生活環境の保全に関する水環境小委員会(第2回)議事次第・配付資料
開催日時
令和7年5月21日(水)9:30~12:00
開催場所
議事次第
1.開会
2.議事
(1)伊勢湾における全窒素及び全燐の環境基準の水域類型の指定の見直し検討について(関係団体ヒアリングを含む)
(2)相模ダム貯水池・城山ダム貯水池・土師ダム貯水池における環境基準の暫定目標の見直しについて
(3)良好な環境の創出に向けた新たな水環境政策の検討について
3.閉会
2.議事
(1)伊勢湾における全窒素及び全燐の環境基準の水域類型の指定の見直し検討について(関係団体ヒアリングを含む)
(2)相模ダム貯水池・城山ダム貯水池・土師ダム貯水池における環境基準の暫定目標の見直しについて
(3)良好な環境の創出に向けた新たな水環境政策の検討について
3.閉会
配布資料
- 【議事次第・委員名簿】中央環境審議会 水環境・土壌農薬部会 生活環境の保全に関する水環境小委員会(第2回)
- 【資料1-1】伊勢湾における全窒素及び全燐の環境基準の水域類型の指定の見直し検討につ いて
- 【資料1-2】三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課 提供資料
- 【資料1-3】三重県漁業協同組合連合会 提供資料
- 【資料1-4】愛知県環境局環境政策部水大気環境課 提供資料
- 【資料1-5】愛知県農業水産局水産課 提供資料
- 【資料2-1】相模ダム貯水池・城山ダム貯水池・土師ダム貯水池における環境基準の暫定目 標の見直しについて
- 【資料2-2】水質汚濁に係る生活環境の保全に関する環境基準の水域類型の指定の見直しについて(報告)(案)
- 【添付資料1】人工湖沼における類型指定の見直し
- 【添付資料2】検討対象水域の水質予測結果
- 【資料2-3】「河川及び湖沼が該当する水質汚濁に係る環境基準の水域類型の指定に関する件の一部を改正する件」告示改正(案)
- 【資料3】良好な環境の創出に向けた新たな水環境政策の検討について
- 【参考資料1】伊勢湾における全窒素及び全燐の環境基準の水域類型の指定の見直しについて(令和7年5月時点案)
- 【参考資料2】水質汚濁に係る生活環境の保全に関する環境基準の水域類型の指定の見直しについて
議事録
午前9時37分開会
【亀井課長補佐】 それでは、お待たせいたしました。
第2回中央環境審議会水環境・土壌農薬部会生活環境の保全に関する水環境小委員会を開会いたします。
委員の皆様方にはご出席いただき、誠にありがとうございます。
本日の会議は、委員総数13名のうち現在12名の委員にご出席いただいており、定足数の要件を満たしておりますことをご報告いたします。なお、清野委員は途中参加、小熊委員は途中退席の予定と伺っております。
本日の会議はYouTubeの環境省環境管理課公式動画チャンネルで同時配信をしています。
Web会議の開催に当たり、何点かご協力をお願いいたします。通信環境の負荷削減のため、ご発言のとき以外はカメラの映像はオフ、マイクの設定はミュートにしていただきますようお願いします。ご発言を希望される際は、お名前の横にある手の形のアイコン、挙手ボタンをクリックしてください。発言を終えられましたら挙手ボタンを再度クリックして、手を下げていただきますようお願いします。ご発言の際は、議事録の円滑な記録のため、お名前をおっしゃってからご発言いただきますようお願いいたします。
通信トラブルなど何かありましたら、右下のチャット欄がございますので、ご記入いただき事務局までお知らせください。
それでは、初めに環境省水・大気環境局環境管理課長の𠮷川よりご挨拶申し上げます。
【𠮷川課長】 ただいま、ご紹介に預かりました環境省水・大気環境局環境管理課長の𠮷川と申します。委員の皆様方におかれましては、本日はご多用のところご出席賜りまして、誠にありがとうございます。
昨年9月の前回小委員会でのご審議を受けまして、水質汚濁に係る生活環境の保全に関する環境基準について、地域のニーズや実情に応じた柔軟な運用を可能とするため、本年2月に制度改正を行ったところでございます。これは昨年5月に閣議決定いたしました第6次環境基本計画に基づく地域のニーズに応じた水環境政策の第一弾になります。
この制度改正を受けた具体的な動きといたしまして、本日は伊勢湾における全窒素及び全燐の環境基準の水域類型の指定の見直しについて関係団体からヒアリングを行い、ご審議をいただきます。
また、第6次環境基本計画では、良好な環境の利用によってウェルビーイングや地域活性化など、地域に具体的なメリットを創出することが重要とされております。本日はこうした良好な環境の創出に向けた新たな水環境政策の検討状況についてもご報告いたします。
このほか、人工湖沼における環境基準の暫定目標の見直しについてご審議いただきます。これまで概ね5年ごとに見直してきましたが、5年程度では明瞭な効果が現れない場合もあることから、昨年より見直しの年限を定めないことも可能としており、今回、これを適用したいと考えております。
委員の皆様には、専門的見地から忌憚のないご意見を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【亀井課長補佐】 次に、資料の確認に移ります。議事次第、委員名簿のほか、資料1-1から3及び参考資料1から2をご用意しています。もし、ご不足等ございましたらお申しつけください。
続いて、今回の議題1でヒアリングにご対応いただく関係団体の方をご紹介します。一言ずつご挨拶をお願いいたします。
まず、三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課の松本課長です。
【三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課】 三重県大気水環境課の松本です。よろしくお願いします。
【亀井課長補佐】 ありがとうございます。
続いて、三重県漁業協同組合連合会の植地常務理事です。
【三重県漁業協同組合連合会】 三重県漁連の植地と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
【亀井課長補佐】 ありがとうございます。
続いて、愛知県環境局環境政策部水大気環境課の戸田課長です。
【愛知県環境局環境政策部水大気環境課】 愛知県水大気環境課の戸田です。よろしくお願いいたします。
【亀井課長補佐】 ありがとうございます。
最後に、愛知県農業水産局水産課の日比野課長補佐です。
【愛知県農業水産局水産課】 愛知県水産課の日比野と申します。よろしくお願いいたします。
【亀井課長補佐】 よろしくお願いします。ありがとうございます。
それでは、以降の議事進行は古米委員長にお願いいたします。
古米委員長、お願いいたします。
【古米委員長】 古米です。それでは早速ですが、議事に入らせていただきます。
議題の1、伊勢湾における全窒素及び全燐の環境基準の水域類型の指定の見直し検討について、事務局からご説明をお願いしたいと思います。
【亀井課長補佐】 環境省環境管理課の亀井です。
資料1-1についてご説明いたします。1ページをご覧ください。
本日、まず関係団体のヒアリングに先立ちまして、2月に行いました水質汚濁に係る環境基準の柔軟な運用についてご説明した後、伊勢湾における類型の指定状況についてご説明します。
3ページをご覧ください。まず、水質汚濁に係る環境基準の水域類型ですが、水質汚濁の状況等を勘案し、水域の利用目的等に配慮して指定するものでありまして、水域の利用の態様の変化等、事情の変更に伴い、適宜見直すこととしております。
次のページをお願いします。こうした中で、閉鎖性水域ではこれまでの対策によって汚濁負荷の量は減少傾向にありますけれども、環境基準である水域のCODの高止まりや、水産資源への影響といった問題が発生しています。
こうしたことを受けて、令和5年6月の中央環境審議会意見具申「今後の水・大気環境行政の在り方について」と、それを踏まえた第6次環境基本計画において、地域のニーズに応じた生活環境の保全に関する環境基準の在り方の検討を進めることとされました。
このように地域の水環境保全に関する課題が多様化する中で、この水質汚濁に係る生活環境の保全に関する環境基準について、既存の制度では課題がある水域において、地域のニーズや実情に応じた柔軟な運用を可能とするため、関係する告示等を改正し施行いたしました。
経緯としましては、前回、昨年9月の本小委員会でご審議いただいた後、パブリックコメント、答申を経て、本年2月に改正を行ったものです。
次のページをお願いします。制度改正の内容として大きく4点ございます。
一つ目は適時適切な類型の見直しということで、事務処理基準に、水質汚濁の状況や利用目的の実態、科学的知見等に応じて地域関係者と協議をした上で、柔軟に水域類型の指定や適時適切な見直しを行うことを明示しました。それから、現状非悪化の原則というものが告示に記載されておりますが、地域の利用の態様に合わせて適切に水質を管理するために類型を見直す場合は、水質の悪化を許容することには当たらないことを事務処理基準に明示いたしました。これを受けて、地域の実情に応じて基準値の高い水域類型へ見直すことも可能としたところです。
二つ目として、「利用目的の適応性」に係る水浴の見直しです。水域全体の水質と水浴場に求める水質が必ずしも一致しないことから、各類型の利用目的の適用性から水浴を削りまして、いずれの類型においても水浴を利用目的とする測定点は大腸菌数を規定いたしました。
三つ目に、季別の類型指定の設定ということで、月単位で区分して季別に類型を設定することも可能といたしました。
四つ目として、CODの達成評価の変更ということで、湖沼のAA、A類型、それから海域のA、B類型においては、有機汚濁を主因とした利水上の支障が継続的に生じていない場合は、CODの環境基準の達成状況の評価は必ずしも行わなくてよいことといたしました。ただし、CODの評価を行わない場合であっても、有機汚濁に関するモニタリングはCODや底層溶存酸素量などにより継続して実施することとしています。
6ページから伊勢湾における指定状況をご説明します。
7ページをご覧ください。伊勢湾の窒素と燐の水域類型の指定状況、右側に図がございます。3色に分かれておりまして、一番濃い緑色、湾の奥側に2か所ありますけれども、こちらがⅣ類型ということで、工業用水利用が行われているものです。その次に、知多半島の常滑と三重県の鈴鹿辺りを結んだ線の北側、湾の奥側ですけれども、2番目に濃い緑色の部分ですね、こちらはⅢ類型で、残る湾央や湾口の部分、一番薄い緑色の部分がⅡ類型と設定しております。
このように設定された理由を表2にまとめております。伊勢湾(ハ)については主たる水域利用が水産2種、伊勢湾(ニ)については主たる水域利用が水産1種に該当する水産及び水浴であること等からⅡ類型を当てはめるとされておりました。
ただ、伊勢湾(ハ)も(ニ)も、いずれも当時から水産1種だけではなく、水産2種や3種の利用もあった中で類型が分けられておりまして、伊勢湾(ニ)のほうは水浴の利用があり、伊勢湾(ハ)のほうは水浴の利用がなかったためと考えられます。
こうしたことを受けて伊勢湾(ニ)の水域について、今般、水浴を利用目的の適用性から削りましたので、類型の見直しを検討したいということです。
8ページに、環境基準の水域類型における水産利用の詳細についてまとめております。水産1種は、「底生魚介類を含め多様な水産生物がバランスよくかつ安定して漁獲される。」、水産2種は、「一部の底生魚介類を除き、魚類を中心とした水産生物が多獲される。」、水産3種は、「汚濁に強い特定の水産生物が主に漁獲される」ということで設定されておりました。
9ページに、伊勢湾における漁獲量や生産量の推移、主なものをまとめております。ノリについては愛知県、三重県共にここ20年で半減、アサリについても低い水準で推移しております。イカナゴについては、2016年以降は禁漁ということで、詳細はこの後、関係団体ヒアリングでお聞きしたいと思いますが、伊勢湾では窒素や燐といった栄養塩の減少により、水産業に影響が生じているといった指摘がございます。水域の利用の対応や地域のニーズ、実情に応じて水域類型の指定の見直しの検討が必要な状況です。
次の10ページをご覧ください。これから関係団体ヒアリングをさせていただきます。
一旦、資料1の説明は以上です。
【古米委員長】 ご説明どうもありがとうございます。
それでは、関係団体からのヒアリングに移ります。各団体に発表いただく時間は10分程度として、10分経過時に1鈴でお知らせします。10分経過してもご発表が終わっていない場合はお声がけをする場合がありますので、まとめに入っていただく等よろしくお願いしたいと思います。時間が限られておりますので、議事進行にご協力いただきますようお願い申し上げます。
説明は、三重県大気・水環境課、三重県漁業協同組合連合会、愛知県水大気環境課、愛知県水産課の順でお願いしたいと考えています。4件続けて説明いただいた後に、まとめて質疑応答を行います。
まずは資料の1-2を使って、三重県環境生活部環境再生局大気・水環境課よりご説明をお願いしたいと思います。
【三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課】 三重県大気・水環境課の松本でございます。私のほうからきれいで豊かな伊勢湾に向けた三重県の現状と課題ということで、ご説明させていただきます。
次のページをお願いします。まず初めに、環境基準の達成状況について説明をさせていただきます。
次のページをお願いします。このグラフは伊勢湾の三重県側の環境基準の達成状況を示したものになります。河川BODについては62水域で調査しており、青線で示しておりますけれども、近年達成率90%以上となっております。
海域のCODについては8水域で調査しており、赤線で示しておりますけれども近年改善傾向が見られております。
海域の窒素・全燐は緑色と黄色の線ですけども、近年全ての推移で100%を達成している状況です。
次のページをお願いします。続いて、伊勢湾の「きれいさ」と「豊かさ」の現状と課題として、貧酸素水塊の発生状況や干潟藻場の変化等について説明をさせていただきます。
次、お願いします。お示ししたグラフは平成3年度からの赤潮の発生件数となっております。近年は減少傾向となっております。
次のページをお願いします。こちらは貧酸素水塊の発生状況として年代別の底層DOの状況を示したものです。3mg/L以下の範囲を青の太線で囲んでおりますけども、年代が進むごとに範囲が拡大し、濃度の低下傾向がうかがえます。
次の資料をお願いします。こちらについては伊勢湾の干潟藻場の変化というところですけども、1955年時点での状況について、干潟域についてはピンク色で示し、アマモ場については緑色で示しています。干潟域については2000年までに37%まで減少し、アマモ場については1%まで大幅に減少している状況になっています。
次の資料をお願いします。こちらについては伊勢湾の漁獲量の変化についてですけども、右側のグラフをご覧ください。青色の実線がアサリの漁獲量です。1980年の1万4,000トンから2023年には163トンまで減少しています。点線についてはイカナゴの漁獲量ですけども、資源量減少により2016年から禁漁となっている状況です。
左側については黒のりの低品質ののりの枚数の割合を示した図ですけども、湾奥部、湾南部共に低品質ののりの割合が増えている状況となっています。
次の資料をお願いします。この図は主な黒のり漁場での年代ごとの溶存窒素の月平均濃度の変化を示したものです。各漁場とも水色の線で示す1980年代と比べ、全体的に低下している状況となっております。
次の資料をお願いします。まとめといたしまして、伊勢湾の三重県沿岸部では、栄養塩類が経年的に減少しており、特に中南部の海域で状況が顕著となっております。また、藻場、干潟の減少や貧酸素水塊の拡大が認められている状況です。このため、海域の栄養塩類を湾内の豊かな生物生態につなげていくため、栄養塩類の管理と藻場、干潟の保全と再生を両輪で行うことが重要と考えているところです。
次の資料をお願いします。続きまして、本県のきれいで豊かな伊勢湾の実現に向けた取組について説明をさせていただきます。
次の資料をお願いします。本県では、環境基準の達成と生物生産性・生物多様性とが調和・両立したきれいで豊かな伊勢湾の実現を目指し、令和4年10月に三重県第9次水質総量削減計画を策定しました。本計画では、従来の汚濁負荷の削減から総合的な水環境管理への新たな方向性を導入し、関係機関や関係団体と連携し、お示ししました(1)から(5)の取組を進めているところとなっております。
次の資料をお願いします。まず一つ目の取組なんですけども、総量規制基準の改定として右の二つの図に示すとおり下水道業の窒素、燐の管理運転がより柔軟に実施できるよう、それぞれの基準値を国が定めた範囲の上限になるよう見直しを行いました。なお、これまでの負荷量の実績の推移と比べると、第9次の目標量は左の図のようになっています。
次の資料をお願いします。次いで下水処理場の栄養塩類管理運転の試行とその効果の検証についてでございます。公的機関が管理する五つの下水処理場において、令和4年から燐の管理運転の試行を開始し、令和6年からは窒素の管理運転についても試行してきたところです。なお、志登茂川浄化センターについては平成30年に供用を開始し、最も直近に供用を開始した下水処理場であることから今現在、管理運営に係る調査を実施しているところとなっております。なお、これらの管理運転の検証効果については、本県の環境生活部、農林水産部、県土整備部の3部が連携して検証し、今後の施策等にフィードバックをしていくこととしております。
次の資料をお願いします。参考といたしまして、その管理運転のイメージ図をお示ししております。現在、このような濃度コントロールを行うことで、日平均値が規制値を超過しない、かつ高い値を目指す管理運転を行っているところになっております。
次の資料お願いします。管理運転について、下水処理場の放流濃度への影響について、まずテストについてなんですけども、この表に示したとおりとなっております。管理運転を始める前の令和3年と比べると、令和6年は各下水処理場において1.39倍から1.61倍と増加しており、管理運転の効果が現れております。
次の資料をお願いします。こちらについては、燐についての管理運転による下水処理場の放流濃度の影響についてお示ししております。燐についても管理運転を始める前の平成30年と比べると、1.31倍から2.06倍と増加しており、管理運転の効果が現れていることが分かります。
なお、参考ですけども、グラフにお示ししましたけれども、燐放流濃度の1か月間の状況からも分かるようにかなりばらつきがあり、安定的な管理運転を行うためにはきめ細やかな運転調整が求められているところとなっております。
次の資料をお願いします。続きまして、調査研究の推進と科学的知見の集積・活用として、令和4年から栄養塩類管理運転の効果検証を行っております。まずは令和4年度から令和5年度にかけて、一部浄化センターの周辺海域で水質やプランクトン等の調査を実施し、それらの結果を基に管理運転の効果検証に係るシミュレーション解析を令和6年度に実施しました。今後は、本シミュレーション解析を活用することにより、現在より高濃度で排水した場合の効果検証に取り組むこととしております。
次の資料をお願いします。続きまして、藻場、干潟及び浅場の保全・再生等の推進としてなんですけども、「伊勢・三河湾海域干潟ビジョン」に基づいた計画的な干潟再生等に取り組んでおり、令和5年からは松阪市地先においてアサリの稚貝の着底を促進する砕石を活用した干潟、浅場の造成工事などに着手するなどの取組を進めておるところとなっております。
次の資料お願いします。その他といたしまして、生活排水処理対策についてなんですけども、本県が定めている生活排水処理アクションプログラムに基づき進捗管理をしており、令和5年度末の整備率は89.6%となっており、引き続き、関係部局と市町と連携して、生活排水処理施設の整備を進めていきます。
次の資料をお願いします。関係者との連携体制です。三重県「きれいで豊かな海」協議会というものを、令和4年9月に立ち上げました。構成員といたしましては、環境生活部、農林水産部、県土整備部、そして、それぞれの研究機関が参画いたしまして、きれいで豊かな海の実現に向けた進捗管理を行っているところとなっております。
あわせて、中部地方整備局さんのほうで設立されている伊勢湾再生推進会議のほうと連携して情報共有、連携しながら取組を進めているところでございます。
次のページをお願いします。最後、まとめですけども、三重県では引き続き多様な主体と連携、目標を共有しながら、きれいで豊かな伊勢湾の実現に向けて取組を推進していくこととしております。
というところで、私どもの説明は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
【古米委員長】 ありがとうございました。
続いて、資料の1-3について、三重県漁業協同組合連合会よりご説明をお願いします。
【三重県漁業協同組合連合会】 よろしいでしょうか。三重県漁連と申します。お世話になっております。資料に基づいて説明をさせていただきます。
資料の3枚目、2ページとなっているところです。伊勢湾の概要でございますが、こちらのほうの取りまとめにつきましては、ほとんど皆さんのご承知のことというところでございますが、イカナゴが禁漁もう9年ということで、資源はいまだに回復しておりません。黒のりにつきましては、ここ何年かは貧栄養に伴う色落ちが大きくて減産になってしまったときもございました。
そしてアサリ・ハマグリ等二枚貝の資源の減少ということで、これまで漁業資源にしてきたものの生育しにくい状況になっております。
次のページでございます。伊勢湾で営まれる漁業と生産状況というところでございますが、主に桑名から南の鳥羽湾港までの間でのり、採貝、それからイワシ等々、イカナゴを採るような船曳網、漁船漁業ということで、非常に豊かな場所として我々はこれまで漁業をやっていくことができていたというところでございます。
次のページをご覧ください。それで、これはノリ養殖の現在の状況を示す資料でございます。栄養塩につきまして特にノリの場合、窒素と燐というところが非常に大事になってくるわけですが、左側の図は、漁期の間(10~3月)に、我々(漁業者)が(各海域の)窒素量を計測し、県が燐の含有量を計測してとりまとめたものでございます。1980年代から下にかけて行くと、水色の部分が多いと思います。こちらについては、ノリが生育するのに十分な栄養がない、つまり、窒素量が十分でないというところで、このような傾向が年々出てきているということでございます。
今年の漁期も価格は非常によかったんですけれども、ノリの生産量としては例年並み程度というところでございました。現在は桑名地区を除いてなかなかノリの生育に適した状況になりにくいということが続いております。
次のページでございます。漁業生産、漁業の現状ということで貝のほうですね。貝のほうも先ほど県のほうの説明にもございましたとおり、伊勢湾というのは古くからアサリ・ハマグリを中心として漁獲量に恵まれていたわけですけれども、現在では減少をしておりまして、このグラフを見て分かるとおりの状況でございます。
鈴鹿地区というところがございまして、こちらのほうでここ数年水揚げが今頃の時期あったわけですけれども、今年はそれもないというところでございます。
次のページをご覧ください。イカナゴの資源というところでございます。イカナゴにつきましては、この地区のこの時期の風物詩でありました。今年で禁漁9年目と書いてございますが、漁を禁止しているわけではなくて、漁ができない、魚がいないということでございます。
原因については高温によるものが主な理由ということも言われておりますけれども、最近では夏眠に入る前、夏眠場は伊勢湾口の辺りにたくさんあるんですが、こちらで魚の餌が不足をして、水温耐性が非常に弱くなっているんではないかというようなことも言われているというところでございます。いずれにしても、今、イカナゴ漁はもう全くできない状態でございます。
次のページをお願いします。伊勢湾の再生に向けた要望というところでございます。我々、漁業者としては、やはり、なりわいでこの海で生きているというところでございます。数年前から県の下水施設の栄養塩の管理運転も行っていただくようにはなりました。そして、我々も大変期待をしているわけでございますが、まだ、その効果というところでは限定的ではないかなというところがありまして、今後の推進に期待をしているところでございます。やはり栄養がないとノリも育ちませんし、プランクトンもいない。これが漁業を継続していくには非常に難しい話になってしまうというところでございますので、これらを改善する方向で皆さんのお知恵を頂ければというふうに漁業者も思っているところでございます。
次のページでございます。その中で、今、出ているのが先ほどからの話にございましたとおり、類型指定等でございます。
我々としては、漁業が継続していけるために、プランクトンや藻類、魚類がしっかりと住める豊かな海が復活できるように、そういった水質基準にもっていくということを取り組んでいただきたいというふうに思っております。
漁業のほうはやはり生物がいてできるわけですから、これまでの水質基準が足かせになってしまうというようなことがないようにしてもらいたいというふうに考えております。
それで次のページのその次をめくっていただきたいんですが、漁業者も何とか現状を改善していくためにいろんな取組をしてきました。漁業者や我々漁業関係団体木曽三川の上流、岐阜県にまで足を運んだり、それから県内の何か所かに木を植えております。一部では県漁連の声かけではなくて漁協、地元のほうが林業関係者と連携して木を植えるという活動、これはもう30年近く続けている取組でございます。
それから、次のページでございます。これは漁業者自ら海底耕耘をして、できる地区は限られてくるんですが、噴射ポンプ等で海底を撹拌させて底質の硬化を防ぐというところで、漁業者はこういう取組も行っているというところでございます。
それから、次のページでございます。海浜清掃の活動の写真がございます。これはもう何十年も続けております。きれいな海、豊かな海のために近年この清掃活動では、漁業に関係のない方々も呼びかけ、多数の参加者のもとで実施しております。こういったことも漁協、それから漁連含めて定期的に活動をしているというところでございます。
次のページでございます。干潟の体験の写真が掲載されております。干潟は海の生物を育む非常に重要な役割がありますが漁業者の側からも働きかけを行って、こういう機会をつくって住民の方に理解をしていただいて、海というのが豊かであるということが非常に大事だということを一般の方々に広く啓発するような活動もしております。
写真は桑名のところでございますが、干潟の保全活動は、伊勢湾漁業者も含めてもう大きな組織だけでも五つぐらいの組織で、干潟の保全活動を現在取り組んでいるというところでございます。
それから、次のページでございます。現在はこのような施肥の活動もノリ養殖業者のほうでやっていますが、目に見えるような効果はなかなか現れず、費用もかかるというところで広くはできないんですけれども、窒素、燐といった栄養塩の乏しい地区に対して、施肥を行って今改善を期待しているところでございます。
【古米委員長】 10分を過ぎておりますので、まとめに入ってください。
【三重県漁業協同組合連合会】 最後になりますが、次のページでございますが、稚魚・稚貝の放流も行っているというところで、漁業者の側も行政の力も借りながら、いろんな取組をしているというところで、私の報告を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【古米委員長】 ありがとうございました。
続いて、資料の1-4について、愛知県環境局環境政策部水大気環境課よりご説明をお願いします。
【愛知県環境局環境政策部水大気環境課】 愛知県水大気環境課の戸田です。
2ページをお願いいたします。私からは、愛知県におけるこれまでの水環境改善の取組の概要と水質の現状についてご紹介いたします。
3ページをお願いします。本日の議事である海域の全窒素と全燐の環境基準の関連につきましては、水質総量削減計画に基づき、COD、窒素、燐の負荷削減等に取り組んでまいりました。
こちらは、本県の総量削減計画に定めた主な施策を示したものでございます。伊勢湾側、三河湾側で実施している施策を掲げておりますけども、中には三河湾側だけで実施している取組も含まれております。
1番の陸域における汚濁負荷量の削減につきましては、法規制対象の約1,500事業場に対して総量規制基準による排出規制を行っております。生活排水対策では下水道整備、合併処理浄化槽設置などを促進いたしまして、2023年度の汚水処理人口普及率は93.2%、下水道普及率は81.5%となっております。
また、未規制事業場等へも汚濁負荷量削減の指導を行っております。
2の海域における環境改善事業としましては、干潟・浅場・藻場の再生、覆砂、浚渫、深掘跡の埋戻し、また栄養塩管理の関係では水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験を実施しております。社会実験につきましては、後ほど本県の水産課からご説明をさせていただきます。
最後、3の啓発事業といたしましては、三河湾では地域における環境再生の機運を高めるため啓発イベント等を実施しております。
次のページをお願いします。COD、窒素、燐の負荷量の実績をご説明させていただきます。こちらは全県の負荷量となりますけれども、長期的に見ますといずれの物質も順調に削減が進んでおります。第9次総量削減計画の目標年度である2024年度の実績は現在、集計中でございますけども、2020年度から2023年度まででは、2024年度の欄の棒グラフに記載のあります、1日当たりCOD70トン、窒素55トン、燐4.4トンの削減目標値を達成している状況となっております。
