放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料
(平成28年度版、 HTML形式)

第3章 放射線による健康影響
3.8 こころへの影響

世界保健機関(WHO)による総括-チェルノブイリ原発事故-

世界保健機関(WHO)による総括-チェルノブイリ原発事故-
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原子力災害で、ストレスによりどのような精神医学的影響が見られたのか、世界保健機関(WHO)報告書のまとめでは4つに要約しています。
1つ目はストレス関連症状です。被ばく者集団では、説明できない身体症状や自己評価による健康不良を申告する割合が対象集団の3~4倍に上がったとの研究報告があります。
2つ目は、事故発生時に妊娠中であった母親たちが、生まれてきた子供の脳の機能への影響を非常に気にしていることが分かっています。例えば、母親たちに「自分の子供は記憶力に問題を抱えていると思うか」といったアンケートでは、そう思うと答えた母親は、非汚染地区(7%)に比べ、強制避難地区(31%)では4倍になりました。
3つ目と4つ目はそれぞれ、汚染除去作業者に見られた脳機能への影響と高い自殺率です。
ある研究グループからは、最も高い線量に被ばくした汚染除去作業者は認識障害、脳波検査(EEG)の変化、統合失調症、認知症、器官脳の機能障害の徴候、及び磁気共鳴映像法(MRI)による映像の変化等があったという報告があります。しかし、このような所見は、個々の研究者によって確認されているわけではありません。
また、汚染除去作業に参加したエストニア人4,742人について追跡調査を行ったところ、1993年までに、がんの発生率と死亡率の増加は認められませんでしたが144人の死亡が確認され、その19.4%が自殺であることが分かりました。

本資料への収録日:平成25年3月31日

改訂日:平成29年3月31日

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