進めていく中で今までの自分のあり方を見直し、東北という枠に留まらず世界を見据えなければならないということ気づけたのは、とても大きな収穫でした。この会議で出会った素晴らしい友人たちとの交流を今後も続けていき、東北に帰った後もその枠の中で満足せず、自分の活動に勤しんでいきたいと思います。

 

 

原山青士
原山青士
 早稲田大学
 創造理工学部環境資源工学科2年

提案した活動:
中国におけるe-waste問題を中国の学生が調査し、日中両国でその現状を発表する。

提案した活動にいたった経緯:
まず中国の学生から中国には廃家電の処分場のようなところがたくさんあり、その家電から流れ出た有害物質が農作物などに悪影響を与えていることを聞いた。そして、その家電のうちの何割かは日本から流れているものの可能性が高い。そこで、日中両国が関わっている環境問題としてe-waste問題があり、この問題に日中の学生が協力して取り組めないかと考えた。

自身の活動や日本の事例が貢献した点:
・アクションプラン作成の際、e-waste問題に普段から関心があり、その解決のために取り組んできた知識が役に立った。
・中国の学生から、日本の学生の環境活動の目的や政府との連係の有無など様々なことを聞かれた。その際、大学の環境サークルで自分が所属している以外の日本ユースの環境活動全体を把握していたため、中国の学生に伝えることが出来た。
・中国の学生の関心分野は多様であり、これまでに「資源」「エネルギー」「生物多様性」「地域活性化」「e-waste」といった様々な環境問題に興味を持ち、知識を得、活動してきたことでたいていの質問には答えられた。

自分の関わり方、また今後の役割:
・英語は得意ではないので、主に知識面での貢献をした。また、社交的な性格を活かして、積極的発言したりコミュニケーションをとることで、会議の進行に貢献した。
・今回作成したアクションプランを中心となって進める。

今後どのようにこの経験、ネットワークを活かしていくのか:
日本にとって中国の環境問題は無関係ではなく、また逆も同様である。そうであるにも関わらず、お互いの環境活動はおろか、どのような環境問題が起こっているかも正確に把握していないということを今回の経験を通して痛感した。
そこで、今後はまずお互いに小規模なプロジェクトを運営することから初め、お互いを知り、将来的には大きな協力関係を築いていけるような基盤作りをしたい。

この会議で得たものや、新たな情報・知識など:
e-waste問題の現場が北京郊外にも当たり前のようにあるということ。そして、そこから流れ出た金属等が周囲の畑に流れ込み農作物に悪影響を与えているということが分かった。また、この問題に今後取り組んでいくにあたって、中国の環境問題に取り組む学生とのネットワークが出来たことだけでも個人的には大きな収穫である。
中国の環境保護は国主導で大規模に行っている、そして予想以上に中国の学生は中国の環境保護政策のグッドプラクティスを知っていた。
中国の環境活動をする学生への支援は国からはなく、また企業からも現在はそれほどないということだった。(企業からは今後増える可能性も)

この会議に参加してよかったこと:
中国の環境問題に関心のある学生とのネットワークが出来たこと。これを今後の活動に是非活かしていきたい。また、英語力のなさを痛感し、これを機に一生懸命勉強しようと考えるようになった。