5ページをお願いします。こちらは2023年度の負荷量実績について湾別の内訳を示したものでございます。各円グラフの左側が伊勢湾、右側の縞模様の網かけが三河湾となっております、全県の負荷量のうち、CODで言いますと、約7割、窒素及び燐では約6割が伊勢湾側に流入しているという状況です。
6ページをお願いします。干潟・浅場の造成については、三河湾を中心に国によるシーブルー事業と、その後の県独自事業の実施により、これまで約720ヘクタールが造成をされております。
次のページお願いします。水質の現状でございます。グラフは環境基準の達成率の経年変化を示しております。長期的には改善傾向でございますけれども、最近10年間で見ますと、赤で示す河川のBODは90%以上、海域の全窒素・全燐、それぞれ青と緑で示しておりますけども、それらにつきましては100%を達成した年がある一方で、オレンジで示しますCODにつきましては45から64%で横ばいの状況にあります。
次のページをお願いします。伊勢湾、三河湾における水質の推移、黄色の部分ですけど、最近の10年を見ますと、下のグラフの全窒素・全燐の濃度につきましては概ね横ばいとなっておりますけども、上のグラフのCODについては上昇傾向が見られているという状況になっております。
次のページをお願いします。類型指定がされました水域ごとの全窒素・全燐の濃度の推移です。上が伊勢湾、下が三河湾のそれぞれ全窒素・全燐のグラフでございまして、全ての水域で長期的には濃度は減少傾向となっております。
現状の課題として特に右上の図で、緑色で示しましたⅡ類型の水域において、ノリ・アサリにとって必要な栄養塩類である窒素・燐の不足が指摘をされております。
次のページをお願いします。貧酸素水塊の発生状況です。伊勢湾、三河湾では湾奥から湾央にかけて毎年夏季に貧酸素化している状況となっております。
次のページをお願いします。赤潮・苦潮の発生状況です。赤潮は伊勢湾、三河湾とも湾奥で発生しやすく、苦潮は三河湾の湾奥で起こりやすい状況となっております。右側のグラフでは上が伊勢湾、下が三河湾のものでございますけども、折れ線グラフで示す赤潮の延べ日数はいずれも中期的には減少傾向ですが増加傾向となっている期間もあります。
青い棒グラフで示します苦潮の発生件数につきましては、年により変動が大きい状況となっております。
次のページをお願いします。まとめでございます。本県ではこれまで水質総量削減計画に基づく取組等により、陸域からの窒素・燐の負荷量の削減は進んでおりまして、海域濃度も減少傾向であるものの、貧酸素水塊、赤潮・苦潮の発生が見られる状況となっております。
一方でノリ・アサリに必要な栄養塩類の不足が指摘されていることから、栄養塩管理の社会実験を行うとともに、学識経験者や漁業者、沿岸の市・町などを構成員とする愛知県栄養塩管理検討会議において、漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理のあり方を検討いたしました。これらの詳細については県水産課のほうから説明をさせていただきます。
私からは以上でございます。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
続いて、資料の1-5について、愛知県農業水産局水産課よりご説明をお願いします。
【愛知県農業水産局水産課】 愛知県栄養塩管理検討会議の結果及び関連情報について、愛知県水産課の日比野からご説明いたします。
次をお願いします。伊勢湾、三河湾では流入負荷削減が行われ、海域での窒素・燐濃度が低下している状況は先ほどご説明あったとおりでございます。本県漁業にとりましてはノリ・アサリというのは非常に重要な漁業でございます。栄養塩不足はノリの品質や成長に直結しますし、養殖ノリの色があせてしまう色落ちや、生産終了の早期化などが現在課題となっております。
また、植物プランクトンは海域の生物生産を支える基盤でありますし、二枚貝の餌でもあります。アサリでは餌の減少によりましてエネルギー収支のバランスが崩れ、肥満度の低下により生き残れなくなってしまい、漁獲量が急減するといった栄養塩を起点としたプロセスが近年の研究で明らかになっております。
次をお願いします。このような変化を現場で間近で見てきたのは漁業者さんです。左上に書いてございますが、2017年に愛知県漁連から知事宛てに栄養塩管理の要望がございまして、その対応の一環としまして、右側にありますように下水処理場による栄養塩供給の取組に取り組んでまいりました。
特に②の水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験では、総量規制基準の改正により、窒素・燐をそれまでの基準の2倍に緩和して、増加放流を実施してまいりました。また、伊勢湾側でも関係者のご協力により、燐濃度増加運転を実施しているところでございます。
次をお願いします。愛知県では、2022年から愛知県栄養塩管理検討会議を設置いたしまして、2年間の社会実験の結果の検証であるとか、漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理のあり方について検討してまいりました。学識経験者をはじめ関係部局が一堂に会して議論を重ね、2025年2月に報告書を公表しております。
なお報告書は、検討会議Webページからダウンロードできまして、本日ご説明する内容はその報告書の概要になっておりますが、特に水質環境基準に関わる関連情報を主体としております。
次をお願いします。検討会議では、栄養塩管理の目標となる漁業生産に必要な栄養塩濃度というのを検討いたしました。特にアサリはこの海域の漁業において重要な資源でありますし、内湾の健全な物質循環に不可欠な水質浄化機能を担う鍵となる、この海域の漁業生産における重要種と位置づけることができます。
下の図には、様々な観点で求められた知見を示しております。例えばアサリの資源が良好であった1998から2006年の全窒素・全燐の年平均値であるとか、あるいは全国のアサリ漁場の資源量指数と近傍の水質との関係から得た関係式から、必要なTN、TPを逆算した知見、またアサリ漁業成立のための漁獲量の閾値を仮定しまして、その達成確率から必要な栄養塩濃度を求めた知見など様々な実測値に基づく知見による検討が行われました。
次をお願いします。これらの検討から、必要な水準には多少のばらつきが見られましたが、全窒素の範囲は0.37から0.47mg/L、全燐では0.038から0.054mg/Lとなったことから、漁業生産に必要な栄養塩濃度は全窒素で0.4mg/L以上、全燐で0.04mg/L以上と整理がされました。
次をお願いします。一方で、アサリやノリの漁場位置から現在の伊勢湾、三河湾における海域の栄養塩濃度分布を見ますと、今お示しした漁業生産に必要な栄養塩濃度を下回る海域、これは黄色い海域ですけれども、近年拡大してきている状況がございます。
この背景の一つには、伊勢湾、三河湾の漁場を含む海域の多くが現在窒素・燐の環境基準のⅡ類型とされており、その基準値が漁業生産に必要な栄養塩濃度を下回る濃度になっている、そういったことが考えられます。この基準値を達成することを目標に、例えば流入負荷削減が行われてきたことも、海域の栄養塩濃度の低下の大きな要因の一つと考えられます。
このため、検討会議で整理された漁業生産に必要な栄養塩濃度を許容できるための類型の見直しは、今後の栄養塩管理を進める上でも不可欠であると考えております。
次、お願いします。こちらは関連する情報になりますが、各年代の漁船の標本船によりますアナゴ・シャコの漁場位置を示した図になります。マアナゴは外洋から来遊した仔魚が湾内生育し漁獲資源となります。地元ではマアナゴをメジロと呼びまして、その干物はメジロの干物として大変おいしいです。
またシャコは生活史の全てを内湾に依存する種でありますし、こちらも寿司ネタとしては有名ですし、国産シャコの主産地としまして、例えば冬季の水揚げ制限など、漁業者による精力的な資源管理が取り組まれてきた種でございます。
両者の分布域を見ますと、湾域の栄養塩濃度の低下に伴って多少とも栄養塩の高い湾奥部へと分布域がシフトしているようにも見えます。仮にこれが水温の影響であれば、水温の上昇率は湾の北部、湾奥部で高いとされておりますので、南部が分布域で縮小しているというこの結果とは矛盾します。
この結果は栄養塩と分布の明確な因果関係を証明するものではございませんが、一方で、アサリやノリ以外でも水産資源と栄養塩、ひいては基礎生産との関連を示唆する状況証拠と捉えることもできるかなと思います。
また、伊勢湾、三河湾は小型底びき網漁業や船びき網漁業が盛んに行われている海域ですが、これらの漁業の漁場の多くは現在の緑色で示されているⅡ類型海域となっております。
次をお願いします。その他の主要魚種の漁獲変動、漁獲量の変動についてもお示ししております。
減っている種、増えている種とありますけれども、タイプ分けすると内湾に生活史を依存する底生性の種類において、特に90年代以降減少傾向が見られております。遊泳性のものでも夏しらすやイカナゴ、内湾に依存するか、しやすいものについても、近年乱高下する傾向にございます。
増えている種としましては、もともと外海を主体として漁獲されてきたような種になります。
このような状況からも、内湾漁業にとって重要な特色ある魚種が減少あるいは不安定になっている状況が伺えます。
次をお願いします。検討会議では、栄養塩管理の必要な時期についても言及されております。最近の研究では春や夏の生物の栄養状態、飼料条件が資源形成に関連するということが示されつつあります。
例えば近年よく言われる高水温の影響も、これは生物の栄養状態が悪いとより顕著に影響するといった知見もございます。近年の環境変化や水生生物の多様な生活史を考えれば、春から夏も含めた取組が重要であり、生物に対する栄養塩の重要性は季節別に限定する理由は少ないのではないかということになります。
次をお願いします。このような栄養塩の供給により、海域の環境にどのような影響をもたらすかについては議論されるところかなと考えております。現在の生態系シミュレーションにおいて、長期的あるいは高次生態系も含めて再現性をもってどの程度評価できるかというのはちょっと詳しくは分かりませんけれども、少なくともこれまで現場で長年にわたり観測された結果を見る限り、海域の栄養塩濃度は半分にまで低下したのにもかかわらず、貧酸素水塊の状況に改善傾向は認められていないという事実がございます。
特に統計的な解析によれば、貧酸素水塊の変動は水温や密度差といった海洋の物理構造に左右されているという結果もございます。
また、伊勢湾再生推進会議では、伊勢湾シミュレーターの結果から、アサリ等の二枚貝の資源が増えることによる摂餌による有機沈降物の除去も環境悪化を抑制する上では非常に重要な要素であることが指摘されております。
次をお願いします。このような議論を踏まえまして取りまとめられた栄養塩管理方策の方向性でございます。
1番目としましては、社会実験や伊勢湾側での増加放流を現計画期間では継続するものとなっております。
その下の②ですけれども、栄養塩増加運転の恒常的実施とその枠組づくりを進めるという内容です。
1点目は、漁場を含む海域の類型を、先ほど申し上げた漁業生産に必要な栄養塩濃度を許容できる類型に見直すというものでございます。また、必要な栄養塩濃度に高めていくために、下水処理場において増加運転の実施箇所の増大と周年運転を検討して実施していくような点、また総量規制基準の緩和や増加運転を考慮した削減目標量を設定していくことが不可欠であるとされております。
今後は窒素・燐を削減対象ではなく、管理の対象としていくことが重要であると考えられます。
栄養塩を漁業生産につなげる取組も、両輪として実施していきます。
以上の取組を進めながら、環境や漁業のモニタリングを行いつつ順応的な管理とし、水質の保全と豊かな海の両立を図っていくこととしております。
次をお願いします。先ほどご説明ありましたように、今年の2月14日に環境基準についての一部を改正する告示及び処理基準の一部改正をいただきました。検討会議で整理された漁業生産に必要な栄養塩濃度は環境基準Ⅲ類型の基準に含まれます。ここで利用目的としている水産用水基準2種の魚種は、イワシ類、スズキ、カレイ類、シャコ、ナマコなど、いずれもこの伊勢・三河湾の内湾漁業の対象種として重要な種であります。大きな地域ニーズもございます。
また、沿岸の潮干狩りのにぎわいや採ったアサリを食べる喜び、沿岸漁業を起点とした産地市場での活気ある仕事、次世代が生物多様性を見て触れて楽しむ等、豊かな海とは内湾が持つ様々な生態系サービスが創出される地域で関わる人々の心を豊かにできる海であるべきだというふうに考えます。
検討会議の内容は漁業生産の側面から検討してきたものでございますが、漁業は古くから豊かな海の恩恵を利用して営まれる事業であり、内湾が本来持つ生物多様性や高い生物生産を前提としております。したがいまして報告書は、漁業生産に必要なと題されてはおりますが、生き物に富んだ豊かな海を次世代に引き継ぐために必要な考え方が整理されてある、整理されたものであると考えております。
県といたしましても報告書の内容を踏まえ、豊かな海に向け関係部局が連携して取り組んでいくことが重要であるというふうに考えてございます。
報告は以上でございます。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、説明のありました資料の1-2から1-5につきまして、委員の方々からご質問、ご意見をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。オンラインの方は挙手ボタンをお願いいたします。
田中委員、どうぞ。
【田中臨時委員】 田中です。どうもありがとうございます。
幾つかあるんですけどまず、三重県の環境サイドの方への質問なんですが、藻場と干潟の大幅な今、減少が起こっている話が出てきたんですけれども、三重県の場合ではアマモ場の減少とか干潟の減少はどういうことが原因であるのか、愛知県の方は先ほど港湾とか海岸での復元のいろんな努力をされている話があったんですが、三重県ではどういうことがされているかということをまず教えてください。
それから、三重県の漁協の方への質問なんですけれども、エビとかカニとかの底層の、伊勢湾の中心部分、湾の中央部分のところは溶存酸素がやはりかなり下がっているんですけれども、ここについては例えばエビとかカニの減少というのは気にならないんでしょうかという点が1点です。
それからもう1点は、イカナゴの話が出てきたので、イカナゴのちょっと確認なんですけども、先ほどご説明いただいた中のページ、6ページだったですかね。ここで夏眠が行われると。夏眠前にプランクトンをかなり食べて、それで何とか夏を越えるんだというお話だったんですが、これは越える場所というのは湾の外側という理解でいいんですよねというちょっと確認です。ちょうど6ページ目の湾の湾口からさらに外に出たところが夏眠場であって、湾の中にいるのはそれの直前までは餌を食べているけど、そこから先は湾の外に出るという理解でいいのかという確認です。
それから愛知県の日比野さんの話が非常に興味あったんですが、ノリとかアサリについては、いろいろな研究されて、必要な栄養塩レベルがどれぐらいかも大分分かってきたのかと。
今日はあまり話としては出なかったんですが、三重県側のほうの話があったイカナゴの視点から見たときに、やはり夏眠前も含めて、餌がやっぱり十分ないといけないと。恐らく、甲殻類を主に食べるということになるのかなと思うんですが、どれぐらいの栄養塩レベルがイカナゴの保全のためには必要か、その辺の研究というのはどういうふうに進んでいるのかということで、お知りの点があれば教えていただきたいという点です。
それから、もう一点は、ちょうど先ほど三重県のほうにちょっとご質問した点なんですけども、底層DOによってシャコとかエビが減っている理由の中に、底層DOの低下がずっと続いているということは何か関係しているのか、関係していないのか。その辺、今のご見解をお聞きしたい、この点です。
以上、お願いします。
【古米委員長】 ほかの委員の方、ご質問がなければ。
それでは、大久保委員、お願いいたします。
【大久保臨時委員】 ありがとうございます。
今の田中委員のご質問とも関係する点がございますが、合わせてお答えいただければと思います。
まず、三重県の方にお伺いします。先ほど話に出たエビについて、これも水産1種ということになると思いますけれども、類型を変更した場合に、このエビに対する影響、エビ以外でもいいのですが、水産1種のものに対する影響ということについて、何か懸念される点はないのかという点をお伺いしたいのが、まず1点目でございます。ハマグリも減少しているということですから、水産1種で今設定されている値そのものに漁協の方々あるいは水産の方々は、少し疑問をお持ちなのかどうかということが質問の第1点目です。
それから2点目は、同じく三重県の発表のパワーポイントの21枚目だったと思うのですけれども、再生推進会議で関係活動団体と書かれていましたが、こちらは漁協のことを指すのか、あるいは漁協以外にも様々な団体が参加されているのかという点を教えてください。
以上が三重県への質問です。
それから、3点目は愛知県に対する質問で、こちらも先ほど田中先生からご質問があった点と関わりますが、6ページ目の藻場干潟の再生ですけれども、こちら700haくらいですか。パワーポイントで言うと6ページ目で、従来造成をしてきたということでございますが、これによりまして、生物の種類という観点から、水環境の改善という観点から、どのような効果が、もうこれは98年から始まっているわけですが、この20数年間であるというふうにお考えであるか。
また、今700haぐらい造成していますけれども、今後、造成計画としてはどの程度のものがどのくらいの期間で想定されているかという計画がございましたら、お伺いしたいと思います。
以上です。
【古米委員長】 ほかにご質問がないようであれば、三重県の環境、そして漁連さん、そして愛知県の水大気環境課、水産課という順番で回答をお願いしたいと思います。
まず、三重県の環境よりお願いします。
【三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課】 三重県の農林水産部水産基盤整備課の奥村と申します、よろしくお願いいたします。
まず、田中委員のご質問ですね。私どもの7ページのほうでご説明いたします。
干潟とアマモの減少の要因ということであったかと思うんですけども、干潟、アマモは共に、減少の要因としましては、特に高度経済成長期の埋立てによる減少が大きいのかなと。それが要因として大きいのかなと考えているところでございます。
干潟域に関しましては、今のスライドで示されています2000年の状況ですが、それ以後もあまり大きな変化はありません。
一方、アマモ場に関しましては、この資料では2000年の状況を示しておりますけれども、近年はもう少しアマモ場が増えてきておりまして、1,000haぐらいまでは増えております。
もう一つのご質問として、その対応ということになりますと、資料の19ページをお願いいたします。
私ども三重県としましては、こういった中で、特に干潟・浅場の造成というものを重視しておりまして、以前ほどの干潟を全部復活させるということはちょっと現実的ではないものですので、どういった場所に干潟・浅場を造成したらいいのかということを検討しておりまして、アサリやハマグリなどの母貝が住める場所、また、これらが生育する場所ということで、そういう場所を選びまして、そういうところに干潟・浅場の造成というものを展開させていただいております。
また、アサリとか浮遊幼生が着底した後に、波浪で流されてしまって消えてしまうということがありますので、そういうことをなるべく防ぎたいということで、砂よりも少し粒の大きな2mmから5mmほどの大きさの砕石と言われるものを浅場の表面に用いる工法を取っておりまして、なるべく歩留りを上げるというような取組をさせていただいております。
漁業者の皆様による干潟・浅場の保全活動などの支援というのも、これは国の事業、補助事業を使っておりますが、それを使って県としても、あと関係市町と共に支援させていただいているところでございます。
以上です。
【古米委員長】 それでは、三重県漁連さん、お願いいたします。
【三重県漁業協同組合連合会】 三重県漁連でございます。
ご質問のまず一つ目、エビ類、カニ、水産1種になると思いますけども、この漁獲に関しては確かに減少しているというところで、貧酸素の影響を受けやすいということも事実だと思っております。
ただ、現在、我々の漁業者側の感覚でいくと、この貧酸素の影響というのが果たして栄養塩、窒素、燐との関連がどこまであるのかというところについては、我々はちょっと原因が違うのではないかという感覚を持っております。
いずれにしても、エビが育つには干潟が必要ですし、アマモ場も必要というところで、そういったものも減少している中で、これはこれで造成などの取組を行いますけれども、まずは海を豊かにしてプランクトン量が適度に存在し、生物を豊かに育むことができる水質基準は必要なものではないかというふうに考えております。
それから、イカナゴの質問があったと思いますけれども、イカナゴについては、図の中に示させていただいたように、伊勢湾口の離島の外側ぐらいが夏眠の場所というところで、本来そこから伊勢湾の中に入ってきて、そこで餌を食べて育つという認識をしております。
ですので、今現在はどうも湾口の調査でイカナゴはいる形跡はありますが、伊勢湾内でイカナゴを見かけることがないというところで、伊勢湾が餌や水温がイカナゴの生息に適した環境になくて、資源が全くいなくなったのではないかというふうに捉えております。
以上でございます。
【古米委員長】 大久保委員のハマグリも水産1種の件についてはいかがでしょうか。
【三重県漁業協同組合連合会】 ハマグリについても、これも住む環境について、主要漁場は桑名付近の北のほうでございますから、今現状で議論されている海域と、少し異なるというところでございます。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、愛知県の環境局からお願いいたします。
【愛知県環境局環境政策部水大気環境課】 シーブルー事業ですけれども、これは1998年から2004年まで国交省の中部地方整備局が主体となって行った事業でございますけども、その取りまとめにおきましては、ちょっと詳しい結果は今、この場にはありませんけども、造成区域において、周辺海域と比べてDO値が高くなるというような水質の改善、それから底質の改善がみられました。底生生物のモニタリングも実施しておりまして、生物量が増加したとか、あと生物の多様化といった効果が見られたというふうにまとめられております。
それから、今後につきましては、2005年以降は県独自事業でやっておりますけども、今のところ、計画としては、2030年度までは毎年13haほど事業を実施していくという予定となっております。
私からは以上です。
【古米委員長】 ほかにもないですね。
まずは、それでは続いて、愛知県水産課からお願いいたします。
【愛知県農業水産局水産課】 水産課でございます。
イカナゴについてというお話だと思います。イカナゴについても、名城大学さんを中心に、その重要性が近年になって指摘されているところでございます。ちょっと資料の中にも引用させていただいておりますけれども、飼育実験等によりまして、やはり餌をしっかり食べているイカナゴについては、その後の高水温に対する耐性が強くなるといった研究事例もございますので、やはり水温耐性に関しましても、餌が重要であるというところはかなり確からしい情報ではないのかなというふうに考えております。
一方で、その餌を満たすために、栄養塩の水準としてどのレベルが必要かというところは、実際のところ、まだ検証が具体的になされていない、なされつつあるところなのかなとは思っているところなんですけども、その一方で、やはりイカナゴ、この海域のイカナゴは、愛知県と三重県が非常に協力関係にありまして、漁業者さんがかなり精力的な資源管理を長年にわたり行ってきたものです。それが、全国的にも優良な資源管理事例として取り上げられるほどの資源管理をしてきた中での、この再生産関係というものが失われてきているというのが、今の状況だと思います。
その水準をどこに持っていくかというところは、今後の検証課題になるのかなと思いますけれども、そういった再生産関係を安定させるためには、まずはやっぱり動物プランクトンがどれぐらいいるのか。あるいは、一つお話の中では、2000年代前半の栄養塩水準というのがやはり安定して再生産関係が見られたというところがありますので、まずはそこを目指すのかなというところが一つの目標になるのかなというふうには考えられます。
それから、エビ・カニに関して、底層DOが関係しているか、1種の関係ですけれども、これはやはり底層DOというのは資源形成において重要なファクターになっているというのはあると思います。
ただ、貧酸素が出ておりました90年代、あるいは80年代、そういった過去においては、そういった資源量も多かった状況がございますので、底層DOそのもので現在の資源減少が引き起こされている、それが全ての要因であるという考え方は、ちょっとこれまでの歴史を見ると違和感があるのかなというところがございます。
先ほどありました、三重県さんのほうにご質問ありました1種に区分される魚種への影響につきましても、過去のⅢ類型濃度において、少なくとも必ずしも漁獲量が少なかったわけではありませんので、Ⅲ類型濃度であった80~90年代はむしろ漁獲量が多い種類もございます。特に伊勢湾、三河湾なんかでは小型のクルマエビ、これはサルエビとかアカエビといった種類が含まれますけれども、これ、実はこの地域では、重要なえびせんべいの原料になったりとかします。これも地域ニーズで非常に重要な種類でありますけれども、こういった近年の減少もございます。なので、貧酸素水塊との対応を見ましても、1種につきましても、貧酸素水塊の影響はあるにしても、栄養塩というのも重要なファクターになっているのではないかなと思います。
【古米委員長】 伊勢湾の再生推進会議組織についての大久保委員のご質問は、漁連関係はどうなっているかということでしょうか。
【大久保臨時委員】 いえ、関係活動団体という、パワーポイント21の構成と団体数をお伺いしました。漁協は確実に入っていると思うのですが、そのほかどのような団体が団体ぐらい入っているかという質問です。
【古米委員長】 すみません、説明を三重県さんお願いします。
【三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課】 三重県大気水環境課の小林と申します。
伊勢湾再生推進会議自体は、国交省さんがつくっている組織で、細かい数字のところは把握し切れていないところはあるんですけれど、関係自治体としては、流域の自治体とか、あと林野庁さんとか水産業さんも構成員としては入っていらっしゃいます。
関係活動団体につきましては、この推進会議の中で、一斉モニタリングとか様々な取組を行っておりまして、それに関係していただける民間団体さん等になりますので、中身について、事業によって、いろいろな団体さんがご参加をいただいているという形になります。
以上となります。
【古米委員長】 大久保委員、よろしいでしょうか。
【大久保臨時委員】 ありがとうございます。
構成団体といっても活動団体のほうはちょっと関わり方が違うというふうに理解しました。ありがとうございます。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。 ほかにご質問。
【田中臨時委員】 ちょっと今、三重県の環境課、あるいは水産課の方が回答されたアマモ場の変化の話なんですが、ちょっとよく理解できなかったのは、干潟のほうは土地の埋立てによる改変だという話をいただいたんですが、アマモ場のほうは、これは減っているところが必ずしも上の改変したところではなくて、湾の中央部から、出口付近のところがずっと減っているんですけども、これは何か生産性が上がって、光の透過性が変わったのか、何か別の要因なのか、あるいは沿岸の護岸形態が変わって藻場がなくなったのか、その辺はどうなんでしょうか。
【三重県水産基盤整備課】 三重県の水産基盤整備課、奥村と申します。ちょっと説明が漏れて申し訳ございません。
今、委員がおっしゃっていただいたように、アマモ場が2022年ぐらいだったと思うんですが、県が調査した結果ですけども、アマモ場の面積としましては1,000haほど確認されております。
そもそも減った要因としましては、干潟の埋立てで減っているというふうには我々考えております。ただ、増えている状況から考えますと、増えた要因なんかも当然考えているんですが、はっきりはしないんですが、今、委員がおっしゃっていただいたように、透明度が少し上がってきているということもあるのかなとは思うんですが、ちょっとまだその辺りは、なぜ増えたかというとこまでは至ってはおりません。
底引き網を行っている漁業者さんからも聞いても、ここ最近増えているねというのはよく言われておりまして、現象としては捉えているんですが、なぜそれがというところまではまだそこまで追い切れていないところでございます。
以上です。
【田中臨時委員】 どうもありがとうございました。
【古米委員長】 ほかにいかがでしょうか。特に挙手がないようです。
それでは、事務局のほうから資料1-1の後半部分について、見直しの方向性と今後の検討の進め方についてご説明をお願いいたします。
【亀井課長補佐】 それでは、資料1-1の12ページからご覧ください。本日の小委員会に先立ちまして、伊勢湾の窒素、燐の類型の見直しについては、専門家による検討会を本年1月と3月に開催しまして、検討に当たりご助言をいただいたところです。
13ページをご覧ください。ここから2月の制度改正を受けた四つの視点で、それぞれ伊勢湾について考察をしております。
まず一つ目は、「利用目的の適応性」に係る水浴の見直し、水浴を外したことによる影響ということでございます。
先ほどご説明しましたように、この伊勢湾(二)の水域につきましては、水浴の利用も理由に類型を指定しておりましたので、今般、水浴を外したことを受けまして、類型を見直すことが適当と考えております。
なお、右の地図にございますように、知多半島西側に10か所、三重県側に11か所、水浴場の水質を検査しておりますけれども、いずれも水浴場水質判定基準の水質B以上ということで、水質上の障害は生じていないところです。
14ページをご覧ください。次に、CODの達成評価の変更についてです。右側の棒グラフにありますように、伊勢湾の水域ではCOD、窒素、燐とも流入負荷については経年的に削減してきております。
しかしながら、右下の折れ線グラフにありますように、CODの水域の濃度自体は近年減少しておりません。環境基準が未達成の状況でありまして、これは内部生産や底質からの栄養塩類の溶出、難分解性CODや外洋からの流入などの影響が考えられます。
一方で、伊勢湾では有機汚濁を主因とした利水上の支障は生じていないと考えられます。
こうしたことを受けまして、2月の制度改正にありますように、この湾口・湾央のA、B類型に指定した水域では、CODの達成・非達成の評価を行わないこととしまして、有機汚濁に関するモニタリングはCOD、底層溶存酸素量は継続して実施し、影響を監視することとしたいと考えております。
次のページ、15ページをお願いします。続いて、適時適切な類型の見直しということで、窒素と燐ですけれども、左の棒グラフにありますように、窒素と燐の発生負荷量は経年的に削減されてきました。
右の折れ線グラフにありますように、この水域の窒素と燐の濃度は、ここ10年以上、ほぼ環境基準を達成している状況です。
先ほど愛知県からご説明がありました、愛知県栄養塩管理検討会議が示しております漁業生産に必要な栄養塩濃度は下回っておりまして、Ⅱ類型の全窒素0.3、全燐0.03mg/L以下を満たしている状況です。こうしたことが、伊勢湾(二)の水域の利用の態様や地域のニーズや実情と異なってきているとこともあり、水域類型を見直すことが必要と考えております。
次のページをお願いします。16ページです。まず、類型の見直しについて、伊勢湾(二)の水域の全窒素・全燐の環境基準については、Ⅱ類型からⅢ類型に見直すことを視野に検討することが適当であると考えております。右の図にありますように、そのように見直した場合、多くの水域がⅢ類型になるということです。
今後、水質シミュレーションによる影響予測等を行い、見直しを進めていきたいと考えております。
その上で、留意事項として3点挙げております。まず、窒素、燐の濃度増加の影響を把握するために、公共用水域の水質の監視を継続し、伊勢湾の栄養塩類の管理に当たっては順応的に行うことが必要と考えております。ただし、この栄養塩類の管理等を含めまして、第10次水質総量削減の在り方については、別途総量削減専門委員会において審議がなされております。
二つ目に、水産資源の漁獲量の減少の要因ですが、栄養塩の減少もありますが、そのほか、藻場・干潟等の生息・再生産の場の減少、気候変動による水温上昇、漁業者の減少等も要因と考えられることに留意が必要であり、先ほど関係団体からもお話のありましたように、栄養塩対策に加えて、場の保全もより一層やっていく必要があると考えております。
そして、3点目としまして、伊勢湾の赤潮の発生、貧酸素水塊の面積の増減など、今後も科学的な知見の集積が必要と考えております。
それから、季別の類型指定もできることとしましたけれども、伊勢湾ではノリだけではなくて、アサリなどの生活史の観点から、秋冬だけでなく通年の栄養塩が必要とのご意見が先ほどもありましたので、季別の類型指定は適用しない方法で検討することが適当と考えております。
最後に17ページをご覧ください。今後のスケジュールです。本日のご審議、ご意見を賜りましたら、それを踏まえて、来月以降、栄養塩管理の現状と見込み等について、関係施設の調査やヒアリングを進めていきたいと考えております。
その上で、水質シミュレーションによる影響の予測等を行ってまいります。
その後、専門家検討会やパブリックコメントなどを経まして、来年春頃の本小委員会で最終的な見直しの案をご報告したいと考えております。
説明は以上です。
【古米委員長】 ご説明ありがとうございました。
それでは、ご質問、ご意見をお受けしたいと思います。
田中委員。
【田中臨時委員】 先ほどからの議論で、沿岸についてはかなり、ノリとかアサリとかハマグリとか、そういう水産の改善すべき目標がはっきりしていて、栄養塩を上げるということについては、合理性がかなりありそうな気がするんですが、ちょっとよく分からないのは、沖合の部分ですよね。これは先ほどの話で、伊勢湾の中の類型Ⅱという形で、もともと沿岸部分の水水浴場、それからよく読むと、もともといきさつがちょっとよく分からないところがあるんですけど、この類型の中では、先ほどの説明だと8ページにあるように、水産の視点から見たときに、エビとかカニのような底層の貧酸素化の影響を受けやすい水産生物の漁獲が多いことも、実はこの表の中に入っているんですよね。この点、先ほどの議論の中でちょっと水産側の方の意見がちょっとどっちなのか、まだはっきり分からないところがある。もともとそういうものもある程度考慮してやっているとすると、沿岸部分については確かに水浴場があるとすると、もし仮に今、新たに類型を考えるときには、沿岸部分についての話と、それから沖合についての話を分けても、それらが同じレベルで必要であるのかどうかだと思うんです。
けども、過去の経緯がちょっとよく分からなくて、水浴の沿岸部分と沖合の部分が同じになっているというのがなぜなのか。本当にそれは議論した上で、水浴が一番のネックになって、これが理由でその類型になったのか。ここがちょっとよく理解できなかった。
だから、まず見直しというよりは、多分、新たに区域の分け方も含めて、これが妥当かどうかの議論を、私はやるべきなんじゃないかなという、ちょっと気がしました。
それから、2点目は今の話に関わってくるんですけど、環境省が今、底層のDOについての、伊勢湾についての類型指定はした。今、それについての達成率を、環境基準の目標的なものとして、これから検討を始められると思うんですよ。
まさに、栄養塩を特に幾らぐらいにするかということで、底層DOがどうなってくるかの議論とワンセットで、やっぱり議論するべきなんではないかなという気がするんですよね。
それらを含めて、切り方の問題も含めて、それを本当に必要とする理由は何なのかという、栄養塩のレベルは幾らなのかということも含めて、総合的に議論をすべきなのではないかという気がします。これは2点目です。
3点目は、アダプティブマネジメント、確かにそうなんですけど、環境の基準というのを目標にしているのは、当然、環境行政はそうなんですけど、下水道の重要な施策を担っているんですよ。下水道の高度処理を入れる目標が、環境基準の達成にあるんですよね。
その際に、ほぼ今のレベルでぎりぎり栄養塩が達成する、しない。この類型をかなり緩めた場合には、高度処理はほとんど要らなくなる。そうすると、もしアダプティブマネジメントをやるとなると、緩めるほうは今やると思うんですけども、将来もし問題が起こってきたときに、改めてまた高度処理を一時的にやってくれと言われると、施設側としては困る。長期的な目標が急になくなったところに、また、改めてそれを目標にしてくれというのは非常に気になる点で、1番目の話と2番目の話と3番目の話で実は連携しているので、もう少しいろいろ議論した上で、その論理をきちんと立てて、これはここの沖合にこれだけの影響がやっぱり必要なんですという根拠をもう少しクリアにしておかないと、私はちょっと心配な点があると思います。
以上です。
【古米委員長】 続いて、清野委員、どうぞ。
【清野専門委員】 ありがとうございます。オンラインから失礼します。九州大学の清野です。
今のご議論とも関係するんですけども、どうしても水産生物を中心にして生態系を見ていくということの伝わり方というのを、もうちょっと整理をいただいて、水産生物が一番データがあるだとか、いろいろな人が関与をして、働きかけられる海洋生態系だということとかを伝えた上で、今のほかの沖合はどうなのかとか、あとは水産有用種以外はどうなのかというところは、環境省様の施策の中では、大事な位置づけになるんじゃないかなというふうに思いました。
ですから、何かいろいろパブコメだとか、そういうご意見を聞くときに、もう少し資料をつけ足していただいて、そこを整理していただくといいのかなというふうに思いました。
あと、愛知県の方に伺いたいのは、例えばスナメリであるとか、あと、愛知県では生物多様性の国際会議が開かれたりということで、随分生態系という感覚というのは地元にもあるのかなと思ったり。あるいは、県内でずっと外洋まで出るような海洋教育をやってきたりとか、そういう地域住民なり、教育関係の海洋への関心というのもあるかと思うのです。
その辺り、水産ぽく聞こえてしまうところを、もうちょっと環境全体というふうにするためにも、少し生態系とか社会的な部分を入れていただくと、総合的に判断しやすくなるかなというふうに感じました。
その辺りについて、何かご意見とかアイディアがありましたら、環境省様か、もしくは愛知県様のほうでコメントいただけたらなというふうに思いました。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
ほかになければ、最後の点は、今日出席の愛知県の方がすぐに回答できる部局の方か分からないので、まずは環境省から回答をお願いします。
【亀井課長補佐】 ありがとうございます。
まず、田中委員から3点ご意見いただきました。
一つ目の、過去の経緯につきましては、参考資料にもまとめておりますけれども、過去に区分をされたときに、このⅢ類型の水域とⅡ類型の水域いずれも、水産1種も2種も3種も漁獲がされていたということがございます。
改めて、見直しというよりは、今の状態を踏まえて設定すべきというご指摘ですけれども、まず沿岸についてはノリやアサリがあるので、栄養塩管理の観点からⅢ類型でよいのではないかと。一方で、沖合はどうかということですが、本日関係団体からいただいたお話の中でも、沿岸域のノリ、アサリだけではなくて、沖合、湾央のカレイですとかアナゴ、シャコといった水産2種の利用もあることですとか、このⅡ類型の水準だと、これらに基礎生産として必要な栄養塩濃度が不足しているといったご意見もあったと思います。
この辺りは、より一層検討を進めていく必要があると思いますけれども、本日の時点では、この水域全体をⅢ類型にしてはどうかというご提案でございました。また様々ご意見いただきながら検討を進めていきたいと思います。
二つ目の底層DOについては、ご指摘のとおり令和4年12月に底層DOの水域類型を指定しております。ですので、伊勢湾については現在、達成率と達成期間の設定に向けて検討を進めている状況ですので、窒素と燐の指定の見直しとの先後関係も考慮しながら、底層DOについてもできるだけ早く検討を進め、水生生物の生息、再生産に直接影響を判断する指標である底層DOの評価を運用していきたいと考えております。
三つ目の順応的管理につきまして、実際に管理をしていくに当たっては、順応的にやっていくことが必要という留意事項を今回書いておりますけれども、下水道の関係の中部地方整備局ともこのお話はしておりまして、今後も中部地整と情報交換や意見交換を進めながら、管理に向けてどういったことが考えられるのか、よくコミュニケーションを取りながら考えていきたいと思います。
それから、清野委員からのご指摘に関して、今回、窒素と燐の環境基準の水域類型の見直しということで、Ⅱ類型、Ⅲ類型共に利用については水産ですので、環境の観点、それから水産利用の観点で整理をしております。
水生生物、水産資源以外の水生生物も含めた部分につきましては、まさに底層DOでしっかり水生生物の生息や再生産の場を保全していく、その評価をしていくということですので、底層DOのほうで並行して、しっかりその辺りの保全対象種の議論もしていきたいと考えております。
私からは以上です。
【古米委員長】 清野委員の後半の生態系というか自然生態系の観点からのご指摘については、残念ながら今回のヒアリング担当者にその専門の方はいなかったように思います。この内容に関してはぜひこういったところも含めてご意見をいただくようなプロセスが必要かなと思いました。
ご回答いただきましたけれども、追加で何かありますでしょうか。
私から一つ発言させていただきます。資料の1-1の8ページ目に、約40年以上前に環境基準を決めるときの水産利用の詳細ということで、水産1種、水産2種、水産3種が示されています。今回、田中委員や大久保委員からご指摘があったように、沖合のところのエビ・カニだとかということについては、特に底層の貧酸素化が関わるので、そういう意味においては水産1種に分類されていたわけですね。
ただ、その当時はきっと、貧酸素水塊という問題があまり大きく出ていない状態の中で、沖合の栄養塩濃度がどうあるべきかという形で、T-N 0.3mg、T-P 0.03mgとか、そういう形になっていた可能性があると思います。
現状は、貧酸素水塊が非常に発達してきており、当時とのギャップがあって、この水産利用の詳細の正しい読み方というのを少し考え直す必要が出てきているのかなというように思いました。今日の議論、特に水産の方々にとっては、もちろん貧酸素水塊の存在が漁獲に影響しているけれども、一方で、栄養塩の濃度を下げてきたけれども、必ずしもよくなってきていないという認識があると思います。それらは、相互には関係しているんだけれども、基準設定当時の水産利用の水産1種、2種、3種という詳細整理では、現状での整理としてはちょっと限界が来ているのかなと私は感じました。
田中委員が言われたように、確かに栄養塩の管理を変えてしまうと、今さらに悪化している貧酸素水塊がさらに増えるような現象が起きるなど、ネガティブに影響する可能性もあるので、沿岸域は問題ないにしても、沖合についてはその影響をしっかりと評価した形で今回見直す必要があると考えます。この点は、シミュレーションして評価するということにも関わります。
ただ、底層のシミュレーションで底層DOの再現性は、まだ完全なものができていない。要は、何十年も経過して形成されている底質を再現するのは難しいんですけれども、影響がどう出るのかということをある程度評価した上でオープンに議論を進めていくことが望ましい。
今回の栄養塩の見直しは、こういう位置づけで今ある知見の中で整理をしましたという形を取っておかないと、今後また新しい見直しがあったときに問題が生じる可能性があります。その点はしっかり整理すべきかなと私も議論を聞きながら感じましたので、発言させていただきました。
大久保委員、どうぞ。
【大久保臨時委員】 すみません、今、古米先生がおっしゃったことで、私も田中委員、古米委員長と同じように、やはり16ページ書き方で留意することとなっている点について、具体的な留意の中身をやはりしっかり検討をする必要がある。貧酸素水塊への対応というものが、栄養塩管理と同等に重要な課題であるとすると、こちらもしっかりとやっていく必要があるという部分をきちんと打ち出す、類型指定ということの施策だけで見るのではなくて、やはり総合的な対策という観点で相互に齟齬がないようにという、ご発言を同様に支持したいと思います。
順応的管理についても、今のところ伊勢湾では、公共下水道での対策のみを考えていらっしゃると思いますけれども、本当にそうなのか、民間は考えていないのかということも含めて、順応的に行うということの具体的な中身をやはり明らかにしていくことが重要と考えております。
以上です。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
ほかにご意見ありますでしょうか。よろしいですか。
ないようですので、議題の1につきましては、本日、委員からのご意見を踏まえて検討を進めていただくことにしたいと思います。どうもありがとうございました。
それでは、次の議題に移ります。
議題2、相模ダム貯水池・城山ダム貯水池・土師ダム貯水池における環境基準の暫定目標の見直しについてということで、事務局よりご説明をお願いいたします。
【野口課長補佐】 環境管理課、野口でございます。
相模ダム貯水池・城山ダム貯水池・土師ダム貯水池における環境基準の暫定目標の見直しについてということで、資料2-1でご説明させていただきます。
1ページ目に概要をまとめてございます。前回、この三つの貯水池、令和3年3月に暫定目標の見直しを行いまして、このときから概ね5年、達成期間ということで、令和7年度ということにしておりますが、5年が経過するということで、今回、新たな暫定目標等について検討を行いました。
下のほうに検討経緯というか、暫定目標の設定の推移をまとめてございます。暫定目標、もう3回、4回、見直しをしてきておりまして、今、令和3年3月のものが達成期間令和7年度を目途として、それぞれ三つの貯水池でT-N、T-P、それぞれ暫定目標値を設定しております。
そして、今回一番右のところになりますが、達成期間、当分の間、これは項目としてそれぞれT-N、T-Pの暫定目標、ただし、後でご説明しますが、土師ダム貯水池に関しては、T-Nについては設定しないということで考えております。
四角囲みのところにまとめてございますが、類型については湖沼A類型、それから湖沼Ⅱ類型、こちらについて利水目的等の変更はございませんので、これを維持して、全窒素、全燐の暫定目標値を見直すと。ただし、達成期間に関しては、次のページでご説明しますが、当分の間というふうに整理をしております。
次のページをお願いします。達成期間の考え方でございますが、過去の令和5年の陸域の専門委員会、それから、これを受けた令和6年の通知でございまして、こちらのほうで、頻繁な見直しでは、なかなか効果が出る前に目標が見直されてしまうといったような問題があるので、現在見込み得る施策による水質の改善見通し等を勘案し、実現可能な範囲で年限を定めない当面の目標水準とする水質を暫定目標として定めるという整理をして、これによって、暫定目標の見直しを行う期間については、地域の実情に応じて判断すると、こういった運用をすることと整理いたしました。
これを受けまして、今回、全窒素及び全燐について、自然由来の負荷の影響等により、現在見込み得る対策を行ったとしても、当面環境基準の達成は、後でご説明しますが、困難な状況にございますので、今回、こちらの三つの貯水池については、当分の間というふうに整理をさせていただきたいと思います。
ただし、概ね5年ごとに流域対策の進捗状況、調査研究の進捗状況等について把握し、必要に応じて暫定目標値及び達成期間の見直しを行うという注記をつけさせていただいて、当面の間というような整理をしたんですけれども、何もせずに放置するということにはしませんよということで、ご理解をいただきたいというふうに考えております。
次のページをお願いします。ここから、三つのダム貯水池の諸元を整理してございます。
まず、相模川の上流にある相模ダム貯水池及び城山ダム貯水池でございますが、直列の二つのダム貯水池で、二つとも神奈川県内にはございますが、集水域の大半は山梨県内にございます。それで、二つのダムはほとんど集水域が重なっておりますので、水質であるとか流入汚濁負荷の状況、こちらについては共通しております。
次、お願いします。こちらが広島県の土師ダムでございます。
こちらのダムは、川自体は日本海側へ注ぐ川でございますが、水道利水としては流域外取水ということで、広島市の水道水源というふうになっております。
次、お願いします。今回の提案をさせていただくに当たりまして、過去2回、検討会をこちらに書いている先生方にお願いをして開催いたしまして、それで暫定目標値の設定等を検討してまいりました。
次、お願いします。水質の概要について、簡単に確認をさせていただきます。
相模ダム貯水池については、上が総窒素、下が総燐の表層の経年変化グラフでございますが、暫減状況ではございますが、右の下のほうに、今設定されている湖沼Ⅱ類型の相当水質のところで書いてございますが、こちらの達成については、今後もかなりの時間を要するのではないかという様子が見てとれます。
次のページをお願いします。こちらについては、総窒素と総燐について、左が総窒素、右が総燐ですが、流入の汚濁負荷のそれぞれ左のグラフが現況、それから右隣のグラフが将来予測値で、施策を行った場合の推計したものを二つ並べて整理しております。
それで、この色の違いは、それぞれの汚濁負荷の負荷源のシェアの種類によって整理をしております。全体で、ちょっと見にくいグラフで恐縮ですが、赤点線が水質シミュレーションの結果からここまで汚濁負荷を削減すると、Ⅱ類型が達成できるということを逆算で求めたものになります。将来予測値、グラフの背は若干低くなっているんですけれど、それでもⅡ類型達成まで減らすというのは非常に大変だというような状況が見て取れます。
参考までに、後ほどご説明しますが、今回定める暫定目標値を達成するにはここまで下げるというのを、青点線で逆算して入れてございます。
それで、流入汚濁負荷の負荷源の割合でございますが、総窒素については山林ですね。こちらが非常に量が多いと。それから右のグラフ、T-Pですが、こちらについては湧水の負荷、こちらの青いところですが、非常に多いという特徴がございまして、そういったことも環境基準の直ちに達成というのは非常に難しいということが分かります。
次、お願いします。こちら、城山ダム貯水池の水質の経年変化グラフで、先ほどの相模ダム貯水池と状況は非常に似通っております。
次、お願いします。流量汚濁負荷割合についても、同じことが言えると思います。
次、お願いします。こちらが広島県の土師ダム貯水池の水質経年変化でございます。
こちらについては、総窒素、総燐とも、ほぼほぼ横ばいというような状況が続いていて、こちらについても水質環境基準、こちらのⅡ類型を達成するというのは、非常に直ちには難しいという状況になっております。
次、お願いします。こちらが土師ダムの貯水池の汚濁負荷の割合と予測ということですね。
左側、T-Nについては次でご説明しますが、今回から不適用という整理をさせていただきたいと考えておりまして、参考値でございます。
右側の総燐についてですが、やはり施策をした場合の将来予測をもってしても、さらに半分ぐらいまで減らさないと、Ⅱ類型を達成するというのは困難というような状況でございます。
こちらの総燐についても、土地系、田や畑、こちらの面源系の負荷というのが非常に割合としては多いというような状況になっております。
次、お願いします。それで、土師ダム貯水池の窒素と燐の推移を整理いたしました。
下のほうに、過去、平成29年の陸域専門委員会の資料を引用してございますが、植物プランクトンの増殖の要因に着目いたしまして、総窒素と総燐の割合ですね、こちらが20以下であると増殖しやすいといった特徴がございますので、そちらを引用いたしまして、今回、総窒素と総燐の割合をちょっと整理いたしまして、それで総窒素割る総燐、N/P比と呼んでおりますが、こちらのN/P比が継続的に平成10年度以降、N/P比が20をずっと上回る状況が続いておりまして、将来もこれは元に戻って下回るということはないというふうに考えられるということから、今回からは、全窒素の基準というのは不適用というふうに整理をさせていただきたいと考えております。
次、お願いします。それらの議論を踏まえまして、暫定目標値について整理をいたしました。
利水用途の変更がないということで、湖沼A類型、それから湖沼Ⅱ類型は維持するということで、ただし、土師ダムの全窒素については不適用でございますが、水質及び汚濁負荷の状況、対策の実現可能性を考慮して、暫定目標を以下のように見直しを行いたいというように考えております。
現在の見込み対策による汚濁負荷量の削減見通しに基づく将来水質予測、こちらの下限値を真ん中の赤いところで示しております。変動幅は予測値なので、当然ございますので、平均値からシグマ分引いたものが変動の下限値になりますが、こちらの値を置かせていただいて、それから、直近10年間の年平均値の最小値、こちらのほうが低い場合もございますので、こちらのほうが低かったらこちらを採用するということで、両方のうちのいずれか低いほうの年平均値ですね、こちらを当分の間の目標として、暫定目標値として選ぶというか、定めさせていただきました。
次、お願いします。こちらの資料2-2が報告の案という形で、将来的には答申になっていくものの素案になりますが、そちらになる前の段階の表でございます。
まず、その三つの貯水池、それぞれCODについては湖沼A類型を維持する。そして、直ちに達成。当然、全窒素、全燐については湖沼Ⅱ類型を維持したまま、今ご説明したように、暫定目標値についてだけ見直しをさせていただくと。ただし、土師ダムについては全燐のみということになります。参考までに、一番右のところで、今の令和7年度までの暫定目標というのを書かせていただいております。
次のページをお願いします。注意事項といたしまして、「当分の間」としたということもございまして、以下の四つの注意事項を整理して、付記しております。
一つ目が、暫定目標の達成期間は当分の間としましたが、概ね5年ごとに流域対策の進捗状況調査、研究の進捗状況等について把握し、必要に応じて暫定目標値及び達成期間の見直しを行うものとする。二つ目が、水質シミュレーションに見込めなかった生活排水対策以外の森林の保全整備、環境保全型農業の推進についても、面源負荷削減対策として、今後も実施する。三つ目が、ばっ気循環等の貯水池内対策は継続する。四つ目、最後でございますが、大気由来の窒素負荷量の減少などがダム湖の水質改善に寄与している可能性があるため、水質改善への寄与が期待される施策を推進するとともに、モニタリングを継続し、湖沼水質形成機構の解明、新たな水質改善手法の開発等について、調査研究を進める必要がある。
説明は以上でございます。
【古米委員長】 どうも説明ありがとうございました。
本日は、類型指定見直しの検討に向けた検討会の座長をお務めいただいている風間委員も出席いただいておりますので、風間委員からもご発言をいただきたいと思います。お願いいたします。
【風間臨時委員】 ありがとうございます。風間です。聞こえていますでしょうか。
【古米委員長】 聞こえております。
【風間臨時委員】 今、事務局のほうで説明があったとおりでございます。
ちょっと新しい方向というとおかしいですけれども、基準の時期とか考え方等について、少しずつ改革を進めているところでございますので、ご意見いただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは委員の方々からご質問、ご意見をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
和田委員、どうぞ。
【和田専門委員】 和田です。ご説明ありがとうございました。
今回の見直しにつきましては、三つのダムとも自然由来の負荷ですね。特に土地系が多いということから現在見込み得る対策を行ったとしても環境基準達成が困難であるということは非常に理解いたしました。
それで、まとめのところで、今回シミュレーションに見込めなかった生活排水対策以外で、面源負荷の削減対策として今後も実施していくとありますが、面源負荷の削減対策は、ここに書かれている森林の保全や環境保全型農業もそうですが、示した以外に、近年、流域治水やEco-DRR、グリーンインフラなどの気候変動に対して進められている浸透や貯留、これらは湖沼等への汚濁物質の流入を防止する対策として非常に有効です。すなわち、水質保全が主目的でない対策でも、おのおのの対策が重層的に面源負荷に貢献していると思います。
このような省庁間をまたぐ事業を共通認識して体系化することが重要なので、環境省さんとしても、ぜひ積極的な働きかけをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
【古米委員長】 それでは、続いて清野委員、どうぞ。
【清野専門委員】 ご説明の中で、湧水からの負荷というところがあったんですけども、スライドでいいますと9ページですか。城山ダム、津久井湖のところです。その辺り、湧水というのはいろいろな湧水があると思うんですけども、どういうタイプのものが負荷を生じさせているのかというのが、もう少し細かく情報を教えていただけたらと思っております。
以上です。
【古米委員長】 続いて、皆川臨時委員、どうぞ。
【皆川臨時委員】 皆川です。
1点目に関しましては清野委員と同じ湧水の負荷について少し教えていただきたいと思います。それと、先ほども面的な対策と森林の保全整備ということが出てきましたが、特に相模では森林由来の窒素が大きく、それに対応した森林の保全整備という方向性かと思いますが、特にその負荷について、その要因のメカニズム的なところを教えていただきたいと思います。もしかすると近年の豪雨による斜面崩壊によって山が荒れている等という話も、流域治水や、全体的な流域の保全の観点という面からも考えていくべき点になるかとは思いますが、少し補足していただきたいと思います。
山の状況や土砂流出の状況についても教えていただきたいと思います。
そして、最後3点目ですが、例えばダム湖で貯留された水は、下流の河床環境に影響を及ぼしますが、例えば付着藻類や底生動物への影響、もちろんダムの運用にもよりますが、プランクトンの増加によってそれが流下し、底生動物においては餌量が増えるというところも影響としてはありますが、今回示されている三つのダムにおいては、下流のそのような湖沼の水質関係が及ぼす影響について、課題として出てきているかどうか、もし情報がありましたら教えていただきたいと思いました。
以上になります。よろしくお願いします。
【古米委員長】 ありがとうございました。
ほかになければ、回答をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
【野口課長補佐】 まず、和田委員から。すみません、何でしたか。
【古米委員長】 要は、面源対策で、他の部局等で行われている事業の効果みたいなものを含めて考えていったらいかがでしょうかという。
【野口課長補佐】 ありがとうございます。
面源対策でございますが、近年、確かに他部局との総合的な対策ということで、今回、この計画というか、暫定目標値を定めるのは国、環境省でございますが、検討会議も県の代表の方に入っていただいて、検討していただいていて、それで面源対策、そちらについて、主体的に取り組んでいただくのは、どちらかというと神奈川県及び山梨県でございますので、そちらのほうで、県でそれぞれ例えば森林の整備の計画等を立てていただいていて、計画の切り替え年に当たったりとか、そういった事情がございますが、引き続き対策については行っていっていただくということで、環境部局、直接ではないんですけれど、取り組んでいっていただくということで、お話をいただいているところでございます。
【和田専門委員】 和田です。ありがとうございます。
対策として、環境省が、というわけではないです。流域治水や気候変動で行われている浸透貯留が、今回の水質シミュレーションをしたときに、そこで汚濁物質の流入が止まっている、防ぐというところが、シミュレーションで多分、活かされていないと思います。今後そういったものも、浸透貯留の効果というものも研究事例が出てきておりますので、将来的に反映していければ、対策をしても見込めなくて当分の間、というところが改善されるのではないかと思いました。
【野口課長補佐】 ありがとうございます。
確かに、そういったご意見もございまして、それでちょっと最後のところで、注記で、今回は数値シミュレーションには確かに入れられていないんですが、そういったものを含めて、より一層現状というか、施策を反映したものというか、施策の励みになるものも含めて、さらにシミュレーションができるような研究というか、調査というか、そういったものを進めていくということで、ちょっと注記をさせていただいているところです。
【古米委員長】 湧水についての説明をお願いします。
【野口課長補佐】 清野委員と、それから皆川委員からもございましたが、湧水でございますが、相模ダム城山、ダムの貯水池、こちらの燐でございますが、こちら自然由来のところでございまして、グラフの青いところですけれど、これは富士山の山麓の湧水で、流域図で見ると、左のほうの川がないというか、地下に潜ったところで、そこで涵養されて出てくるような水ですね。こちらのほうで、地質的な特徴もございまして、非常に燐濃度の高い湧水が出てきていると、そういったことになっております。
皆川委員の二つ目のメカニズムでございますが、確かに山腹崩壊とか、そういったものもございますが、窒素に関しては、特に相模ダム、城山ダムに関しては、山林由来の窒素、こちらについては、ちょっと別途大気の窒素濃度もちょっと調べておりまして、明確なところが言えなかったということで、今回の数値シミュレーション等には入れてございませんが、大気の窒素濃度というのを、削減対策の効果というのが一応出ておりまして、その結果、森林に付着して、樹幹流となって地下水として森林から出てくるような窒素が一定程度は減っているのではないかというふうに推察はされているところでございます。
トレンドとして過去10年ぐらい、大気中の窒素濃度とかNOxについては確実に減っているという証拠がございます。
山腹崩壊については、確かにこちらについても、シミュレーションには入れられておりませんので、ちょっと今後の課題として、こちらについても引き続き検討を進めて、研究を進めていっていただけるようにお願いをしたいというふうに考えております。
【古米委員長】 3点目のダム貯水池の下流側の河床等の生態系への影響については、今回どのような検討をなされているのかというご質問だと思いますが。
【野口課長補佐】 ありがとうございます。
3点目の、ダムの運用等にも関わるものでございますが、こちらについても正直、十分評価できていないところはございますが、下流影響については、今後ともちょっと検討を進めて、特に土師ダムについては広島市の水源になっていて、毎年ということではないですが、利水障害、異臭味等の障害も発生しているというふうには聞いておりますので、そういったところも踏まえて、ダム管理者として考えられる対策は既に取り組まれていますが、それらを後押しして、かつ一緒に対策を進めていけるような、そういった形で、ちょっと今回は書き込めなかったところも多いんですけれど、将来的には何らかの形で書き込めるように、こちらについても、調査研究等をさらに進めていくというふうにいけるといいかなというふうに考えているところです。
【古米委員長】 清野委員、皆川委員、よろしいでしょうか。
【清野専門委員】 どうもありがとうございます。理解が進みました。ありがとうございます。
対策は難しいなと思いましたけれども、特にジオロジカルなものについては、改めてそういった分野の調査も大事だなと思いました。ありがとうございました。
以上です。
【古米委員長】 ちなみに、この湧水の燐に関しては、神奈川県で過去に調査された報告書があり、地質由来による負荷が非常に影響あるという報告書が出ております。それに基づいて、特別に湧水の負荷量として、負荷量全体の中の占める割合というのを計算して、出しているということになります。
【清野専門委員】 ありがとうございました。
【古米委員長】 ほかにあれば、お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
では、私からちょっと気になる点があったので、確認です。7ページ目のところで、いわゆる生活系の排水系のものについては、かなり精緻に負荷量が計算されているのに対して、土地系というのは原単位法で積算しているということになろうかと思います。
その枠組み中で、各類型の水質基準を達成するために、どこまで負荷量削減しないといけないかという計算を水質シミュレーションで行ったと言われたと思うんです。しかし、実際は、現在の水質に対して流入負荷量がどの状態で、そして、将来どこまで負荷量を減らすと水質が低下するかという、非常にシンプルな負荷量ベースの将来水質予測式を使って予測をしているはずです。ある意味、シミュレーションと言っても間違いではないんですけれども、誤解があると困りますので、どういう予測計算式で求めると、ここまで負荷削減しないといけないかということを説明することがよいと思います。この資料はオープンになりますので、誤解を受けないような形で示しましょう。今までの検討でも、将来水質予測の方法自体に課題があるということが議論されていますので、それを踏まえてちょっと表記に注釈をつけていただくことがいいかなと思います。要は、生活排水のように精緻な負荷量が入っていることと、面源負荷は原単位法を使っているということと、将来の水質は、現在と将来の負荷量の積算値の比を求めることによってどこまで負荷量を下げると水質が低下するかいう予測式を使っていることを示す。この予測式も、非常に負荷量が多い時代はよかったんですけども、下がってくるとなかなかうまく使えないという議論を前回の専門委員会でも行っていて、見直す必要があるというところでモデルシミュレーションという言葉も出てきていると思います。その点は明確にしていただければと思います。
私から以上です。
【野口課長補佐】 ありがとうございます。
【古米委員長】 もし、ほかに特にないようであれば、資料2-2というのを本委員会の報告案として取りまとめたいと思いますけども、よろしいでしょうか。
ありがとうございました。
それでは、今後の進め方について、事務局よりご説明をお願いいたします。
【野口課長補佐】 ありがとうございます。
本日の先生のご意見も踏まえて、シミュレーションの考え方等、資料2の添付資料にはついてはいるんですが、もう少し分かりやすい形でちょっと再整理をさせていただきたいと思います。
それを踏まえて、今後についてでございますが、今後、パブリックコメント等の手続をさせていただきまして、こちらが資料2-2になりますが、こちらのかたちで、小委員会の報告という形で整理をさせていただいて、最終的には答申というような形にさせていただきたいと思います。その前に、パブリックコメント等の所要の手続をさせていただきたいというふうに考えております。
資料2-3に、最終的にどういった形で告示改正をするかという官報に掲載される案文をつけさせていただいております。
こういったイメージで進めさせていただきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
今日の意見を踏まえて、最終的に取りまとめをして、パブリックコメントを行い、私が部会長ですので、しっかり見させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
それでは、次の議題3に移りたいと思います。良好な環境の創出に向けた新たな水環境施策の検討についてということで、事務局よりご説明をお願いいたします。
【鈴木室長】 環境省の鈴木よりご説明をさせていただきます。
資料3をご覧ください。おめくりいただきまして、まず、世論調査を少しご紹介しております。
少し古いものもございますけども、平成20年の水に関する世論調査というのがありまして、水辺環境、行政に、この水に関する施策で力を入れてほしいことはというような問いがあって、水辺環境の保全と整備というのがかなり結構高かったというような、下段が平成13年、上段が平成20年ということで、そういうニーズが出てきているということでございます。
水環境自体、そんなに大きく変わっていないと思いますので、こういったニーズというのが引き続きあるだろうということでございます。
その後、幾つか水循環に関する世論調査、名前が少し変わったりして、問いも、水とのかかわりのある豊かな暮らしとはどのようなものだと思いますかということで、「身近に潤いと安らぎを与えてくれる水辺がある暮らし」というような回答がまた増えてきているといったようなものですとか、おめくりいただいたスライド3ですけども、昨年度の世論調査で、身近な環境に関する世論調査というのがございまして、水環境についてどういう改善策を期待するかと。水質汚濁が高いのはあるんですが、その下の散乱ごみとか緑や生き物、水に親しみやすい場所の増加とか、いろいろな面についてもそれなりの回答があったということがありましたということでございます。
スライド4ですが、環境基本計画を少し振り返っています。第1次が1994年ですけども、水質、水量、水生成物、水辺地を総合的にとらええるような文言が、もうこの頃から出てきています。当然、水質汚濁防止法、水質環境基準という、水質というのが法令の今、中心になっておりますけども、環境施策としては、水質に加えて水量、水生成物、水辺地を総合的にとらえといったような観点を、この頃から意識はしているというものでございます。
第2次も同じような考え方が書いてあります。
第3次ですけども、ここも今の四つの視点は書いてあるんですが、3行目とかには、さらに水循環の健全性とか、そういった文言が出てきている。
それから、その具体のところでアと書いてあるんですけども、水質環境基準の設定につきましては、そういう水質だけではなくて水量、水辺地も含めた水環境を総合的に評価する手法についての調査検討もするといったようなものが出てきています。
おめくりいただきまして、スライド5です。スライド5も同じような形ですね。水環境を総合的に評価する指標というような言葉が出てきています。
第5次は、全体が結構、環境局のこの辺のパートの中身がかなり変わってきたところがあるんですが、流域全体といったような文言も入ってきているということでございます。
スライド6、それから、環境基本計画ではないんですけども、2011年3月に、今後の水環境保全の在り方についてという、水環境政策全般を見渡して検討いただいたということがございました。ここで今日お話しさせていただくようなことと関連することも幾つか盛り込まれています。
赤字のところをご説明しますけども、地域の観点というようなことで、地域住民に分かりやすい環境目標とかというのを書いてございます。
それから、2番目の段落のところですけども、水環境保全再生の目標については、地域ごとの特徴を踏まえた望ましい水環境保全の目標として検討していくべきですとか、一番下の段落につきましては、国民の実感に合った環境基準への見直しということで、良好な水質、または水質汚濁の状況だけでなくて、水の美しさ、清らかさ等々の目標、視点を含めた指標の導入について検討していく必要があるといったご提言もいただいているというところです。
それから、おめくりいただきまして、スライド7でございますけれども、こういったことで、今後の水環境施策を新しくまた展開していきたいということで、第6次環境基本計画が昨年の5月に閣議決定をされています。
そこに、課題とか現状とかというのを上のほうに書きましたけども、真ん中の紫の四角の中に、これは水・大気パートにこういった文言を加えています。良好な環境を持続可能な形で利用することによって、人々の満足度、ウェルビーイングの向上とか地域活性化、こういったキーワードがありまして、良好な環境の創出に向けて、生物の多様性の保全や地域づくり等に資する総合的な水環境管理を目指すといったような文言を書いています。
こういったことを踏まえて、その下の文言、四角ですけども、水質のみではなくて、そういった生物とか景観、文化、地域活動等の多面的な観点から水環境を捉えて、地域ニーズに応じた総合的な水環境管理を目指していくといったような展開を考えていければということでございます。
次のスライドですが、少し概念整理ということで、左側に三角で水質保全と書いてありまして、真ん中の多面的なモニタリングで課題やニーズを把握した上で、今後は水環境の活用といったようなこと、保全再生創出というのは、下の話題にはありますけども、その活用ということもやっていく。さらには、結果として地域の魅力向上や地域課題の解決、こういったものを意識してやっていきたいということです。
左側の水質保全だけというのもちょっと誤解があるかもしれません。これまでも水生生物の環境基準をつくったりとか、いろいろやってはきているんですけども、もうちょっとそういったところを正面からしっかりやっていきたいというような方向性をお示ししております。
スライド9でございます。じゃあ、具体的にどういった施策かということで、二つほど次のスライドからご説明したいと思っていますが、一つは多面的なモニタリングということで、先ほどからあるような水質以外のいろいろな観点も含めたモニタリングというのが一つの施策。
右側にモデル事業を三つ書いています。地域に貢献するとか、ウェルビーイングとか、地域の魅力向上、地域活性化とかいったようなことも意識をしての水環境の保全・活用ということを進めていきたい。こういった二つの主な施策によって、水辺の価値向上や地域の魅力向上というところにアプローチしていきたいなということで考えております。
今、二つございましたのを一つずつ、少し次のスライドからご説明しています。
スライドの11ですけども、多面的な水環境のモニタリングということで、今、ご説明してきたようなことでございまして、依然として基準とかモニタリング項目としては水質のみを対象としております。こういったところから、生き物、景色、地域活動といったようなところをモニタリング対象としてはどうかということでございます。
スライド11の下に、「みずしるべ」というのが書いてあります。
具体的には、その次のスライドに書いてございますが、環境基本計画でも先ほどご紹介したようにいろいろ書いていまして、これまでも水環境学会さんと連携して、こういった水環境健全性指標ということで、通称「水辺のすこやかさ指標(水しるべ)」ということで、いろいろな観点を盛り込んだものを公表しております。
スライド13に具体的にご紹介していまして、五つの指標(ものさし)ということで、自然な姿とか豊かな生き物、水のきれいさとかといったようなことを書いています。
チャート図みたいなので、大体3段階ぐらい、主観で感覚的なところにも頼りながらやりますので、人によって差が出ていいようなものとして、こういう指標を出しています。
それから、スライド14ですけれども、また、多面的なモニタリング水質管理ということで、国交省のほうでも過去に、去年改定されていますけども、今後の河川水質管理の指標みたいなものを出されています。
それから、河川水辺の国勢調査でもいろいろな観点からの調査をされていますし、自治体のほうでもいろいろな指標を検討されているといった例がございます。
スライド15です。あとは、これはちょっと古くからやっているんですけども、昭和59年から環境省と国交省で、全国水生生物調査というものを呼びかけています。3万7,000人ぐらい、4万人弱ぐらい参加をいただいているようなものなので、こういったものも今後もちょっと今の文脈の中でも活用できたらということで考えています。
スライド16から3ページぐらいは、昨年度やったご紹介で、水辺のすこやかさ指標みたいなものを、何か行政のモニタリングとしてやっていく場合の課題の把握みたいなことを、実際にいろいろやってみて、検討したといったことを今やっていますというご紹介です。
16ページ、5自治体で、幾つか12か所ぐらいで調査を実際にやってみたということです。17、18ページはその結果の例、こんな形でやっていますということをご紹介したものでございます。
続きまして、2番の良好な環境の創出ということであります。
スライド20を見ていただきまして、去年は二つだったんですが、今年から観光モデル事業というものを含めて、三つの事業を展開しています。こういったもので、地域での保全、水環境の保全とか活用の事業というのを進めていきたいということでございます。
三つありますので、1個ずつ簡単にご説明します。スライド21でございますけども、令和7年度良好な水環境・保全活用モデル事業ということで、水環境の保全と活用ということを二つキーワードに、良好な環境を生かした地域の魅力向上といったようなこと。それから、地場産業なんかも意識をした地域活性化といったようなことにつなげていくためのモデル事業ということでやっています。
スライド22が今年度選定させていただいた五つのモデル事業ということで、環境省からそんなに大きい額ではないんですが財政的なものを委託して、また伴走支援をして、こういった地域の活動と水環境の保全ということで、と活用ということで、進めているものでございます。
スライド23は、今お話ししたようなもので、藻場・干潟、里海づくりの部分で、基盤構築支援事業というふうな名前で、今年度から展開をしているものでございます。
先ほど申し上げたように、藻場・干潟の造成と地域資源の利活用というようなことを意識してやっているということでございまして、スライド24に今年度の採択をした四つの事業をご紹介しています。
それから、スライド25が今年度から新しく始めています令和7年度良好な環境を活用した観光モデル事業ということで、五感で感じる水や音、かおりなどの自然資本というものを生かした地域の観光を、やっぱりそういったものがいろいろ衰退しているようなところもありますし、なかなかうまく保全できていなかったり、うまく活用できていなかったりということもありまして、そういったものを良好な環境の保全・再生・創出にもつなげるといったことに意識して、観光の活性化ということで、これもモデル事業ということで、今年度からですけども、スライド26にありますような10団体、10事業採択をしまして、こちらも委託という形で環境省から予算的なものも出しまして、伴走支援をして、いい環境の創出と観光の促進ということでしていきたいということでございます。
あと二、三枚ぐらいスライドがありますけども、この二つ、主にモニタリングと事業ということで、何か今日は決めるというものではなくて、ご紹介、今後こういった施策の展開をしていきたいということと、それによってどういう制度が必要かといった検討も今後していきたいと考えておりますけども、今日はこのような小委員会でしたので、今後のこういった展開についても、ちょっと時間が過ぎていて申し訳ないんですが、少し可能な範囲でご助言というか、いろいろコメントをいただけたらありがたいなと思っております。
最後、スライドも3枚ぐらいありますけども、今お話ししたような多面的なモニタリングとその地域の活動という二つのコンテンツの環境活動の情報交流の場というようなWebサイトを立ち上げました。
スライド28ですけども、すみません。これに令和5年って書いてありますが、令和7年です。つい先週、立ち上げをしましたので、ぜひ一度、ご覧いただければありがたいなと思っています。
コンテンツとしては右側にあるような、水辺を生かした地域づくりといったようなものと水辺の調査というようなことが二つの大きなコンテンツでありまして、会員登録をしなくても見られるんですけども、スライド29にございます会員登録していただくと、ご自分の団体の活動なんかも投稿していただいたりとか、イベント等のご紹介とか、交流掲示板なんかも活用して、情報の相互交流ができればと思っております。
スライド30、最後のスライドですけども、今みたいなこういう場の立ち上げとか、モデル事業の今後の推進ということでキックオフのイベントとしている、6月9日に水辺の環境活動フォーラムといったようなことを開催予定であります。
最後のところはWebサイトとイベントのご紹介ですが、前半ご説明した二つの軸で今後をやっていけたらということで、ぜひコメントなど、ご意見などいただけたらありがたいかなと思っております。
以上です。
【古米委員長】 ご説明ありがとうございました。
予定の時刻を過ぎておりますけれども、ご質問、ご意見、委員の方々からお受けしたいと思います。
古川委員、どうぞ。
【古川専門委員】 委員長、ありがとうございます。
水質汚濁防止の観点に加えて、総合的な水環境管理、良好な水環境創出の観点から、今後の政策を進めるというご説明に賛同いたします。
その際、「1.多面的なモニタリング」として、様々な指標の事例をご紹介いただきましたとおり、各地域の多様な特徴、ニーズや取組を踏まえて、その地域に合った柔軟な対応ができるようにすることが重要であると考えております。
資料にもございますように、水環境の保全・創出だけでなく、活用という観点もございます。また、水源には治水の機能もございます。全国一律で、何らかの指標を設定するということは必ずしもそぐわない場合があるとも考えております。
また、事業者の立場から申し上げさせていただきますと、近年、機関投資家を始めとした多方面から、水セキュリティーに関する関心や質問が多く寄せられているのが現状でございます。このような状況意識して、この資料をさらに発展させていただき、日本の様々な取組について国際的な理解が得られるようにご尽力をお願いいたします。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
清野委員。
【清野専門委員】 全般的にはすごく系統立って、それから融合的に進んでいるということで、ありがたく思ったところです。それから、地域の参加だとか、様々な教育関係への浸透になると思います。
一方で、モニタリングのデータを取る現場というのは、結構、人不足だとか費用不足ということがありまして、その部分についての中の危機感といいますか、地に足のついた進め方みたいなものも、今後、必要かなと思っているところです。
私の関係する分野で言うと、沿岸とか河川とかなんですけども、ほかの分野はもうちょっと進んでいるのかもしれないんですけども、ぜひ、そういうテクニカルな部分とか、データの管理とか、永続性とか、その部分を並走させていただけたらと思うところです。
今日の最初の事例で、海域についてどういう水質基準を適用するべきかという話で、三重県さん、それから愛知県さんが本当に重要な検討していただいています。
そのバックグラウンドは、やはり私の分野で言いますと、この両県は日本の水産試験場が始まってからの科学的な管理であるとかデータを取るという、すごい足腰の強さと、それからデータへの信頼というものが醸成されていて、100年近い歴史を持つところだと思います。
一方で、必ずしもそうじゃないところは多くあって、データの散逸だとか、モニタリングの必要性を感じていないとか、いろいろなところもあるので、そこをもうちょっと全国的にレベルを上げるということが必要かなと思っております。
ですから、私も学会活動でそれはやっていきたいと思いますけれども、やはり今日伺った施策の中でどうするのかなという気持ちを持つ人たちもいるというふうに思いますので、ちょっと辛口で申し訳ありませんがよろしくお願いします。
以上、コメントでございます。
【古米委員長】 それでは、山本委員、どうぞ。
【山本臨時委員】 国立環境研究所の山本ですけれども、先ほど清野委員のほうからお話ありましたけれども、やはりそれぞれの取組に対して、先ほど最初の今日の議題でありましたけれども、伊勢湾についても継続的にやはりそういったものをモニタリングしてデータを取っていくというのが非常に大事だと思いますし、やはり客観的な指標というのも非常に大事かなと思います。
今の水しるべとか、いろいろな指標が提示されているのは、これはこれでいい一方で、技術的にはやはり幾つかの水環境に関連するような指標というのは、新しいものも少し出てきていると思いますし、一つは、生物多様性に関連しているのであれば、環境DNAも活用した生物調査なんかも少し出てきておりますし、以前、こちらの環境管理課、旧水環境課でも検討されました生物応答を用いた手法なんかも一つの方法かなと思いますので、そういった客観的な手法なんかも引き続き用いて、継続してモニタリングしていくことがすごく重要じゃないかなと考えています。
あと、2点目なんですけれども、今、やはりそういった観点で言うと、旧水環境課、現在の環境管理課で実施している水質環境基準ですね。生物保全と関係して、基準値の設定というのが少し止まっている状態でして、特に有機フッ素化合物に関連しては非常に社会的ニーズが大きいということで、そちらのほうにかなりエフォートが割かれているという話は聞きます。
ただ、世界的に見ると、いろいろな化学物質というのはどんどん出てきていますし、そういったいろいろな有害物質の環境中の基準値をつくらなくても、指針値をつくってちゃんとモニタリングしていくということはすごく大事かなと思いますので、そういった観点では、やはり現在の指標の中では、十分そこのところは評価されていないものではありますので、ぜひ基準値の策定、あるいは指針値の策定みたいなところについては、継続した努力が重要じゃないかなというふうに思います。
あと、最後なんですけれども、今、水環境というのはやはり複数の省庁に関わるような話でして、今、水道水質に関連したところが環境省のほうに移管してきたというのはあると思います。
水循環全体を見渡すと、やはり国交省さんであったりとか、水産庁さんも、もしかしたら農水とかも関わるかもしれませんので、全体、各省庁間のやはり連携が重要になってくるかなというふうに思いますので、ぜひそこについても、何かここの部分で検討いただければ、よりよいものができてくるのではないかなというふうに思いました。
そのためには、以前やられた今後の水環境に関連するような検討会というのは非常に重要なものかなと思いますので、10何年もたっていますので、また、そういったものも検討されることも重要なのではないかなというふうに思いました。
私からは以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、皆川委員、どうぞ。
【皆川臨時委員】 私はコメントだったんですけれども、今、言われた山本委員からのお話のとおりで、例えば21ページの良好な水環境保全活用モデル事業ということで、多分、国土交通省のかわまちづくりであるとか、そういった事業とかなりかぶる部分もたくさん出てくると思いますし、また、良好な環境の創出によって、地域の課題の解決であるとか、ウェルビーイングというところに関しても、到達するところは同じだと思いますので、ぜひ省庁間の連携であるとか、特に地域課題ということになると、地域の地方自治体との連携ということになってくると思いますけれども、そういった連携を図りながら、本当に実現というところまで持っていけるような体制づくりを、ぜひこの機会に整えていただきたいと思いました。
コメントです。以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
和田委員、どうぞ。
【和田専門委員】 和田です。ありがとうございます。
モニタリングにつきましては、ほかの先生方の意見と同じで、連携体系、体制を極めて進めてもらえればと思っております。
モデル事業で1点コメントですけれども、モデル事業の中に名水百選というのがありまして、名水百選が昭和の時代に始まって、平成の名水百選もあります。
私はこれらの場所をよく訪れますが、どこも選定されたことに対して住民の方が誇りを持って、水質保全以外に地域の整備や美化に努めておられるのを目にします。水路とか池には絶滅危惧種の魚などが泳いだり、水がおいしい飲食店もありますので、名水というキーワードで地域が活性化しているのが非常に伺えます。
こういったきっかけ、それからモチベーションになっているので、ぜひ令和になりましたので、令和の名水百選というのも進めていければと思います。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
いろいろとコメントをいただきましたが、事務局から何かあればお願いします。
【鈴木室長】 たくさんのご意見いただきまして、ありがとうございます。
いずれも大変重要なご指摘かと思います。水セキュリティーの話、それから現場の人手とかデータの活用、それから環境DNAなんかの効率的な手法といったようなこと、それが各省連携しっかりということ、体制の話と、それから最後の名水百選ということで、この観光モデル事業のほうも名水百選の選定地域も対象にしていますけども、そういったところの意識をしっかりとやって、具体のこれからやっていきたいということで、今日のまずは冒頭、頭出しということになっているので、しっかりと検討していけたらと思いますので、引き続きご助言、ご意見いただければと思います。
ありがとうございます。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
ほかによろしいでしょうか。
それでは、本日いろいろとご意見をいただきましたので、検討を進めていただければと思います。
以上で、本日の予定した議事は全て終了いたしましたので、進行を事務局にお返しいたします。
【亀井課長補佐】 委員の皆様、本日は長時間にわたり活発なご審議をいただきまして、誠にありがとうございました。
特に前半、序盤で音声に不具合があり大変申し訳ありませんでした。
本日の議事録は事務局で案を作成し、後日、委員の皆様にお送りします。ご確認いただいた後に公表しますので、よろしくお願いいたします。
それでは、これをもちまして、第2回生活環境の保全に関する水環境小委員会を閉会いたします。どうもありがとうございました。
午後0時19分閉会
【亀井課長補佐】 それでは、お待たせいたしました。
第2回中央環境審議会水環境・土壌農薬部会生活環境の保全に関する水環境小委員会を開会いたします。
委員の皆様方にはご出席いただき、誠にありがとうございます。
本日の会議は、委員総数13名のうち現在12名の委員にご出席いただいており、定足数の要件を満たしておりますことをご報告いたします。なお、清野委員は途中参加、小熊委員は途中退席の予定と伺っております。
本日の会議はYouTubeの環境省環境管理課公式動画チャンネルで同時配信をしています。
Web会議の開催に当たり、何点かご協力をお願いいたします。通信環境の負荷削減のため、ご発言のとき以外はカメラの映像はオフ、マイクの設定はミュートにしていただきますようお願いします。ご発言を希望される際は、お名前の横にある手の形のアイコン、挙手ボタンをクリックしてください。発言を終えられましたら挙手ボタンを再度クリックして、手を下げていただきますようお願いします。ご発言の際は、議事録の円滑な記録のため、お名前をおっしゃってからご発言いただきますようお願いいたします。
通信トラブルなど何かありましたら、右下のチャット欄がございますので、ご記入いただき事務局までお知らせください。
それでは、初めに環境省水・大気環境局環境管理課長の𠮷川よりご挨拶申し上げます。
【𠮷川課長】 ただいま、ご紹介に預かりました環境省水・大気環境局環境管理課長の𠮷川と申します。委員の皆様方におかれましては、本日はご多用のところご出席賜りまして、誠にありがとうございます。
昨年9月の前回小委員会でのご審議を受けまして、水質汚濁に係る生活環境の保全に関する環境基準について、地域のニーズや実情に応じた柔軟な運用を可能とするため、本年2月に制度改正を行ったところでございます。これは昨年5月に閣議決定いたしました第6次環境基本計画に基づく地域のニーズに応じた水環境政策の第一弾になります。
この制度改正を受けた具体的な動きといたしまして、本日は伊勢湾における全窒素及び全燐の環境基準の水域類型の指定の見直しについて関係団体からヒアリングを行い、ご審議をいただきます。
また、第6次環境基本計画では、良好な環境の利用によってウェルビーイングや地域活性化など、地域に具体的なメリットを創出することが重要とされております。本日はこうした良好な環境の創出に向けた新たな水環境政策の検討状況についてもご報告いたします。
このほか、人工湖沼における環境基準の暫定目標の見直しについてご審議いただきます。これまで概ね5年ごとに見直してきましたが、5年程度では明瞭な効果が現れない場合もあることから、昨年より見直しの年限を定めないことも可能としており、今回、これを適用したいと考えております。
委員の皆様には、専門的見地から忌憚のないご意見を賜りますよう、どうぞよろしくお願い申し上げます。
【亀井課長補佐】 次に、資料の確認に移ります。議事次第、委員名簿のほか、資料1-1から3及び参考資料1から2をご用意しています。もし、ご不足等ございましたらお申しつけください。
続いて、今回の議題1でヒアリングにご対応いただく関係団体の方をご紹介します。一言ずつご挨拶をお願いいたします。
まず、三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課の松本課長です。
【三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課】 三重県大気水環境課の松本です。よろしくお願いします。
【亀井課長補佐】 ありがとうございます。
続いて、三重県漁業協同組合連合会の植地常務理事です。
【三重県漁業協同組合連合会】 三重県漁連の植地と申します。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
【亀井課長補佐】 ありがとうございます。
続いて、愛知県環境局環境政策部水大気環境課の戸田課長です。
【愛知県環境局環境政策部水大気環境課】 愛知県水大気環境課の戸田です。よろしくお願いいたします。
【亀井課長補佐】 ありがとうございます。
最後に、愛知県農業水産局水産課の日比野課長補佐です。
【愛知県農業水産局水産課】 愛知県水産課の日比野と申します。よろしくお願いいたします。
【亀井課長補佐】 よろしくお願いします。ありがとうございます。
それでは、以降の議事進行は古米委員長にお願いいたします。
古米委員長、お願いいたします。
【古米委員長】 古米です。それでは早速ですが、議事に入らせていただきます。
議題の1、伊勢湾における全窒素及び全燐の環境基準の水域類型の指定の見直し検討について、事務局からご説明をお願いしたいと思います。
【亀井課長補佐】 環境省環境管理課の亀井です。
資料1-1についてご説明いたします。1ページをご覧ください。
本日、まず関係団体のヒアリングに先立ちまして、2月に行いました水質汚濁に係る環境基準の柔軟な運用についてご説明した後、伊勢湾における類型の指定状況についてご説明します。
3ページをご覧ください。まず、水質汚濁に係る環境基準の水域類型ですが、水質汚濁の状況等を勘案し、水域の利用目的等に配慮して指定するものでありまして、水域の利用の態様の変化等、事情の変更に伴い、適宜見直すこととしております。
次のページをお願いします。こうした中で、閉鎖性水域ではこれまでの対策によって汚濁負荷の量は減少傾向にありますけれども、環境基準である水域のCODの高止まりや、水産資源への影響といった問題が発生しています。
こうしたことを受けて、令和5年6月の中央環境審議会意見具申「今後の水・大気環境行政の在り方について」と、それを踏まえた第6次環境基本計画において、地域のニーズに応じた生活環境の保全に関する環境基準の在り方の検討を進めることとされました。
このように地域の水環境保全に関する課題が多様化する中で、この水質汚濁に係る生活環境の保全に関する環境基準について、既存の制度では課題がある水域において、地域のニーズや実情に応じた柔軟な運用を可能とするため、関係する告示等を改正し施行いたしました。
経緯としましては、前回、昨年9月の本小委員会でご審議いただいた後、パブリックコメント、答申を経て、本年2月に改正を行ったものです。
次のページをお願いします。制度改正の内容として大きく4点ございます。
一つ目は適時適切な類型の見直しということで、事務処理基準に、水質汚濁の状況や利用目的の実態、科学的知見等に応じて地域関係者と協議をした上で、柔軟に水域類型の指定や適時適切な見直しを行うことを明示しました。それから、現状非悪化の原則というものが告示に記載されておりますが、地域の利用の態様に合わせて適切に水質を管理するために類型を見直す場合は、水質の悪化を許容することには当たらないことを事務処理基準に明示いたしました。これを受けて、地域の実情に応じて基準値の高い水域類型へ見直すことも可能としたところです。
二つ目として、「利用目的の適応性」に係る水浴の見直しです。水域全体の水質と水浴場に求める水質が必ずしも一致しないことから、各類型の利用目的の適用性から水浴を削りまして、いずれの類型においても水浴を利用目的とする測定点は大腸菌数を規定いたしました。
三つ目に、季別の類型指定の設定ということで、月単位で区分して季別に類型を設定することも可能といたしました。
四つ目として、CODの達成評価の変更ということで、湖沼のAA、A類型、それから海域のA、B類型においては、有機汚濁を主因とした利水上の支障が継続的に生じていない場合は、CODの環境基準の達成状況の評価は必ずしも行わなくてよいことといたしました。ただし、CODの評価を行わない場合であっても、有機汚濁に関するモニタリングはCODや底層溶存酸素量などにより継続して実施することとしています。
6ページから伊勢湾における指定状況をご説明します。
7ページをご覧ください。伊勢湾の窒素と燐の水域類型の指定状況、右側に図がございます。3色に分かれておりまして、一番濃い緑色、湾の奥側に2か所ありますけれども、こちらがⅣ類型ということで、工業用水利用が行われているものです。その次に、知多半島の常滑と三重県の鈴鹿辺りを結んだ線の北側、湾の奥側ですけれども、2番目に濃い緑色の部分ですね、こちらはⅢ類型で、残る湾央や湾口の部分、一番薄い緑色の部分がⅡ類型と設定しております。
このように設定された理由を表2にまとめております。伊勢湾(ハ)については主たる水域利用が水産2種、伊勢湾(ニ)については主たる水域利用が水産1種に該当する水産及び水浴であること等からⅡ類型を当てはめるとされておりました。
ただ、伊勢湾(ハ)も(ニ)も、いずれも当時から水産1種だけではなく、水産2種や3種の利用もあった中で類型が分けられておりまして、伊勢湾(ニ)のほうは水浴の利用があり、伊勢湾(ハ)のほうは水浴の利用がなかったためと考えられます。
こうしたことを受けて伊勢湾(ニ)の水域について、今般、水浴を利用目的の適用性から削りましたので、類型の見直しを検討したいということです。
8ページに、環境基準の水域類型における水産利用の詳細についてまとめております。水産1種は、「底生魚介類を含め多様な水産生物がバランスよくかつ安定して漁獲される。」、水産2種は、「一部の底生魚介類を除き、魚類を中心とした水産生物が多獲される。」、水産3種は、「汚濁に強い特定の水産生物が主に漁獲される」ということで設定されておりました。
9ページに、伊勢湾における漁獲量や生産量の推移、主なものをまとめております。ノリについては愛知県、三重県共にここ20年で半減、アサリについても低い水準で推移しております。イカナゴについては、2016年以降は禁漁ということで、詳細はこの後、関係団体ヒアリングでお聞きしたいと思いますが、伊勢湾では窒素や燐といった栄養塩の減少により、水産業に影響が生じているといった指摘がございます。水域の利用の対応や地域のニーズ、実情に応じて水域類型の指定の見直しの検討が必要な状況です。
次の10ページをご覧ください。これから関係団体ヒアリングをさせていただきます。
一旦、資料1の説明は以上です。
【古米委員長】 ご説明どうもありがとうございます。
それでは、関係団体からのヒアリングに移ります。各団体に発表いただく時間は10分程度として、10分経過時に1鈴でお知らせします。10分経過してもご発表が終わっていない場合はお声がけをする場合がありますので、まとめに入っていただく等よろしくお願いしたいと思います。時間が限られておりますので、議事進行にご協力いただきますようお願い申し上げます。
説明は、三重県大気・水環境課、三重県漁業協同組合連合会、愛知県水大気環境課、愛知県水産課の順でお願いしたいと考えています。4件続けて説明いただいた後に、まとめて質疑応答を行います。
まずは資料の1-2を使って、三重県環境生活部環境再生局大気・水環境課よりご説明をお願いしたいと思います。
【三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課】 三重県大気・水環境課の松本でございます。私のほうからきれいで豊かな伊勢湾に向けた三重県の現状と課題ということで、ご説明させていただきます。
次のページをお願いします。まず初めに、環境基準の達成状況について説明をさせていただきます。
次のページをお願いします。このグラフは伊勢湾の三重県側の環境基準の達成状況を示したものになります。河川BODについては62水域で調査しており、青線で示しておりますけれども、近年達成率90%以上となっております。
海域のCODについては8水域で調査しており、赤線で示しておりますけれども近年改善傾向が見られております。
海域の窒素・全燐は緑色と黄色の線ですけども、近年全ての推移で100%を達成している状況です。
次のページをお願いします。続いて、伊勢湾の「きれいさ」と「豊かさ」の現状と課題として、貧酸素水塊の発生状況や干潟藻場の変化等について説明をさせていただきます。
次、お願いします。お示ししたグラフは平成3年度からの赤潮の発生件数となっております。近年は減少傾向となっております。
次のページをお願いします。こちらは貧酸素水塊の発生状況として年代別の底層DOの状況を示したものです。3mg/L以下の範囲を青の太線で囲んでおりますけども、年代が進むごとに範囲が拡大し、濃度の低下傾向がうかがえます。
次の資料をお願いします。こちらについては伊勢湾の干潟藻場の変化というところですけども、1955年時点での状況について、干潟域についてはピンク色で示し、アマモ場については緑色で示しています。干潟域については2000年までに37%まで減少し、アマモ場については1%まで大幅に減少している状況になっています。
次の資料をお願いします。こちらについては伊勢湾の漁獲量の変化についてですけども、右側のグラフをご覧ください。青色の実線がアサリの漁獲量です。1980年の1万4,000トンから2023年には163トンまで減少しています。点線についてはイカナゴの漁獲量ですけども、資源量減少により2016年から禁漁となっている状況です。
左側については黒のりの低品質ののりの枚数の割合を示した図ですけども、湾奥部、湾南部共に低品質ののりの割合が増えている状況となっています。
次の資料をお願いします。この図は主な黒のり漁場での年代ごとの溶存窒素の月平均濃度の変化を示したものです。各漁場とも水色の線で示す1980年代と比べ、全体的に低下している状況となっております。
次の資料をお願いします。まとめといたしまして、伊勢湾の三重県沿岸部では、栄養塩類が経年的に減少しており、特に中南部の海域で状況が顕著となっております。また、藻場、干潟の減少や貧酸素水塊の拡大が認められている状況です。このため、海域の栄養塩類を湾内の豊かな生物生態につなげていくため、栄養塩類の管理と藻場、干潟の保全と再生を両輪で行うことが重要と考えているところです。
次の資料をお願いします。続きまして、本県のきれいで豊かな伊勢湾の実現に向けた取組について説明をさせていただきます。
次の資料をお願いします。本県では、環境基準の達成と生物生産性・生物多様性とが調和・両立したきれいで豊かな伊勢湾の実現を目指し、令和4年10月に三重県第9次水質総量削減計画を策定しました。本計画では、従来の汚濁負荷の削減から総合的な水環境管理への新たな方向性を導入し、関係機関や関係団体と連携し、お示ししました(1)から(5)の取組を進めているところとなっております。
次の資料をお願いします。まず一つ目の取組なんですけども、総量規制基準の改定として右の二つの図に示すとおり下水道業の窒素、燐の管理運転がより柔軟に実施できるよう、それぞれの基準値を国が定めた範囲の上限になるよう見直しを行いました。なお、これまでの負荷量の実績の推移と比べると、第9次の目標量は左の図のようになっています。
次の資料をお願いします。次いで下水処理場の栄養塩類管理運転の試行とその効果の検証についてでございます。公的機関が管理する五つの下水処理場において、令和4年から燐の管理運転の試行を開始し、令和6年からは窒素の管理運転についても試行してきたところです。なお、志登茂川浄化センターについては平成30年に供用を開始し、最も直近に供用を開始した下水処理場であることから今現在、管理運営に係る調査を実施しているところとなっております。なお、これらの管理運転の検証効果については、本県の環境生活部、農林水産部、県土整備部の3部が連携して検証し、今後の施策等にフィードバックをしていくこととしております。
次の資料をお願いします。参考といたしまして、その管理運転のイメージ図をお示ししております。現在、このような濃度コントロールを行うことで、日平均値が規制値を超過しない、かつ高い値を目指す管理運転を行っているところになっております。
次の資料お願いします。管理運転について、下水処理場の放流濃度への影響について、まずテストについてなんですけども、この表に示したとおりとなっております。管理運転を始める前の令和3年と比べると、令和6年は各下水処理場において1.39倍から1.61倍と増加しており、管理運転の効果が現れております。
次の資料をお願いします。こちらについては、燐についての管理運転による下水処理場の放流濃度の影響についてお示ししております。燐についても管理運転を始める前の平成30年と比べると、1.31倍から2.06倍と増加しており、管理運転の効果が現れていることが分かります。
なお、参考ですけども、グラフにお示ししましたけれども、燐放流濃度の1か月間の状況からも分かるようにかなりばらつきがあり、安定的な管理運転を行うためにはきめ細やかな運転調整が求められているところとなっております。
次の資料をお願いします。続きまして、調査研究の推進と科学的知見の集積・活用として、令和4年から栄養塩類管理運転の効果検証を行っております。まずは令和4年度から令和5年度にかけて、一部浄化センターの周辺海域で水質やプランクトン等の調査を実施し、それらの結果を基に管理運転の効果検証に係るシミュレーション解析を令和6年度に実施しました。今後は、本シミュレーション解析を活用することにより、現在より高濃度で排水した場合の効果検証に取り組むこととしております。
次の資料をお願いします。続きまして、藻場、干潟及び浅場の保全・再生等の推進としてなんですけども、「伊勢・三河湾海域干潟ビジョン」に基づいた計画的な干潟再生等に取り組んでおり、令和5年からは松阪市地先においてアサリの稚貝の着底を促進する砕石を活用した干潟、浅場の造成工事などに着手するなどの取組を進めておるところとなっております。
次の資料お願いします。その他といたしまして、生活排水処理対策についてなんですけども、本県が定めている生活排水処理アクションプログラムに基づき進捗管理をしており、令和5年度末の整備率は89.6%となっており、引き続き、関係部局と市町と連携して、生活排水処理施設の整備を進めていきます。
次の資料をお願いします。関係者との連携体制です。三重県「きれいで豊かな海」協議会というものを、令和4年9月に立ち上げました。構成員といたしましては、環境生活部、農林水産部、県土整備部、そして、それぞれの研究機関が参画いたしまして、きれいで豊かな海の実現に向けた進捗管理を行っているところとなっております。
あわせて、中部地方整備局さんのほうで設立されている伊勢湾再生推進会議のほうと連携して情報共有、連携しながら取組を進めているところでございます。
次のページをお願いします。最後、まとめですけども、三重県では引き続き多様な主体と連携、目標を共有しながら、きれいで豊かな伊勢湾の実現に向けて取組を推進していくこととしております。
というところで、私どもの説明は以上とさせていただきます。ありがとうございました。
【古米委員長】 ありがとうございました。
続いて、資料の1-3について、三重県漁業協同組合連合会よりご説明をお願いします。
【三重県漁業協同組合連合会】 よろしいでしょうか。三重県漁連と申します。お世話になっております。資料に基づいて説明をさせていただきます。
資料の3枚目、2ページとなっているところです。伊勢湾の概要でございますが、こちらのほうの取りまとめにつきましては、ほとんど皆さんのご承知のことというところでございますが、イカナゴが禁漁もう9年ということで、資源はいまだに回復しておりません。黒のりにつきましては、ここ何年かは貧栄養に伴う色落ちが大きくて減産になってしまったときもございました。
そしてアサリ・ハマグリ等二枚貝の資源の減少ということで、これまで漁業資源にしてきたものの生育しにくい状況になっております。
次のページでございます。伊勢湾で営まれる漁業と生産状況というところでございますが、主に桑名から南の鳥羽湾港までの間でのり、採貝、それからイワシ等々、イカナゴを採るような船曳網、漁船漁業ということで、非常に豊かな場所として我々はこれまで漁業をやっていくことができていたというところでございます。
次のページをご覧ください。それで、これはノリ養殖の現在の状況を示す資料でございます。栄養塩につきまして特にノリの場合、窒素と燐というところが非常に大事になってくるわけですが、左側の図は、漁期の間(10~3月)に、我々(漁業者)が(各海域の)窒素量を計測し、県が燐の含有量を計測してとりまとめたものでございます。1980年代から下にかけて行くと、水色の部分が多いと思います。こちらについては、ノリが生育するのに十分な栄養がない、つまり、窒素量が十分でないというところで、このような傾向が年々出てきているということでございます。
今年の漁期も価格は非常によかったんですけれども、ノリの生産量としては例年並み程度というところでございました。現在は桑名地区を除いてなかなかノリの生育に適した状況になりにくいということが続いております。
次のページでございます。漁業生産、漁業の現状ということで貝のほうですね。貝のほうも先ほど県のほうの説明にもございましたとおり、伊勢湾というのは古くからアサリ・ハマグリを中心として漁獲量に恵まれていたわけですけれども、現在では減少をしておりまして、このグラフを見て分かるとおりの状況でございます。
鈴鹿地区というところがございまして、こちらのほうでここ数年水揚げが今頃の時期あったわけですけれども、今年はそれもないというところでございます。
次のページをご覧ください。イカナゴの資源というところでございます。イカナゴにつきましては、この地区のこの時期の風物詩でありました。今年で禁漁9年目と書いてございますが、漁を禁止しているわけではなくて、漁ができない、魚がいないということでございます。
原因については高温によるものが主な理由ということも言われておりますけれども、最近では夏眠に入る前、夏眠場は伊勢湾口の辺りにたくさんあるんですが、こちらで魚の餌が不足をして、水温耐性が非常に弱くなっているんではないかというようなことも言われているというところでございます。いずれにしても、今、イカナゴ漁はもう全くできない状態でございます。
次のページをお願いします。伊勢湾の再生に向けた要望というところでございます。我々、漁業者としては、やはり、なりわいでこの海で生きているというところでございます。数年前から県の下水施設の栄養塩の管理運転も行っていただくようにはなりました。そして、我々も大変期待をしているわけでございますが、まだ、その効果というところでは限定的ではないかなというところがありまして、今後の推進に期待をしているところでございます。やはり栄養がないとノリも育ちませんし、プランクトンもいない。これが漁業を継続していくには非常に難しい話になってしまうというところでございますので、これらを改善する方向で皆さんのお知恵を頂ければというふうに漁業者も思っているところでございます。
次のページでございます。その中で、今、出ているのが先ほどからの話にございましたとおり、類型指定等でございます。
我々としては、漁業が継続していけるために、プランクトンや藻類、魚類がしっかりと住める豊かな海が復活できるように、そういった水質基準にもっていくということを取り組んでいただきたいというふうに思っております。
漁業のほうはやはり生物がいてできるわけですから、これまでの水質基準が足かせになってしまうというようなことがないようにしてもらいたいというふうに考えております。
それで次のページのその次をめくっていただきたいんですが、漁業者も何とか現状を改善していくためにいろんな取組をしてきました。漁業者や我々漁業関係団体木曽三川の上流、岐阜県にまで足を運んだり、それから県内の何か所かに木を植えております。一部では県漁連の声かけではなくて漁協、地元のほうが林業関係者と連携して木を植えるという活動、これはもう30年近く続けている取組でございます。
それから、次のページでございます。これは漁業者自ら海底耕耘をして、できる地区は限られてくるんですが、噴射ポンプ等で海底を撹拌させて底質の硬化を防ぐというところで、漁業者はこういう取組も行っているというところでございます。
それから、次のページでございます。海浜清掃の活動の写真がございます。これはもう何十年も続けております。きれいな海、豊かな海のために近年この清掃活動では、漁業に関係のない方々も呼びかけ、多数の参加者のもとで実施しております。こういったことも漁協、それから漁連含めて定期的に活動をしているというところでございます。
次のページでございます。干潟の体験の写真が掲載されております。干潟は海の生物を育む非常に重要な役割がありますが漁業者の側からも働きかけを行って、こういう機会をつくって住民の方に理解をしていただいて、海というのが豊かであるということが非常に大事だということを一般の方々に広く啓発するような活動もしております。
写真は桑名のところでございますが、干潟の保全活動は、伊勢湾漁業者も含めてもう大きな組織だけでも五つぐらいの組織で、干潟の保全活動を現在取り組んでいるというところでございます。
それから、次のページでございます。現在はこのような施肥の活動もノリ養殖業者のほうでやっていますが、目に見えるような効果はなかなか現れず、費用もかかるというところで広くはできないんですけれども、窒素、燐といった栄養塩の乏しい地区に対して、施肥を行って今改善を期待しているところでございます。
【古米委員長】 10分を過ぎておりますので、まとめに入ってください。
【三重県漁業協同組合連合会】 最後になりますが、次のページでございますが、稚魚・稚貝の放流も行っているというところで、漁業者の側も行政の力も借りながら、いろんな取組をしているというところで、私の報告を終わらせていただきたいと思います。ありがとうございました。
【古米委員長】 ありがとうございました。
続いて、資料の1-4について、愛知県環境局環境政策部水大気環境課よりご説明をお願いします。
【愛知県環境局環境政策部水大気環境課】 愛知県水大気環境課の戸田です。
2ページをお願いいたします。私からは、愛知県におけるこれまでの水環境改善の取組の概要と水質の現状についてご紹介いたします。
3ページをお願いします。本日の議事である海域の全窒素と全燐の環境基準の関連につきましては、水質総量削減計画に基づき、COD、窒素、燐の負荷削減等に取り組んでまいりました。
こちらは、本県の総量削減計画に定めた主な施策を示したものでございます。伊勢湾側、三河湾側で実施している施策を掲げておりますけども、中には三河湾側だけで実施している取組も含まれております。
1番の陸域における汚濁負荷量の削減につきましては、法規制対象の約1,500事業場に対して総量規制基準による排出規制を行っております。生活排水対策では下水道整備、合併処理浄化槽設置などを促進いたしまして、2023年度の汚水処理人口普及率は93.2%、下水道普及率は81.5%となっております。
また、未規制事業場等へも汚濁負荷量削減の指導を行っております。
2の海域における環境改善事業としましては、干潟・浅場・藻場の再生、覆砂、浚渫、深掘跡の埋戻し、また栄養塩管理の関係では水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験を実施しております。社会実験につきましては、後ほど本県の水産課からご説明をさせていただきます。
最後、3の啓発事業といたしましては、三河湾では地域における環境再生の機運を高めるため啓発イベント等を実施しております。
次のページをお願いします。COD、窒素、燐の負荷量の実績をご説明させていただきます。こちらは全県の負荷量となりますけれども、長期的に見ますといずれの物質も順調に削減が進んでおります。第9次総量削減計画の目標年度である2024年度の実績は現在、集計中でございますけども、2020年度から2023年度まででは、2024年度の欄の棒グラフに記載のあります、1日当たりCOD70トン、窒素55トン、燐4.4トンの削減目標値を達成している状況となっております。
5ページをお願いします。こちらは2023年度の負荷量実績について湾別の内訳を示したものでございます。各円グラフの左側が伊勢湾、右側の縞模様の網かけが三河湾となっております、全県の負荷量のうち、CODで言いますと、約7割、窒素及び燐では約6割が伊勢湾側に流入しているという状況です。
6ページをお願いします。干潟・浅場の造成については、三河湾を中心に国によるシーブルー事業と、その後の県独自事業の実施により、これまで約720ヘクタールが造成をされております。
次のページお願いします。水質の現状でございます。グラフは環境基準の達成率の経年変化を示しております。長期的には改善傾向でございますけれども、最近10年間で見ますと、赤で示す河川のBODは90%以上、海域の全窒素・全燐、それぞれ青と緑で示しておりますけども、それらにつきましては100%を達成した年がある一方で、オレンジで示しますCODにつきましては45から64%で横ばいの状況にあります。
次のページをお願いします。伊勢湾、三河湾における水質の推移、黄色の部分ですけど、最近の10年を見ますと、下のグラフの全窒素・全燐の濃度につきましては概ね横ばいとなっておりますけども、上のグラフのCODについては上昇傾向が見られているという状況になっております。
次のページをお願いします。類型指定がされました水域ごとの全窒素・全燐の濃度の推移です。上が伊勢湾、下が三河湾のそれぞれ全窒素・全燐のグラフでございまして、全ての水域で長期的には濃度は減少傾向となっております。
現状の課題として特に右上の図で、緑色で示しましたⅡ類型の水域において、ノリ・アサリにとって必要な栄養塩類である窒素・燐の不足が指摘をされております。
次のページをお願いします。貧酸素水塊の発生状況です。伊勢湾、三河湾では湾奥から湾央にかけて毎年夏季に貧酸素化している状況となっております。
次のページをお願いします。赤潮・苦潮の発生状況です。赤潮は伊勢湾、三河湾とも湾奥で発生しやすく、苦潮は三河湾の湾奥で起こりやすい状況となっております。右側のグラフでは上が伊勢湾、下が三河湾のものでございますけども、折れ線グラフで示す赤潮の延べ日数はいずれも中期的には減少傾向ですが増加傾向となっている期間もあります。
青い棒グラフで示します苦潮の発生件数につきましては、年により変動が大きい状況となっております。
次のページをお願いします。まとめでございます。本県ではこれまで水質総量削減計画に基づく取組等により、陸域からの窒素・燐の負荷量の削減は進んでおりまして、海域濃度も減少傾向であるものの、貧酸素水塊、赤潮・苦潮の発生が見られる状況となっております。
一方でノリ・アサリに必要な栄養塩類の不足が指摘されていることから、栄養塩管理の社会実験を行うとともに、学識経験者や漁業者、沿岸の市・町などを構成員とする愛知県栄養塩管理検討会議において、漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理のあり方を検討いたしました。これらの詳細については県水産課のほうから説明をさせていただきます。
私からは以上でございます。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
続いて、資料の1-5について、愛知県農業水産局水産課よりご説明をお願いします。
【愛知県農業水産局水産課】 愛知県栄養塩管理検討会議の結果及び関連情報について、愛知県水産課の日比野からご説明いたします。
次をお願いします。伊勢湾、三河湾では流入負荷削減が行われ、海域での窒素・燐濃度が低下している状況は先ほどご説明あったとおりでございます。本県漁業にとりましてはノリ・アサリというのは非常に重要な漁業でございます。栄養塩不足はノリの品質や成長に直結しますし、養殖ノリの色があせてしまう色落ちや、生産終了の早期化などが現在課題となっております。
また、植物プランクトンは海域の生物生産を支える基盤でありますし、二枚貝の餌でもあります。アサリでは餌の減少によりましてエネルギー収支のバランスが崩れ、肥満度の低下により生き残れなくなってしまい、漁獲量が急減するといった栄養塩を起点としたプロセスが近年の研究で明らかになっております。
次をお願いします。このような変化を現場で間近で見てきたのは漁業者さんです。左上に書いてございますが、2017年に愛知県漁連から知事宛てに栄養塩管理の要望がございまして、その対応の一環としまして、右側にありますように下水処理場による栄養塩供給の取組に取り組んでまいりました。
特に②の水質の保全と「豊かな海」の両立に向けた社会実験では、総量規制基準の改正により、窒素・燐をそれまでの基準の2倍に緩和して、増加放流を実施してまいりました。また、伊勢湾側でも関係者のご協力により、燐濃度増加運転を実施しているところでございます。
次をお願いします。愛知県では、2022年から愛知県栄養塩管理検討会議を設置いたしまして、2年間の社会実験の結果の検証であるとか、漁業生産に必要な望ましい栄養塩管理のあり方について検討してまいりました。学識経験者をはじめ関係部局が一堂に会して議論を重ね、2025年2月に報告書を公表しております。
なお報告書は、検討会議Webページからダウンロードできまして、本日ご説明する内容はその報告書の概要になっておりますが、特に水質環境基準に関わる関連情報を主体としております。
次をお願いします。検討会議では、栄養塩管理の目標となる漁業生産に必要な栄養塩濃度というのを検討いたしました。特にアサリはこの海域の漁業において重要な資源でありますし、内湾の健全な物質循環に不可欠な水質浄化機能を担う鍵となる、この海域の漁業生産における重要種と位置づけることができます。
下の図には、様々な観点で求められた知見を示しております。例えばアサリの資源が良好であった1998から2006年の全窒素・全燐の年平均値であるとか、あるいは全国のアサリ漁場の資源量指数と近傍の水質との関係から得た関係式から、必要なTN、TPを逆算した知見、またアサリ漁業成立のための漁獲量の閾値を仮定しまして、その達成確率から必要な栄養塩濃度を求めた知見など様々な実測値に基づく知見による検討が行われました。
次をお願いします。これらの検討から、必要な水準には多少のばらつきが見られましたが、全窒素の範囲は0.37から0.47mg/L、全燐では0.038から0.054mg/Lとなったことから、漁業生産に必要な栄養塩濃度は全窒素で0.4mg/L以上、全燐で0.04mg/L以上と整理がされました。
次をお願いします。一方で、アサリやノリの漁場位置から現在の伊勢湾、三河湾における海域の栄養塩濃度分布を見ますと、今お示しした漁業生産に必要な栄養塩濃度を下回る海域、これは黄色い海域ですけれども、近年拡大してきている状況がございます。
この背景の一つには、伊勢湾、三河湾の漁場を含む海域の多くが現在窒素・燐の環境基準のⅡ類型とされており、その基準値が漁業生産に必要な栄養塩濃度を下回る濃度になっている、そういったことが考えられます。この基準値を達成することを目標に、例えば流入負荷削減が行われてきたことも、海域の栄養塩濃度の低下の大きな要因の一つと考えられます。
このため、検討会議で整理された漁業生産に必要な栄養塩濃度を許容できるための類型の見直しは、今後の栄養塩管理を進める上でも不可欠であると考えております。
次、お願いします。こちらは関連する情報になりますが、各年代の漁船の標本船によりますアナゴ・シャコの漁場位置を示した図になります。マアナゴは外洋から来遊した仔魚が湾内生育し漁獲資源となります。地元ではマアナゴをメジロと呼びまして、その干物はメジロの干物として大変おいしいです。
またシャコは生活史の全てを内湾に依存する種でありますし、こちらも寿司ネタとしては有名ですし、国産シャコの主産地としまして、例えば冬季の水揚げ制限など、漁業者による精力的な資源管理が取り組まれてきた種でございます。
両者の分布域を見ますと、湾域の栄養塩濃度の低下に伴って多少とも栄養塩の高い湾奥部へと分布域がシフトしているようにも見えます。仮にこれが水温の影響であれば、水温の上昇率は湾の北部、湾奥部で高いとされておりますので、南部が分布域で縮小しているというこの結果とは矛盾します。
この結果は栄養塩と分布の明確な因果関係を証明するものではございませんが、一方で、アサリやノリ以外でも水産資源と栄養塩、ひいては基礎生産との関連を示唆する状況証拠と捉えることもできるかなと思います。
また、伊勢湾、三河湾は小型底びき網漁業や船びき網漁業が盛んに行われている海域ですが、これらの漁業の漁場の多くは現在の緑色で示されているⅡ類型海域となっております。
次をお願いします。その他の主要魚種の漁獲変動、漁獲量の変動についてもお示ししております。
減っている種、増えている種とありますけれども、タイプ分けすると内湾に生活史を依存する底生性の種類において、特に90年代以降減少傾向が見られております。遊泳性のものでも夏しらすやイカナゴ、内湾に依存するか、しやすいものについても、近年乱高下する傾向にございます。
増えている種としましては、もともと外海を主体として漁獲されてきたような種になります。
このような状況からも、内湾漁業にとって重要な特色ある魚種が減少あるいは不安定になっている状況が伺えます。
次をお願いします。検討会議では、栄養塩管理の必要な時期についても言及されております。最近の研究では春や夏の生物の栄養状態、飼料条件が資源形成に関連するということが示されつつあります。
例えば近年よく言われる高水温の影響も、これは生物の栄養状態が悪いとより顕著に影響するといった知見もございます。近年の環境変化や水生生物の多様な生活史を考えれば、春から夏も含めた取組が重要であり、生物に対する栄養塩の重要性は季節別に限定する理由は少ないのではないかということになります。
次をお願いします。このような栄養塩の供給により、海域の環境にどのような影響をもたらすかについては議論されるところかなと考えております。現在の生態系シミュレーションにおいて、長期的あるいは高次生態系も含めて再現性をもってどの程度評価できるかというのはちょっと詳しくは分かりませんけれども、少なくともこれまで現場で長年にわたり観測された結果を見る限り、海域の栄養塩濃度は半分にまで低下したのにもかかわらず、貧酸素水塊の状況に改善傾向は認められていないという事実がございます。
特に統計的な解析によれば、貧酸素水塊の変動は水温や密度差といった海洋の物理構造に左右されているという結果もございます。
また、伊勢湾再生推進会議では、伊勢湾シミュレーターの結果から、アサリ等の二枚貝の資源が増えることによる摂餌による有機沈降物の除去も環境悪化を抑制する上では非常に重要な要素であることが指摘されております。
次をお願いします。このような議論を踏まえまして取りまとめられた栄養塩管理方策の方向性でございます。
1番目としましては、社会実験や伊勢湾側での増加放流を現計画期間では継続するものとなっております。
その下の②ですけれども、栄養塩増加運転の恒常的実施とその枠組づくりを進めるという内容です。
1点目は、漁場を含む海域の類型を、先ほど申し上げた漁業生産に必要な栄養塩濃度を許容できる類型に見直すというものでございます。また、必要な栄養塩濃度に高めていくために、下水処理場において増加運転の実施箇所の増大と周年運転を検討して実施していくような点、また総量規制基準の緩和や増加運転を考慮した削減目標量を設定していくことが不可欠であるとされております。
今後は窒素・燐を削減対象ではなく、管理の対象としていくことが重要であると考えられます。
栄養塩を漁業生産につなげる取組も、両輪として実施していきます。
以上の取組を進めながら、環境や漁業のモニタリングを行いつつ順応的な管理とし、水質の保全と豊かな海の両立を図っていくこととしております。
次をお願いします。先ほどご説明ありましたように、今年の2月14日に環境基準についての一部を改正する告示及び処理基準の一部改正をいただきました。検討会議で整理された漁業生産に必要な栄養塩濃度は環境基準Ⅲ類型の基準に含まれます。ここで利用目的としている水産用水基準2種の魚種は、イワシ類、スズキ、カレイ類、シャコ、ナマコなど、いずれもこの伊勢・三河湾の内湾漁業の対象種として重要な種であります。大きな地域ニーズもございます。
また、沿岸の潮干狩りのにぎわいや採ったアサリを食べる喜び、沿岸漁業を起点とした産地市場での活気ある仕事、次世代が生物多様性を見て触れて楽しむ等、豊かな海とは内湾が持つ様々な生態系サービスが創出される地域で関わる人々の心を豊かにできる海であるべきだというふうに考えます。
検討会議の内容は漁業生産の側面から検討してきたものでございますが、漁業は古くから豊かな海の恩恵を利用して営まれる事業であり、内湾が本来持つ生物多様性や高い生物生産を前提としております。したがいまして報告書は、漁業生産に必要なと題されてはおりますが、生き物に富んだ豊かな海を次世代に引き継ぐために必要な考え方が整理されてある、整理されたものであると考えております。
県といたしましても報告書の内容を踏まえ、豊かな海に向け関係部局が連携して取り組んでいくことが重要であるというふうに考えてございます。
報告は以上でございます。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、説明のありました資料の1-2から1-5につきまして、委員の方々からご質問、ご意見をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。オンラインの方は挙手ボタンをお願いいたします。
田中委員、どうぞ。
【田中臨時委員】 田中です。どうもありがとうございます。
幾つかあるんですけどまず、三重県の環境サイドの方への質問なんですが、藻場と干潟の大幅な今、減少が起こっている話が出てきたんですけれども、三重県の場合ではアマモ場の減少とか干潟の減少はどういうことが原因であるのか、愛知県の方は先ほど港湾とか海岸での復元のいろんな努力をされている話があったんですが、三重県ではどういうことがされているかということをまず教えてください。
それから、三重県の漁協の方への質問なんですけれども、エビとかカニとかの底層の、伊勢湾の中心部分、湾の中央部分のところは溶存酸素がやはりかなり下がっているんですけれども、ここについては例えばエビとかカニの減少というのは気にならないんでしょうかという点が1点です。
それからもう1点は、イカナゴの話が出てきたので、イカナゴのちょっと確認なんですけども、先ほどご説明いただいた中のページ、6ページだったですかね。ここで夏眠が行われると。夏眠前にプランクトンをかなり食べて、それで何とか夏を越えるんだというお話だったんですが、これは越える場所というのは湾の外側という理解でいいんですよねというちょっと確認です。ちょうど6ページ目の湾の湾口からさらに外に出たところが夏眠場であって、湾の中にいるのはそれの直前までは餌を食べているけど、そこから先は湾の外に出るという理解でいいのかという確認です。
それから愛知県の日比野さんの話が非常に興味あったんですが、ノリとかアサリについては、いろいろな研究されて、必要な栄養塩レベルがどれぐらいかも大分分かってきたのかと。
今日はあまり話としては出なかったんですが、三重県側のほうの話があったイカナゴの視点から見たときに、やはり夏眠前も含めて、餌がやっぱり十分ないといけないと。恐らく、甲殻類を主に食べるということになるのかなと思うんですが、どれぐらいの栄養塩レベルがイカナゴの保全のためには必要か、その辺の研究というのはどういうふうに進んでいるのかということで、お知りの点があれば教えていただきたいという点です。
それから、もう一点は、ちょうど先ほど三重県のほうにちょっとご質問した点なんですけども、底層DOによってシャコとかエビが減っている理由の中に、底層DOの低下がずっと続いているということは何か関係しているのか、関係していないのか。その辺、今のご見解をお聞きしたい、この点です。
以上、お願いします。
【古米委員長】 ほかの委員の方、ご質問がなければ。
それでは、大久保委員、お願いいたします。
【大久保臨時委員】 ありがとうございます。
今の田中委員のご質問とも関係する点がございますが、合わせてお答えいただければと思います。
まず、三重県の方にお伺いします。先ほど話に出たエビについて、これも水産1種ということになると思いますけれども、類型を変更した場合に、このエビに対する影響、エビ以外でもいいのですが、水産1種のものに対する影響ということについて、何か懸念される点はないのかという点をお伺いしたいのが、まず1点目でございます。ハマグリも減少しているということですから、水産1種で今設定されている値そのものに漁協の方々あるいは水産の方々は、少し疑問をお持ちなのかどうかということが質問の第1点目です。
それから2点目は、同じく三重県の発表のパワーポイントの21枚目だったと思うのですけれども、再生推進会議で関係活動団体と書かれていましたが、こちらは漁協のことを指すのか、あるいは漁協以外にも様々な団体が参加されているのかという点を教えてください。
以上が三重県への質問です。
それから、3点目は愛知県に対する質問で、こちらも先ほど田中先生からご質問があった点と関わりますが、6ページ目の藻場干潟の再生ですけれども、こちら700haくらいですか。パワーポイントで言うと6ページ目で、従来造成をしてきたということでございますが、これによりまして、生物の種類という観点から、水環境の改善という観点から、どのような効果が、もうこれは98年から始まっているわけですが、この20数年間であるというふうにお考えであるか。
また、今700haぐらい造成していますけれども、今後、造成計画としてはどの程度のものがどのくらいの期間で想定されているかという計画がございましたら、お伺いしたいと思います。
以上です。
【古米委員長】 ほかにご質問がないようであれば、三重県の環境、そして漁連さん、そして愛知県の水大気環境課、水産課という順番で回答をお願いしたいと思います。
まず、三重県の環境よりお願いします。
【三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課】 三重県の農林水産部水産基盤整備課の奥村と申します、よろしくお願いいたします。
まず、田中委員のご質問ですね。私どもの7ページのほうでご説明いたします。
干潟とアマモの減少の要因ということであったかと思うんですけども、干潟、アマモは共に、減少の要因としましては、特に高度経済成長期の埋立てによる減少が大きいのかなと。それが要因として大きいのかなと考えているところでございます。
干潟域に関しましては、今のスライドで示されています2000年の状況ですが、それ以後もあまり大きな変化はありません。
一方、アマモ場に関しましては、この資料では2000年の状況を示しておりますけれども、近年はもう少しアマモ場が増えてきておりまして、1,000haぐらいまでは増えております。
もう一つのご質問として、その対応ということになりますと、資料の19ページをお願いいたします。
私ども三重県としましては、こういった中で、特に干潟・浅場の造成というものを重視しておりまして、以前ほどの干潟を全部復活させるということはちょっと現実的ではないものですので、どういった場所に干潟・浅場を造成したらいいのかということを検討しておりまして、アサリやハマグリなどの母貝が住める場所、また、これらが生育する場所ということで、そういう場所を選びまして、そういうところに干潟・浅場の造成というものを展開させていただいております。
また、アサリとか浮遊幼生が着底した後に、波浪で流されてしまって消えてしまうということがありますので、そういうことをなるべく防ぎたいということで、砂よりも少し粒の大きな2mmから5mmほどの大きさの砕石と言われるものを浅場の表面に用いる工法を取っておりまして、なるべく歩留りを上げるというような取組をさせていただいております。
漁業者の皆様による干潟・浅場の保全活動などの支援というのも、これは国の事業、補助事業を使っておりますが、それを使って県としても、あと関係市町と共に支援させていただいているところでございます。
以上です。
【古米委員長】 それでは、三重県漁連さん、お願いいたします。
【三重県漁業協同組合連合会】 三重県漁連でございます。
ご質問のまず一つ目、エビ類、カニ、水産1種になると思いますけども、この漁獲に関しては確かに減少しているというところで、貧酸素の影響を受けやすいということも事実だと思っております。
ただ、現在、我々の漁業者側の感覚でいくと、この貧酸素の影響というのが果たして栄養塩、窒素、燐との関連がどこまであるのかというところについては、我々はちょっと原因が違うのではないかという感覚を持っております。
いずれにしても、エビが育つには干潟が必要ですし、アマモ場も必要というところで、そういったものも減少している中で、これはこれで造成などの取組を行いますけれども、まずは海を豊かにしてプランクトン量が適度に存在し、生物を豊かに育むことができる水質基準は必要なものではないかというふうに考えております。
それから、イカナゴの質問があったと思いますけれども、イカナゴについては、図の中に示させていただいたように、伊勢湾口の離島の外側ぐらいが夏眠の場所というところで、本来そこから伊勢湾の中に入ってきて、そこで餌を食べて育つという認識をしております。
ですので、今現在はどうも湾口の調査でイカナゴはいる形跡はありますが、伊勢湾内でイカナゴを見かけることがないというところで、伊勢湾が餌や水温がイカナゴの生息に適した環境になくて、資源が全くいなくなったのではないかというふうに捉えております。
以上でございます。
【古米委員長】 大久保委員のハマグリも水産1種の件についてはいかがでしょうか。
【三重県漁業協同組合連合会】 ハマグリについても、これも住む環境について、主要漁場は桑名付近の北のほうでございますから、今現状で議論されている海域と、少し異なるというところでございます。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、愛知県の環境局からお願いいたします。
【愛知県環境局環境政策部水大気環境課】 シーブルー事業ですけれども、これは1998年から2004年まで国交省の中部地方整備局が主体となって行った事業でございますけども、その取りまとめにおきましては、ちょっと詳しい結果は今、この場にはありませんけども、造成区域において、周辺海域と比べてDO値が高くなるというような水質の改善、それから底質の改善がみられました。底生生物のモニタリングも実施しておりまして、生物量が増加したとか、あと生物の多様化といった効果が見られたというふうにまとめられております。
それから、今後につきましては、2005年以降は県独自事業でやっておりますけども、今のところ、計画としては、2030年度までは毎年13haほど事業を実施していくという予定となっております。
私からは以上です。
【古米委員長】 ほかにもないですね。
まずは、それでは続いて、愛知県水産課からお願いいたします。
【愛知県農業水産局水産課】 水産課でございます。
イカナゴについてというお話だと思います。イカナゴについても、名城大学さんを中心に、その重要性が近年になって指摘されているところでございます。ちょっと資料の中にも引用させていただいておりますけれども、飼育実験等によりまして、やはり餌をしっかり食べているイカナゴについては、その後の高水温に対する耐性が強くなるといった研究事例もございますので、やはり水温耐性に関しましても、餌が重要であるというところはかなり確からしい情報ではないのかなというふうに考えております。
一方で、その餌を満たすために、栄養塩の水準としてどのレベルが必要かというところは、実際のところ、まだ検証が具体的になされていない、なされつつあるところなのかなとは思っているところなんですけども、その一方で、やはりイカナゴ、この海域のイカナゴは、愛知県と三重県が非常に協力関係にありまして、漁業者さんがかなり精力的な資源管理を長年にわたり行ってきたものです。それが、全国的にも優良な資源管理事例として取り上げられるほどの資源管理をしてきた中での、この再生産関係というものが失われてきているというのが、今の状況だと思います。
その水準をどこに持っていくかというところは、今後の検証課題になるのかなと思いますけれども、そういった再生産関係を安定させるためには、まずはやっぱり動物プランクトンがどれぐらいいるのか。あるいは、一つお話の中では、2000年代前半の栄養塩水準というのがやはり安定して再生産関係が見られたというところがありますので、まずはそこを目指すのかなというところが一つの目標になるのかなというふうには考えられます。
それから、エビ・カニに関して、底層DOが関係しているか、1種の関係ですけれども、これはやはり底層DOというのは資源形成において重要なファクターになっているというのはあると思います。
ただ、貧酸素が出ておりました90年代、あるいは80年代、そういった過去においては、そういった資源量も多かった状況がございますので、底層DOそのもので現在の資源減少が引き起こされている、それが全ての要因であるという考え方は、ちょっとこれまでの歴史を見ると違和感があるのかなというところがございます。
先ほどありました、三重県さんのほうにご質問ありました1種に区分される魚種への影響につきましても、過去のⅢ類型濃度において、少なくとも必ずしも漁獲量が少なかったわけではありませんので、Ⅲ類型濃度であった80~90年代はむしろ漁獲量が多い種類もございます。特に伊勢湾、三河湾なんかでは小型のクルマエビ、これはサルエビとかアカエビといった種類が含まれますけれども、これ、実はこの地域では、重要なえびせんべいの原料になったりとかします。これも地域ニーズで非常に重要な種類でありますけれども、こういった近年の減少もございます。なので、貧酸素水塊との対応を見ましても、1種につきましても、貧酸素水塊の影響はあるにしても、栄養塩というのも重要なファクターになっているのではないかなと思います。
【古米委員長】 伊勢湾の再生推進会議組織についての大久保委員のご質問は、漁連関係はどうなっているかということでしょうか。
【大久保臨時委員】 いえ、関係活動団体という、パワーポイント21の構成と団体数をお伺いしました。漁協は確実に入っていると思うのですが、そのほかどのような団体が団体ぐらい入っているかという質問です。
【古米委員長】 すみません、説明を三重県さんお願いします。
【三重県環境生活部環境共生局大気・水環境課】 三重県大気水環境課の小林と申します。
伊勢湾再生推進会議自体は、国交省さんがつくっている組織で、細かい数字のところは把握し切れていないところはあるんですけれど、関係自治体としては、流域の自治体とか、あと林野庁さんとか水産業さんも構成員としては入っていらっしゃいます。
関係活動団体につきましては、この推進会議の中で、一斉モニタリングとか様々な取組を行っておりまして、それに関係していただける民間団体さん等になりますので、中身について、事業によって、いろいろな団体さんがご参加をいただいているという形になります。
以上となります。
【古米委員長】 大久保委員、よろしいでしょうか。
【大久保臨時委員】 ありがとうございます。
構成団体といっても活動団体のほうはちょっと関わり方が違うというふうに理解しました。ありがとうございます。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。 ほかにご質問。
【田中臨時委員】 ちょっと今、三重県の環境課、あるいは水産課の方が回答されたアマモ場の変化の話なんですが、ちょっとよく理解できなかったのは、干潟のほうは土地の埋立てによる改変だという話をいただいたんですが、アマモ場のほうは、これは減っているところが必ずしも上の改変したところではなくて、湾の中央部から、出口付近のところがずっと減っているんですけども、これは何か生産性が上がって、光の透過性が変わったのか、何か別の要因なのか、あるいは沿岸の護岸形態が変わって藻場がなくなったのか、その辺はどうなんでしょうか。
【三重県水産基盤整備課】 三重県の水産基盤整備課、奥村と申します。ちょっと説明が漏れて申し訳ございません。
今、委員がおっしゃっていただいたように、アマモ場が2022年ぐらいだったと思うんですが、県が調査した結果ですけども、アマモ場の面積としましては1,000haほど確認されております。
そもそも減った要因としましては、干潟の埋立てで減っているというふうには我々考えております。ただ、増えている状況から考えますと、増えた要因なんかも当然考えているんですが、はっきりはしないんですが、今、委員がおっしゃっていただいたように、透明度が少し上がってきているということもあるのかなとは思うんですが、ちょっとまだその辺りは、なぜ増えたかというとこまでは至ってはおりません。
底引き網を行っている漁業者さんからも聞いても、ここ最近増えているねというのはよく言われておりまして、現象としては捉えているんですが、なぜそれがというところまではまだそこまで追い切れていないところでございます。
以上です。
【田中臨時委員】 どうもありがとうございました。
【古米委員長】 ほかにいかがでしょうか。特に挙手がないようです。
それでは、事務局のほうから資料1-1の後半部分について、見直しの方向性と今後の検討の進め方についてご説明をお願いいたします。
【亀井課長補佐】 それでは、資料1-1の12ページからご覧ください。本日の小委員会に先立ちまして、伊勢湾の窒素、燐の類型の見直しについては、専門家による検討会を本年1月と3月に開催しまして、検討に当たりご助言をいただいたところです。
13ページをご覧ください。ここから2月の制度改正を受けた四つの視点で、それぞれ伊勢湾について考察をしております。
まず一つ目は、「利用目的の適応性」に係る水浴の見直し、水浴を外したことによる影響ということでございます。
先ほどご説明しましたように、この伊勢湾(二)の水域につきましては、水浴の利用も理由に類型を指定しておりましたので、今般、水浴を外したことを受けまして、類型を見直すことが適当と考えております。
なお、右の地図にございますように、知多半島西側に10か所、三重県側に11か所、水浴場の水質を検査しておりますけれども、いずれも水浴場水質判定基準の水質B以上ということで、水質上の障害は生じていないところです。
14ページをご覧ください。次に、CODの達成評価の変更についてです。右側の棒グラフにありますように、伊勢湾の水域ではCOD、窒素、燐とも流入負荷については経年的に削減してきております。
しかしながら、右下の折れ線グラフにありますように、CODの水域の濃度自体は近年減少しておりません。環境基準が未達成の状況でありまして、これは内部生産や底質からの栄養塩類の溶出、難分解性CODや外洋からの流入などの影響が考えられます。
一方で、伊勢湾では有機汚濁を主因とした利水上の支障は生じていないと考えられます。
こうしたことを受けまして、2月の制度改正にありますように、この湾口・湾央のA、B類型に指定した水域では、CODの達成・非達成の評価を行わないこととしまして、有機汚濁に関するモニタリングはCOD、底層溶存酸素量は継続して実施し、影響を監視することとしたいと考えております。
次のページ、15ページをお願いします。続いて、適時適切な類型の見直しということで、窒素と燐ですけれども、左の棒グラフにありますように、窒素と燐の発生負荷量は経年的に削減されてきました。
右の折れ線グラフにありますように、この水域の窒素と燐の濃度は、ここ10年以上、ほぼ環境基準を達成している状況です。
先ほど愛知県からご説明がありました、愛知県栄養塩管理検討会議が示しております漁業生産に必要な栄養塩濃度は下回っておりまして、Ⅱ類型の全窒素0.3、全燐0.03mg/L以下を満たしている状況です。こうしたことが、伊勢湾(二)の水域の利用の態様や地域のニーズや実情と異なってきているとこともあり、水域類型を見直すことが必要と考えております。
次のページをお願いします。16ページです。まず、類型の見直しについて、伊勢湾(二)の水域の全窒素・全燐の環境基準については、Ⅱ類型からⅢ類型に見直すことを視野に検討することが適当であると考えております。右の図にありますように、そのように見直した場合、多くの水域がⅢ類型になるということです。
今後、水質シミュレーションによる影響予測等を行い、見直しを進めていきたいと考えております。
その上で、留意事項として3点挙げております。まず、窒素、燐の濃度増加の影響を把握するために、公共用水域の水質の監視を継続し、伊勢湾の栄養塩類の管理に当たっては順応的に行うことが必要と考えております。ただし、この栄養塩類の管理等を含めまして、第10次水質総量削減の在り方については、別途総量削減専門委員会において審議がなされております。
二つ目に、水産資源の漁獲量の減少の要因ですが、栄養塩の減少もありますが、そのほか、藻場・干潟等の生息・再生産の場の減少、気候変動による水温上昇、漁業者の減少等も要因と考えられることに留意が必要であり、先ほど関係団体からもお話のありましたように、栄養塩対策に加えて、場の保全もより一層やっていく必要があると考えております。
そして、3点目としまして、伊勢湾の赤潮の発生、貧酸素水塊の面積の増減など、今後も科学的な知見の集積が必要と考えております。
それから、季別の類型指定もできることとしましたけれども、伊勢湾ではノリだけではなくて、アサリなどの生活史の観点から、秋冬だけでなく通年の栄養塩が必要とのご意見が先ほどもありましたので、季別の類型指定は適用しない方法で検討することが適当と考えております。
最後に17ページをご覧ください。今後のスケジュールです。本日のご審議、ご意見を賜りましたら、それを踏まえて、来月以降、栄養塩管理の現状と見込み等について、関係施設の調査やヒアリングを進めていきたいと考えております。
その上で、水質シミュレーションによる影響の予測等を行ってまいります。
その後、専門家検討会やパブリックコメントなどを経まして、来年春頃の本小委員会で最終的な見直しの案をご報告したいと考えております。
説明は以上です。
【古米委員長】 ご説明ありがとうございました。
それでは、ご質問、ご意見をお受けしたいと思います。
田中委員。
【田中臨時委員】 先ほどからの議論で、沿岸についてはかなり、ノリとかアサリとかハマグリとか、そういう水産の改善すべき目標がはっきりしていて、栄養塩を上げるということについては、合理性がかなりありそうな気がするんですが、ちょっとよく分からないのは、沖合の部分ですよね。これは先ほどの話で、伊勢湾の中の類型Ⅱという形で、もともと沿岸部分の水水浴場、それからよく読むと、もともといきさつがちょっとよく分からないところがあるんですけど、この類型の中では、先ほどの説明だと8ページにあるように、水産の視点から見たときに、エビとかカニのような底層の貧酸素化の影響を受けやすい水産生物の漁獲が多いことも、実はこの表の中に入っているんですよね。この点、先ほどの議論の中でちょっと水産側の方の意見がちょっとどっちなのか、まだはっきり分からないところがある。もともとそういうものもある程度考慮してやっているとすると、沿岸部分については確かに水浴場があるとすると、もし仮に今、新たに類型を考えるときには、沿岸部分についての話と、それから沖合についての話を分けても、それらが同じレベルで必要であるのかどうかだと思うんです。
けども、過去の経緯がちょっとよく分からなくて、水浴の沿岸部分と沖合の部分が同じになっているというのがなぜなのか。本当にそれは議論した上で、水浴が一番のネックになって、これが理由でその類型になったのか。ここがちょっとよく理解できなかった。
だから、まず見直しというよりは、多分、新たに区域の分け方も含めて、これが妥当かどうかの議論を、私はやるべきなんじゃないかなという、ちょっと気がしました。
それから、2点目は今の話に関わってくるんですけど、環境省が今、底層のDOについての、伊勢湾についての類型指定はした。今、それについての達成率を、環境基準の目標的なものとして、これから検討を始められると思うんですよ。
まさに、栄養塩を特に幾らぐらいにするかということで、底層DOがどうなってくるかの議論とワンセットで、やっぱり議論するべきなんではないかなという気がするんですよね。
それらを含めて、切り方の問題も含めて、それを本当に必要とする理由は何なのかという、栄養塩のレベルは幾らなのかということも含めて、総合的に議論をすべきなのではないかという気がします。これは2点目です。
3点目は、アダプティブマネジメント、確かにそうなんですけど、環境の基準というのを目標にしているのは、当然、環境行政はそうなんですけど、下水道の重要な施策を担っているんですよ。下水道の高度処理を入れる目標が、環境基準の達成にあるんですよね。
その際に、ほぼ今のレベルでぎりぎり栄養塩が達成する、しない。この類型をかなり緩めた場合には、高度処理はほとんど要らなくなる。そうすると、もしアダプティブマネジメントをやるとなると、緩めるほうは今やると思うんですけども、将来もし問題が起こってきたときに、改めてまた高度処理を一時的にやってくれと言われると、施設側としては困る。長期的な目標が急になくなったところに、また、改めてそれを目標にしてくれというのは非常に気になる点で、1番目の話と2番目の話と3番目の話で実は連携しているので、もう少しいろいろ議論した上で、その論理をきちんと立てて、これはここの沖合にこれだけの影響がやっぱり必要なんですという根拠をもう少しクリアにしておかないと、私はちょっと心配な点があると思います。
以上です。
【古米委員長】 続いて、清野委員、どうぞ。
【清野専門委員】 ありがとうございます。オンラインから失礼します。九州大学の清野です。
今のご議論とも関係するんですけども、どうしても水産生物を中心にして生態系を見ていくということの伝わり方というのを、もうちょっと整理をいただいて、水産生物が一番データがあるだとか、いろいろな人が関与をして、働きかけられる海洋生態系だということとかを伝えた上で、今のほかの沖合はどうなのかとか、あとは水産有用種以外はどうなのかというところは、環境省様の施策の中では、大事な位置づけになるんじゃないかなというふうに思いました。
ですから、何かいろいろパブコメだとか、そういうご意見を聞くときに、もう少し資料をつけ足していただいて、そこを整理していただくといいのかなというふうに思いました。
あと、愛知県の方に伺いたいのは、例えばスナメリであるとか、あと、愛知県では生物多様性の国際会議が開かれたりということで、随分生態系という感覚というのは地元にもあるのかなと思ったり。あるいは、県内でずっと外洋まで出るような海洋教育をやってきたりとか、そういう地域住民なり、教育関係の海洋への関心というのもあるかと思うのです。
その辺り、水産ぽく聞こえてしまうところを、もうちょっと環境全体というふうにするためにも、少し生態系とか社会的な部分を入れていただくと、総合的に判断しやすくなるかなというふうに感じました。
その辺りについて、何かご意見とかアイディアがありましたら、環境省様か、もしくは愛知県様のほうでコメントいただけたらなというふうに思いました。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
ほかになければ、最後の点は、今日出席の愛知県の方がすぐに回答できる部局の方か分からないので、まずは環境省から回答をお願いします。
【亀井課長補佐】 ありがとうございます。
まず、田中委員から3点ご意見いただきました。
一つ目の、過去の経緯につきましては、参考資料にもまとめておりますけれども、過去に区分をされたときに、このⅢ類型の水域とⅡ類型の水域いずれも、水産1種も2種も3種も漁獲がされていたということがございます。
改めて、見直しというよりは、今の状態を踏まえて設定すべきというご指摘ですけれども、まず沿岸についてはノリやアサリがあるので、栄養塩管理の観点からⅢ類型でよいのではないかと。一方で、沖合はどうかということですが、本日関係団体からいただいたお話の中でも、沿岸域のノリ、アサリだけではなくて、沖合、湾央のカレイですとかアナゴ、シャコといった水産2種の利用もあることですとか、このⅡ類型の水準だと、これらに基礎生産として必要な栄養塩濃度が不足しているといったご意見もあったと思います。
この辺りは、より一層検討を進めていく必要があると思いますけれども、本日の時点では、この水域全体をⅢ類型にしてはどうかというご提案でございました。また様々ご意見いただきながら検討を進めていきたいと思います。
二つ目の底層DOについては、ご指摘のとおり令和4年12月に底層DOの水域類型を指定しております。ですので、伊勢湾については現在、達成率と達成期間の設定に向けて検討を進めている状況ですので、窒素と燐の指定の見直しとの先後関係も考慮しながら、底層DOについてもできるだけ早く検討を進め、水生生物の生息、再生産に直接影響を判断する指標である底層DOの評価を運用していきたいと考えております。
三つ目の順応的管理につきまして、実際に管理をしていくに当たっては、順応的にやっていくことが必要という留意事項を今回書いておりますけれども、下水道の関係の中部地方整備局ともこのお話はしておりまして、今後も中部地整と情報交換や意見交換を進めながら、管理に向けてどういったことが考えられるのか、よくコミュニケーションを取りながら考えていきたいと思います。
それから、清野委員からのご指摘に関して、今回、窒素と燐の環境基準の水域類型の見直しということで、Ⅱ類型、Ⅲ類型共に利用については水産ですので、環境の観点、それから水産利用の観点で整理をしております。
水生生物、水産資源以外の水生生物も含めた部分につきましては、まさに底層DOでしっかり水生生物の生息や再生産の場を保全していく、その評価をしていくということですので、底層DOのほうで並行して、しっかりその辺りの保全対象種の議論もしていきたいと考えております。
私からは以上です。
【古米委員長】 清野委員の後半の生態系というか自然生態系の観点からのご指摘については、残念ながら今回のヒアリング担当者にその専門の方はいなかったように思います。この内容に関してはぜひこういったところも含めてご意見をいただくようなプロセスが必要かなと思いました。
ご回答いただきましたけれども、追加で何かありますでしょうか。
私から一つ発言させていただきます。資料の1-1の8ページ目に、約40年以上前に環境基準を決めるときの水産利用の詳細ということで、水産1種、水産2種、水産3種が示されています。今回、田中委員や大久保委員からご指摘があったように、沖合のところのエビ・カニだとかということについては、特に底層の貧酸素化が関わるので、そういう意味においては水産1種に分類されていたわけですね。
ただ、その当時はきっと、貧酸素水塊という問題があまり大きく出ていない状態の中で、沖合の栄養塩濃度がどうあるべきかという形で、T-N 0.3mg、T-P 0.03mgとか、そういう形になっていた可能性があると思います。
現状は、貧酸素水塊が非常に発達してきており、当時とのギャップがあって、この水産利用の詳細の正しい読み方というのを少し考え直す必要が出てきているのかなというように思いました。今日の議論、特に水産の方々にとっては、もちろん貧酸素水塊の存在が漁獲に影響しているけれども、一方で、栄養塩の濃度を下げてきたけれども、必ずしもよくなってきていないという認識があると思います。それらは、相互には関係しているんだけれども、基準設定当時の水産利用の水産1種、2種、3種という詳細整理では、現状での整理としてはちょっと限界が来ているのかなと私は感じました。
田中委員が言われたように、確かに栄養塩の管理を変えてしまうと、今さらに悪化している貧酸素水塊がさらに増えるような現象が起きるなど、ネガティブに影響する可能性もあるので、沿岸域は問題ないにしても、沖合についてはその影響をしっかりと評価した形で今回見直す必要があると考えます。この点は、シミュレーションして評価するということにも関わります。
ただ、底層のシミュレーションで底層DOの再現性は、まだ完全なものができていない。要は、何十年も経過して形成されている底質を再現するのは難しいんですけれども、影響がどう出るのかということをある程度評価した上でオープンに議論を進めていくことが望ましい。
今回の栄養塩の見直しは、こういう位置づけで今ある知見の中で整理をしましたという形を取っておかないと、今後また新しい見直しがあったときに問題が生じる可能性があります。その点はしっかり整理すべきかなと私も議論を聞きながら感じましたので、発言させていただきました。
大久保委員、どうぞ。
【大久保臨時委員】 すみません、今、古米先生がおっしゃったことで、私も田中委員、古米委員長と同じように、やはり16ページ書き方で留意することとなっている点について、具体的な留意の中身をやはりしっかり検討をする必要がある。貧酸素水塊への対応というものが、栄養塩管理と同等に重要な課題であるとすると、こちらもしっかりとやっていく必要があるという部分をきちんと打ち出す、類型指定ということの施策だけで見るのではなくて、やはり総合的な対策という観点で相互に齟齬がないようにという、ご発言を同様に支持したいと思います。
順応的管理についても、今のところ伊勢湾では、公共下水道での対策のみを考えていらっしゃると思いますけれども、本当にそうなのか、民間は考えていないのかということも含めて、順応的に行うということの具体的な中身をやはり明らかにしていくことが重要と考えております。
以上です。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
ほかにご意見ありますでしょうか。よろしいですか。
ないようですので、議題の1につきましては、本日、委員からのご意見を踏まえて検討を進めていただくことにしたいと思います。どうもありがとうございました。
それでは、次の議題に移ります。
議題2、相模ダム貯水池・城山ダム貯水池・土師ダム貯水池における環境基準の暫定目標の見直しについてということで、事務局よりご説明をお願いいたします。
【野口課長補佐】 環境管理課、野口でございます。
相模ダム貯水池・城山ダム貯水池・土師ダム貯水池における環境基準の暫定目標の見直しについてということで、資料2-1でご説明させていただきます。
1ページ目に概要をまとめてございます。前回、この三つの貯水池、令和3年3月に暫定目標の見直しを行いまして、このときから概ね5年、達成期間ということで、令和7年度ということにしておりますが、5年が経過するということで、今回、新たな暫定目標等について検討を行いました。
下のほうに検討経緯というか、暫定目標の設定の推移をまとめてございます。暫定目標、もう3回、4回、見直しをしてきておりまして、今、令和3年3月のものが達成期間令和7年度を目途として、それぞれ三つの貯水池でT-N、T-P、それぞれ暫定目標値を設定しております。
そして、今回一番右のところになりますが、達成期間、当分の間、これは項目としてそれぞれT-N、T-Pの暫定目標、ただし、後でご説明しますが、土師ダム貯水池に関しては、T-Nについては設定しないということで考えております。
四角囲みのところにまとめてございますが、類型については湖沼A類型、それから湖沼Ⅱ類型、こちらについて利水目的等の変更はございませんので、これを維持して、全窒素、全燐の暫定目標値を見直すと。ただし、達成期間に関しては、次のページでご説明しますが、当分の間というふうに整理をしております。
次のページをお願いします。達成期間の考え方でございますが、過去の令和5年の陸域の専門委員会、それから、これを受けた令和6年の通知でございまして、こちらのほうで、頻繁な見直しでは、なかなか効果が出る前に目標が見直されてしまうといったような問題があるので、現在見込み得る施策による水質の改善見通し等を勘案し、実現可能な範囲で年限を定めない当面の目標水準とする水質を暫定目標として定めるという整理をして、これによって、暫定目標の見直しを行う期間については、地域の実情に応じて判断すると、こういった運用をすることと整理いたしました。
これを受けまして、今回、全窒素及び全燐について、自然由来の負荷の影響等により、現在見込み得る対策を行ったとしても、当面環境基準の達成は、後でご説明しますが、困難な状況にございますので、今回、こちらの三つの貯水池については、当分の間というふうに整理をさせていただきたいと思います。
ただし、概ね5年ごとに流域対策の進捗状況、調査研究の進捗状況等について把握し、必要に応じて暫定目標値及び達成期間の見直しを行うという注記をつけさせていただいて、当面の間というような整理をしたんですけれども、何もせずに放置するということにはしませんよということで、ご理解をいただきたいというふうに考えております。
次のページをお願いします。ここから、三つのダム貯水池の諸元を整理してございます。
まず、相模川の上流にある相模ダム貯水池及び城山ダム貯水池でございますが、直列の二つのダム貯水池で、二つとも神奈川県内にはございますが、集水域の大半は山梨県内にございます。それで、二つのダムはほとんど集水域が重なっておりますので、水質であるとか流入汚濁負荷の状況、こちらについては共通しております。
次、お願いします。こちらが広島県の土師ダムでございます。
こちらのダムは、川自体は日本海側へ注ぐ川でございますが、水道利水としては流域外取水ということで、広島市の水道水源というふうになっております。
次、お願いします。今回の提案をさせていただくに当たりまして、過去2回、検討会をこちらに書いている先生方にお願いをして開催いたしまして、それで暫定目標値の設定等を検討してまいりました。
次、お願いします。水質の概要について、簡単に確認をさせていただきます。
相模ダム貯水池については、上が総窒素、下が総燐の表層の経年変化グラフでございますが、暫減状況ではございますが、右の下のほうに、今設定されている湖沼Ⅱ類型の相当水質のところで書いてございますが、こちらの達成については、今後もかなりの時間を要するのではないかという様子が見てとれます。
次のページをお願いします。こちらについては、総窒素と総燐について、左が総窒素、右が総燐ですが、流入の汚濁負荷のそれぞれ左のグラフが現況、それから右隣のグラフが将来予測値で、施策を行った場合の推計したものを二つ並べて整理しております。
それで、この色の違いは、それぞれの汚濁負荷の負荷源のシェアの種類によって整理をしております。全体で、ちょっと見にくいグラフで恐縮ですが、赤点線が水質シミュレーションの結果からここまで汚濁負荷を削減すると、Ⅱ類型が達成できるということを逆算で求めたものになります。将来予測値、グラフの背は若干低くなっているんですけれど、それでもⅡ類型達成まで減らすというのは非常に大変だというような状況が見て取れます。
参考までに、後ほどご説明しますが、今回定める暫定目標値を達成するにはここまで下げるというのを、青点線で逆算して入れてございます。
それで、流入汚濁負荷の負荷源の割合でございますが、総窒素については山林ですね。こちらが非常に量が多いと。それから右のグラフ、T-Pですが、こちらについては湧水の負荷、こちらの青いところですが、非常に多いという特徴がございまして、そういったことも環境基準の直ちに達成というのは非常に難しいということが分かります。
次、お願いします。こちら、城山ダム貯水池の水質の経年変化グラフで、先ほどの相模ダム貯水池と状況は非常に似通っております。
次、お願いします。流量汚濁負荷割合についても、同じことが言えると思います。
次、お願いします。こちらが広島県の土師ダム貯水池の水質経年変化でございます。
こちらについては、総窒素、総燐とも、ほぼほぼ横ばいというような状況が続いていて、こちらについても水質環境基準、こちらのⅡ類型を達成するというのは、非常に直ちには難しいという状況になっております。
次、お願いします。こちらが土師ダムの貯水池の汚濁負荷の割合と予測ということですね。
左側、T-Nについては次でご説明しますが、今回から不適用という整理をさせていただきたいと考えておりまして、参考値でございます。
右側の総燐についてですが、やはり施策をした場合の将来予測をもってしても、さらに半分ぐらいまで減らさないと、Ⅱ類型を達成するというのは困難というような状況でございます。
こちらの総燐についても、土地系、田や畑、こちらの面源系の負荷というのが非常に割合としては多いというような状況になっております。
次、お願いします。それで、土師ダム貯水池の窒素と燐の推移を整理いたしました。
下のほうに、過去、平成29年の陸域専門委員会の資料を引用してございますが、植物プランクトンの増殖の要因に着目いたしまして、総窒素と総燐の割合ですね、こちらが20以下であると増殖しやすいといった特徴がございますので、そちらを引用いたしまして、今回、総窒素と総燐の割合をちょっと整理いたしまして、それで総窒素割る総燐、N/P比と呼んでおりますが、こちらのN/P比が継続的に平成10年度以降、N/P比が20をずっと上回る状況が続いておりまして、将来もこれは元に戻って下回るということはないというふうに考えられるということから、今回からは、全窒素の基準というのは不適用というふうに整理をさせていただきたいと考えております。
次、お願いします。それらの議論を踏まえまして、暫定目標値について整理をいたしました。
利水用途の変更がないということで、湖沼A類型、それから湖沼Ⅱ類型は維持するということで、ただし、土師ダムの全窒素については不適用でございますが、水質及び汚濁負荷の状況、対策の実現可能性を考慮して、暫定目標を以下のように見直しを行いたいというように考えております。
現在の見込み対策による汚濁負荷量の削減見通しに基づく将来水質予測、こちらの下限値を真ん中の赤いところで示しております。変動幅は予測値なので、当然ございますので、平均値からシグマ分引いたものが変動の下限値になりますが、こちらの値を置かせていただいて、それから、直近10年間の年平均値の最小値、こちらのほうが低い場合もございますので、こちらのほうが低かったらこちらを採用するということで、両方のうちのいずれか低いほうの年平均値ですね、こちらを当分の間の目標として、暫定目標値として選ぶというか、定めさせていただきました。
次、お願いします。こちらの資料2-2が報告の案という形で、将来的には答申になっていくものの素案になりますが、そちらになる前の段階の表でございます。
まず、その三つの貯水池、それぞれCODについては湖沼A類型を維持する。そして、直ちに達成。当然、全窒素、全燐については湖沼Ⅱ類型を維持したまま、今ご説明したように、暫定目標値についてだけ見直しをさせていただくと。ただし、土師ダムについては全燐のみということになります。参考までに、一番右のところで、今の令和7年度までの暫定目標というのを書かせていただいております。
次のページをお願いします。注意事項といたしまして、「当分の間」としたということもございまして、以下の四つの注意事項を整理して、付記しております。
一つ目が、暫定目標の達成期間は当分の間としましたが、概ね5年ごとに流域対策の進捗状況調査、研究の進捗状況等について把握し、必要に応じて暫定目標値及び達成期間の見直しを行うものとする。二つ目が、水質シミュレーションに見込めなかった生活排水対策以外の森林の保全整備、環境保全型農業の推進についても、面源負荷削減対策として、今後も実施する。三つ目が、ばっ気循環等の貯水池内対策は継続する。四つ目、最後でございますが、大気由来の窒素負荷量の減少などがダム湖の水質改善に寄与している可能性があるため、水質改善への寄与が期待される施策を推進するとともに、モニタリングを継続し、湖沼水質形成機構の解明、新たな水質改善手法の開発等について、調査研究を進める必要がある。
説明は以上でございます。
【古米委員長】 どうも説明ありがとうございました。
本日は、類型指定見直しの検討に向けた検討会の座長をお務めいただいている風間委員も出席いただいておりますので、風間委員からもご発言をいただきたいと思います。お願いいたします。
【風間臨時委員】 ありがとうございます。風間です。聞こえていますでしょうか。
【古米委員長】 聞こえております。
【風間臨時委員】 今、事務局のほうで説明があったとおりでございます。
ちょっと新しい方向というとおかしいですけれども、基準の時期とか考え方等について、少しずつ改革を進めているところでございますので、ご意見いただければありがたいと思います。よろしくお願いいたします。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは委員の方々からご質問、ご意見をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。
和田委員、どうぞ。
【和田専門委員】 和田です。ご説明ありがとうございました。
今回の見直しにつきましては、三つのダムとも自然由来の負荷ですね。特に土地系が多いということから現在見込み得る対策を行ったとしても環境基準達成が困難であるということは非常に理解いたしました。
それで、まとめのところで、今回シミュレーションに見込めなかった生活排水対策以外で、面源負荷の削減対策として今後も実施していくとありますが、面源負荷の削減対策は、ここに書かれている森林の保全や環境保全型農業もそうですが、示した以外に、近年、流域治水やEco-DRR、グリーンインフラなどの気候変動に対して進められている浸透や貯留、これらは湖沼等への汚濁物質の流入を防止する対策として非常に有効です。すなわち、水質保全が主目的でない対策でも、おのおのの対策が重層的に面源負荷に貢献していると思います。
このような省庁間をまたぐ事業を共通認識して体系化することが重要なので、環境省さんとしても、ぜひ積極的な働きかけをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
【古米委員長】 それでは、続いて清野委員、どうぞ。
【清野専門委員】 ご説明の中で、湧水からの負荷というところがあったんですけども、スライドでいいますと9ページですか。城山ダム、津久井湖のところです。その辺り、湧水というのはいろいろな湧水があると思うんですけども、どういうタイプのものが負荷を生じさせているのかというのが、もう少し細かく情報を教えていただけたらと思っております。
以上です。
【古米委員長】 続いて、皆川臨時委員、どうぞ。
【皆川臨時委員】 皆川です。
1点目に関しましては清野委員と同じ湧水の負荷について少し教えていただきたいと思います。それと、先ほども面的な対策と森林の保全整備ということが出てきましたが、特に相模では森林由来の窒素が大きく、それに対応した森林の保全整備という方向性かと思いますが、特にその負荷について、その要因のメカニズム的なところを教えていただきたいと思います。もしかすると近年の豪雨による斜面崩壊によって山が荒れている等という話も、流域治水や、全体的な流域の保全の観点という面からも考えていくべき点になるかとは思いますが、少し補足していただきたいと思います。
山の状況や土砂流出の状況についても教えていただきたいと思います。
そして、最後3点目ですが、例えばダム湖で貯留された水は、下流の河床環境に影響を及ぼしますが、例えば付着藻類や底生動物への影響、もちろんダムの運用にもよりますが、プランクトンの増加によってそれが流下し、底生動物においては餌量が増えるというところも影響としてはありますが、今回示されている三つのダムにおいては、下流のそのような湖沼の水質関係が及ぼす影響について、課題として出てきているかどうか、もし情報がありましたら教えていただきたいと思いました。
以上になります。よろしくお願いします。
【古米委員長】 ありがとうございました。
ほかになければ、回答をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
【野口課長補佐】 まず、和田委員から。すみません、何でしたか。
【古米委員長】 要は、面源対策で、他の部局等で行われている事業の効果みたいなものを含めて考えていったらいかがでしょうかという。
【野口課長補佐】 ありがとうございます。
面源対策でございますが、近年、確かに他部局との総合的な対策ということで、今回、この計画というか、暫定目標値を定めるのは国、環境省でございますが、検討会議も県の代表の方に入っていただいて、検討していただいていて、それで面源対策、そちらについて、主体的に取り組んでいただくのは、どちらかというと神奈川県及び山梨県でございますので、そちらのほうで、県でそれぞれ例えば森林の整備の計画等を立てていただいていて、計画の切り替え年に当たったりとか、そういった事情がございますが、引き続き対策については行っていっていただくということで、環境部局、直接ではないんですけれど、取り組んでいっていただくということで、お話をいただいているところでございます。
【和田専門委員】 和田です。ありがとうございます。
対策として、環境省が、というわけではないです。流域治水や気候変動で行われている浸透貯留が、今回の水質シミュレーションをしたときに、そこで汚濁物質の流入が止まっている、防ぐというところが、シミュレーションで多分、活かされていないと思います。今後そういったものも、浸透貯留の効果というものも研究事例が出てきておりますので、将来的に反映していければ、対策をしても見込めなくて当分の間、というところが改善されるのではないかと思いました。
【野口課長補佐】 ありがとうございます。
確かに、そういったご意見もございまして、それでちょっと最後のところで、注記で、今回は数値シミュレーションには確かに入れられていないんですが、そういったものを含めて、より一層現状というか、施策を反映したものというか、施策の励みになるものも含めて、さらにシミュレーションができるような研究というか、調査というか、そういったものを進めていくということで、ちょっと注記をさせていただいているところです。
【古米委員長】 湧水についての説明をお願いします。
【野口課長補佐】 清野委員と、それから皆川委員からもございましたが、湧水でございますが、相模ダム城山、ダムの貯水池、こちらの燐でございますが、こちら自然由来のところでございまして、グラフの青いところですけれど、これは富士山の山麓の湧水で、流域図で見ると、左のほうの川がないというか、地下に潜ったところで、そこで涵養されて出てくるような水ですね。こちらのほうで、地質的な特徴もございまして、非常に燐濃度の高い湧水が出てきていると、そういったことになっております。
皆川委員の二つ目のメカニズムでございますが、確かに山腹崩壊とか、そういったものもございますが、窒素に関しては、特に相模ダム、城山ダムに関しては、山林由来の窒素、こちらについては、ちょっと別途大気の窒素濃度もちょっと調べておりまして、明確なところが言えなかったということで、今回の数値シミュレーション等には入れてございませんが、大気の窒素濃度というのを、削減対策の効果というのが一応出ておりまして、その結果、森林に付着して、樹幹流となって地下水として森林から出てくるような窒素が一定程度は減っているのではないかというふうに推察はされているところでございます。
トレンドとして過去10年ぐらい、大気中の窒素濃度とかNOxについては確実に減っているという証拠がございます。
山腹崩壊については、確かにこちらについても、シミュレーションには入れられておりませんので、ちょっと今後の課題として、こちらについても引き続き検討を進めて、研究を進めていっていただけるようにお願いをしたいというふうに考えております。
【古米委員長】 3点目のダム貯水池の下流側の河床等の生態系への影響については、今回どのような検討をなされているのかというご質問だと思いますが。
【野口課長補佐】 ありがとうございます。
3点目の、ダムの運用等にも関わるものでございますが、こちらについても正直、十分評価できていないところはございますが、下流影響については、今後ともちょっと検討を進めて、特に土師ダムについては広島市の水源になっていて、毎年ということではないですが、利水障害、異臭味等の障害も発生しているというふうには聞いておりますので、そういったところも踏まえて、ダム管理者として考えられる対策は既に取り組まれていますが、それらを後押しして、かつ一緒に対策を進めていけるような、そういった形で、ちょっと今回は書き込めなかったところも多いんですけれど、将来的には何らかの形で書き込めるように、こちらについても、調査研究等をさらに進めていくというふうにいけるといいかなというふうに考えているところです。
【古米委員長】 清野委員、皆川委員、よろしいでしょうか。
【清野専門委員】 どうもありがとうございます。理解が進みました。ありがとうございます。
対策は難しいなと思いましたけれども、特にジオロジカルなものについては、改めてそういった分野の調査も大事だなと思いました。ありがとうございました。
以上です。
【古米委員長】 ちなみに、この湧水の燐に関しては、神奈川県で過去に調査された報告書があり、地質由来による負荷が非常に影響あるという報告書が出ております。それに基づいて、特別に湧水の負荷量として、負荷量全体の中の占める割合というのを計算して、出しているということになります。
【清野専門委員】 ありがとうございました。
【古米委員長】 ほかにあれば、お願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。
では、私からちょっと気になる点があったので、確認です。7ページ目のところで、いわゆる生活系の排水系のものについては、かなり精緻に負荷量が計算されているのに対して、土地系というのは原単位法で積算しているということになろうかと思います。
その枠組み中で、各類型の水質基準を達成するために、どこまで負荷量削減しないといけないかという計算を水質シミュレーションで行ったと言われたと思うんです。しかし、実際は、現在の水質に対して流入負荷量がどの状態で、そして、将来どこまで負荷量を減らすと水質が低下するかという、非常にシンプルな負荷量ベースの将来水質予測式を使って予測をしているはずです。ある意味、シミュレーションと言っても間違いではないんですけれども、誤解があると困りますので、どういう予測計算式で求めると、ここまで負荷削減しないといけないかということを説明することがよいと思います。この資料はオープンになりますので、誤解を受けないような形で示しましょう。今までの検討でも、将来水質予測の方法自体に課題があるということが議論されていますので、それを踏まえてちょっと表記に注釈をつけていただくことがいいかなと思います。要は、生活排水のように精緻な負荷量が入っていることと、面源負荷は原単位法を使っているということと、将来の水質は、現在と将来の負荷量の積算値の比を求めることによってどこまで負荷量を下げると水質が低下するかいう予測式を使っていることを示す。この予測式も、非常に負荷量が多い時代はよかったんですけども、下がってくるとなかなかうまく使えないという議論を前回の専門委員会でも行っていて、見直す必要があるというところでモデルシミュレーションという言葉も出てきていると思います。その点は明確にしていただければと思います。
私から以上です。
【野口課長補佐】 ありがとうございます。
【古米委員長】 もし、ほかに特にないようであれば、資料2-2というのを本委員会の報告案として取りまとめたいと思いますけども、よろしいでしょうか。
ありがとうございました。
それでは、今後の進め方について、事務局よりご説明をお願いいたします。
【野口課長補佐】 ありがとうございます。
本日の先生のご意見も踏まえて、シミュレーションの考え方等、資料2の添付資料にはついてはいるんですが、もう少し分かりやすい形でちょっと再整理をさせていただきたいと思います。
それを踏まえて、今後についてでございますが、今後、パブリックコメント等の手続をさせていただきまして、こちらが資料2-2になりますが、こちらのかたちで、小委員会の報告という形で整理をさせていただいて、最終的には答申というような形にさせていただきたいと思います。その前に、パブリックコメント等の所要の手続をさせていただきたいというふうに考えております。
資料2-3に、最終的にどういった形で告示改正をするかという官報に掲載される案文をつけさせていただいております。
こういったイメージで進めさせていただきたいと思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
今日の意見を踏まえて、最終的に取りまとめをして、パブリックコメントを行い、私が部会長ですので、しっかり見させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
それでは、次の議題3に移りたいと思います。良好な環境の創出に向けた新たな水環境施策の検討についてということで、事務局よりご説明をお願いいたします。
【鈴木室長】 環境省の鈴木よりご説明をさせていただきます。
資料3をご覧ください。おめくりいただきまして、まず、世論調査を少しご紹介しております。
少し古いものもございますけども、平成20年の水に関する世論調査というのがありまして、水辺環境、行政に、この水に関する施策で力を入れてほしいことはというような問いがあって、水辺環境の保全と整備というのがかなり結構高かったというような、下段が平成13年、上段が平成20年ということで、そういうニーズが出てきているということでございます。
水環境自体、そんなに大きく変わっていないと思いますので、こういったニーズというのが引き続きあるだろうということでございます。
その後、幾つか水循環に関する世論調査、名前が少し変わったりして、問いも、水とのかかわりのある豊かな暮らしとはどのようなものだと思いますかということで、「身近に潤いと安らぎを与えてくれる水辺がある暮らし」というような回答がまた増えてきているといったようなものですとか、おめくりいただいたスライド3ですけども、昨年度の世論調査で、身近な環境に関する世論調査というのがございまして、水環境についてどういう改善策を期待するかと。水質汚濁が高いのはあるんですが、その下の散乱ごみとか緑や生き物、水に親しみやすい場所の増加とか、いろいろな面についてもそれなりの回答があったということがありましたということでございます。
スライド4ですが、環境基本計画を少し振り返っています。第1次が1994年ですけども、水質、水量、水生成物、水辺地を総合的にとらええるような文言が、もうこの頃から出てきています。当然、水質汚濁防止法、水質環境基準という、水質というのが法令の今、中心になっておりますけども、環境施策としては、水質に加えて水量、水生成物、水辺地を総合的にとらえといったような観点を、この頃から意識はしているというものでございます。
第2次も同じような考え方が書いてあります。
第3次ですけども、ここも今の四つの視点は書いてあるんですが、3行目とかには、さらに水循環の健全性とか、そういった文言が出てきている。
それから、その具体のところでアと書いてあるんですけども、水質環境基準の設定につきましては、そういう水質だけではなくて水量、水辺地も含めた水環境を総合的に評価する手法についての調査検討もするといったようなものが出てきています。
おめくりいただきまして、スライド5です。スライド5も同じような形ですね。水環境を総合的に評価する指標というような言葉が出てきています。
第5次は、全体が結構、環境局のこの辺のパートの中身がかなり変わってきたところがあるんですが、流域全体といったような文言も入ってきているということでございます。
スライド6、それから、環境基本計画ではないんですけども、2011年3月に、今後の水環境保全の在り方についてという、水環境政策全般を見渡して検討いただいたということがございました。ここで今日お話しさせていただくようなことと関連することも幾つか盛り込まれています。
赤字のところをご説明しますけども、地域の観点というようなことで、地域住民に分かりやすい環境目標とかというのを書いてございます。
それから、2番目の段落のところですけども、水環境保全再生の目標については、地域ごとの特徴を踏まえた望ましい水環境保全の目標として検討していくべきですとか、一番下の段落につきましては、国民の実感に合った環境基準への見直しということで、良好な水質、または水質汚濁の状況だけでなくて、水の美しさ、清らかさ等々の目標、視点を含めた指標の導入について検討していく必要があるといったご提言もいただいているというところです。
それから、おめくりいただきまして、スライド7でございますけれども、こういったことで、今後の水環境施策を新しくまた展開していきたいということで、第6次環境基本計画が昨年の5月に閣議決定をされています。
そこに、課題とか現状とかというのを上のほうに書きましたけども、真ん中の紫の四角の中に、これは水・大気パートにこういった文言を加えています。良好な環境を持続可能な形で利用することによって、人々の満足度、ウェルビーイングの向上とか地域活性化、こういったキーワードがありまして、良好な環境の創出に向けて、生物の多様性の保全や地域づくり等に資する総合的な水環境管理を目指すといったような文言を書いています。
こういったことを踏まえて、その下の文言、四角ですけども、水質のみではなくて、そういった生物とか景観、文化、地域活動等の多面的な観点から水環境を捉えて、地域ニーズに応じた総合的な水環境管理を目指していくといったような展開を考えていければということでございます。
次のスライドですが、少し概念整理ということで、左側に三角で水質保全と書いてありまして、真ん中の多面的なモニタリングで課題やニーズを把握した上で、今後は水環境の活用といったようなこと、保全再生創出というのは、下の話題にはありますけども、その活用ということもやっていく。さらには、結果として地域の魅力向上や地域課題の解決、こういったものを意識してやっていきたいということです。
左側の水質保全だけというのもちょっと誤解があるかもしれません。これまでも水生生物の環境基準をつくったりとか、いろいろやってはきているんですけども、もうちょっとそういったところを正面からしっかりやっていきたいというような方向性をお示ししております。
スライド9でございます。じゃあ、具体的にどういった施策かということで、二つほど次のスライドからご説明したいと思っていますが、一つは多面的なモニタリングということで、先ほどからあるような水質以外のいろいろな観点も含めたモニタリングというのが一つの施策。
右側にモデル事業を三つ書いています。地域に貢献するとか、ウェルビーイングとか、地域の魅力向上、地域活性化とかいったようなことも意識をしての水環境の保全・活用ということを進めていきたい。こういった二つの主な施策によって、水辺の価値向上や地域の魅力向上というところにアプローチしていきたいなということで考えております。
今、二つございましたのを一つずつ、少し次のスライドからご説明しています。
スライドの11ですけども、多面的な水環境のモニタリングということで、今、ご説明してきたようなことでございまして、依然として基準とかモニタリング項目としては水質のみを対象としております。こういったところから、生き物、景色、地域活動といったようなところをモニタリング対象としてはどうかということでございます。
スライド11の下に、「みずしるべ」というのが書いてあります。
具体的には、その次のスライドに書いてございますが、環境基本計画でも先ほどご紹介したようにいろいろ書いていまして、これまでも水環境学会さんと連携して、こういった水環境健全性指標ということで、通称「水辺のすこやかさ指標(水しるべ)」ということで、いろいろな観点を盛り込んだものを公表しております。
スライド13に具体的にご紹介していまして、五つの指標(ものさし)ということで、自然な姿とか豊かな生き物、水のきれいさとかといったようなことを書いています。
チャート図みたいなので、大体3段階ぐらい、主観で感覚的なところにも頼りながらやりますので、人によって差が出ていいようなものとして、こういう指標を出しています。
それから、スライド14ですけれども、また、多面的なモニタリング水質管理ということで、国交省のほうでも過去に、去年改定されていますけども、今後の河川水質管理の指標みたいなものを出されています。
それから、河川水辺の国勢調査でもいろいろな観点からの調査をされていますし、自治体のほうでもいろいろな指標を検討されているといった例がございます。
スライド15です。あとは、これはちょっと古くからやっているんですけども、昭和59年から環境省と国交省で、全国水生生物調査というものを呼びかけています。3万7,000人ぐらい、4万人弱ぐらい参加をいただいているようなものなので、こういったものも今後もちょっと今の文脈の中でも活用できたらということで考えています。
スライド16から3ページぐらいは、昨年度やったご紹介で、水辺のすこやかさ指標みたいなものを、何か行政のモニタリングとしてやっていく場合の課題の把握みたいなことを、実際にいろいろやってみて、検討したといったことを今やっていますというご紹介です。
16ページ、5自治体で、幾つか12か所ぐらいで調査を実際にやってみたということです。17、18ページはその結果の例、こんな形でやっていますということをご紹介したものでございます。
続きまして、2番の良好な環境の創出ということであります。
スライド20を見ていただきまして、去年は二つだったんですが、今年から観光モデル事業というものを含めて、三つの事業を展開しています。こういったもので、地域での保全、水環境の保全とか活用の事業というのを進めていきたいということでございます。
三つありますので、1個ずつ簡単にご説明します。スライド21でございますけども、令和7年度良好な水環境・保全活用モデル事業ということで、水環境の保全と活用ということを二つキーワードに、良好な環境を生かした地域の魅力向上といったようなこと。それから、地場産業なんかも意識をした地域活性化といったようなことにつなげていくためのモデル事業ということでやっています。
スライド22が今年度選定させていただいた五つのモデル事業ということで、環境省からそんなに大きい額ではないんですが財政的なものを委託して、また伴走支援をして、こういった地域の活動と水環境の保全ということで、と活用ということで、進めているものでございます。
スライド23は、今お話ししたようなもので、藻場・干潟、里海づくりの部分で、基盤構築支援事業というふうな名前で、今年度から展開をしているものでございます。
先ほど申し上げたように、藻場・干潟の造成と地域資源の利活用というようなことを意識してやっているということでございまして、スライド24に今年度の採択をした四つの事業をご紹介しています。
それから、スライド25が今年度から新しく始めています令和7年度良好な環境を活用した観光モデル事業ということで、五感で感じる水や音、かおりなどの自然資本というものを生かした地域の観光を、やっぱりそういったものがいろいろ衰退しているようなところもありますし、なかなかうまく保全できていなかったり、うまく活用できていなかったりということもありまして、そういったものを良好な環境の保全・再生・創出にもつなげるといったことに意識して、観光の活性化ということで、これもモデル事業ということで、今年度からですけども、スライド26にありますような10団体、10事業採択をしまして、こちらも委託という形で環境省から予算的なものも出しまして、伴走支援をして、いい環境の創出と観光の促進ということでしていきたいということでございます。
あと二、三枚ぐらいスライドがありますけども、この二つ、主にモニタリングと事業ということで、何か今日は決めるというものではなくて、ご紹介、今後こういった施策の展開をしていきたいということと、それによってどういう制度が必要かといった検討も今後していきたいと考えておりますけども、今日はこのような小委員会でしたので、今後のこういった展開についても、ちょっと時間が過ぎていて申し訳ないんですが、少し可能な範囲でご助言というか、いろいろコメントをいただけたらありがたいなと思っております。
最後、スライドも3枚ぐらいありますけども、今お話ししたような多面的なモニタリングとその地域の活動という二つのコンテンツの環境活動の情報交流の場というようなWebサイトを立ち上げました。
スライド28ですけども、すみません。これに令和5年って書いてありますが、令和7年です。つい先週、立ち上げをしましたので、ぜひ一度、ご覧いただければありがたいなと思っています。
コンテンツとしては右側にあるような、水辺を生かした地域づくりといったようなものと水辺の調査というようなことが二つの大きなコンテンツでありまして、会員登録をしなくても見られるんですけども、スライド29にございます会員登録していただくと、ご自分の団体の活動なんかも投稿していただいたりとか、イベント等のご紹介とか、交流掲示板なんかも活用して、情報の相互交流ができればと思っております。
スライド30、最後のスライドですけども、今みたいなこういう場の立ち上げとか、モデル事業の今後の推進ということでキックオフのイベントとしている、6月9日に水辺の環境活動フォーラムといったようなことを開催予定であります。
最後のところはWebサイトとイベントのご紹介ですが、前半ご説明した二つの軸で今後をやっていけたらということで、ぜひコメントなど、ご意見などいただけたらありがたいかなと思っております。
以上です。
【古米委員長】 ご説明ありがとうございました。
予定の時刻を過ぎておりますけれども、ご質問、ご意見、委員の方々からお受けしたいと思います。
古川委員、どうぞ。
【古川専門委員】 委員長、ありがとうございます。
水質汚濁防止の観点に加えて、総合的な水環境管理、良好な水環境創出の観点から、今後の政策を進めるというご説明に賛同いたします。
その際、「1.多面的なモニタリング」として、様々な指標の事例をご紹介いただきましたとおり、各地域の多様な特徴、ニーズや取組を踏まえて、その地域に合った柔軟な対応ができるようにすることが重要であると考えております。
資料にもございますように、水環境の保全・創出だけでなく、活用という観点もございます。また、水源には治水の機能もございます。全国一律で、何らかの指標を設定するということは必ずしもそぐわない場合があるとも考えております。
また、事業者の立場から申し上げさせていただきますと、近年、機関投資家を始めとした多方面から、水セキュリティーに関する関心や質問が多く寄せられているのが現状でございます。このような状況意識して、この資料をさらに発展させていただき、日本の様々な取組について国際的な理解が得られるようにご尽力をお願いいたします。
以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
清野委員。
【清野専門委員】 全般的にはすごく系統立って、それから融合的に進んでいるということで、ありがたく思ったところです。それから、地域の参加だとか、様々な教育関係への浸透になると思います。
一方で、モニタリングのデータを取る現場というのは、結構、人不足だとか費用不足ということがありまして、その部分についての中の危機感といいますか、地に足のついた進め方みたいなものも、今後、必要かなと思っているところです。
私の関係する分野で言うと、沿岸とか河川とかなんですけども、ほかの分野はもうちょっと進んでいるのかもしれないんですけども、ぜひ、そういうテクニカルな部分とか、データの管理とか、永続性とか、その部分を並走させていただけたらと思うところです。
今日の最初の事例で、海域についてどういう水質基準を適用するべきかという話で、三重県さん、それから愛知県さんが本当に重要な検討していただいています。
そのバックグラウンドは、やはり私の分野で言いますと、この両県は日本の水産試験場が始まってからの科学的な管理であるとかデータを取るという、すごい足腰の強さと、それからデータへの信頼というものが醸成されていて、100年近い歴史を持つところだと思います。
一方で、必ずしもそうじゃないところは多くあって、データの散逸だとか、モニタリングの必要性を感じていないとか、いろいろなところもあるので、そこをもうちょっと全国的にレベルを上げるということが必要かなと思っております。
ですから、私も学会活動でそれはやっていきたいと思いますけれども、やはり今日伺った施策の中でどうするのかなという気持ちを持つ人たちもいるというふうに思いますので、ちょっと辛口で申し訳ありませんがよろしくお願いします。
以上、コメントでございます。
【古米委員長】 それでは、山本委員、どうぞ。
【山本臨時委員】 国立環境研究所の山本ですけれども、先ほど清野委員のほうからお話ありましたけれども、やはりそれぞれの取組に対して、先ほど最初の今日の議題でありましたけれども、伊勢湾についても継続的にやはりそういったものをモニタリングしてデータを取っていくというのが非常に大事だと思いますし、やはり客観的な指標というのも非常に大事かなと思います。
今の水しるべとか、いろいろな指標が提示されているのは、これはこれでいい一方で、技術的にはやはり幾つかの水環境に関連するような指標というのは、新しいものも少し出てきていると思いますし、一つは、生物多様性に関連しているのであれば、環境DNAも活用した生物調査なんかも少し出てきておりますし、以前、こちらの環境管理課、旧水環境課でも検討されました生物応答を用いた手法なんかも一つの方法かなと思いますので、そういった客観的な手法なんかも引き続き用いて、継続してモニタリングしていくことがすごく重要じゃないかなと考えています。
あと、2点目なんですけれども、今、やはりそういった観点で言うと、旧水環境課、現在の環境管理課で実施している水質環境基準ですね。生物保全と関係して、基準値の設定というのが少し止まっている状態でして、特に有機フッ素化合物に関連しては非常に社会的ニーズが大きいということで、そちらのほうにかなりエフォートが割かれているという話は聞きます。
ただ、世界的に見ると、いろいろな化学物質というのはどんどん出てきていますし、そういったいろいろな有害物質の環境中の基準値をつくらなくても、指針値をつくってちゃんとモニタリングしていくということはすごく大事かなと思いますので、そういった観点では、やはり現在の指標の中では、十分そこのところは評価されていないものではありますので、ぜひ基準値の策定、あるいは指針値の策定みたいなところについては、継続した努力が重要じゃないかなというふうに思います。
あと、最後なんですけれども、今、水環境というのはやはり複数の省庁に関わるような話でして、今、水道水質に関連したところが環境省のほうに移管してきたというのはあると思います。
水循環全体を見渡すと、やはり国交省さんであったりとか、水産庁さんも、もしかしたら農水とかも関わるかもしれませんので、全体、各省庁間のやはり連携が重要になってくるかなというふうに思いますので、ぜひそこについても、何かここの部分で検討いただければ、よりよいものができてくるのではないかなというふうに思いました。
そのためには、以前やられた今後の水環境に関連するような検討会というのは非常に重要なものかなと思いますので、10何年もたっていますので、また、そういったものも検討されることも重要なのではないかなというふうに思いました。
私からは以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
それでは、皆川委員、どうぞ。
【皆川臨時委員】 私はコメントだったんですけれども、今、言われた山本委員からのお話のとおりで、例えば21ページの良好な水環境保全活用モデル事業ということで、多分、国土交通省のかわまちづくりであるとか、そういった事業とかなりかぶる部分もたくさん出てくると思いますし、また、良好な環境の創出によって、地域の課題の解決であるとか、ウェルビーイングというところに関しても、到達するところは同じだと思いますので、ぜひ省庁間の連携であるとか、特に地域課題ということになると、地域の地方自治体との連携ということになってくると思いますけれども、そういった連携を図りながら、本当に実現というところまで持っていけるような体制づくりを、ぜひこの機会に整えていただきたいと思いました。
コメントです。以上です。
【古米委員長】 ありがとうございました。
和田委員、どうぞ。
【和田専門委員】 和田です。ありがとうございます。
モニタリングにつきましては、ほかの先生方の意見と同じで、連携体系、体制を極めて進めてもらえればと思っております。
モデル事業で1点コメントですけれども、モデル事業の中に名水百選というのがありまして、名水百選が昭和の時代に始まって、平成の名水百選もあります。
私はこれらの場所をよく訪れますが、どこも選定されたことに対して住民の方が誇りを持って、水質保全以外に地域の整備や美化に努めておられるのを目にします。水路とか池には絶滅危惧種の魚などが泳いだり、水がおいしい飲食店もありますので、名水というキーワードで地域が活性化しているのが非常に伺えます。
こういったきっかけ、それからモチベーションになっているので、ぜひ令和になりましたので、令和の名水百選というのも進めていければと思います。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
いろいろとコメントをいただきましたが、事務局から何かあればお願いします。
【鈴木室長】 たくさんのご意見いただきまして、ありがとうございます。
いずれも大変重要なご指摘かと思います。水セキュリティーの話、それから現場の人手とかデータの活用、それから環境DNAなんかの効率的な手法といったようなこと、それが各省連携しっかりということ、体制の話と、それから最後の名水百選ということで、この観光モデル事業のほうも名水百選の選定地域も対象にしていますけども、そういったところの意識をしっかりとやって、具体のこれからやっていきたいということで、今日のまずは冒頭、頭出しということになっているので、しっかりと検討していけたらと思いますので、引き続きご助言、ご意見いただければと思います。
ありがとうございます。
【古米委員長】 どうもありがとうございました。
ほかによろしいでしょうか。
それでは、本日いろいろとご意見をいただきましたので、検討を進めていただければと思います。
以上で、本日の予定した議事は全て終了いたしましたので、進行を事務局にお返しいたします。
【亀井課長補佐】 委員の皆様、本日は長時間にわたり活発なご審議をいただきまして、誠にありがとうございました。
特に前半、序盤で音声に不具合があり大変申し訳ありませんでした。
本日の議事録は事務局で案を作成し、後日、委員の皆様にお送りします。ご確認いただいた後に公表しますので、よろしくお願いいたします。
それでは、これをもちまして、第2回生活環境の保全に関する水環境小委員会を閉会いたします。どうもありがとうございました。
午後0時19分閉会